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田中 光(作業療法士)|株式会社Journey Rehab 代表
認定作業療法士/修士(作業療法学)
東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍
初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立
東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍
初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立
脳卒中リハビリの「運動学習」とは?声かけ・フィードバックの出し方に関する研究と限界を正直に解説
内容確認日:2026年7月30日
「同じ練習をしているのに、日によってできたりできなかったりする」「セラピストの声かけが多い日と少ない日がある」——リハビリの場面で、こうした違いを感じたことはないでしょうか。実は、何を練習するかと同じくらい、どう教えるか・どう伝えるかが練習の中身を左右します。この領域は「運動学習(motor learning)」と呼ばれ、指示や声かけの量、注意の向け先、反復の回数などが研究されてきました。ただし、脳卒中後の方でどこまで当てはまるのかは、まだ確定していない部分が多く残っています。この記事では、作業療法士の立場から、研究で分かっていることと分かっていないことを整理します。
この記事の内容
SECTION 01
運動学習とは何か|「教え方」も練習の一部
運動学習とは、練習を通じて動作のやり方が身につき、その状態が時間が経っても保たれる過程のことを指します。リハビリの研究では、この過程を左右する条件として「練習の量(反復回数)」「練習の順番やばらつき」「動作の難しさの設定」「フィードバック(結果や動きの様子を伝えること)の種類・タイミング・頻度」「注意をどこに向けるか」などが扱われてきました3。
なかでもよく取り上げられるのが、注意の向け先です。「肘を伸ばして」「膝に体重を乗せて」のように自分の身体の動きに注意を向ける言い方を内的焦点、「このコップを取って」「あの線を越えて」のように身体の外側の対象や結果に注意を向ける言い方を外的焦点と呼びます。もうひとつの軸が、動作のコツを言葉で説明して覚えてもらう「明示的な学習」と、言葉での説明をあまり使わずに練習のなかで身につけていく「暗示的な学習」の違いです1。
どの練習課題を選ぶかという話とは別に、こうした伝え方の設計が独立した論点になっている、という点がこの領域の面白さです。何を練習するかという枠組みについては、課題指向型アプローチについて解説した記事で扱っています。
身体の外にある目標へ注意を向ける練習の例。合う声かけは一人ひとり異なります。
SECTION 02
研究で分かっていること
結論から言うと、「言葉での説明を減らした練習のほうが良い」と言い切れる段階にはありません。ただし、そこに至るまでの研究の並びには、知っておくと役に立つ情報が含まれています。順に見ていきます。
研究紹介|システマティックレビュー・メタアナリシス(2016年・20研究・脳卒中後337名)
Kalらのレビュー1は、脳卒中後に「暗示的な運動学習」が成り立つのかを検討した20研究(脳卒中後337名、健常者253名)をまとめたものです。発症からの期間は1.9〜88か月と幅がありました。指の順番を押していく課題を非麻痺側の手で行った11研究をまとめると、反応時間が平均69ミリ秒短くなっており(95%信頼区間 45.1〜92.9)、練習による学習が起きていたと解釈できます。一方、麻痺側の手で行った4研究では、まとまった学習の差は示されませんでした(標準化平均差 −0.11、95%信頼区間 −0.45〜0.25)。健常者との比較では、非麻痺側では差がなかった(−7.5ミリ秒、−34.3〜19.2)ものの、両手を使う課題では健常者より不利で(−29.9ミリ秒、−51.7〜−8.0)、皮質下に病変がある方に限ると差が大きくなっていました(−81.4ミリ秒、−123.5〜−39.4)。暗示的な学習と明示的な学習を直接比べた3研究では、両者に差は示されていません(標準化平均差 −0.54、−1.37〜0.29)。
このレビューで大切なのは、著者ら自身の結論です。研究の多くが1群あたり平均14名という小さな規模で、バイアスのリスクも「中〜高」と評価されており、著者らは「暗示的な運動学習が脳卒中後にどの程度可能かは依然として不明であり、臨床での有効性や適否について結論を出すのは時期尚早である」と述べています1。使われた課題のほとんどが指でボタンを押す実験課題で、非麻痺側の手を対象にしていたことも、臨床への当てはめを難しくしている理由として挙げられています1。
研究紹介|観察研究(2023年・英国6施設・89セッション)
Johnsonらの研究2は、英国の6つの脳卒中ユニットで実際のリハビリ場面を録画し、そこで運動学習の原則がどのくらい使われているかを数えたものです。臨床家55名・患者57名の89セッションを分析しています。1セッション中に体を動かしている時間は平均85%(標準偏差19)と長く保たれていた一方で、動作の反復は1分あたり中央値3.7回(四分位範囲2.1〜8.6)でした。1分あたり4回未満のセッションが53%を占め、10回を超えたセッションは20%でした。声かけは1分あたり6.46回で、その内訳は指示が52%、フィードバックが14%、キューや励ましが34%。外的焦点にあたる言い方は、指示のうち13%、フィードバックのうち6%にとどまっていました。手を添えて介助する場面は89セッション中77(87%)にみられ、セラピストが手を触れている時間は全体の31%でした。
つまり実際の現場では、内的焦点の言い方が中心で、反復回数は思われているより少ない、という姿が示されています2。これは良い悪いの話ではなく、安全確保や説明のために必要な場面も多いためです。ただ、「練習量をもう少し確保できないか」「言い方を変えられないか」という検討の余地が残っている、とは言えます。麻痺した手を使う量そのものが減っていく現象については、学習性不使用について解説した記事で扱っています。
研究紹介|スコーピングレビュー(2025年・166研究)
Durairajらのレビュー3は、脳卒中後の上肢に対する課題指向型トレーニングの臨床研究166件(2000年1月〜2024年6月)が、練習条件をどこまで報告しているかを調べたものです。報告されていた割合は、練習のばらつき98%、練習量97%、動作の複雑さ96%、難しさの漸増76%、課題の選び方75%と高い一方で、練習の順序57%、練習の分散のさせ方51%、フィードバックの種類44%、タイミング44%、頻度37%と、後半の項目は半分前後しか記載がありませんでした。著者らは、効果量と関連が指摘されている条件ほど報告が不十分だと指摘しています。
この結果は、読者の方にとっても実は重要です。「どんなフィードバックをどのくらいの頻度で出したのか」が論文に書かれていないと、良い結果が出た研究をそのまま真似することができません。研究の側にも、まだ整理が必要な部分が残っているということです3。
研究紹介|比較実験(2023年・脳卒中後17名)
Arikawaらの研究4は、軽症(NIHSS 5未満)の脳卒中後の方17名(平均63.4±9.4歳、発症後平均31.1か月)と健常者21名に、指の順番を押す課題を「ルールを説明しない条件(暗示的)」と「先にルールを説明する条件(明示的)」の2日に分けて行ってもらい、同時に音を数える課題も課したものです。脳卒中後の群では、暗示的条件の学習スコアが50.1±12.7ミリ秒、明示的条件が14.6±11.8ミリ秒で、暗示的条件のほうが大きい差が出ました(t=2.87、p=0.011、効果量d=0.58)。健常者では両条件に差はありませんでした(40.6±10.0対28.6±9.5)。また、注意の検査(Trail Making Test A)の成績と学習スコアには関連がみられました(rs=−0.514、p=0.042)。
ただし、この研究は17名という小さな規模で、暗示的条件を先に行う順番で固定されており(順序の入れ替えをしていない)、対象者の病巣や発症後の期間(1〜191か月)も大きくばらついていた、と著者らが限界として述べています4。同時に別の課題をこなしながら動くという設定については、二重課題トレーニングの進め方はこちらでも解説しています。
なお、この考え方を実際の病棟リハビリに持ち込む試みも始まっています。発症から2週間以内の方を対象に、指示とフィードバックの頻度を減らし外的焦点を促す進め方を、8つの病棟・51名で通常のリハビリと比べた小規模な試験では、両群のあいだで声かけの頻度と種類に明確な違いをつけられること、この進め方が本人にもセラピストにも受け入れられることが報告されています5。ただしこれは実施可能性を確かめる段階の試験であり、動作の変化そのものを判定できる規模ではありません5。
SECTION 03
エビデンスの質と限界・まだ分かっていないこと
エビデンスの質と限界
この分野は、考え方としては魅力的ですが、根拠の強さはまだ十分ではありません。暗示的な学習を扱ったレビューでは、含まれた研究の多くがバイアスのリスク「中〜高」と評価され、統計的なばらつき(異質性)も大きく、非麻痺側の手を使う実験課題に偏っていました1。著者らは「臨床実践への適否を論じるのは時期尚早」と明記しています1。
比較実験のほうも17名という規模で、条件を行う順番が固定されており、対象は軽症の方に限られています4。病棟での試験は実施可能性の確認を目的とした8病棟・51名の規模であり、動作の変化を判定する設計ではありません5。さらに、研究側の報告の不十分さも問題として残っています。フィードバックの頻度が書かれていた研究は37%にとどまり、練習の分散のさせ方も51%でした3。研究全体では一定の傾向がありますが、対象者や方法が研究ごとに異なるため、すべての方に同じ結果が当てはまるわけではありません。
比較実験のほうも17名という規模で、条件を行う順番が固定されており、対象は軽症の方に限られています4。病棟での試験は実施可能性の確認を目的とした8病棟・51名の規模であり、動作の変化を判定する設計ではありません5。さらに、研究側の報告の不十分さも問題として残っています。フィードバックの頻度が書かれていた研究は37%にとどまり、練習の分散のさせ方も51%でした3。研究全体では一定の傾向がありますが、対象者や方法が研究ごとに異なるため、すべての方に同じ結果が当てはまるわけではありません。
まだ分かっていないこと
・麻痺側の手で暗示的な学習が成り立つかどうかは、まとまった結果が出ていません1。
・「言葉での説明を減らした練習」と「説明を用いた練習」のどちらが良いのかは、直接比べた研究でも差が示されていません1。
・皮質下に病変がある方や、両手を使う課題では、健常者との差が大きくなる傾向がありますが、その意味づけは定まっていません1。
・注意や記憶の状態によって向き不向きが変わる可能性は指摘されていますが、どの検査のどの水準を目安にすべきかは決まっていません4。
・1分あたり何回の反復、1分あたり何回の声かけが最適なのかを示した基準はありません2。
・フィードバックの種類・タイミング・頻度の最適な組み合わせは、研究の記載自体が不足しており、まとめられていません3。
・重度の麻痺がある方、発症直後の方、認知面の課題が大きい方については、検証がほとんど進んでいません1,4。
・長期的にどう影響するかを追った研究は限られています1。
・「言葉での説明を減らした練習」と「説明を用いた練習」のどちらが良いのかは、直接比べた研究でも差が示されていません1。
・皮質下に病変がある方や、両手を使う課題では、健常者との差が大きくなる傾向がありますが、その意味づけは定まっていません1。
・注意や記憶の状態によって向き不向きが変わる可能性は指摘されていますが、どの検査のどの水準を目安にすべきかは決まっていません4。
・1分あたり何回の反復、1分あたり何回の声かけが最適なのかを示した基準はありません2。
・フィードバックの種類・タイミング・頻度の最適な組み合わせは、研究の記載自体が不足しており、まとめられていません3。
・重度の麻痺がある方、発症直後の方、認知面の課題が大きい方については、検証がほとんど進んでいません1,4。
・長期的にどう影響するかを追った研究は限られています1。
SECTION 04
何が期待でき、何は変わりにくいか
現時点で言えることを整理します。まず、期待しやすいのは「練習のやり方を点検する余地がある」という点です。実際の現場を録画した研究では、反復が1分あたり4回未満のセッションが半数を超えていました2。安全確保や説明に時間が必要な場面はありますが、それでも同じ時間のなかで練習の中身を見直せる余地があることを、この数字は示しています。
次に、言葉のかけ方を意識的に変えることは、実際に可能です。病棟での試験では、指示とフィードバックを減らして外的焦点を促す進め方と通常のリハビリのあいだで、声かけの頻度と種類に明確な違いをつけられました5。つまり「教え方を変える」という介入自体は、現場で実行できるということです。
一方で、変わりにくい部分、あるいはまだ確認できていない部分もはっきりしています。教え方を変えることで動作そのものがどれだけ変わるのかは、規模の大きい試験で確かめられていません5。暗示的な学習と明示的な学習を直接比べた研究でも、差は示されていません1。ですので「言葉での説明を減らせば良くなる」という受け取り方は、現時点では行き過ぎだと考えています。動作の質をどこまで求めるかという別の論点については、上肢リハビリの代償動作の考え方について解説した記事で扱っています。
反復回数だけでなく、安全確保、疲労、声かけの量も含めて練習を調整します。
SECTION 05
どんな人に向いているか
研究で対象になってきたのは、比較的軽症で、指示を理解して課題に取り組める方が中心です。比較実験ではNIHSSが5未満の方に限られ、認知機能の検査(MMSE)が24点未満の方や、日常生活に影響する半側空間無視のある方は除かれていました4。暗示的な学習を扱ったレビューでも、発症後1.9〜88か月と幅はあるものの、実験課題に取り組める方が対象でした1。
そのうえで、実践的に検討する価値があるのは、次のような場面だと考えています。ひとつは、動作の細かい指示が多すぎて動きが固くなってしまう方。もうひとつは、練習のとき以外はうまくできるのに、人と話しながら、あるいは何かを持ちながらだと崩れてしまう方です。注意の検査の成績と学習の程度に関連が示されていることから4、注意の状態も併せて確認する意味があります。注意の面については、脳卒中後の注意障害のリハビリについて解説した記事もあわせてご覧ください。
⚠ ただし、忘れてはいけない大切なこと:
「声かけを減らす」ことと「見守りを減らす」ことは別です。転倒のおそれがある動作、立ち上がりや歩行の練習では、安全のための説明と介助を省いてはいけません。実際の現場の研究でも、手を添えた介助は89セッション中77で用いられていました2。また、指示を減らすことで不安が強くなる方もいらっしゃいます。どの伝え方が合うかは個別に異なるため、ご自身やご家族だけで判断せず、担当のリハビリ専門職と相談しながら進めてください。重度の麻痺がある方、発症直後の方については、この領域の研究がほとんど行われていません1,4。
「声かけを減らす」ことと「見守りを減らす」ことは別です。転倒のおそれがある動作、立ち上がりや歩行の練習では、安全のための説明と介助を省いてはいけません。実際の現場の研究でも、手を添えた介助は89セッション中77で用いられていました2。また、指示を減らすことで不安が強くなる方もいらっしゃいます。どの伝え方が合うかは個別に異なるため、ご自身やご家族だけで判断せず、担当のリハビリ専門職と相談しながら進めてください。重度の麻痺がある方、発症直後の方については、この領域の研究がほとんど行われていません1,4。
SECTION 06
反復回数・声かけの量の目安
はじめにお伝えしておくと、「1分あたり何回」という推奨値を示した基準はありません。以下は「研究で観察された実際の数字」であり、目標として設定するものではありません。
動作の反復
英国6施設の観察研究では、1分あたり中央値3.7回(四分位範囲2.1〜8.6)。1分あたり4回未満のセッションが53%、10回を超えたセッションが20%でした2。
体を動かしている時間
1セッションのうち平均85%(標準偏差19、範囲26〜98%)2。
声かけの回数と内訳
1分あたり6.46回。指示52%、フィードバック14%、キューや励まし34%2。
外的焦点の言い方の割合
指示のうち13%、フィードバックのうち6%2。
手を添えた介助
89セッション中77(87%)で使用。セラピストが手を触れている時間は全体の31%2。
英国6施設の観察研究では、1分あたり中央値3.7回(四分位範囲2.1〜8.6)。1分あたり4回未満のセッションが53%、10回を超えたセッションが20%でした2。
体を動かしている時間
1セッションのうち平均85%(標準偏差19、範囲26〜98%)2。
声かけの回数と内訳
1分あたり6.46回。指示52%、フィードバック14%、キューや励まし34%2。
外的焦点の言い方の割合
指示のうち13%、フィードバックのうち6%2。
手を添えた介助
89セッション中77(87%)で使用。セラピストが手を触れている時間は全体の31%2。
ご自宅で練習される場合、この数字をそのまま当てはめるより、「同じ時間のなかで実際に何回動けているか」を一度数えてみることをおすすめします。10回のつもりが5回だった、ということは珍しくありません。ご家族が数える役をされる場合は、声を出して数えるより、あとで伝えるほうが動作に集中しやすい方もいらっしゃいます。
自宅練習は、課題、回数、休憩、安全上の注意を専門職と共有して進めます。
SECTION 07
専門職と一緒に確認したい実践上のポイント
専門職が確認する主な項目
まず、注意や記憶の状態、指示の理解のしやすさを把握します。ここが分からないまま伝え方を変えると、単に分かりにくい練習になってしまうためです。次に、実際の練習場面で1分あたりの反復回数を数え、体を動かしていない時間に何が起きているか(説明、準備、休憩、姿勢の直し)を分けて見ます。そのうえで、声かけの内容を「指示」「フィードバック」「励まし」に分類し、目印やコップなど身体の外側に目標を置ける課題に置き換えられる部分がないかを検討します。安全上、説明と介助を減らせない動作は先に切り分けておきます。最後に、ご自宅で行う内容については、数を数える役をどなたが担うか、声をかけるタイミングをいつにするかまで具体的に決めておきます。
まとめると、運動学習という考え方は「練習の中身と伝え方を点検する枠組み」として役立ちます。実際の現場では反復が1分あたり4回未満のセッションが半数を超え2、外的焦点の言い方は指示の13%にとどまっていました2。一方で、「言葉での説明を減らすほうが良い」と言い切れる根拠はまだなく1、研究側の報告も不十分な部分が残っています3。だからこそ、一般論として決めるのではなく、ご本人の注意の状態と動作を見ながら一緒に調整していくのが現実的だと考えています。進め方に迷うときは、担当のリハビリ専門職にご相談ください。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の治療・診断を推奨したり、医療行為に代わるものではありません。動作の練習には転倒や体調変化のリスクを伴う場合があり、伝え方の工夫は安全のための説明や介助を省いてよいという意味ではありません。実施の前には、必ず担当の医師やリハビリ専門職にご相談ください。紹介した研究データは執筆時点のもので、今後の研究で評価が変わる可能性があります。
運営・利益相反について:本記事は株式会社Journey Rehabが作成し、記事内に当社サービスの案内を含みます。執筆者が文献を確認して作成したもので、外部医師による監修記事ではありません。掲載内容は個別の診断や効果を保証するものではありません。
執筆者:株式会社Journey Rehab 代表取締役|田中 光
保有資格
修士(作業療法学)
作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836(日本作業療法士協会)
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍
作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836(日本作業療法士協会)
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍
経歴
・2016年:初台リハビリテーション病院に入職。脳卒中後遺症の回復期リハに従事
・2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立
・2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中
・2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立
・2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中
研究活動
・第57回日本作業療法学会(2023)ポスター発表
・第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表
・第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表
論文執筆
・田中 光, 石橋 裕, 佐々木 智也, 坂本 泰平. (2025). 本邦における介護予防・日常生活支援総合事業におけるスコーピングレビュー. 日本老年療法学会誌, 4(1). 日本老年療法学会.
Q & A
よくある質問
Q. 「肘を伸ばして」より「コップを取って」と言われたほうが良いのですか?
身体の外側に目標を置く言い方(外的焦点)は運動学習の研究でよく取り上げられますが、脳卒中後の方でどちらが優れているかを直接比べた研究では、差は示されていません1。実際の現場では外的焦点の言い方は指示の13%程度でした2。どちらが合うかは個別に異なるため、担当の専門職と試しながら決めるのが現実的です。
Q. セラピストの説明が多いのは良くないのでしょうか?
そうとは言えません。安全の確保、動作の理解、不安をやわらげるために説明が必要な場面は多くあります。観察研究でも、声かけの半分以上(52%)は指示でした2。気になるときは「今の説明は多いと感じます」と伝えていただければ、調整の相談ができます。
Q. 説明なしで練習したほうが身につくと聞きました。
言葉での説明を使わない「暗示的な学習」は研究されていますが、麻痺側の手ではまとまった学習の差が示されておらず1、明示的な学習と直接比べても差はありませんでした1。レビューの著者ら自身が「臨床への適否を論じるのは時期尚早」と述べています1。
Q. 家での自主練習は何回くらいすればよいですか?
推奨値を示した基準はありません。参考として、実際のリハビリ場面では1分あたり中央値3.7回の反復が観察されています2。回数を決めるより、まず「今どのくらい動けているか」を数えてみて、そこから担当の専門職と一緒に調整していく方法をおすすめします。
Q. 家族はどう声をかけたらよいですか?
動作の細部を細かく指摘するより、目標物や仕上がりを伝える形(「あの線まで」「コップを置いてみましょう」)のほうが本人が動作に集中しやすい場合があります。ただし研究上の優劣は決まっていません1。まずは本人が「言われて分かりやすい」と感じる言い方を確認するのが安全です。
Q. 注意力が落ちていると練習の身につき方が変わりますか?
17名を対象とした研究では、注意の検査(Trail Making Test A)の成績と学習の程度に関連がみられました(rs=−0.514、p=0.042)4。ただし小規模な研究であり、どの検査のどの水準を目安にすべきかは決まっていません4。注意の評価を含めて相談されるとよいと思います。
Q. 発症してすぐの時期でも、この考え方は使えますか?
発症から2週間以内の方を対象に、指示とフィードバックを減らす進め方を8病棟・51名で試した報告があり、実施できること・受け入れられることは示されています5。ただし動作の変化を判定できる規模ではありません5。この時期は安全確保が優先されるため、必ず担当の医師とリハビリ専門職の判断に従ってください。
REFERENCES
参考文献
1. Kal E, Winters M, van der Kamp J, Houdijk H, Groet E, van Bennekom C, et al. Is Implicit Motor Learning Preserved after Stroke? A Systematic Review with Meta-Analysis. PLoS One. 2016;11(12):e0166376. PMID: 27992442.
2. Johnson L, Burridge J, Ewings S, Westcott E, Gayton M, Demain S. Principles into Practice: An Observational Study of Physiotherapists use of Motor Learning Principles in Stroke Rehabilitation. Physiotherapy. 2023;118:20-30. PMID: 36306569.
3. Durairaj S, Sardesai S, Solomon JM, Levin MF. Motor learning principles reported in stroke trials of upper limb task-oriented training: a scoping review. BMJ Open. 2025;15(11):e098599. PMID: 41238370.
4. Arikawa E, Kubota M, Haraguchi T, Takata M, Natsugoe S. Implicit Motor Learning Strategies Benefit Dual-Task Performance in Patients with Stroke. Medicina (Kaunas). 2023;59(9):1673. PMID: 37763792.
5. Johnson L, Burridge J, Ewings S, Demain S. A pilot cluster randomised controlled trial, of an IMPlicit learning approach versus standard care, on recovery of mobility following stroke (IMPS). Clin Rehabil. 2024;38(10):1346-1361. PMID: 39105429.
2. Johnson L, Burridge J, Ewings S, Westcott E, Gayton M, Demain S. Principles into Practice: An Observational Study of Physiotherapists use of Motor Learning Principles in Stroke Rehabilitation. Physiotherapy. 2023;118:20-30. PMID: 36306569.
3. Durairaj S, Sardesai S, Solomon JM, Levin MF. Motor learning principles reported in stroke trials of upper limb task-oriented training: a scoping review. BMJ Open. 2025;15(11):e098599. PMID: 41238370.
4. Arikawa E, Kubota M, Haraguchi T, Takata M, Natsugoe S. Implicit Motor Learning Strategies Benefit Dual-Task Performance in Patients with Stroke. Medicina (Kaunas). 2023;59(9):1673. PMID: 37763792.
5. Johnson L, Burridge J, Ewings S, Demain S. A pilot cluster randomised controlled trial, of an IMPlicit learning approach versus standard care, on recovery of mobility following stroke (IMPS). Clin Rehabil. 2024;38(10):1346-1361. PMID: 39105429.
