はじめに
「手は少し動くようになってきたけど、家ではうまく使えない」そんなお悩みをお持ちの方へ。
この記事では、**課題指向型アプローチ(Task-Oriented Training)**について、「どんなリハビリなのか?」「本当に効果があるのか?」を、最新の科学的根拠を交えてわかりやすく解説していきます。
課題指向型アプローチとは?
課題指向型アプローチとは、実際の日常生活に近い“目的のある動き”を繰り返すことで、
動作の改善と機能の回復を目指すリハビリ方法です。
たとえば、
- 洋服をハンガーにかける
- お箸で豆をつかむ
- コップで水を飲む
といった“生活動作そのもの”をリハビリの中で練習していきます。
この方法は、「脳が再び動きを学習する力(神経可塑性)」を高めるとされ、多くのガイドラインや研究でも効果が認められています(Winstein et al., 2016. Stroke)。
課題指向型アプローチの効果(上肢編)
国内外のガイドラインや複数の研究において、課題指向型アプローチは脳卒中後の上肢機能に効果があるとされています。
- **FMA(Fugl-Meyer Assessment)**:
上肢の関節の動きや協調性を評価する指標。
Arya et al.(2012)は、課題指向型訓練を8週間実施したグループが、FMAにおいて有意な改善を示したことを報告しています。
- **ARAT(Action Research Arm Test)**:
課題ベースの上肢機能評価。
同様にAryaらの研究では、ARATスコアも対照群と比較して有意に改善しました。
- **WMFT(Wolf Motor Function Test)**:
時間や動作精度を用いて評価。
Thant et al.(2019)は、TOT群がWMFTスコアで従来リハビリ群より優れていたことを示しました。
- **MAL(Motor Activity Log)**:
実生活での使用頻度や質を評価する指標。
AryaらのRCTでは、MALスコアでも課題指向型訓練群が対照群より有意に高い改善を示しました
> 課題指向型アプローチは「手が使えるようになった」「家でできることが増えた」といった実感につながりやすいリハビリ法といえます。
課題指向型アプローチの方法(例)
Journey Rehabでは、次のような個別課題を設定して取り組んでいます:
【例1】食事動作の練習
- 箸を使う、スプーンですくう、食器を持つ など
- 姿勢や使う手の位置も細かく調整します
【例2】洗濯物を干す動作の練習
- 手を上に伸ばす
- ピンチをつかんで開く
- 腕を使ってバランスを保つ
【例3】ハンガー操作や書字などの精緻動作
- 実際の動作に近づけて、「できた!」を積み重ねる
また、必要に応じて電気刺激療法やCI療法などの手法も併用することで、より効果的な訓練計画を立てています。
(Winstein et al., 2016. Stroke)
よくある質問
Q. どんな人が対象ですか?
→ 脳卒中後の上肢麻痺がある方で、
- 「動かせるけど日常で使いにくい」
- 「自主トレだけでは限界を感じている」
という方に特におすすめです。
気になる方は無料体験リハビリへ
「課題指向型アプローチって自分に合うかな?」
そう思われた方は、ぜひ一度ご相談ください。
国家資格を持つセラピストが、
あなたの現在の状態に応じてオーダーメイドの提案をさせていただきます。
引用文献
Winstein CJ, et al. (2016). Guidelines for Adult Stroke Rehabilitation and Recovery. *Stroke*, 47(6), e98–e169.
Arya KN, et al. (2012). Meaningful task-specific training in chronic stroke subjects: a randomized controlled trial. *Top Stroke Rehabil*, 19(3), 193–203.
Thant KZ, et al. (2019). Task-oriented training on upper limb recovery in patients with subacute stroke: A randomized controlled trial. *J Phys Ther Sci*, 31(10), 823–828.
▪️執筆者情報
**株式会社Journey Rehab 代表|田中 光**
作業療法士(国家資格)/認定作業療法士(日本作業療法士協会)
東京都立大学大学院人間健康科学研究科 作業療法学分野 博士前期課程
▪️フリース
・2016年:初台リハビリテーション病院入職。脳卒中後遺症の回復期リハに従事
・2021年:自費訪問リハビリ分野に活動を広げ、2024年にフリーランスとして独立
・2025年:株式会社Journey Rehab設立。 千葉県を中心に訪問型の自費リハビリを提供中
▪️研究活動
・第57回日本作業療法学会(2023)ポスター発表
・第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表