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田中 光(作業療法士)|株式会社Journey Rehab 代表
認定作業療法士/修士(作業療法学)
東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍
初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立
東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍
初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立
脳卒中後の手の麻痺の見通しはどこまで予測できる?予測ツールの研究と限界を正直に解説
内容確認日:2026年7月30日
「この手はどこまで動くようになるのでしょうか」——これは、私がもっとも多く受ける質問です。そして、もっとも答えるのが難しい質問でもあります。近年、発症から数日のうちに肩と指の動きを診て、3か月後の手の使い方をおおまかに見通す「予測ツール」が研究されてきました。ただし、当たり方は予測の区分によって大きく違い、とくに「中間の見通し」の当たりにくさが繰り返し報告されています。この記事では、作業療法士の立場から、こうしたツールで何がどこまで分かるのか、そして何が分からないのかを正直に整理します。
この記事の内容
SECTION 01
上肢の予後予測とは何をするのか
脳卒中後の手や腕の見通しを立てる研究では、「発症からごく早い時期に測れるいくつかの項目」から、「数か月後の手の使い方」をおおまかな区分として推定します。もっとも広く検討されてきたのが、肩を上げる力と指を伸ばす力という2つの動きです。この2つを合わせた点数(0〜10点)が一定以上あるかどうかで見通しが分かれる、という考え方が中心になっています1。
たとえばニュージーランドで検討されている手順では、発症1〜3日のあいだにこの点数を測り、5点以上であれば年齢を踏まえて上位2区分のいずれかを推定します。5点未満の場合は、発症3〜7日のあいだに経頭蓋磁気刺激(TMS)という装置で脳から筋への信号(運動誘発電位)が出るかどうかを確認し、出る場合は中間の区分、出ない場合は3日目の重症度(NIHSS)で区分を決めます1。3か月後の手の使い方は、物をつかむ・持ち上げるなどの課題を点数化する検査(ARAT、0〜57点)で確認し、「非常に良好(50〜57点)」「良好(34〜49点)」「限定的(13〜33点)」「乏しい(0〜12点)」の4区分に分けます1。
別の研究グループが検討している手順は、もっと簡素です。発症からごく早い時期に「指を伸ばす動きがわずかでもあるか」と「肩を上げる力が一定以上あるか」の2項目だけを見て、3か月後に手をある程度使える状態になるかを推定します2。装置を使わずに済むのが特徴です。TMSという装置そのものについては、脳卒中後のrTMSについて解説した記事で扱っています。
発症早期の肩と手指の動きは見通しを考える材料の一つですが、将来を断定するものではありません。
SECTION 02
研究で分かっていること
結論から言うと、「かなり良くなる」と「ほとんど動きが戻らない」という両端の見通しは比較的よく当たり、中間の見通しは当たりにくい——これが研究から一貫して読み取れる姿です。順に見ていきます。
研究紹介|前向き観察研究(2026年・83名・通常診療のなかでの検証)
Jordanらの研究1は、ニュージーランドの病院で、研究者ではなく実際の担当チームが日々の診療のなかで予測を行い、3か月後の結果とどれだけ一致したかを調べたものです。100名が登録され、3か月時点のデータが得られた83名を分析しています。年齢の中央値は75歳(範囲39〜99)、84%が初回の脳卒中でした。
全体の的中率は66%(95%信頼区間 55〜76%)、83名中55名でした。区分別に見ると、「非常に良好」の予測は80%(68〜88%)、「乏しい」の予測は100%(66〜100%)と高い一方で、「良好」の予測は36%(24〜50%)にとどまりました。装置を使わずに済んだ方(肩と指の点数が5点以上)では78%(67〜89%)でしたが、装置で信号を確認して「良好」と予測した方では27%(10〜48%)でした。
さらに著者らは、その「良好」と予測された21名について、指を伸ばす動きが少しでもあるかどうかで結果が分かれることを見いだしています。指を伸ばす点数が0より大きかった7名は全員が良い結果に至った一方、0だった14名で良い結果に至ったのは2名(14%)だけでした。
全体の的中率は66%(95%信頼区間 55〜76%)、83名中55名でした。区分別に見ると、「非常に良好」の予測は80%(68〜88%)、「乏しい」の予測は100%(66〜100%)と高い一方で、「良好」の予測は36%(24〜50%)にとどまりました。装置を使わずに済んだ方(肩と指の点数が5点以上)では78%(67〜89%)でしたが、装置で信号を確認して「良好」と予測した方では27%(10〜48%)でした。
さらに著者らは、その「良好」と予測された21名について、指を伸ばす動きが少しでもあるかどうかで結果が分かれることを見いだしています。指を伸ばす点数が0より大きかった7名は全員が良い結果に至った一方、0だった14名で良い結果に至ったのは2名(14%)だけでした。
この研究で重要なのは、研究室での成績ではなく、通常の診療のなかで実際にどうだったかを示している点です。ただし、結果を評価する担当者が予測内容を知らされていなかったわけではなく、「限定的」と予測された方が2名しかいなかったため、その区分は評価できていません1。装置を使う判断が絡む部分の分析も21名という小さな規模です1。
研究紹介|外部検証研究(2022年・スイスの2コホート・計124名)
Veerbeekらの研究2は、オランダで作られた簡素な予測モデル(指を伸ばす動きの有無と、肩を上げる力の水準の2項目だけを使うもの)を、スイスの別の2つのコホート(39名、年齢中央値74歳/85名、同69歳)で検証したものです。3か月後に手をある程度使える状態(ARAT 10点以上)になるかを判別する成績は、発症1日目でAUC 0.78(95%信頼区間 0.61〜0.95)、8日目で0.96(0.90〜1.00)、別コホートでは3日目で0.96(0.93〜0.99)、9日目で0.89(0.80〜0.98)でした。感度は0.89〜1.00と高い一方で、特異度は0.40〜0.70にとどまりました。より高い水準(ARAT 32点以上)を判別する使い方に広げた場合、AUCは0.82〜0.95でしたが、モデルは結果を高めに見積もる傾向がありました。
ここで押さえておきたいのは「感度は高いが特異度は低い」という組み合わせの意味です。「良くなる方を見落としにくい」代わりに、「良くならないと判定した方のなかに、実際には良くなる方が混ざりやすい」ということです。著者ら自身も、発症のごく早い時期にこのモデルを当てはめる際には慎重さが必要だと明記しています2。
研究紹介|システマティックレビュー・メタ回帰(2021年・27論文・4,433名)
Wolfらのレビュー3は、脳卒中後1年以内の上肢の評価尺度が、時間とともにどう変化するかをまとめたものです。100名以上の大規模研究を中心に27論文・4,433名分の点数を集め、9つの評価尺度(ARAT、ボックス&ブロックテスト、Fugl-Meyer評価、握力など)を比較しました。時間に伴う変化がはっきり捉えられたのはARAT、ボックス&ブロックテスト、Fugl-Meyer評価、握力でした。バイアスのリスクは全体として「低〜中」と評価されています。一方で、発症6か月以降のデータが乏しいこと、研究ごとに測定の時期がそろっていないこと、比較的軽症の方に偏っている可能性が限界として挙げられています。
研究紹介|個別データを統合したレビュー(2017年・38論文・重度の上肢麻痺372名)
Haywardらの研究4は、重度の上肢麻痺がある方に絞って、38論文から372名の個別データを集めたものです(対象となりうる433名の86%)。平均年齢58.6歳(標準偏差12.8)、51%が発症6か月以降、Fugl-Meyer評価の腕の点数は平均13.0(標準偏差10.0、範囲0〜30)でした。検討された指標は、経頭蓋磁気刺激による運動誘発電位(195名)、病巣の大きさ・場所・左右(316〜336名)、皮質脊髄路の左右差(37名)、機能的MRI(17名)です。結果として、より良い結果と関連していたのは運動誘発電位が出ているかどうかだけ(p=0.02)で、病巣の大きさ・場所・左右、皮質脊髄路の左右差には関連が示されませんでした。なお経過を追った研究は1件しかなく、回復の推移そのものは分析できていません。
つまり、重度の麻痺がある方について「画像で病巣を見れば見通しが分かる」とは言えない、というのがこの研究の示すところです4。重度の麻痺がある場合の考え方については、手のリハビリにおける電気刺激(NMES)について解説した記事もあわせてご覧ください。
SECTION 03
エビデンスの質と限界・まだ分かっていないこと
エビデンスの質と限界
ここは、いちばん正直にお伝えしたい部分です。通常診療のなかで検証した研究の全体的な的中率は66%(55〜76%)で、3人に1人はずれています1。しかも外れ方は一様ではなく、中間の区分(「良好」)の的中率は36%(24〜50%)でした1。この研究では結果を評価する担当者が予測内容を知らされていなかったわけではなく、「限定的」と予測された方は2名しかいなかったため評価できていません1。
簡素なモデルの外部検証も、39名・85名という小さなコホートで行われており、著者らは誤差の幅が大きい理由として規模を挙げています2。対象は初回発症で神経症状が軽〜中等度の方が中心で、脳卒中前から日常生活に介助が必要だった方、再発の方、脳出血の方への当てはめには限界があると明記されています2。
評価尺度そのものについても、発症6か月以降のデータが乏しく、研究ごとに測定時期がそろっていません3。重度の麻痺がある方については、指標ごとの人数が少なく、認知面や感覚の状態を考慮できていないことが限界として挙げられています4。研究全体では一定の傾向がありますが、対象者や測定方法が研究ごとに異なるため、すべての方に同じ結果が当てはまるわけではありません。
簡素なモデルの外部検証も、39名・85名という小さなコホートで行われており、著者らは誤差の幅が大きい理由として規模を挙げています2。対象は初回発症で神経症状が軽〜中等度の方が中心で、脳卒中前から日常生活に介助が必要だった方、再発の方、脳出血の方への当てはめには限界があると明記されています2。
評価尺度そのものについても、発症6か月以降のデータが乏しく、研究ごとに測定時期がそろっていません3。重度の麻痺がある方については、指標ごとの人数が少なく、認知面や感覚の状態を考慮できていないことが限界として挙げられています4。研究全体では一定の傾向がありますが、対象者や測定方法が研究ごとに異なるため、すべての方に同じ結果が当てはまるわけではありません。
まだ分かっていないこと
・中間の見通し(「良好」の区分)を精度よく見分ける方法は確立していません1。
・脳卒中前から介助が必要だった方、再発の方、脳出血の方に、これらのモデルがそのまま当てはまるかは検証されていません2。
・発症6か月以降に上肢の点数がどう推移するかを示すデータは乏しいままです3。
・重度の麻痺がある方について、画像や皮質脊髄路の指標から見通しを立てられるかは示されていません4。
・感覚障害や認知面の状態が見通しにどう関わるかは、十分に検討されていません4。
・予測を伝えることが、その後のリハビリの内容や結果にどう影響するかは分かっていません1。
・日本の医療体制・リハビリの提供量のもとで同じ成績になるかは、検証が必要です1,2。
・予測の区分と、生活のなかで実際に手を使えるかどうかが、どこまで対応するのかは別の問題として残っています3。
・脳卒中前から介助が必要だった方、再発の方、脳出血の方に、これらのモデルがそのまま当てはまるかは検証されていません2。
・発症6か月以降に上肢の点数がどう推移するかを示すデータは乏しいままです3。
・重度の麻痺がある方について、画像や皮質脊髄路の指標から見通しを立てられるかは示されていません4。
・感覚障害や認知面の状態が見通しにどう関わるかは、十分に検討されていません4。
・予測を伝えることが、その後のリハビリの内容や結果にどう影響するかは分かっていません1。
・日本の医療体制・リハビリの提供量のもとで同じ成績になるかは、検証が必要です1,2。
・予測の区分と、生活のなかで実際に手を使えるかどうかが、どこまで対応するのかは別の問題として残っています3。
SECTION 04
何が分かり、何は分からないか
分かることを先に挙げます。発症からごく早い時期に肩を上げる動きと指を伸ばす動きを診ておく意味は大きい、という点は複数の研究で共通しています1,2。とくに指を伸ばす動きがわずかでもあるかどうかは、中間の見通しと判定された方のなかでも結果を分ける要素として報告されました1。また、重度の麻痺がある方では、脳から筋への信号が出ているかどうかが唯一関連していた指標でした4。
分からないことも、はっきりしています。「かなり良くなる」「ほとんど動きが戻らない」という両端は当たりやすい一方で、その中間の見通しは3回に1回程度しか当たりません1。そして多くの方は、実はこの中間に位置します。ですので「予測が出たからその通りになる」とは考えないほうがよく、私自身も、ご本人やご家族に見通しの話をするときは必ずこの点を添えています。
もうひとつ大切なのは、予測は「どれだけリハビリをすべきか」を決めるものではないという点です。予測を伝えることがその後のリハビリの内容や結果にどう影響するかは、まだ分かっていません1。目標をどう決めるかについては、本人と一緒に決める目標設定について解説した記事で扱っています。また、練習量と在宅での取り組みについては、上肢のリハビリ量と自主トレについて解説した記事もご覧ください。
同じ方法で経過を確認すると、予測区分だけでは分からない変化も話し合いやすくなります。
SECTION 05
どんな人に関係する話か
研究の対象になってきたのは、主に発症からごく早い時期(数日以内)に評価を受けられた方です。通常診療での検証研究では年齢中央値75歳(範囲39〜99)、84%が初回の脳卒中で、脳梗塞と脳出血の両方が含まれていました1。外部検証研究では初回発症で神経症状が軽〜中等度の方が中心で、血栓回収療法を受けた方が3〜4割含まれていました2。
一方で、すでに発症から時間が経っている方にとっても、無関係な話ではありません。重度の麻痺がある方を集めた研究では、対象の51%が発症6か月以降の方でした4。ただし、その研究で経過を追えた報告は1件しかなく、時間が経ってからの推移は分析されていません4。「今から予測ツールを使えば見通しが分かる」という性質のものではない、とご理解いただくのが正確です。
⚠ ただし、忘れてはいけない大切なこと:
見通しの話は、伝え方によってご本人の気持ちを大きく左右します。的中率が全体で66%、中間の区分では36%という数字を踏まえれば1、「もう良くならない」と受け取ってしまうのは正確ではありません。逆に「必ず良くなる」と保証できるものでもありません。予測の結果をどう受け取るかで迷われたときは、必ず担当の医師・リハビリ専門職に確認してください。経頭蓋磁気刺激(TMS)は医療機関で医師の管理のもとに行われる検査であり、ご自身で受けるものを選ぶ性質のものではありません1。また、これらの予測はリハビリを続けるかどうかの判断材料ではありません。
見通しの話は、伝え方によってご本人の気持ちを大きく左右します。的中率が全体で66%、中間の区分では36%という数字を踏まえれば1、「もう良くならない」と受け取ってしまうのは正確ではありません。逆に「必ず良くなる」と保証できるものでもありません。予測の結果をどう受け取るかで迷われたときは、必ず担当の医師・リハビリ専門職に確認してください。経頭蓋磁気刺激(TMS)は医療機関で医師の管理のもとに行われる検査であり、ご自身で受けるものを選ぶ性質のものではありません1。また、これらの予測はリハビリを続けるかどうかの判断材料ではありません。
SECTION 06
評価の時期と間隔の目安
以下は「研究で用いられた時期」であり、目標や推奨として示すものではありません。
肩と指の動きの評価
発症1〜3日のあいだに実施(0〜10点)1。
脳から筋への信号の確認(TMS)
肩と指の点数が5点未満の場合に、発症3〜7日のあいだに実施1。
簡素なモデルの評価時期
研究では発症1日・3日・8日・9日の各時点で検証。8〜9日目のほうが判別成績は高い傾向でした(AUC 0.89〜0.96)2。
結果の確認時期
発症3か月(90日)時点の手の使い方(ARAT)1,2。
経過を追う評価尺度
ARAT、ボックス&ブロックテスト、Fugl-Meyer評価、握力は、1年以内の変化を捉えやすいと報告されています3。ただし6か月以降のデータは乏しいままです3。
発症1〜3日のあいだに実施(0〜10点)1。
脳から筋への信号の確認(TMS)
肩と指の点数が5点未満の場合に、発症3〜7日のあいだに実施1。
簡素なモデルの評価時期
研究では発症1日・3日・8日・9日の各時点で検証。8〜9日目のほうが判別成績は高い傾向でした(AUC 0.89〜0.96)2。
結果の確認時期
発症3か月(90日)時点の手の使い方(ARAT)1,2。
経過を追う評価尺度
ARAT、ボックス&ブロックテスト、Fugl-Meyer評価、握力は、1年以内の変化を捉えやすいと報告されています3。ただし6か月以降のデータは乏しいままです3。
実務的には、発症直後に測れなかった場合でも、いま時点での肩と指の動き、握力、物を扱う課題の成績を記録しておくことに意味があります。数値で残しておくと、数か月後に振り返ったときに「変わったのか、変わっていないのか」を判断できるからです。
手の機能は検査得点だけでなく、実際の生活動作でどう使えるかも継続して確認します。
SECTION 07
専門職と一緒に確認したい実践上のポイント
専門職が確認する主な項目
まず、これまでにどのような見通しの説明を受けているか、その言葉をどう受け取っているかを伺います。ここがずれたままだと、以降の話がかみ合いません。次に、肩を上げる動き、指を伸ばす動き、握力、物を扱う課題の成績を実際に測り、数値として記録します。指を伸ばす動きがわずかでもあるかどうかは、とくに丁寧に確認します1。あわせて、感覚、痛み、腫れ、痙縮の状態を確認します。これらは見通しの研究では十分に扱われていない一方で4、日々の使いやすさには直結するためです。そのうえで、手を「動かす練習の対象」として扱うのか、「生活のなかで支えに使う」ことを重視するのかを一緒に整理し、目標を具体的な生活場面の言葉に置き換えます。最後に、次に測り直す時期を決めておきます。
まとめると、発症早期の肩と指の動きから3か月後の見通しをおおまかに推定する方法は研究が進んでいますが、通常診療での的中率は全体で66%、中間の区分では36%でした1。感度は高い一方で特異度は0.40〜0.70にとどまり2、重度の麻痺がある方では画像や皮質脊髄路の指標から見通しを立てられていません4。ですので、予測は「見通しの参考」であって「結論」ではないと考えるのが妥当です。見通しについて不安があるときは、まず担当の医師・リハビリ専門職にご相談ください。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の治療・診断を推奨したり、医療行為に代わるものではありません。ここで紹介した予測ツールは医療機関で専門職が用いるものであり、個人が自己判断で見通しを決めるためのものではありません。経頭蓋磁気刺激(TMS)は医師の管理のもとで実施される検査です。実施や解釈については、必ず担当の医師やリハビリ専門職にご相談ください。紹介した研究データは執筆時点のもので、今後の研究で評価が変わる可能性があります。
運営・利益相反について:本記事は株式会社Journey Rehabが作成し、記事内に当社サービスの案内を含みます。執筆者が文献を確認して作成したもので、外部医師による監修記事ではありません。掲載内容は個別の診断や予後、効果を保証するものではありません。
Journey Rehabの訪問自費リハビリについて知りたい方へ
今の手や腕の状態を一緒に確認しながら、生活のなかでの目標と進め方を考えます。
執筆者:株式会社Journey Rehab 代表取締役|田中 光
保有資格
修士(作業療法学)
作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836(日本作業療法士協会)
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍
作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836(日本作業療法士協会)
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍
経歴
・2016年:初台リハビリテーション病院に入職。脳卒中後遺症の回復期リハに従事
・2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立
・2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中
・2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立
・2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中
研究活動
・第57回日本作業療法学会(2023)ポスター発表
・第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表
・第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表
論文執筆
・田中 光, 石橋 裕, 佐々木 智也, 坂本 泰平. (2025). 本邦における介護予防・日常生活支援総合事業におけるスコーピングレビュー. 日本老年療法学会誌, 4(1). 日本老年療法学会.
Q & A
よくある質問
Q. この手はどこまで動くようになりますか?
ひとりひとりについて言い当てることはできません。発症早期の肩と指の動きから3か月後をおおまかに推定する方法は研究されていますが、通常診療での的中率は全体で66%(95%信頼区間 55〜76%)でした1。とくに中間の区分では36%(24〜50%)で、3回に2回は外れています1。参考にはなりますが、断定できるものではありません。
Q. 指がわずかでも伸びると違うのですか?
中間の区分と予測された21名を詳しく見た報告では、指を伸ばす点数が0より大きかった7名は全員が良い結果に至り、0だった14名では2名(14%)でした1。ただし21名という小さな規模の分析であり、それだけで見通しが決まるわけではありません1。
Q. MRIやCTを見れば見通しは分かりますか?
重度の上肢麻痺がある372名の個別データを統合した研究では、病巣の大きさ・場所・左右、皮質脊髄路の左右差のいずれにも、結果との関連は示されませんでした4。関連していたのは、脳から筋への信号(運動誘発電位)が出ているかどうかだけでした(p=0.02)4。
Q. 発症から半年以上たっています。今から予測できますか?
ここで紹介した予測は、発症から数日以内の評価を前提にしています1,2。また、発症6か月以降の推移を示すデータ自体が乏しいままです3。時間が経っている場合は、今の状態を数値で記録し、数か月後に測り直して比べるという進め方のほうが現実的だと思います。
Q. 「見通しが厳しい」と言われました。リハビリはやめたほうがよいのでしょうか?
そうは考えていません。これらの予測は、リハビリを続けるかどうかを決めるための道具ではありません。予測を伝えることがその後の内容や結果にどう影響するかも、まだ分かっていません1。手が動くこと以外にも、痛みや腫れの管理、支えとして使うこと、生活動作の工夫など、取り組める部分があります。担当の専門職にご相談ください。
Q. 経頭蓋磁気刺激(TMS)は必ず受けたほうがよいですか?
研究の手順では、肩と指の点数が5点未満だった場合に発症3〜7日のあいだに行うものとされています1。医療機関で医師の管理のもとに行われる検査であり、ご自身で選ぶ性質のものではありません。実施の有無は担当の医師にご確認ください。
Q. 日本でも同じ結果になりますか?
ここで紹介した検証はニュージーランドとスイスのコホートで行われたものです1,2。医療体制やリハビリの提供量が異なるため、日本で同じ成績になるかは検証が必要です。また、脳卒中前から介助が必要だった方、再発の方、脳出血の方への当てはめには限界があると明記されています2。
Q. どの検査で経過を追うとよいですか?
4,433名分の点数をまとめたレビューでは、ARAT、ボックス&ブロックテスト、Fugl-Meyer評価、握力が1年以内の変化を捉えやすいと報告されています3。ただし研究ごとに測定時期がそろっておらず、6か月以降のデータは乏しいままです3。担当の専門職と、測る項目と時期を決めておくとよいと思います。
REFERENCES
参考文献
1. Jordan H, Norrie O, Stinear CM. The Accuracy of the PREP2 Prediction Tool for Upper Limb Outcomes After Stroke as Part of Routine Clinical Care. Neurorehabil Neural Repair. 2026;40(3):235-245. PMID: 41574464.
2. Veerbeek JM, Pohl J, Luft AR, Held JPO. External validation and extension of the Early Prediction of Functional Outcome after Stroke (EPOS) prediction model for upper limb outcome 3 months after stroke. PLoS One. 2022;17(8):e0272777. PMID: 35939514.
3. Wolf S, Gerloff C, Backhaus W. Predictive Value of Upper Extremity Outcome Measures After Stroke-A Systematic Review and Metaregression Analysis. Front Neurol. 2021;12:675255. PMID: 34177780.
4. Hayward KS, Schmidt J, Lohse KR, Peters S, Bernhardt J, Lannin NA, et al. Are we armed with the right data? Pooled individual data review of biomarkers in people with severe upper limb impairment after stroke. Neuroimage Clin. 2017;13:310-319. PMID: 28053857.
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4. Hayward KS, Schmidt J, Lohse KR, Peters S, Bernhardt J, Lannin NA, et al. Are we armed with the right data? Pooled individual data review of biomarkers in people with severe upper limb impairment after stroke. Neuroimage Clin. 2017;13:310-319. PMID: 28053857.
