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田中 光(作業療法士)|株式会社Journey Rehab 代表
認定作業療法士/修士(作業療法学)
東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍
初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立
東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍
初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立
パーキンソン病の作業療法(OT)とは?日常生活動作への研究と限界を正直に解説
内容確認日:2026年7月23日
「パーキンソン病で、着替えや家事がやりにくくなってきた。作業療法(OT)を受けると生活動作は変わるの?」——ご本人やご家族からよくいただく質問です。結論から正直にお伝えすると、自宅で行う個別の作業療法によって、ご本人が感じる「日常生活のやりやすさ」に良い方向の変化が報告されています。一方で、作業療法全体の研究の数はまだ限られており、確立された結論とまでは言えません。この記事では、作業療法士の立場から、研究で分かっていることと、まだ分かっていないことを整理します。
この記事の内容
SECTION 01
パーキンソン病の作業療法とは何か
作業療法(Occupational Therapy:OT)は、着替え・食事・家事・仕事・趣味といった「その方が生活の中で行う活動(作業)」に焦点を当てるリハビリです。パーキンソン病では、動作がゆっくりになる、細かい手作業がやりにくくなる、動き出しに時間がかかるなどの変化から、日常生活のやりにくさが生じることがあります。
作業療法では、動作のやり方を工夫したり、道具や環境を調整したり、外的なきっかけ(合図)を使ったりして、生活動作を続けやすくすることをねらいます。目標を本人と一緒に決めるプロセスを重視するのも特徴で、この考え方は脳卒中後の協働的目標設定について解説した記事とも共通します。

SECTION 02
研究で分かっていること
これまでで最も規模の大きい研究のひとつが、オランダで行われた「OTiP試験」と呼ばれるランダム化比較試験1です。自宅で行う個別の作業療法を受けた群で、ご本人が感じる日常生活のやりやすさに良い方向の変化が示されました。
研究紹介|ランダム化比較試験(2014年・191名・多施設)
Sturkenboomらの試験1では、日常生活に困りごとのあるパーキンソン病の方191名を、10週間の在宅・個別作業療法を受ける群と、作業療法を受けない通常ケアの群に分けました。3か月後、ご本人が評価する「日常生活の遂行度」(COPMという尺度、1〜10点)は、作業療法群で対照群より高く(補正後の平均差1.2点、95%信頼区間 0.8〜1.6、統計的に有意)、介入に関連した有害事象はありませんでした。ただし、これは「ご本人の主観的な評価」での差です。また対象は自宅で暮らし、MMSE 24点以上の方で、比較的軽症の参加者が多かったため、重症の方や認知面の変化が大きい方に同じ結果が当てはまるとは限りません。
一方で、作業療法全体を見わたすと、研究の数はまだ多くありません。作業療法をまとめたシステマティックレビュー(コクランレビュー)2では、対象になったランダム化比較試験は2件(合計84名)にとどまり、研究の質にも弱点があったため、「作業療法の効果を支持することも否定することもできない(=結論を出すには証拠が不十分)」とされています。これは「効果がない」という意味ではなく、「質の高い研究がまだ足りない」という意味です。生活動作の工夫という点では、住まいの環境調整も関わりが深く、脳卒中後の住宅改修と環境調整について解説した記事も参考になります。
SECTION 03
エビデンスの質と限界・まだ分かっていないこと
エビデンスの質と限界
作業療法は「その方の生活に合わせる」個別性の高い関わりのため、研究として比較しにくい難しさがあります。OTiP試験1は規模が大きい一方、参加者を盲検化できず、対照群に同じ量の注意を向ける介入がなかったため、作業療法そのものの作用と人から注意を向けられる影響を分けられません。軽症者が多く、オランダの専門職ネットワーク内で行われた点も一般化の限界です。また、コクランレビュー2が示すように、作業療法全体では質の高い研究の数がまだ限られています。すべての方に同じ結果が当てはまるわけではありません。
まだ分かっていないこと
・どのような特徴の方が作業療法から最も恩恵を受けやすいのかは、まだ十分に確立していません1。
・最適な回数・頻度・期間ははっきり決まっていません。
・重症度や病期、認知面の状態による効果の違いは、十分に検証されていません。
・主観的な生活のやりやすさだけでなく、客観的な動作能力や長期的な効果がどうなるかは、さらなる研究が必要です1,2。
・最適な回数・頻度・期間ははっきり決まっていません。
・重症度や病期、認知面の状態による効果の違いは、十分に検証されていません。
・主観的な生活のやりやすさだけでなく、客観的な動作能力や長期的な効果がどうなるかは、さらなる研究が必要です1,2。

SECTION 04
何が期待でき、何は変わりにくいか
正直に整理します。期待しやすいのは、ご本人が「この動作をやりやすくなった」と感じる、生活の遂行度・満足度の部分です1。動作のやり方の工夫や環境調整によって、困っていた具体的な生活場面(着替え、調理、書字など)に手応えが出やすいのが作業療法の特徴です。
一方で、変わりにくいのは、パーキンソン病そのものの進行や、病気による身体機能の根本的な変化です。作業療法は病気を治すものではなく、「今の状態でも生活を続けやすくする」ことを目指す関わりである点は、誤解のないようお伝えしています。手や体の動きを引き出す運動と組み合わせることも多く、パーキンソン病のLSVT BIGについて解説した記事もあわせてご覧ください。
SECTION 05
どんな人に向いているか
研究の対象になったのは、日常生活に自覚的な困りごとがあるパーキンソン病の方です1。「着替えに時間がかかる」「料理の手順で困る」「書字がしにくい」といった具体的な生活場面の悩みがある方は、作業療法の目標を立てやすい傾向があります。歩きながら別のことをする場面で動作が乱れやすい方には、パーキンソン病の二重課題トレーニングについて解説した記事の考え方も役立ちます。
⚠ ただし、忘れてはいけない大切なこと:
作業療法は薬物治療や医師の診療に置き換わるものではなく、併用して検討するものです。症状の変化やお薬の調整については、必ず主治医にご相談ください。転倒のリスクがある動作練習は、安全を確保できる環境で行ってください。
作業療法は薬物治療や医師の診療に置き換わるものではなく、併用して検討するものです。症状の変化やお薬の調整については、必ず主治医にご相談ください。転倒のリスクがある動作練習は、安全を確保できる環境で行ってください。
SECTION 06
回数・頻度・期間の目安
OTiP試験1では、10週間にわたる在宅・個別の作業療法が行われました。ただし、これが最適な量というわけではなく、回数・頻度・期間の目安は確立していません。作業療法は個別性が高いため、目標や生活状況に合わせて計画を立てるのが一般的です。実際の回数や進め方は、ご本人・ご家族と専門職が一緒に決めていくことをおすすめします。

SECTION 07
専門職と確認したい実践上のポイント
専門職が確認する主な項目
まず「何ができないか」だけでなく、「何を続けたいか」「どの場面で困るか」を具体化します。そのうえで、動作の順序、姿勢、道具、環境、疲労、服薬との時間関係を確認します。練習で負担が増える場合は、方法や目標を見直し、必要に応じて主治医や他職種と連携します。
まとめると、パーキンソン病の作業療法は、ご本人が感じる「日常生活のやりやすさ」に良い方向の変化が報告されている関わりです。一方で、作業療法全体の研究の数はまだ限られ、確立された結論とまでは言えません。個別性がとても大きい領域なので、「その方が本当に困っている生活場面から目標を立て、一緒に工夫していく」姿勢が大切だと考えています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の治療・診断を推奨したり、医療行為に代わるものではありません。症状やリハビリの進め方には個人差があります。実施の前には、必ず担当の医師やリハビリ専門職にご相談ください。紹介した研究データは執筆時点のもので、今後の研究で評価が変わる可能性があります。
執筆者:株式会社Journey Rehab 代表取締役|田中 光
保有資格
修士(作業療法学)
作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836(日本作業療法士協会)
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍
作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836(日本作業療法士協会)
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍
経歴
・2016年:初台リハビリテーション病院に入職。脳卒中後遺症の回復期リハに従事
・2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立
・2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中
・2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立
・2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中
研究活動
・第57回日本作業療法学会(2023)ポスター発表
・第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表
・第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表
論文執筆
・田中 光, 石橋 裕, 佐々木 智也, 坂本 泰平. (2025). 本邦における介護予防・日常生活支援総合事業におけるスコーピングレビュー. 日本老年療法学会誌, 4(1). 日本老年療法学会.
Q & A
よくある質問
Q. 理学療法(PT)と作業療法(OT)は何が違いますか?
大まかに言うと、理学療法は歩行や体の動きの基礎を、作業療法は着替えや家事など生活の具体的な活動を中心に扱います。実際には重なる部分も多く、両方を組み合わせることもよくあります。
Q. 家でも作業療法は受けられますか?
はい。研究でも自宅で行う個別の作業療法が検討されており1、実際の生活の場で困りごとを確認できる利点があります。訪問型のリハビリでは、ご自宅の環境に合わせた工夫がしやすくなります。
Q. どんな困りごとを相談できますか?
着替え、食事、入浴、書字、調理、趣味や仕事など、生活の中でやりにくくなった具体的な活動を相談できます。ご本人が大切にしている場面から目標を立てるのが基本です。
Q. 必ず生活動作が変わりますか?
個人差があります。研究ではご本人が感じるやりやすさに良い方向の変化が報告されていますが1、作業療法全体の研究はまだ限られており2、すべての方に同じ結果が当てはまるわけではありません。
Q. 道具や住まいの工夫もしてもらえますか?
はい。動作のやり方の工夫に加えて、道具の選び方や環境の調整も作業療法の大切な要素です。安全面もあわせて一緒に考えます。
Q. どのくらいの期間続ければいいですか?
研究では10週間の関わりが用いられましたが1、最適な期間は決まっていません。目標の達成度や生活状況に合わせて、専門職と相談しながら調整します。
REFERENCES
参考文献
1. Sturkenboom IHWM, Graff MJL, Hendriks JCM, et al. Efficacy of occupational therapy for patients with Parkinson's disease: a randomised controlled trial. Lancet Neurol. 2014;13(6):557-566. PMID: 24726066.
2. Dixon L, Duncan D, Johnson P, et al. Occupational therapy for patients with Parkinson's disease. Cochrane Database Syst Rev. 2007;(3):CD002813. PMID: 17636709.
2. Dixon L, Duncan D, Johnson P, et al. Occupational therapy for patients with Parkinson's disease. Cochrane Database Syst Rev. 2007;(3):CD002813. PMID: 17636709.
