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脳卒中後の歩数を増やすには?実生活の活動量と目標設定の研究

脳卒中下肢関連情報 読了目安 約5分 文・田中 光(作業療法士)
脳卒中後の高齢者が作業療法士の見守りで地域を歩く様子

結論:脳卒中後の実生活の歩数を増やすには、歩行練習だけでなく、現在の歩数を測り、生活上の目的に結びつけ、小さな目標を段階的に調整する方法が役立つ可能性があります。ただし、全員に同じ歩数目標が適するわけではなく、転倒、心血管症状、疲労、痛みを確認しながら個別に進める必要があります。

この記事で分かること

  • 歩行能力と実生活の活動量が同じではない理由
  • 研究で示された活動量計、目標設定、運動の効果
  • 研究だけでは分からない点
  • 生活に合わせた具体例と中止基準

「歩ける」と「実際に歩いている」は別の指標

病院やリハビリ室で歩行速度や6分間歩行距離が改善しても、自宅や地域での歩数が同じように増えるとは限りません。実生活の活動量には、転倒への不安、疲労、外出先、家族の支援、天候、歩道環境、目的の有無などが影響します。

そのため評価では、歩行速度やバランスだけでなく、活動量計での歩数、座っている時間、外出の目的、翌日まで残る疲労も一緒に確認します。屋外歩行の評価については脳卒中後の屋外歩行は何で判断する?も参考になります。

脳卒中後の生活に合わせて安全な歩行ルートを作業療法士と計画する様子

研究から分かっていること

システマティックレビューでは「運動+行動変容」が検討されている

2024年のシステマティックレビュー・メタ解析は、客観的な活動量を測定した28件のRCT、計1,855人を対象にしました。急性期・亜急性期では運動に目標設定やフィードバックなどの行動変容技法を組み合わせると、歩数と中高強度活動が増えたと報告されました。慢性期では運動のみの介入でも歩数の増加が示されました。ただし、介入内容や発症時期が研究間で異なります1

250人のRCTでは、歩数のフィードバックと段階的な目標設定が有効だった

慢性期脳卒中者250人を対象とした多施設RCTでは、高強度歩行、歩数モニタリングと行動支援、その併用の3群を12週間比較しました。歩数モニタリングと専門職による目標調整を受けた群では平均1,542歩/日、併用群では平均1,307歩/日増加しました。一方、高強度歩行のみの群は平均406歩/日で、統計学的に明確な増加ではありませんでした。これは「能力を高める練習」と「生活で歩く行動を増やす支援」が別の役割を持つ可能性を示します2

研究だけでは分からないこと

研究参加者は、介助なしで歩ける慢性期の人など条件が限られています。介助が必要な人、重い心疾患、強い認知障害、頻回な転倒がある人へ同じ結果を当てはめることはできません。また、増えた歩数が長期間維持されるか、再発や入院を減らすかは十分に分かっていません。

歩数は便利な指標ですが、歩き方の安全性、疲労、屋外での判断力、生活満足度を単独では表しません。「1万歩」のような一律目標を、脳卒中後のすべての人へ勧める根拠もありません。

生活での具体例

  1. まず3〜7日、普段の歩数と疲労を記録する。
  2. 「郵便受けまで」「朝食後に家の廊下を往復」など目的のある短い行動を決める。
  3. 週ごとに増やす量を小さくし、転倒しそうな場面や翌日の疲労を確認する。
  4. 雨天用に、屋内ルートや座位活動も準備する。
  5. 数字だけでなく、買い物、通院、趣味など参加できた活動も記録する。

脳卒中リハビリの量・時間・頻度については脳卒中リハビリはどれくらい必要?で整理しています。

作業療法士・Journey Rehabの視点

作業療法では、歩数を増やすこと自体を最終目的にせず、「どの生活行為を取り戻したいか」から逆算します。玄関の段差、靴の着脱、荷物を持つ場面、信号、トイレの場所まで含めて評価すると、運動能力だけでは見えない障壁が分かります。

Journey Rehabの訪問自費リハビリでは、実際の自宅・地域環境で、歩行能力と生活目標を一緒に確認できます。サービス内容は訪問リハビリのプログラム無料体験・ご相談をご覧ください。

安全上の注意と中止基準

胸の痛み、強い息苦しさ、冷汗、動悸、失神しそうな感覚、新しい顔や手足の麻痺、ろれつの回りにくさ、突然の激しい頭痛、いつもと違う強いめまい、視界の異常、転倒、関節痛の急な増悪があれば中止してください。

脳卒中が疑われる新しい症状は緊急性があります。直ちに救急要請を検討してください。転倒して頭を打った、歩けないほど痛い、意識が普段と違う場合も早めに医療機関へ相談してください。心疾患や糖尿病がある方は、運動強度と低血糖対策を主治医に確認してください。

まとめ

脳卒中後の歩数を増やすには、歩行練習だけでなく、測定、フィードバック、生活に結びついた目標設定が重要です。研究では歩数の増加が示されていますが、対象者や期間には限界があります。安全性と本人が大切にする生活行為を優先し、必要に応じて医師やリハビリ専門職と調整しましょう。

よくある質問

何歩を目標にすればよいですか?

全員に共通する正解はありません。まず普段の歩数と症状を把握し、安全に反復できる小さな増加量を設定します。

スマートウォッチだけで歩数は増えますか?

機器を着けるだけで増えるとは限りません。研究ではフィードバック、専門職のコーチング、目標の段階的な調整を組み合わせています。

杖を使うと歩数計は正確ですか?

機器や歩き方によって誤差が生じます。絶対値より、同じ機器・同じ装着位置での傾向を見る方法が現実的です。

疲れやすい日は休んでもよいですか?

はい。休息を計画に含め、時間や距離を減らしてください。急な強い疲労や神経症状がある場合は中止して医療機関へ相談します。

参考文献

  1. Oliveira SG, et al. Interventions to Change Movement Behaviors After Stroke: A Systematic Review and Meta-analysis. Arch Phys Med Rehabil. 2024. PMID: 37541356. DOI: 10.1016/j.apmr.2023.07.011. PubMed
  2. Thompson ED, et al. Increasing Activity After Stroke: A Randomized Controlled Trial of High-Intensity Walking and Step Activity Intervention. Stroke. 2024. PMID: 38134254. DOI: 10.1161/STROKEAHA.123.044596. PubMed
  3. Stretton CM, et al. Interventions to improve real-world walking after stroke: a systematic review and meta-analysis. Clin Rehabil. 2017. PMID: 27056251. DOI: 10.1177/0269215516640863. PubMed

執筆・確認:田中 光(株式会社Journey Rehab代表、認定作業療法士、修士〔作業療法学〕、東京都立大学大学院博士後期課程在籍)。文献内容を2026年9月19日に確認しました。本記事は一般的な情報提供であり、診断・治療の代わりではありません。外部の医師による個別監修は受けていません。

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