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田中 光(作業療法士)|株式会社Journey Rehab 代表
認定作業療法士/修士(作業療法学)
東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍
初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立
東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍
初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立
脳卒中後のエクサゲーミング(体感型ビデオゲーム)とは?バランス・上肢への研究と限界を正直に解説
公開日:2026年7月26日|最終確認日:2026年7月26日
「ゲームでリハビリができるって本当?」「Wiiのような機器で身体を動かすのは意味がある?」——エクサゲーミング(exergaming)とは、身体を動かして遊ぶビデオゲーム(Wii Fitや体感型ゲームなど)を、リハビリに取り入れる方法です。研究では、バランスや下肢の動きやすさなどで小さめの良い変化が報告されていますが、機器や課題によるばらつきが大きく、従来のリハビリを置き換える根拠はありません。この記事では、何が期待でき、何は変わりにくいのかを、安全面も含めて整理します。

この記事でわかること
1. エクサゲーミングとは(VRとの違い)
2. 研究では有用とされているのか
3. 上肢・自宅での効果は?(正直な話)
4. エビデンスの質と限界・まだ分かっていないこと
5. 何が変わりやすく、何は変わりにくいか
6. どんな人に向き、どんな人は注意が必要か
7. 回数・頻度・自宅での使い方
8. 研究を生活に当てはめる考え方
9. よくある質問(FAQ)
10. 参考文献
2. 研究では有用とされているのか
3. 上肢・自宅での効果は?(正直な話)
4. エビデンスの質と限界・まだ分かっていないこと
5. 何が変わりやすく、何は変わりにくいか
6. どんな人に向き、どんな人は注意が必要か
7. 回数・頻度・自宅での使い方
8. 研究を生活に当てはめる考え方
9. よくある質問(FAQ)
10. 参考文献
SECTION 01
エクサゲーミングとは(VRとの違い)
エクサゲーミングは、身体の動きをセンサーが読み取り、画面の中の課題に合わせて手足や体を動かして遊ぶビデオゲームです。市販の家庭用ゲーム機(Wii Fit、体感型ゲームなど)を使うことが多く、体重移動でバランスをとったり、腕を伸ばして的に当てたりと、遊びながら運動できるのが特徴です。
「専用のゴーグルをかぶって仮想空間に没入するVR(バーチャルリアリティ)」とは、少し異なります。エクサゲーミングは、テレビ画面の前で手軽に取り組める点が持ち味です(両者は重なる部分もあります)。没入型のVRについては、脳卒中後のVRリハビリについて解説した記事で別に取り上げています。
SECTION 02
研究では有用とされているのか
エクサゲーミングは研究の数が比較的多く、いくつものメタアナリシス(複数の試験をまとめた研究)が行われています。それらをさらにまとめた「アンブレラレビュー」(11のメタ解析・約9,615人)では、バランスと上肢(腕)の機能で良い変化が見られたと報告されています。ただし研究ごとのばらつきが大きい点も指摘されています1。
慢性期脳卒中を対象にしたメタアナリシス
発症から時間が経った慢性期の脳卒中を対象にした解析(32件のランダム化比較試験)では、エクサゲーミングを取り入れた群で、バランス(SMD 0.25)、下肢の動きやすさ(0.29)、日常生活の自立度(0.41)が小さめに良くなっていました2。研究チームは「従来のリハビリに追加する補助として適している」とまとめています。バランスそのものについては、脳卒中後のバランス訓練について解説した記事もあわせてご覧ください。
Chan 2022(J Adv Nurs)
また、Wii Fitを使ったリハビリを従来療法に足した効果をまとめた解析(22件)では、立ち上がりや歩き出しの機敏さ(Timed Up and Go)やバランスの指標で良い変化が見られましたが、歩く速さそのものには明確な差が見られませんでした4。「何にでも効く」わけではなく、得意な領域と、そうでない領域があることが分かります。

SECTION 03
上肢・自宅での効果は?(正直な話)
「自宅でゲームを使えば、腕のリハビリが手軽にできるのでは?」と期待される方も多いです。ここは正直にお伝えします。退院後の自宅で、上肢(腕)向けのエクサゲーミングを行った効果をまとめたシステマティックレビュー(9試験・535人、研究の質は良好)では、腕を使う活動の面で、エクサゲーミングは従来のリハビリより優れているとは言えない、という結果でした3。治療直後も、その後の追跡でも、両者に大きな差は見られませんでした。
これは「エクサゲーミングに意味がない」という意味ではありません。従来療法を上回る明確な差は示されていないため、上肢の目標・安全性・本人の好みに合う場合に、従来の練習へ追加する選択肢として考えます。なお、「差が検出されなかった」ことは、両者が同等だと証明されたこととは異なります。
SECTION 04
エビデンスの質と限界・まだ分かっていないこと
研究結果を正しく受け取るために、限界もお伝えします。エクサゲーミングの試験は、使うゲーム機・課題・時間・回数が研究ごとに大きく異なり、結果のばらつき(異質性)が大きいことが繰り返し指摘されています1,2。また、効果の大きさは「小さめ」であり、劇的なものではありません。
まだ分かっていないこと
・どのゲーム機・課題が、どの症状に最も合うのかは確立していません1。
・最適な時間・回数・期間の「正解」は定まっていません。
・自宅での上肢向けエクサゲーミングは、従来療法を上回る結果は示されていません3。
・発症時期・重症度による違いは、試験数が少なく十分に検証されていません3。
・歩く速さそのものへの効果は、はっきりしていません4。
・最適な時間・回数・期間の「正解」は定まっていません。
・自宅での上肢向けエクサゲーミングは、従来療法を上回る結果は示されていません3。
・発症時期・重症度による違いは、試験数が少なく十分に検証されていません3。
・歩く速さそのものへの効果は、はっきりしていません4。
SECTION 05
何が変わりやすく、何は変わりにくいか
変わりやすいと報告されていること
・立っているときのバランス1,2,4
・立ち上がり・歩き出しの機敏さ、下肢の動きやすさ2,4
・日常生活の自立度(小さめ)2
・立ち上がり・歩き出しの機敏さ、下肢の動きやすさ2,4
・日常生活の自立度(小さめ)2
変わりにくい・過度な期待は禁物なこと
・歩く速さそのもの4
・従来リハビリを大きく上回る腕の機能(自宅・上肢では明確な差なし)3
・麻痺そのものの根本的な回復
・従来リハビリを大きく上回る腕の機能(自宅・上肢では明確な差なし)3
・麻痺そのものの根本的な回復
SECTION 06
どんな人に向き、どんな人は注意が必要か
エクサゲーミングは、ある程度自分で身体を動かせて、楽しみながらリハビリを続けたい方に取り入れやすい方法です。一方で、次のような場合は、安全に配慮しながら、専門職と相談して進めてください。
注意したい場面
・立って行う課題は転倒のリスクがあります。手すり・そばでの見守り・安全な広さを確保します
・立ちくらみ、強い疲れやすさがある場合は、座って行う課題から始めます
・重い麻痺や強い注意・認知の障害がある場合、ゲームの操作自体が難しいことがあります
・けいれん(てんかん)の既往がある方は、光の点滅を伴うゲームについて事前に主治医へ相談します
「夢中になって無理をする」ことが起きやすいので、時間と休憩の管理も大切です
・立ちくらみ、強い疲れやすさがある場合は、座って行う課題から始めます
・重い麻痺や強い注意・認知の障害がある場合、ゲームの操作自体が難しいことがあります
・けいれん(てんかん)の既往がある方は、光の点滅を伴うゲームについて事前に主治医へ相談します
「夢中になって無理をする」ことが起きやすいので、時間と休憩の管理も大切です
SECTION 07
回数・頻度・自宅での使い方
研究で用いられた進め方はさまざまですが、おおよその目安は次のとおりです。体調・安全に合わせた調整が前提です2,4。
・頻度:週に2〜3回、数週間〜数か月続ける
・1回の時間:30〜45分程度(休憩を挟む)
・位置づけ:従来のリハビリを置きかえるより、「追加の補助」として組み合わせる2
・自宅での使い方:最初は専門職と一緒に安全な設定・課題を決め、そのうえで自主的に取り入れる
・1回の時間:30〜45分程度(休憩を挟む)
・位置づけ:従来のリハビリを置きかえるより、「追加の補助」として組み合わせる2
・自宅での使い方:最初は専門職と一緒に安全な設定・課題を決め、そのうえで自主的に取り入れる
自宅で続ける場合、オンラインでの見守り・指導と組み合わせる形も選択肢になります。進め方の参考として、脳卒中後の遠隔リハビリについて解説した記事もご覧ください。
SECTION 08
研究を生活に当てはめるときの考え方
目標と安全性が先です
「ゲームを使うこと」自体を目標にせず、立位バランス、体重移動、上肢の反復など、練習したい動きを先に決めます。点数を追うあまり姿勢が崩れる、疲れても続ける、難しすぎて代償動作が増える場合は課題を下げます。本人の好みに合わない場合は、同じ目的を別の練習方法で行えます。

まとめ
・エクサゲーミングは、バランス・下肢の動きやすさ・自立度で小さめの良い変化が報告されています1,2。
・自宅での上肢練習では、従来療法を上回る明確な差は示されていません3。
・歩く速さそのものへの効果ははっきりしていません4。
・従来のリハビリに追加する補助として、目標・好み・安全性を確認して取り入れます2。
・自宅での上肢練習では、従来療法を上回る明確な差は示されていません3。
・歩く速さそのものへの効果ははっきりしていません4。
・従来のリハビリに追加する補助として、目標・好み・安全性を確認して取り入れます2。
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断・治療などの医療行為を推奨するものではありません。症状や運動の可否、転倒のリスクは個人差が大きいため、実施の前に必ず主治医・リハビリ専門職にご相談ください。引用した研究データは執筆時点のものであり、今後の研究で見解が変わる可能性があります。
執筆者:株式会社Journey Rehab 代表取締役|田中 光
保有資格
修士(作業療法学)
作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836(日本作業療法士協会)
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍
作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836(日本作業療法士協会)
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍
経歴
・2016年:初台リハビリテーション病院に入職。脳卒中後遺症の回復期リハに従事
・2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立
・2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中
・2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立
・2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中
研究活動
・第57回日本作業療法学会(2023)ポスター発表
・第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表
・第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表
論文執筆
・田中 光, 石橋 裕, 佐々木 智也, 坂本 泰平. (2025). 本邦における介護予防・日常生活支援総合事業におけるスコーピングレビュー. 日本老年療法学会誌, 4(1). 日本老年療法学会.
FAQ
よくある質問
Q. ゲームでリハビリをして本当に意味がありますか?
バランスや下肢の動きやすさ、日常の自立度で小さめの良い変化が報告されています1,2。従来のリハビリを大きく上回るわけではありませんが、楽しく続けやすい補助として役立つ可能性があります。
Q. VRリハビリとは違うのですか?
エクサゲーミングは家庭用ゲーム機で手軽に取り組める方法で、ゴーグルで仮想空間に没入する没入型VRとは重なりつつも異なります。目的や環境に合わせて選びます。
Q. 自宅で腕のリハビリに使えますか?
自宅での上肢向けエクサゲーミングは、従来のリハビリを上回る明確な差が示されていません3。本人の目標と好みに合う場合に、専門職と安全な設定を決めてから補助的に使います。
Q. 歩く速さは上がりますか?
歩く速さそのものへの効果ははっきりしていません4。バランスや立ち上がりの機敏さのほうが変わりやすい領域です。歩行速度を目標にする場合は別の練習も組み合わせます。
Q. 転ばないか心配です。
立って行う課題には転倒リスクがあります。手すりやそばでの見守り、安全な広さを確保し、不安な場合は座って行う課題から始めます。無理のない設定を専門職と相談してください。
Q. どのくらいの頻度で行えばよいですか?
研究では週2〜3回、数週間以上続ける形が多く用いられています2,4。あくまで目安で、体調や安全に合わせた調整が前提です。従来のリハビリに追加する形が現実的です。
REFERENCES
参考文献
1. Fernandes CS, Magalhães B, Gonçalves F, et al. Exergames for rehabilitation in stroke survivors: Umbrella review of meta-analyses. Journal of Stroke and Cerebrovascular Diseases. 2025;34(2):108161. PMID: 39608474. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39608474/
2. Chan KGF, Jiang Y, Choo WT, Ramachandran HJ, Lin Y, Wang W. Effects of exergaming on functional outcomes in people with chronic stroke: A systematic review and meta-analysis. Journal of Advanced Nursing. 2022;78(4):929-946. PMID: 34877698. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34877698/
3. Gelineau A, Perrochon A, Robin L, Daviet JC, Mandigout S. Measured and Perceived Effects of Upper Limb Home-Based Exergaming Interventions on Activity after Stroke: A Systematic Review and Meta-Analysis. International Journal of Environmental Research and Public Health. 2022;19(15):9112. PMID: 35897472. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35897472/
4. Ghazavi Dozin SM, Mohammad Rahimi N, Aminzadeh R. Wii Fit-Based Biofeedback Rehabilitation Among Post-Stroke Patients: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trial. Biological Research for Nursing. 2024;26(1):5-20. PMID: 37247514. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37247514/
2. Chan KGF, Jiang Y, Choo WT, Ramachandran HJ, Lin Y, Wang W. Effects of exergaming on functional outcomes in people with chronic stroke: A systematic review and meta-analysis. Journal of Advanced Nursing. 2022;78(4):929-946. PMID: 34877698. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34877698/
3. Gelineau A, Perrochon A, Robin L, Daviet JC, Mandigout S. Measured and Perceived Effects of Upper Limb Home-Based Exergaming Interventions on Activity after Stroke: A Systematic Review and Meta-Analysis. International Journal of Environmental Research and Public Health. 2022;19(15):9112. PMID: 35897472. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35897472/
4. Ghazavi Dozin SM, Mohammad Rahimi N, Aminzadeh R. Wii Fit-Based Biofeedback Rehabilitation Among Post-Stroke Patients: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trial. Biological Research for Nursing. 2024;26(1):5-20. PMID: 37247514. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37247514/
