
東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍
初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立
「退院後、通うのが大変」「近くに専門のリハビリが少ない」——脳卒中の後、こうした通院や距離の悩みはよく聞かれます。その選択肢のひとつとして研究されているのが「遠隔リハビリ(テレリハビリテーション)」です。ビデオ通話やアプリなどの情報通信技術を使い、離れた場所からリハビリの支援を行う方法です。この記事では、遠隔リハビリについて、研究で分かっていること、向いている場面・注意したい点を、患者さんとご家族に向けて整理します。

・複数の研究をまとめたレビューでは、生活動作(ADL)やバランスなどで、遠隔リハビリと対面リハビリ・通常ケアとの間に大きな差はみられていません1,2。
・つまり「対面より優れている」とまでは言えないものの、「対面に劣るとも言いきれない」という位置づけで、通院が難しい地域などでの選択肢になり得ます1。
・根拠の質は低〜中程度で、研究ごとの内容に幅があり、今後さらなる研究が必要とされています1。
遠隔リハビリ(テレリハビリテーション)は、ビデオ通話やスマートフォン・タブレットのアプリ、専用の機器などの情報通信技術を使い、専門職と離れた場所の利用者をつないでリハビリの支援を行う方法です。研究では、退院後の生活を支えるプログラム、上肢(腕や手)の練習、歩行や移動の練習、ことばの練習(失語症への支援)など、さまざまな内容で検討されています1。
対面でのリハビリと完全に置き換えるものではなく、対面と組み合わせて使われることも多い方法です。通院の負担を減らしたい場合や、近くに専門のリハビリが少ない地域での選択肢として注目されています。一方で、画面越しでは触れて確かめる評価や細かな介助が難しいなど、対面とは違う特性もあります。
結論から正直にお伝えすると、遠隔リハビリは「対面より優れている」とまでは示されていませんが、「対面に明らかに劣る」とも示されていません。多くの指標で、対面リハビリや通常ケアと大きな差がないという結果が報告されています。
別のレビュー(15件、1,339名)でも、日常生活動作(Barthel Index)、バランス(Berg Balance Scale)、腕や手の機能(Fugl-Meyer)などで、遠隔リハビリと比較対象の間に大きな差はみられず、著者は「特に通院が難しい地域などで、通常のリハビリの選択肢になり得る」とまとめています2。ただし、いずれのレビューも研究ごとの内容に幅があり、根拠の質は低〜中程度で、今後さらに研究が必要とされています1,2。

研究で「対面や通常ケアと大きな差がない(=同じくらい)」と報告されているのは、生活動作・バランス・生活の質・気分・腕や手の機能などです1,2。これは、適切に設計された遠隔リハビリが、対面の代わりとなり得る場面があることを示しています。費用面では、遠隔リハビリのほうが安かったとする報告もあります1。
一方で、まだはっきりしないことも多くあります。研究ごとに介入内容や比較対象がさまざまで、根拠の質は低〜中程度です1。どんな人に、どの内容を、どの程度の量で行うのが良いかは、これからの研究課題です。また、画面越しでは、触れて確かめる評価や、転倒しそうな場面での即時の介助が難しいといった、対面ならではの部分を置き換えられるわけではありません。
通院の負担が大きい方、近くに専門のリハビリが少ない地域の方、自主トレのやり方を定期的に確認したい方には、遠隔リハビリが選択肢になり得ます1,2。退院後に支援が途切れがちな時期を、つなぐ役割としても研究されています。
研究では、遠隔リハビリ単独のものから、対面と組み合わせたものまでさまざまです1。実際には、最初に対面でしっかり評価し、その後の自主トレの確認や進め方の相談を遠隔で行う、といった組み合わせが現実的なことが多いと考えられます。触れて確かめる必要がある評価や、安全に注意が必要な動作練習は対面で、日々の運動の確認や生活の相談は遠隔で、と役割を分けるイメージです。
どのくらいの頻度・期間が良いかは、研究でもまだ定まっていません。生活の状況、通信環境、安全面を踏まえ、無理なく続けられる形を担当の専門職と一緒に考えていくことが大切です。


修士(作業療法学)/作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍
経歴
2016年:初台リハビリテーション病院に入職。脳卒中後遺症の回復期リハに従事
2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立
2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中
研究活動
第57回日本作業療法学会(2023)ポスター発表/第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表
論文執筆
田中 光, 石橋 裕, 佐々木 智也, 坂本 泰平. (2025). 本邦における介護予防・日常生活支援総合事業におけるスコーピングレビュー. 日本老年療法学会誌, 4(1).
2. Tchero H, Tabue Teguo M, Lannuzel A, Rusch E. Telerehabilitation for Stroke Survivors: Systematic Review and Meta-Analysis. J Med Internet Res. 2018;20(10):e10867. DOI:10.2196/10867. PMID:30368437. PMCID:PMC6250558.
