パーキンソン病の遠隔リハビリ(オンライン運動指導)とは?対面との比較研究と限界を正直に解説

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田中 光 作業療法士 Journey Rehab代表
田中 光(作業療法士)|株式会社Journey Rehab 代表
認定作業療法士/修士(作業療法学)
東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍
初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立
パーキンソン病の遠隔リハビリ(オンライン運動指導)とは?対面との比較研究と限界を正直に解説
内容確認日:2026年7月27日
「通院がだんだん大変になってきた」「家からオンラインでリハビリを受けられないだろうか」——このような状況で検討されるのが、画面越しの遠隔リハビリ(テレリハビリテーション)です。研究では生活の質に良い方向の差が報告される一方、バランスや歩く速さでは明確な差が示されていません。対面との直接比較研究もまだ限られ、ご高齢の方では対面のほうが良い結果だった研究があります。この記事では、作業療法士の立場から、研究で分かっていることと、まだ分かっていないことを整理します。
SECTION 01
パーキンソン病の遠隔リハビリとは何か
遠隔リハビリ(テレリハビリテーション)とは、リハビリの専門職とご本人が離れた場所にいながら、ビデオ通話やアプリ、専用の機器などを使って運動の指導や確認を行う方法のことです。研究の世界では英語で telerehabilitation と呼ばれ、近年たくさんの試験が行われています。
実際の形はさまざまです。専門職とリアルタイムでつないで一緒に体操を行う形(同期型)、あらかじめ用意された運動動画やアプリの指示に沿ってご自身のペースで行う形(非同期型)、ゲーム機やセンサーを使って画面の中の課題に取り組む形(エクサゲーミング・VR)などがあります。研究で最も多く使われてきたのは、ビデオ会議のシステムと、ゲーム的な要素を取り入れた遠隔運動でした1
パーキンソン病では、運動を続けることが症状の管理において大切だと考えられています。しかし実際には、通院の負担、送迎してくれる家族の都合、天候や季節、体調の波などが理由で、外に出て運動する機会が減っていくことが少なくありません。遠隔リハビリは、この「通えない」という壁を下げる手段として研究が進められてきました。パーキンソン病のリハビリ全体の考え方については、パーキンソン病のリハビリの頻度と運動時間について解説した記事もあわせてご覧ください。
自宅で家族が見守るなかタブレットを使って遠隔リハビリに参加する高齢者
遠隔リハビリは、自宅から専門職とつながる方法の一つです。
SECTION 02
研究で分かっていること
研究紹介|システマティックレビュー・メタアナリシス(2025年・18研究731名)
Darbandsariらの研究1は、パーキンソン病のある方を対象に、遠隔で行うリハビリと、遠隔リハビリを受けない対照群を比べたランダム化比較試験18件(合計731名)をまとめたものです。その結果、バランス(標準化平均差 0.31、95%信頼区間 −0.02〜0.65)、歩く速さ(−0.07、−0.33〜0.19)、日常の動きやすさ(0.05、−0.27〜0.37)では、統計的にはっきりした差は認められませんでした。一方、生活の質(QOL)については、遠隔リハビリのほうに良い方向の差がみられています(0.26、0.05〜0.47)。研究者らは、遠隔リハビリは対照条件と「同等かそれ以上」の結果であり、ご本人の希望や使える環境に応じて選択肢になりうる、と結論づけています。
別の2025年のシステマティックレビュー・メタアナリシス2では、10件の研究(683名)をまとめ、遠隔リハビリを受けた群で、動きの症状の指標(UPDRS III)や生活の質の指標(PDQ-39)に良い方向の差が報告されています。ただしこちらは、比較の相手が「通常のケア」など研究によって異なり、結果の幅も大きい点には注意が必要です。
一方で、「では対面より良いのか」という点を直接調べた研究もあります。Geらのランダム化比較試験3では、軽度から中等度のパーキンソン病のある190名を、専門職が自宅を訪れて行う在宅理学療法(100名)と、スマートフォンアプリを使った遠隔リハビリ(90名)に分け、1回40〜60分・週5回・4週間行いました。どちらの群でも練習前後で良い方向の変化がみられましたが、70歳以上の年齢層では在宅で直接みてもらった群のほうが動きの症状の指標の変化が大きく(−3.38点 対 −1.45点、p=0.021)、バランスや歩く速さでも同じ傾向でした。若い年齢層では、両群に明らかな差はありませんでした(p=0.416)。予定した運動をやり切れなかった方は、在宅群で7名(7%)、遠隔群で12名(13%)でした。
つまり現時点の研究をまとめると、遠隔リハビリは「やらないより良い」ことは複数の研究で支持されている一方、「直接みてもらう形の代わりに常になる」とまでは言えない、という整理になります。画面越しに行う運動の一種であるゲーム形式の練習については、パーキンソン病のVRリハビリについて解説した記事で詳しく扱っています。
SECTION 03
エビデンスの質と限界・まだ分かっていないこと
エビデンスの質と限界
遠隔リハビリの研究は数が増えてきましたが、「遠隔リハビリ」と一口に言っても中身が大きく異なります。専門職とリアルタイムでつなぐ形、動画を見ながら自分で行う形、ゲーム機を使う形が同じ枠に入っているため、研究どうしを比べにくいという課題があります1。また、リハビリの研究では、受けている本人にどちらの治療かを隠すことができないため、評価に主観が入りやすい点も指摘されています。対象者の多くは軽度から中等度の方で、進行した段階の方のデータは限られています3。研究全体では一定の傾向がありますが、対象者や方法が研究ごとに異なるため、すべての方に同じ結果が当てはまるわけではありません。
まだ分かっていないこと
・どのような方に遠隔の形が最も合い、どのような方は直接みてもらう形が望ましいのかは、十分に確立していません1,3
・最適な頻度・1回の時間・続ける期間や、専門職がどのくらいの頻度で確認するとよいかは、はっきり決まっていません3
・研究の多くは4週間から数か月と短く、年単位で続けたときにどうなるかは分かっていません1,2
・画面越しでは、ふらつきや疲労の細かなサインを専門職が捉えにくい可能性があり、安全面の検証はまだ十分ではありません3
・機器の操作に慣れているかどうかが結果に影響する可能性がありますが、その点を丁寧に検討した研究は限られています1
椅子と家族の見守りを確保し画面越しに立位の安全確認を行う場面
立位練習では、支え・見守り・カメラ位置など環境の確認が重要です。
SECTION 04
何が期待でき、何は変わりにくいか
正直に整理します。研究で比較的はっきり良い方向の差が示されているのは、生活の質(QOL)に関わる部分です1,2。「運動する機会を持てている」「専門職とつながっている」という状態そのものが、暮らしの実感に働きかけている可能性があります。運動を続けやすくなる点も、遠隔リハビリが評価されている理由のひとつです。
一方で、バランスや歩く速さといった、体の機能を数値で測る項目については、遠隔リハビリが対照群を明らかに上回るという結果にはなっていません1。またご高齢の方では、直接みてもらう形のほうが動きの症状やバランスの指標での変化が大きかった研究もあります3。ここは期待しすぎず、正直にお伝えしておきたい部分です。遠隔リハビリは「対面の完全な置き換え」ではなく、「通えない期間や、対面と対面のあいだを支える手段」として考えると、現在の研究とかみ合いやすいと感じています。
SECTION 05
どんな人に向いているか
研究で対象となってきたのは、主に軽度から中等度のパーキンソン病の方です1,3。そのうえで、通院の負担が大きい方、遠方にお住まいの方、天候や季節によって外出が難しい時期がある方、感染症などで通いにくい状況にある方は、遠隔の形が選択肢になりやすいと考えられます。ご家族が近くにいて、機器の準備や見守りを手伝える環境があると、より進めやすくなります。
⚠ ただし、忘れてはいけない大切なこと:
転びやすい方、立っているとふらつく方、すくみ足(歩き出しで足が出にくくなる状態)が強い方は、画面越しだけで立位の運動を進めるのは危険を伴います。ひとりのときに無理をせず、必ずご家族の見守りや、手すり・椅子などの支えを確保してください。また、動きの症状が急に変わった、転倒した、立ちくらみが増えたといったときは、遠隔でのやりとりだけで済ませず、担当の医師やリハビリ専門職に直接ご相談ください。ご高齢の方では、直接みてもらう形のほうが良い結果だった研究もあります3
SECTION 06
回数・頻度・期間の目安
研究で用いられた形はさまざまですが、たとえばGeらの試験3では、1回40〜60分の運動を週5回、4週間続けています。まとめられた研究全体でも、週に複数回、数週間から数か月というものが多い印象です1。ただしこれらは研究の一例であり、最適な頻度や期間ははっきり決まっていません1,3
実際に取り入れるときは、まず短い時間から始めて、疲れ方や翌日の状態を見ながら調整していくことをおすすめします。パーキンソン病では、薬が効いている時間帯とそうでない時間帯で動きやすさが変わることがあるため、運動する時間帯を専門職と一緒に決めておくと、無理なく続けやすくなります。運動の量と続け方の考え方は、パーキンソン病のリハビリを続けるための支援について解説した記事でも触れています。
対面のリハビリ評価でタブレットの在宅運動を専門職と振り返る場面
遠隔支援と対面評価を、ご本人の状態に合わせて組み合わせます。
SECTION 07
専門職と確認したい実践上のポイント
専門職が確認する主な項目
まず、いまの転びやすさ、立位でのふらつき、すくみ足の有無を確認します。そのうえで、画面越しで安全に行える運動の範囲を決め、危ない動きは対面のときに扱う、というように役割を分けます。あわせて、カメラの位置(全身が映るか)、床の滑りやすさ、つかまれる椅子や手すりの有無、運動する時間帯、ご家族が見守れるタイミングなど、環境面も一緒に整えます。ひとりで行う日の運動内容は、転倒のリスクが低いものに絞ることが多いです。
まとめると、パーキンソン病の遠隔リハビリは、生活の質の面で良い方向の差が報告されており、通いにくい状況を支える手段として研究が進んでいます。一方で、バランスや歩く速さでは対面を上回るとまでは言えず、ご高齢の方では直接みてもらう形のほうが良い結果だった研究もあります。「どちらか一方」ではなく、ご本人の状態と生活に合わせて組み合わせを考えることが大切だと考えています。判断に迷うときは、担当の医師やリハビリ専門職にご相談ください。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の治療・診断を推奨したり、医療行為に代わるものではありません。パーキンソン病の症状や進行には個人差があり、運動中の転倒などのリスクを伴う場合があります。実施の前には、必ず担当の医師やリハビリ専門職にご相談ください。紹介した研究データは執筆時点のもので、今後の研究で評価が変わる可能性があります。
Journey Rehabの訪問自費リハビリについて知りたい方へ
通いにくさや自宅での運動の進め方について、今の状態を一緒に確認しながら考えます。
田中 光 作業療法士 Journey Rehab代表
執筆者:株式会社Journey Rehab 代表取締役|田中 光
保有資格
修士(作業療法学)
作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836(日本作業療法士協会)
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍
経歴
・2016年:初台リハビリテーション病院に入職。脳卒中後遺症の回復期リハに従事
・2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立
・2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中
研究活動
・第57回日本作業療法学会(2023)ポスター発表
・第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表
論文執筆
・田中 光, 石橋 裕, 佐々木 智也, 坂本 泰平. (2025). 本邦における介護予防・日常生活支援総合事業におけるスコーピングレビュー. 日本老年療法学会誌, 4(1). 日本老年療法学会.
Q & A
よくある質問
Q. オンラインのリハビリは、対面と同じくらい意味がありますか?
研究では、遠隔リハビリを受けない場合と比べて、生活の質の面で良い方向の差が報告されています1,2。ただしバランスや歩く速さでは、はっきりした差は示されていません1。ご高齢の方では直接みてもらう形のほうが良い結果だった研究もあり、個別に異なります3
Q. パソコンやスマホの操作が苦手でも大丈夫でしょうか?
研究では、ビデオ通話やアプリなど比較的簡単な仕組みが使われることが多いです1。最初はご家族に接続を手伝っていただく形から始める方もいます。操作の負担が大きいと続きにくくなるため、無理のない方法を専門職と相談して選ぶのが安心です。
Q. ひとり暮らしでも遠隔リハビリはできますか?
できる場合もありますが、転びやすさによって判断が変わります。立って行う運動は支えのある場所で行う、ひとりの日は座って行える内容にするなどの工夫が必要です。まずは転倒のリスクを評価してもらい、安全に行える範囲を決めることをおすすめします。
Q. どのくらいの頻度で行うとよいですか?
研究では週に複数回、数週間から数か月というものが多く、たとえば週5回・4週間という設定が用いられています3。ただし最適な頻度ははっきり決まっていません1。体調や疲れ方に合わせて、専門職と相談しながら決めるのが目安です。
Q. すくみ足があるのですが、画面越しの運動は危なくないですか?
すくみ足が強い方は、立って歩く練習を画面越しだけで進めるのは危険を伴う可能性があります。見守りのある環境で行う、対面のときに歩行練習を扱うなど、内容を分けることが大切です。開始前に必ず担当の専門職にご相談ください。
Q. 通院をやめて、遠隔だけに切り替えてもよいですか?
現在の研究からは、遠隔だけで対面をすべて置き換えられるとは言えません1,3。診察や定期的な評価は直接受けることが大切です。通院の負担については、まず主治医やリハビリ専門職に率直に相談してみてください。
Q. どのくらい続ければ変化が分かりますか?
研究の多くは4週間から数か月と短く、それ以上続けたときのことは十分に分かっていません1,2。変化の出方には個人差が大きいため、期間で区切るよりも、生活のなかで続けられる形を見つけることを優先されるとよいと思います。
REFERENCES
参考文献
1. Darbandsari P, Pescatello LS, Piscitelli D, et al. Effect of Telerehabilitation in Parkinson Disease: A Systematic Review and Meta-Analysis. Phys Ther. 2025. PMID: 41065729.
2. Li R, Wang L, Zhang J. Telerehabilitation for Parkinson's disease: a systematic review and meta-analysis based on randomized controlled trials. Neurol Sci. 2025. PMID: 41413738.
3. Ge Y, Zhao W, Zhang L, et al. Home physical therapy versus telerehabilitation in improving motor function and quality of life in Parkinson's disease: a randomized controlled trial. BMC Geriatr. 2024;24(1):954. PMID: 39578754.