
東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍
初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立
脳卒中後のADL評価指標とは?FIMとバーセルインデックスの見方と限界を正直に解説
「入院中に『FIMが◯点』『バーセルが◯点』と説明されたけれど、何を意味しているのか分からない」「点数が上がった・下がったで一喜一憂してしまう」。ご家族からよく聞く声です。FIM(機能的自立度評価法)とバーセルインデックス(BI)は、脳卒中後の生活動作(ADL:食事・トイレ・着替え・入浴・移動など)が「どのくらい自分でできるか」を数字にする、代表的なものさしです。
結論から正直にお伝えします。どちらも、複数の評価者がつけても数字がそろいやすい(信頼性が高い)ことが研究で示されており、リハビリの効果や経過を測る道具として広く使われています。入院時のスコアは「退院先が自宅になりやすいか」とも関連します。ただし、これは集団でみたときの傾向であり、一人ひとりの結果を約束するものではありません。天井効果(軽い人で満点に張りつく)などの弱点もあります。この記事では、システマティックレビューをもとに、数字の見方と限界を整理します。
バーセルインデックス(BI)とは
バーセルインデックス(Barthel Index)は、身の回りの生活動作10項目を採点し、合計で0〜100点にする指標です。点数が高いほど自分でできる範囲が広いことを示します。項目は、食事、移乗(ベッドと車いすの乗り移り)、整容、トイレ動作、入浴、歩行(または車いす操作)、階段昇降、更衣、排便コントロール、排尿コントロールです。
・短時間でつけられ、費用がかからず、世界的に広く使われている1
・各項目は「自立/一部介助/全介助」など数段階で採点する
・合計点で大まかな自立度を表す。個々の項目を見ると、どの動作でつまずくかが分かる
FIM(機能的自立度評価法)とは
FIM(Functional Independence Measure)は、生活動作を18項目、それぞれ1〜7点で採点する指標です。合計は18〜126点になります。18項目は、運動に関する13項目(食事、整容、清拭、更衣(上半身・下半身)、トイレ動作、排尿・排便管理、移乗(ベッド・トイレ・浴槽)、移動、階段)と、認知に関する5項目(理解、表出、社会的交流、問題解決、記憶)に分かれます。点数が高いほど、必要な介助が少ないことを示します。
・「どのくらい手伝いが必要か(介助量)」を7段階で細かく見る
・認知面(理解・表出・記憶など)の項目を含む1
・正しくつけるには評価者の講習・トレーニングが必要で、採点はやや複雑1
・回復期リハビリ病棟をはじめ、入院リハビリの現場で広く使われている
手・腕の動きそのものを詳しくみる指標(FMAやARATなど)は、生活動作の指標とは別に用います。詳しくは脳卒中後の手・腕の評価指標について解説した記事をご覧ください。

研究でわかっている「ものさしとしての質」
1990年から2025年までの研究を集め、脳卒中の評価指標89種類の「ものさしとしての質(信頼性・妥当性・変化のとらえやすさ)」をCOSMINという基準で整理したレビューです。生活動作の指標としては、バーセルインデックスとFIMがともに「評価者間の信頼性が非常に高い(級内相関係数0.94以上)」と報告されています。バーセルインデックスは再検査信頼性や内的整合性も良好で、介入研究での変化のとらえやすさ(反応性)も大きい一方、機能の高い人では天井効果(満点近くに張りつき、良くなっても数字が動きにくい)が指摘されています。FIMはバーセルインデックスとの相関が非常に高く(相関係数0.92〜0.95)、認知項目を含む点が長所ですが、評価者の訓練が必要で採点が複雑、機能の高い人での天井効果も同様にみられる、とされています1。
脳卒中の薬物治療の試験で使われた指標を集め、バーセルインデックスと修正ランキンスケール(mRS:0〜6で全体的な自立度・障害度を表す指標)の性質を比較したレビューです。バーセルインデックスは天井効果・床効果があるため、治療効果を測る主要な指標としては適さない場合があること、点数を「良い/悪い」で区切る基準(カットオフ)が研究ごとにばらついていること、軽度〜中等度では修正ランキンスケールのほうが小さな変化を拾いやすいことが指摘されています2。
まとめると、「バーセルインデックスとFIMは、評価者が変わっても数字がそろいやすく、経過を追う道具として信頼できる。ただし、機能の高い人では変化を拾いにくく、生活動作の一部しか映していない」というのが、ものさしとしての姿です。これらの指標は、作業療法など生活動作へのリハビリの効果を調べる研究でも、共通のものさしとして広く使われています6。
スコアと退院先・自宅に帰れるかの関係
急性期・亜急性期の脳卒中の方について、評価指標のスコアと退院先の関係を調べた研究をまとめたものです。FIMが1点高いごとに、施設ではなく自宅へ退院する見込みが約1.08倍になり(オッズ比1.079、95%信頼区間1.056〜1.102)、平均より成績が良い群(FIM80点以上など)は自宅退院が約12倍(オッズ比12.08)、成績が低い群(FIM39点以下など)は施設への退院が約3.4倍(オッズ比3.385)と報告されています。著者らは「スコアは退院先の強い予測因子だが、患者ごとの心理・社会的な要因がスコア単独の結果を上回ることがあり、決定はそれらを考慮して行うべき」と述べています3。
入院リハビリ後に自宅へ退院できるかに関わる身体機能の要因を、45研究・20万4787人からまとめた研究です。入院時の運動FIMと合計FIMが高いことは、自宅退院と有意に関連していました。交絡要因を調整した解析の統合値は、運動FIMでオッズ比1.16(95%信頼区間1.07〜1.26)、合計FIMで1.04(1.02〜1.05)でした。一方、調整前の解析は研究間のばらつきが非常に大きく、数値の解釈には注意が必要です。座位・移乗・歩行の自立や家族の支援なども退院先と関係するため、FIM単独で判断できないことが全文で強調されています4。
これらはいずれも「集団でみたときの関連」です。同じFIM◯点でも、住まいの環境、同居家族の有無、介護力、本人の希望、認知面や気分の状態によって結果は変わります。スコアが低いから自宅に帰れない、高いから必ず帰れる、という個人の断定はできません。
エビデンスの質と限界・まだ分かっていないこと
つまり、スコアは「経過を共有し、目標を立てるための共通の物差し」として役立ちますが、その人の生活そのものを言い表すものではありません。数字は生活の実感や具体的な困りごとと合わせて読むのが現実的です。歩行の見通しについては脳卒中後の歩行の見通しの予測について解説した記事も参考になります。
数字とどう付き合うか
・合計点の1〜2点の上下に一喜一憂しすぎない。数週間〜月単位の流れで見る
・「どの項目が動いたか」を聞く。合計より、食事・トイレ・移乗など具体的な項目の変化が生活に直結する
・スコアが横ばいでも、介助の手間や本人の疲れ方が変わっていることがある。担当者に確認する
・退院先の話は、スコアだけでなく住まい・介護力・本人の希望を含めて相談する3
評価は、目標を決めて経過を共有するための道具です。目標設定の進め方については脳卒中後の目標設定の進め方について解説した記事で扱っています。

個別支援で確認する視点
当施設のような作業療法士による訪問リハビリでは、合計点そのものより「どの項目の、どの部分で、どんな介助が必要か」を場面ごとに確認します。天井効果で合計点が動きにくい方でも、調理や外出など手段的な生活動作、疲れやすさ、本人が大切にしている活動の遂行度(COPMなど本人の主観を含む指標)を併せて見ることで、変化をとらえやすくなります。数週間単位でスコアと生活の実感を照らし合わせ、目標や支援内容を見直します。医療的な判断が必要な点は主治医・リハビリ専門職と連携します。

本記事は一般的な医療情報の提供を目的としたもので、個別の診断や評価、治療を代替するものではありません。評価スコアの解釈は、対象者の状態や評価の状況によって異なります。スコアの意味や見通しについては、担当の医師・リハビリ専門職に相談してください。掲載した研究データは執筆時点のもので、今後の研究によって解釈が変わる可能性があります。
作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836(日本作業療法士協会)
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍
・2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立
・2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中
・第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表
よくある質問
参考文献
2. Balu S. Differences in psychometric properties, cut-off scores, and outcomes between the Barthel Index and Modified Rankin Scale in pharmacotherapy-based stroke trials: systematic literature review. Curr Med Res Opin. 2009. PMID: 19419341.
3. Thorpe ER, et al. Outcome Measure Scores Predict Discharge Destination in Patients With Acute and Subacute Stroke: A Systematic Review and Series of Meta-analyses. J Neurol Phys Ther. 2018. PMID: 29232307.
4. Chevalley O, et al. Physical functioning factors predicting a return home after stroke rehabilitation: A systematic review and meta-analysis. Clin Rehabil. 2023. PMID: 37424501. PMCID: PMC10580673.
5. Ghaffari A, et al. Predictors of Instrumental Activities of Daily Living Performance in Patients with Stroke. Occup Ther Int. 2021. PMID: 33727902. PMCID: PMC7936883.
6. Legg LA, et al. Occupational therapy for adults with problems in activities of daily living after stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2017. PMID: 28721691. PMCID: PMC6483548.
