東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍
初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立
パーキンソン病で距離感がつかみにくいとき|視空間認知とリハビリ
記事作成・文献確認日:2026年9月13日
物との距離を見誤る、物を探すのに時間がかかる。パーキンソン病では、こうした困りごとに「視空間認知」という働きが関わる場合があります。ただし、見え方の変化をすべてパーキンソン病の認知症状と決めつけることはできません。まず困る場面を整理し、眼の状態や注意、体調も含めて相談することが出発点です。2
1. 視空間認知とは何か
2. 認知リハビリの研究で分かったこと
3. エビデンスの質と限界
4. 生活の中で確認したい工夫
5. 練習量と受診・相談の目安
6. 相談するときの整理とまとめ
よくある質問
参考文献
視空間認知は、物の位置、方向、距離や奥行きをとらえる働きです。パーキンソン病では距離の判断や周囲の情報の処理が難しくなることがありますが、現れ方には個人差があります。視空間の困りごとがあるだけで認知症と決まるわけではありません。2
「見つけられない」ときも、視力の問題、背景との見分けにくさ、注意の向けにくさなど複数の可能性があります。パーキンソン病の認知機能について解説した記事とあわせて、認知機能全体と生活の両方を見ることが大切です。

2025年のランダム化比較試験では、軽度認知障害を伴うパーキンソン病の方45名を、自宅で遠隔支援を受ける群25名と、外来で対面支援を受ける群20名に分けました。両群とも4週間、週5回、約45分の認知刺激を受けました。遠隔群はタブレット型のVRRSを使い、専門職がリアルタイムで支援しています。市販アプリを一人で行う研究でも、ヘッドセットを装着する研究でもありません。1
4週間後には、遠隔群で認知機能の総合点や記憶の検査などが良好でした。一方、視空間に関わる描画課題CD・CDPでは、この時点の群間差は統計的に明確ではありませんでした。認知機能の総合点が良かったことから、距離感や道順の判断も同じように良くなるとは言えません。1
6か月後は36名が評価を受け、CDなど一部の指標では群間差が報告されています。ただし、ADL・IADLという日常生活の指標では明確な群間差がありませんでした。短期と追跡時点の結果を一括りにせず、検査上の変化が生活上の利点につながるかを別に確かめる必要があります。1
機器による課題の違いは、パーキンソン病のVRリハビリについて解説した記事でも整理しています。
この試験は45名と小規模です。評価者は群を知らない方法でしたが、参加者と支援者は介入を知っていました。6か月時点では9名分の評価がなく、欠測値の補完もしていません。視覚・聴覚などの問題で課題に参加できない方は除外されており、重い認知症や見え方の問題がある方へそのまま当てはめられません。1
視空間認知のどの困りごとに合うのか、最適な練習量、転倒や外出時の安全性への影響は、この研究だけでは判断できません。統計的な差がない結果は「絶対に役に立たない」という証明でもありません。期待と不確実性の両方を持って考えます。

以下は生活を整理するための相談例です。今回の試験で各項目の効果を個別に確かめたものではありません。ご本人が見つけやすく、迷いにくい形を一つずつ確認します。
① よく使う物の置き場所を決める。
② テーブル上の物を減らし、必要な物を一つずつ提示する。
③ まぶしさにも配慮して照明や物と背景の見分けやすさを確認する。
④ 声かけは短くし、動作を急がせない。
⑤ 困った場面・時間帯・疲労・服薬との関係を記録する。
床の目印や色の変更は、かえって見間違いを増やす場合も考えられます。一律にテープを貼るのではなく、その人がどう見えているかを専門職と確認してください。運転の安全性は認知課題の点数だけで判断せず、不安がある間は運転を控えて主治医へ相談します。
研究の「週5回・約45分・4週間」は、専門職が支援した研究条件です。自宅で同じ量を目標にする必要はありません。画面で疲れる、気分が悪くなる、混乱が強くなるときは中断し、担当者に相談してください。薬は自己判断で変更しません。
突然、片側の手足に力が入らない、顔がゆがむ、言葉が出ない、急に見えなくなる、立てないほど急にふらつく場合は、119番など緊急の対応が必要です。いつもの症状と決めつけないでください。3

相談では「何ができないか」だけでなく、「どの場所で、何をしようとすると、どんな困りごとが起こるか」を伝えると具体的です。例えば、食卓でコップを探す場面と屋外で道順を判断する場面では、確認する内容が異なります。
遠隔で支援する認知刺激に有望な結果はありますが、視空間認知や生活上の安全への効果が確立したとは言えません。検査の点数だけでなく、本人が大切にしている生活場面と負担を一緒に確認することが大切です。
この記事は一般的な情報提供であり、個別の診断・治療・運動処方の代わりにはなりません。実施前は主治医・リハビリ専門職に相談してください。研究知見は文献確認日時点の情報で、今後変わる可能性があります。
運営・情報提供:株式会社Journey Rehab。訪問自費リハビリを提供する事業者の立場で一般情報を発信しています。この記事の研究結果は、当社サービスの成果を保証するものではありません。
作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836(日本作業療法士協会)
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍
・2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立
・2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中
・第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表
それだけでは判断できません。注意・記憶・眼の状態・日常生活への影響も含めて評価します。
そのようには断定できません。研究での認知検査の変化と、生活上の距離判断は別に確認する必要があります。
ありません。紹介した試験はタブレット型機器と専門職の遠隔支援を用いています。
本人が困る場面を聞き、一つずつ物を提示するなど、負担の少ない方法を相談してください。
研究条件であり、全員への推奨量ではありません。疲労や集中できる時間に応じて調整します。
そうではありません。症状、眼の状態、課題との相性などが関わります。量を増やす前に評価を見直します。
1. Jolanda Buonocore; Noemi Iaccino; Giusi Torchia; Francesca Curcio; Fabio Michelangelo Pirrotta; Marianna Contrada; Caterina Pucci; Antonio Gambardella; Aldo Quattrone; Alberto Pilotto; Loris Pignolo; Gennarina Arabia. Cognitive stimulation in Parkinson’s disease with mild cognitive impairment.. Journal of neurology. 2025. PMID: 41015632. DOI: 10.1007/s00415-025-13374-9. 文献情報 / 本文
2. Parkinson’s Foundation. Cognitive Changes. . 参照日 2026-09-13. 文献情報 / 本文


