パーキンソン病の疲労とは?うつ・眠気との違いと運動療法を解説

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田中 光 作業療法士 Journey Rehab代表
田中 光(作業療法士)|株式会社Journey Rehab 代表
認定作業療法士/修士(作業療法学)
東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍
初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立
パーキンソン病の疲労(Fatigue)とは?うつ・眠気との違いと運動療法の研究を正直に解説

「一日中だるい」「少し動くとぐったりする」「気力はあるのに体がついてこない」。パーキンソン病では、こうした疲労がみられることがあります。この「疲労(Fatigue)」は、パーキンソン病そのものの症状の一つとして知られており、うつ気分や日中の眠気、意欲の低下(アパシー)と混同されやすい症状です1。この記事では、パーキンソン病の疲労とは何か、うつ・眠気との違い、そして運動療法・リハビリの研究で分かっていることと、まだ分かっていないことを、専門職として正直にお伝えします。

SECTION 01
パーキンソン病の疲労(Fatigue)とは何か

医学的な「疲労(Fatigue)」とは、運動不足や睡眠不足だけでは説明できない、持続的な「エネルギーが出ない」「体も心も消耗している」という感覚を指します。一時的な疲れとは異なり、休んでもなかなか回復しにくいのが特徴です。パーキンソン病では、運動症状(振戦・固縮・動作緩慢)だけでなく、この疲労を含む非運動症状が生活の質に大きく影響することが知られています。

44件の研究・7,427名を対象とした系統的レビューでは、パーキンソン病の方のおよそ半数(約50%)が臨床的に意味のある疲労を経験していると報告されています1。ただし、この数値は疲労を測る質問紙やカットオフ値が研究ごとに異なるため、幅を持って理解する必要があります。

⚠ うつ・眠気・アパシーと混同されやすい理由:
同じ研究では、疲労のある方はうつ症状を合併しやすく(フォローされていない群と比べて約1.9倍)、不安、日中の強い眠気、意欲の低下(アパシー)とも中等度の関連が報告されています1。しかし著者らは、疲労は「早期から出現し、経過を通じて持続する、独立した非運動症状」であるとも述べており、うつ・眠気・アパシーと重なりながらも別物として扱うべき症状だと考えられています1

実際の生活では、「気分が落ち込んで動けない」のか「眠くて動けない」のか「エネルギーそのものが枯渇していて動けない」のかを、ご本人・ご家族だけで区別するのは簡単ではありません。うつ状態への向き合い方はパーキンソン病のうつと運動療法について解説した記事で、日中の眠気やすくみとの関連はパーキンソン病の睡眠障害と運動について解説した記事で取り上げていますので、あわせてご参照ください。疲労・うつ・眠気・アパシーが重なっている場合は、主治医・かかりつけの専門職へ相談し、必要に応じてそれぞれを評価してもらうことが大切です。

SECTION 02
研究では運動療法は疲労に効果があると言っているのか

結論から言うと、「運動療法はパーキンソン病の疲労に一定の効果が期待できる可能性があるが、研究によって結果に差がある」というのが正直なところです。時期の異なる複数の系統的レビュー(研究をまとめて評価する研究)を見比べると、その変化がよく分かります。

コクラン・レビュー 2015年

薬物療法・非薬物療法をあわせて11件の研究(合計1,817名)を評価した国際的なコクラン・レビューでは、運動に関する研究は2件・57名分のみで、疲労への効果は統計的に明確な差が確認できませんでした(標準化平均差 −0.45、95%信頼区間 −1.21〜0.32)。著者らは「現時点のエビデンスでは、パーキンソン病の疲労に対する明確な治療推奨はできない」と結論づけています2

システマティックレビュー・メタ解析 2023年

その後、対象研究が積み上がり、8件・324名分の運動介入研究をまとめたメタ解析では、運動療法を行った群は行わなかった群と比べて、疲労のスコアに小さいながら統計的に意味のある差が見られました(標準化平均差 −0.37、95%信頼区間 −0.69〜−0.05、p=0.02)3。トレッドミル歩行、筋力トレーニング、ノルディックウォーキング、ダンス、ヨガなど、さまざまな運動が対象になっています。

システマティックレビュー・メタ解析 2026年

さらに22件のランダム化比較試験を対象にした最新のメタ解析では、運動群は非運動群と比べて疲労スコアがより大きく改善したと報告されています(標準化平均差 −0.92、95%信頼区間 −1.57〜−0.28、7件のデータ)。著者らは、ウォーキング・有酸素運動・筋力トレーニング・複合的な運動プログラムなど、能動的で継続的な運動ほど効果量が大きい傾向があったとしており、GRADE(エビデンスの確実性を評価する手法)で「中程度の確実性」と位置づけています4

一方で、すべての研究が良い結果を示しているわけではありません。39名を対象とした12週間のランダム化比較試験では、週1回程度のペースで運動プログラムに参加した群と対照群のあいだで、疲労の重症度に統計的に意味のある差は見られませんでした5。研究をまとめて見ると「運動には疲労を軽くする可能性がある」という方向性はうかがえますが、「誰にでも・どんな運動でも・すぐに効果が出る」とまでは言えないのが現状です。有酸素運動そのものの研究はパーキンソン病の有酸素運動について解説した記事でも取り上げていますので、あわせてご覧ください。

SECTION 03
エビデンスの質と限界/まだ分かっていないこと
エビデンスの質と限界

運動療法と疲労に関する研究は、研究ごとに「サンプルサイズが小さい」「運動の種類・強度・頻度がバラバラ」「盲検化(本人が運動群か対照群か分からないようにする工夫)が難しい」という共通の弱点を抱えています。2015年のコクラン・レビューでは、非薬物療法の試験の90%が「バイアスリスクが高い」と評価されており、その理由としてランダム化の手順が不十分な点や、運動という性質上どうしても本人には割り付けが分かってしまう点が挙げられています2。2023年のメタ解析でも「研究間のばらつきが大きく、精密な結論を導くのは難しい」と著者ら自身が限界を述べています3

また、疲労を測る質問紙(FSS、PFS-16、MFISなど)が研究ごとに異なり、同じ「疲労の改善」という言葉でも測っているものが少しずつ違う点にも注意が必要です。

まだ分かっていないこと

現在の研究でも、どのような方に運動が最も合うのか、どのくらいの強度・頻度・期間が最適なのかは十分に分かっていません。重症度や発症からの年数、認知機能、うつ・眠気の合併状況によって反応が異なる可能性がありますが、それを比較検討した研究はまだ限られています。運動と薬物療法(うつ・眠気の治療薬など)を組み合わせた場合にどう変わるのかも、今後の検討課題です。

2023年のレビューでは「身体的な疲労と精神的な疲労を区別して研究する必要がある」と指摘されており3、疲労という言葉が指す中身自体、研究の世界でもまだ整理の途中にあります。研究全体では一定の傾向がありますが、対象者の重症度、介入内容、評価方法が研究ごとに異なるため、すべての方に同じ結果が当てはまるわけではありません。

パーキンソン病の疲労について専門職へ相談する場面
疲労はうつ・眠気・アパシーなどと重なるため、症状を整理して相談することが大切です
SECTION 04
何が変わりやすく、何は変わりにくいか

研究結果を項目ごとに整理すると、次のような傾向が報告されています。研究間で結果が一致していない項目もあるため、あくまで目安として捉えてください。

主観的な疲労スコア(FSS・PFS-16などの質問紙)
一定の傾向あり

複数のメタ解析で、能動的な運動を継続した群のほうが対照群より疲労スコアが小さく改善する傾向が報告されています3,4。ただし効果量は「小〜中程度」にとどまり、全員に劇的な変化が出るわけではありません。

週1回だけの低頻度な運動
有意差なしの報告あり

週1回程度の頻度で12週間運動した群では、疲労・可動性・活動量のいずれにも統計的に意味のある変化が見られなかったという報告があります5。頻度が少ないと変化が出にくい可能性が示唆されています。

うつ・眠気など併存症状そのもの
単独の運動効果は不明確

疲労とうつ・眠気は関連が深い一方1、運動療法だけでこれらすべてが同時に変わるかどうかを直接検証した研究は限られています。うつ・眠気が強い場合は、疲労だけでなくそれぞれの症状として主治医に相談することが推奨されます。

SECTION 05
どんな人に向いているか(適応・注意)
検討する場面が多い方

軽度〜中等度の運動症状があり、主治医から運動の許可を得ている方。疲労はあるものの、短時間であれば座位・立位での活動に取り組める方。日中の活動量が少なくなり、生活範囲が狭まってきたと感じている方。

注意が必要な方

重度の疲労で日常生活動作そのものが困難な方、強いうつ症状や意欲低下(アパシー)が疑われる方、起立性低血圧・心疾患などで運動負荷に制限がある方、転倒リスクが高い方は、自己判断での運動量増加は避け、主治医・リハビリ専門職と相談しながら強度や頻度を調整する必要があります。運動をきっかけに疲労感がかえって強く出る場合は、無理をせず頻度・強度を見直してください。

SECTION 06
どのくらいの頻度・時間・期間で行うか
研究で報告されている目安
週2回以上・1回20〜60分

2026年のメタ解析では、ウォーキング・有酸素運動・筋力トレーニング・複合的な運動を中等度の強度で「少なくとも週2回、1回20〜60分」継続した研究で疲労スコアの変化が報告されています4。あくまで研究全体からの目安であり、個々の方に必ず当てはまる処方箋ではありません。

一方で、前述のとおり週1回程度の頻度では疲労に変化が見られなかった研究もあります5。頻度が少なすぎると効果が出にくい可能性がある一方、疲労が強い時期に無理な頻度・強度を課すと、かえって消耗してしまうこともあります。実施期間についても、研究ごとに4週間〜24週間とばらつきがあり、「これだけ続ければ十分」という明確な基準はまだ確立していません2,3。体調や疲労の波を見ながら、頻度と強度を専門職と一緒に調整していく姿勢が現実的です。

SECTION 07
Journey Rehabの支援方針
🏥 疲労を前提にした個別調整

Journey Rehabでは、疲労を「気合いで克服するもの」とは扱いません。睡眠・気分・服薬時間・活動後の消耗などを確認し、その日の状態に合わせて運動量、休憩、生活動作の順序を調整します。急な悪化や強い抑うつ、日常生活への大きな影響がある場合は、運動だけで対応せず主治医への相談を優先します。

パーキンソン病の方が専門職の見守りで立ち上がり運動を行う場面
疲労や体調の波に合わせ、安全を確認しながら運動量を調整します
本人と家族と専門職が活動と休息の計画を立てる場面
活動を詰め込みすぎず、休息も予定に含めて生活全体を調整します
まとめ

パーキンソン病の疲労は、うつ・眠気・アパシーと重なりやすいものの、独立した症状として研究されています1。運動療法については、2015年時点では明確な結論が出せませんでしたが2、その後の研究の積み重ねで、継続的な運動が疲労スコアに小〜中程度の良い方向の変化と関連する可能性が示されてきています3,4。一方で、すべての研究が一致した結果を示しているわけではなく5、頻度・強度・対象者による違いなど、まだ分かっていないことも多く残っています。大切なのは「運動をすれば必ず疲労がなくなる」と期待しすぎず、体調の波を見ながら専門職と一緒に無理のない範囲で続けていくことです。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療行為・診断・治療を推奨するものではありません。パーキンソン病の疲労やうつ症状、運動の可否については、必ず主治医・かかりつけのリハビリ専門職にご相談ください。ご紹介した研究データは執筆時点のものであり、今後の研究によって内容が更新される可能性があります。

パーキンソン病のリハビリについて相談したい方へ
疲労の波や体調に合わせて、無理のない運動の進め方を一緒に確認します。
田中 光 作業療法士 Journey Rehab代表
執筆者:株式会社Journey Rehab 代表取締役|田中 光
保有資格
修士(作業療法学)
作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836(日本作業療法士協会)
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍
経歴
・2016年:初台リハビリテーション病院に入職。脳卒中後遺症の回復期リハに従事
・2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立
・2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中
研究活動
・第57回日本作業療法学会(2023)ポスター発表
・第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表
論文執筆
・田中 光, 石橋 裕, 佐々木 智也, 坂本 泰平. (2025). 本邦における介護予防・日常生活支援総合事業におけるスコーピングレビュー. 日本老年療法学会誌, 4(1). 日本老年療法学会.
質問リスト(よくある質問)
Q. パーキンソン病の疲労と、ただの疲れはどう違いますか?
A. 一時的な疲れは休めば回復しますが、パーキンソン病の疲労は休息だけでは十分に改善しにくいエネルギー消耗感が特徴とされています。長く続く場合は主治医に相談することをおすすめします。
Q. うつ病と疲労、どちらが原因かどう見分ければよいですか?
A. ご本人・ご家族だけで正確に見分けるのは難しく、両者は関連が深いことが分かっています。気分の落ち込みが強い、興味関心が薄れているなどのサインがあれば、主治医や専門職に相談してみてください。
Q. 運動をすれば疲労は必ず軽くなりますか?
A. 研究では、継続的な運動が疲労スコアの変化と関連する可能性が報告されていますが、効果の大きさは小〜中程度で、全員に同じ変化が出るとは限りません。個別に体調を見ながら判断する必要があります。
Q. どのくらいの頻度で運動すればよいですか?
A. 研究では週2回以上・1回20〜60分程度の継続が目安として報告されていますが、あくまで研究全体の傾向です。疲労の強さや体調に応じて、専門職と一緒に頻度・強度を調整することをおすすめします。
Q. 疲労が強い日は運動を休んでもよいですか?
A. はい。疲労には日によって波があることが知られています。無理に続けることで消耗が強まる場合もあるため、体調に合わせて休む選択も大切です。判断に迷う場合は専門職に相談してください。
Q. 睡眠不足や日中の眠気とも関係がありますか?
A. 疲労は日中の眠気とも中等度の関連が報告されています。睡眠の質に心当たりがある場合は、疲労だけでなく睡眠の問題としても主治医に相談することをおすすめします。
参考文献
1. Siciliano M, Trojano L, Santangelo G, De Micco R, Tedeschi G, Tessitore A. Fatigue in Parkinson's disease: A systematic review and meta-analysis. Movement disorders : official journal of the Movement Disorder Society. 2018. PMID: 30264539. DOI: 10.1002/mds.27461
2. Elbers RG, Verhoef J, van Wegen EEH, Berendse HW, Kwakkel G. Interventions for fatigue in Parkinson's disease. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2015. PMID: 26447539. PMCID: PMC9240814. DOI: 10.1002/14651858.CD010925.pub2
3. Folkerts AK, Nielsen J, Gollan R, Lansu A, Solfronk D, Monsef I, Ernst M, Skoetz N. Physical Exercise as a Potential Treatment for Fatigue in Parkinson's Disease? A Systematic Review and Meta-Analysis of Pharmacological and Non-Pharmacological Interventions. Journal of Parkinson's Disease. 2023. PMID: 37334618. PMCID: PMC10473113. DOI: 10.3233/JPD-225116
4. Costa V, Zambetta ML, Gianlorenço AC. Physical Exercise for Managing Fatigue in Parkinson's Disease: Clinical and Research Recommendations From a Systematic Review and Meta-Analysis. Journal of geriatric physical therapy (2001). 2026. PMID: 41538284. DOI: 10.1519/JPT.0000000000000481
5. Winward C, Sackley C, Meek C, Izadi H, Barker K, Wade D, Dawes H. Weekly exercise does not improve fatigue levels in Parkinson's disease. Movement disorders : official journal of the Movement Disorder Society. 2012. PMID: 21953509. DOI: 10.1002/mds.23966
公開日:2026年8月22日|最終更新日:2026年8月22日