脳卒中後の嚥下障害へのバルーン拡張法とは?研究と限界を正直に解説

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田中 光 作業療法士 Journey Rehab代表
田中 光(作業療法士)|株式会社Journey Rehab 代表
認定作業療法士/修士(作業療法学)
東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍
初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立
脳卒中後の嚥下障害へのバルーン拡張法とは?頸部食道バルーニング拡張術・咽頭バルーン筋トレーニングの研究と限界を正直に解説

「食道の入り口が開きにくいと言われ、バルーン(風船)を使った拡張の練習を勧められました」「鼻からチューブを入れて拡張すると聞いて不安です」。脳卒中のあと、のどの奥がうまく開かずに食べ物が通りにくくなった方やご家族から、こうしたご相談をいただくことがあります。

結論から正直にお伝えします。カテーテルの先についた風船を使って食道の入り口(輪状咽頭筋)を広げる「頸部食道バルーニング拡張術」は、通常の嚥下訓練だけの場合と比べて、経口摂取の再開が早まったとする研究結果が複数報告されています1,2,3。一方で、対象になる研究の多くは中国国内の小規模な試験で、盲検化や割り付けの隠蔽が不十分なものが目立ち、全体としての確実性は高くありません3。また、風船に抵抗をかけて飲み込む「咽頭バルーン筋トレーニング」は登場したばかりの方法で、まだ確認できる研究が非常に限られています4

この記事では、どこまでが数字として示されていて、どこからがまだ分かっていないのかを、できるだけ正直に整理します。

SECTION 01
バルーン拡張法とは何か(2つの方式の違い)

脳卒中、特に脳幹部の脳卒中のあとには、のどから食道への入り口にある「輪状咽頭筋(りんじょういんとうきん)」という筋肉がうまく緩まなくなることがあります。これを輪状咽頭筋アカラジア(弛緩不全)と呼び、造影検査(VFSS)で確認されます。飲み込んだ食べ物がこの部分でせき止められ、むせや食べ物の残留、体重減少につながることがあります1,3

「バルーン拡張法」という言葉には、性質が異なる2つの方法が含まれているため、まず整理します。

方式 A:頸部食道バルーニング拡張術(カテーテル拡張)
方法:鼻から細いカテーテルを挿入し、先端の風船(バルーン)を輪状咽頭筋の位置で膨らませたまま、ゆっくり引き抜く動作を繰り返す
ねらい:狭くなった食道の入り口を機械的に広げ、通常の嚥下訓練と組み合わせる
実施者:医療機関で、医師・看護師・言語聴覚士などの専門職が行う手技
研究の量:この分野で最も研究数が多い方式1,2,3
方式 B:咽頭バルーン筋トレーニング(PBMRT)
方法:水を入れたバルーンを使い、その抵抗に逆らって飲み込む運動を繰り返す
ねらい:咽頭を収縮させる筋肉そのものを鍛える、抵抗運動としての位置づけ
研究の量:2026年に報告された小規模なランダム化比較試験が1件確認できるのみで、まだ研究の蓄積が少ない方式4

重要な前提として、どちらの方式も通常の嚥下訓練の代わりではなく、訓練に上乗せする形で研究されてきました1,2,3,4。バルーンだけを使えば飲み込みが変わる、という設計の研究ではありません。また、いずれも医療的な評価・管理のもとで行われる手技・運動であり、自己判断で自宅から始められるものではありません。

脳卒中後の嚥下障害について医療者へ相談する場面
バルーン拡張法は、嚥下評価の結果を踏まえて医師・言語聴覚士と検討します
SECTION 02
新しいバルーンカテーテルを使ったランダム化比較試験

脳卒中後の輪状咽頭筋アカラジアの方34名を対象に、新しく設計されたバルーンカテーテル(長さ4cm・楕円形で、氷水を連続的に循環させられる二重構造)と、従来から使われている14Frの通常尿カテーテルを比較したランダム化比較試験があります1

ランダム化比較試験 2022年・34名(新型バルーン群17名・通常カテーテル群14〜17名)
週5日・1日1回のバルーン拡張を行い、いずれも通常の嚥下訓練と併用しました。

・拡張療法にかかった期間(中央値):新型バルーン群9日 対 通常カテーテル群14日(p=0.005)
・液体食を再開できるまでの日数:4日 対 8日(p=0.002)
・粥状食を再開できるまでの日数:5日 対 10日(p=0.001)
・固形食を再開できるまでの日数:7日 対 13日(p=0.001)
・水分摂取の再開までの日数:5日 対 5日で、差はありませんでした(p=0.426)
・治療終了時点のむせ・飲み込みにくさの自覚(EAT-10):新型バルーン群3点 対 通常カテーテル群5点(p=0.005)

合併症(粘膜出血・喉頭浮腫)の頻度そのものには統計的な差はありませんでしたが、施術時の痛みのスコアは新型バルーン群のほうが低い結果でした(p=0.028)。
Hu T, Cai Y, Shen Z, ほか(2022)Dysphagia1

読み方の要点は2つです。第一に、固形物やとろみのある食べ物の再開は明確に早まった一方、水分だけを飲む再開時期には差が出ませんでした。むせは液体でより起こりやすいため、バルーン拡張だけで水分摂取の安全性まで解決するわけではないと考えられます。第二に、この研究は「新しいバルーンカテーテル」と「従来の通常カテーテルによる拡張」を比較したものであり、「拡張をしない場合」との比較ではありません1

SECTION 03
他の治療と組み合わせた研究

バルーン拡張は、ボツリヌス毒素注射や鍼治療、電気刺激など他の治療と組み合わせて検討されることも多く、この組み合わせ方の研究から「バルーン拡張単独でどこまで変わるか」も読み取れます。脳幹脳卒中による輪状咽頭筋アカラジアの方29名を対象に、内視鏡下ボツリヌス毒素A型注射+バルーン拡張と、バルーン拡張単独を比較したランダム化比較試験があります2

ランダム化比較試験 2023年・29名(併用群14名・バルーン単独群15名)
バルーン拡張単独群は、鼻から挿入したカテーテルの風船を水2.5mLから膨らませ、頭を右に向けながらゆっくり引き抜く操作を1回あたり5〜8往復、週5日・連続2週間実施しました。

・嚥下障害重症度スケール(DOSS):バルーン単独群でも治療前1.79点→治療後3.93点まで改善(p<0.001)。併用群はさらに5.23点まで改善し、群間差も有意でした(p<0.001)
・誤嚥スケール(PAS):バルーン単独群も5.67点→4.53点まで改善(p<0.001)。併用群のほうがより大きく改善しました(p<0.001)
・経口摂取レベル(FOIS)で「有効」と判定された割合:併用群85.7%、バルーン単独群66.7%で、この指標では統計的な差は示されませんでした(p=0.389)

両群とも有害事象の報告はありませんでした。
Liu C, Li Y, Tan Z, ほか(2023)Journal of Central South University Medical Sciences2

この研究からも分かるのは、バルーン拡張単独でも重症度スケールは有意に改善しているということです。ただし「有効・無効」という判定そのものは研究によって基準が異なり、指標によって結果が分かれる点には注意が必要です。バルーン拡張以外の選択肢としては、のどの筋肉に電気を流す方法も研究されています(脳卒中後の飲み込みに対する電気刺激(NMES)について解説した記事)。どちらか一方が明確に優れているという段階ではなく、対象者の状態や医療機関の方針によって選ばれています。

SECTION 04
システマティックレビュー・ネットワークメタアナリシスで見る全体像

個別の研究だけでなく、全体像を見た報告もあります。2026年に発表されたネットワークメタアナリシスは、脳卒中後の輪状咽頭筋アカラジアに対する13種類の介入(バルーン拡張、鍼治療、電気刺激、経頭蓋磁気刺激、ボツリヌス毒素、それらの組み合わせなど)を扱った36件のランダム化比較試験・患者1,816名をまとめました3

システマティックレビュー・ネットワークメタアナリシス 2026年・36試験1,816名
バルーン拡張単独を、上乗せなしの通常嚥下訓練(対照群)と比較すると、以下の指標で統計的な差が示されました。

・有効率:オッズ比8.30(95%信頼区間3.33〜20.69)
・VFSS(造影検査)スコア:平均差2.54(95%信頼区間2.22〜2.86)
・FOIS(経口摂取レベル)スコア:平均差2.62(95%信頼区間2.24〜3.00)
・SSA(標準化嚥下評価)スコア:統計的に明確な差は示されませんでした

ただし、9種類の介入の中で順位づけ(SUCRA値)をすると、バルーン拡張単独は有効率で7位/9位中、FOISで7位/11位中と中位にとどまり、バルーン拡張と反復経頭蓋磁気刺激・筋電図バイオフィードバック・鍼治療などを組み合わせた群のほうが上位でした。
Yue J, Wang X, Li C, ほか(2026)Frontiers in Neurology3

つまり、「バルーン拡張は何もしないよりは変化が期待できる」という報告がある一方で、「バルーン拡張だけが最も優れた方法」という結果ではなく、組み合わせによって順位が変わるという、やや複雑な全体像です3。誤嚥性肺炎のリスクという観点では、口の中を清潔に保つ関わりも合わせて検討されており(脳卒中後の口腔ケアについて解説した記事)、バルーン拡張だけで肺炎リスク全体が解決するわけではないことも押さえておきたい点です。

SECTION 05
エビデンスの質と限界/まだ分かっていないこと
エビデンスの質と限界
1. 2026年のネットワークメタアナリシスの著者自身が、組み入れた36研究の多くでサンプルサイズが小さく、割り付けの隠蔽が明記されていたのは1研究のみ、参加者や評価者への盲検化が行われていたのも4研究のみだったと明記しています3

2. 「有効率」という指標そのものが国際的に標準化された評価尺度ではなく、研究ごとに基準が異なる可能性があると著者が注意を促しています3

3. 有効率の指標では出版バイアスを示唆する結果(Egger検定 p=0.006)も出ており、良い結果ほど発表されやすい可能性があります3

4. 組み入れられた研究の多くが中国語での発表で、対象者の重症度・発症時期・刺激条件のばらつきが結果に影響している可能性があります3

5. 咽頭バルーン筋トレーニング(PBMRT)は、2026年に報告された1件の小規模な単施設ランダム化比較試験(59名完了)のみで検討されており、著者自身が「サンプルサイズが控えめで介入期間も短く、長期追跡がないため、予備的な結果として今後の大規模多施設試験での確認が必要」と述べています4

6. 「拡張すると食道入口部の筋肉の働き方が変わる」というメカニズムを調べた古い生理学的研究(高解像度マノメトリーによる圧測定)もありますが、規模が小さく、その後の大規模な追試は限られています5
まだ分かっていないこと
1. どのような重症度・発症時期の方に最も合うのかは確立していません。研究の多くは脳幹部の脳卒中で発症から比較的早い時期の方を対象にしており、慢性期(発症から半年以上)の方への当てはまりは十分に検証されていません1,2,3

2. 最適なバルーンの太さ・膨らませ方・回数・期間は研究によってさまざまで、統一された基準はまだありません1,2,3

3. 検査上のスコアが動くことと、実際に「口から安全に食べ続けられるか」「誤嚥性肺炎の発生が減るか」が長期的に結びつくかは、十分に検証されていません1,2,3

4. 咽頭バルーン筋トレーニング(PBMRT)と頸部食道バルーニング拡張術(カテーテル拡張)のどちらが誰に向いているか、両者を比較した研究はまだありません1,4

5. 研究数がまだ少ないため、長期的な安全性や再発率についての情報も限られています3
⚠ ただし、忘れてはいけない大切なこと
頸部食道バルーニング拡張術は、鼻からカテーテルを挿入する医療的な手技です。出血しやすい方、食道に狭窄や腫瘍がある方、逆流性食道炎が強い方、頭頸部の手術直後の方、指示が入りにくく安全に協力できない方などでは、実施の可否を慎重に判断する必要があります。ご自身やご家族が自己判断でカテーテルや器具を用意して行うことは絶対にお控えください。飲み込みにくさは誤嚥性肺炎や低栄養につながる可能性がある問題であり、実施の適否は医師・言語聴覚士による嚥下評価(VFSS・内視鏡検査など)をもとに判断されます。ご検討の際は必ず主治医・担当の言語聴覚士にご相談ください。
言語聴覚士が嚥下評価と食事環境を説明する場面
飲み込みにくさの原因や安全性を評価したうえで、適切な方法を選びます
SECTION 06
どんな人に向いていて、どんな人は注意が必要か
検討されることが多い方
造影検査(VFSS)や内視鏡検査で輪状咽頭筋アカラジア(食道入口部の開きにくさ)が確認された方1,2,3
脳幹部の脳卒中による嚥下障害で、通常の嚥下訓練だけでは経口摂取の再開が進みにくい方1,2
多くの研究では発症から比較的早い時期(急性期〜亜急性期)の方が対象となっています1,2,3
注意が必要な場面
出血しやすい状態、食道の狭窄・腫瘍、強い逆流性食道炎がある場合
鼻や頭頸部の手術直後、重度の意識障害・認知機能低下で指示に沿った協力が難しい場合
強い咽頭反射や不快感で手技への耐容性が低い場合
いずれも医師・言語聴覚士による個別の判断が必要で、研究で報告された合併症(粘膜出血・喉頭浮腫など)も踏まえた実施が前提です1
SECTION 07
回数・頻度・期間の目安
研究で報告された実施条件(頸部食道バルーニング拡張術)
頻度:1日1回、週5日が中心1,2
期間:研究によって差があり、経口摂取の回復に応じて9日前後で終了した報告から1、2週間・3週間という固定期間で行われた報告まであります2
1回あたりの操作:バルーンを膨らませてゆっくり引き抜く動作を5〜8往復程度2
組み合わせ:いずれも専門職による通常の嚥下訓練に上乗せする形で実施1,2,3

咽頭バルーン筋トレーニング(PBMRT)については、まだ研究が1件のみのため、頻度・期間の「目安」と言えるだけの情報が揃っていません4。いずれの方式も、回数や期間は対象者の状態によって医療者が個別に調整するものであり、この記事の数字はあくまで研究で用いられた条件の紹介です。息を吐く力を鍛える訓練など、他の頻度設定の目安を知りたい場合は、こちらの記事も参考になります(脳卒中後の呼吸筋トレーニングについて解説した記事)。

SECTION 08
Journey Rehabでの考え方と正直なまとめ
🏥 Journey Rehabの支援方針
Journey Rehabは訪問型の自費リハビリで、輪状咽頭筋アカラジアへのカテーテル拡張のような、鼻からの器具挿入を伴う嚥下の手技そのものは行っていません。嚥下の評価と直接的な訓練は、医師・言語聴覚士が担う領域だと考えています。

そのうえで、むせや飲み込みにくさについてご相談をいただいた際には、食事の姿勢が崩れていないか、座位や体幹の安定性が保てているか、食卓までの移動や上肢の動作で疲れてしまっていないかなど、身体面から確認できることを整理し、必要に応じて主治医・言語聴覚士へのご相談をお勧めするようにしています。バルーン拡張法についてご質問をいただいた際も、この記事と同じように「何が示されていて、何がまだ分かっていないか」を数字とあわせてお伝えしています。
食事姿勢と体幹の安定を支える訪問リハビリの場面
Journey Rehabでは、専門領域を尊重しながら姿勢・座位・生活動作を支援します
この記事のまとめ
1. バルーン拡張法には、カテーテルで機械的に広げる方式と、抵抗運動として飲み込む方式(PBMRT)があります1,4
2. カテーテル拡張は、通常の嚥下訓練に上乗せしたときに、固形物・粥状食の再開が早まったとする報告が複数あります1,2
3. 一方で水分摂取の再開時期には差が出なかった報告もあり、すべてのアウトカムで一様に良くなるわけではありません1
4. 36試験・1,816名のネットワークメタアナリシスでは、バルーン拡張単独は通常訓練より一定の指標で差が示されましたが、他の介入と組み合わせた群のほうが順位は高い結果でした3
5. 全体としての研究の質はまだ高くなく、盲検化・割り付け隠蔽が不十分な研究が多く含まれています3
6. 咽頭バルーン筋トレーニング(PBMRT)は登場したばかりで、確認できる研究は1件のみです4
7. これらはいずれも医療的な評価・管理のもとで行う手技・運動であり、自己判断での実施はお控えください
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の医療行為・診断・治療を推奨するものではありません。実施の可否や内容については、必ず担当の医師・言語聴覚士・リハビリテーション専門職にご相談ください。掲載している研究データは執筆時点のものであり、今後の研究によって解釈が変わる可能性があります。
Journey Rehabの訪問自費リハビリについて知りたい方へ
食事の姿勢や生活動作について、身体の状態を一緒に確認しながら進め方を考えます。
田中 光 作業療法士 Journey Rehab代表
執筆者:株式会社Journey Rehab 代表取締役|田中 光
保有資格
修士(作業療法学)
作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836(日本作業療法士協会)
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍
経歴
・2016年:初台リハビリテーション病院に入職。脳卒中後遺症の回復期リハに従事
・2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立
・2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中
研究活動
・第57回日本作業療法学会(2023)ポスター発表
・第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表
論文執筆
・田中 光, 石橋 裕, 佐々木 智也, 坂本 泰平. (2025). 本邦における介護予防・日常生活支援総合事業におけるスコーピングレビュー. 日本老年療法学会誌, 4(1). 日本老年療法学会.
FAQ
よくある質問
Q. バルーン拡張法は自宅で自分で行えますか?
A. 頸部食道バルーニング拡張術は、鼻からカテーテルを挿入する医療的な手技のため、自宅でご自身やご家族が行うことはできません。研究では医療機関で専門職が実施しています1,2。咽頭バルーン筋トレーニングについても、まだ研究が1件のみで実施方法が確立していないため、必ず専門職の指導のもとで検討してください4
Q. どのくらいの期間で経口摂取が再開できますか?
A. 研究によって幅がありますが、ある試験では固形食の再開までの中央値が7日、粥状食が5日と報告されています1。ただしこれは対照群(通常カテーテル)でも13日・10日と、多くの方が時間差はあっても再開できています。個人差が大きい部分であり、保証できるものではありません。
Q. 痛みや合併症はありますか?
A. 研究では、粘膜出血や喉頭浮腫が一定の頻度で報告されています。ある試験では新型バルーンで5.9%、通常カテーテルで21〜28.6%でしたが、統計的な差ではありませんでした1。別の試験では両群とも有害事象の報告はありませんでした2。違和感や痛みがあるときは、その場で担当者にお伝えください。
Q. 咽頭バルーン筋トレーニングと電気刺激は同じものですか?
A. 別の方法です。咽頭バルーン筋トレーニングは水を入れたバルーンの抵抗に逆らって飲み込む運動で、電気刺激は皮膚やのどに電極を当てて筋肉に電気を流す方法です。詳しくはこちらの記事で解説しています(脳卒中後の飲み込みに対する電気刺激(NMES)について解説した記事)。どちらも通常の嚥下訓練に上乗せする形で研究されています。
Q. どんな検査を受けてから検討するものですか?
A. 研究では、造影検査(VFSS)や内視鏡検査で輪状咽頭筋アカラジア(食道入口部の開きにくさ)が確認された方が対象になっています1,2,3。むせや飲み込みにくさがあるからといって、必ずしもこの方法が適応になるとは限りません。まずは医師・言語聴覚士による嚥下評価を受けることが前提です。
Q. 発症から時間が経っていても対象になりますか?
A. 現時点でははっきりしたことは言えません。紹介した研究の多くは発症から比較的早い時期(急性期〜亜急性期)の方を対象にしており、慢性期の方への当てはまりは十分に検証されていません1,2,3。時間が経過している場合も、まずは主治医・言語聴覚士にご相談ください。
Q. Journey Rehabでバルーン拡張法を受けられますか?
A. 当社では実施していません。嚥下の評価・カテーテルを用いた手技は医師・言語聴覚士の専門領域であり、当社の訪問リハビリでは身体の動きや生活動作を中心に担当しています。飲み込みについてお困りの際は、まず主治医や言語聴覚士への相談をおすすめしています。
Q. 家族としてできることはありますか?
A. 食事中の姿勢を整える、急がずに食べられる環境をつくる、口の中を清潔に保つといった日常の関わりは、専門職の指導のもとで続けやすい部分です。誤嚥性肺炎のリスクという観点からは口腔ケアについての研究も進んでいます(脳卒中後の口腔ケアについて解説した記事)。具体的な方法は、担当の言語聴覚士・歯科衛生士にご確認ください。
運営主体・利益相反について
本記事は、自費リハビリサービスを運営する株式会社Journey Rehabが作成しています。記事内には当社サービスの案内を含みますが、文献の選定と研究結果の記載では利益だけを強調せず、統計的に差が示されなかった結果、研究の限界、安全上の注意も併記しています。当社は頸部食道バルーニング拡張術・咽頭バルーン筋トレーニングのいずれも提供していません。外部医師による監修記事ではありません。最終更新:2026年8月22日。
REFERENCES
参考文献
1. Hu T, Cai Y, Shen Z, Chen A, Wu Y, Song T, Liu J, Liu C, Gong F. A Novel Balloon Catheter-based Dilation Intervention for Patients with Cricopharyngeus Achalasia After Stroke: A Randomized Study. Dysphagia. 2022. PMID: 35083559.

2. Liu C, Li Y, Tan Z, Liu H, Zhou M, Li J, Liang J, Xiao L. Endoscopic botulinum toxin injection combined with balloon dilatation for treatment of cricopharyngeal achalasia in patient with brainstem stroke. Zhong Nan Da Xue Xue Bao Yi Xue Ban. 2023. PMID: 37875360.

3. Yue J, Wang X, Li C, Wang L, Li X. Comparative efficacy of different interventions for post-stroke cricopharyngeal achalasia: a systematic review and network meta-analysis. Frontiers in Neurology. 2026. PMID: 42037693.

4. Liang C, Xu S, Shan Z, Chen S, Huang Z, Su X, Jiang H, Jia J. Efficacy of pharyngeal balloon muscle resistance treatment in post-stroke dysphagia: A randomized controlled trial. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2026. PMID: 42373058.

5. Lan Y, Xu G, Dou Z, Wan G, Yu F, Lin T. Biomechanical changes in the pharynx and upper esophageal sphincter after modified balloon dilatation in brainstem stroke patients with dysphagia. Neurogastroenterology and Motility. 2013. PMID: 23941282.