慢性腰痛の遠隔リハビリ(オンライン運動指導)とは?対面との比較研究と限界を正直に解説

· 自費リハビリ情報
田中 光 作業療法士 Journey Rehab代表
田中 光(作業療法士)|株式会社Journey Rehab 代表
認定作業療法士/修士(作業療法学)
東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍
初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立
慢性腰痛の遠隔リハビリ(オンライン運動指導)とは?対面との比較研究と限界を正直に解説

「腰痛で通院を続けているけれど、毎回通うのが正直しんどい」「オンラインでの運動指導は、通うのと同じくらい意味があるのだろうか」——こうしたご質問をいただくことが増えました。3か月以上続く腰痛は、画像で原因がはっきりしないことが多く、運動を続けることが柱になります。だからこそ「続けられる形」であることが重要です。近年、ビデオ通話やアプリを使った遠隔での運動指導について、対面と直接比べた研究が増えてきました。結論から正直にお伝えすると、痛みや生活のしづらさの指標では、遠隔と対面のどちらが明確に優れているとは言い切れず、時期や指標によって順位が入れ替わります1。この記事では、その中身を整理します。

慢性腰痛の方が自宅でオンライン運動指導を受ける場面
遠隔リハビリでは、通信機器を使って自宅で運動指導や経過確認を受けます。
この記事の要点
・遠隔リハビリとは、ビデオ通話、アプリ、動画などを使って自宅で運動指導を受ける方法です1
・20件の無作為化比較試験・1,854人をまとめたベイズ流ネットワークメタアナリシス(2026年)では、12週時点の痛みの指標で遠隔リハビリの順位づけが最も高く(SUCRA 87.2%)、通常のケアとの標準化平均差は1.23(95%信用区間0.89〜1.55、中等度の確実性)でした1
・一方、4週時点の生活のしづらさの指標では対面が最も高い順位(SUCRA 98.2%)で、運動への恐怖心の指標でも対面が上位でした1。著者らは両者を「競い合うものではなく補い合うもの」と表現しています。
・34人が参加した無作為化比較試験では、AIが姿勢を認識する仕組みを加えた群で、4週後の痛みの点数が動画のみの群より1.08点低い結果でした(95%信頼区間−1.68〜−0.49)2
・50人を対象とした実践的な試験(2026年)では、生活のしづらさの指標で対面に劣らないと示された一方、痛みの強さでは事前に決めた基準を満たしませんでした3
SECTION 01
遠隔リハビリとはどういうものか

遠隔リハビリと一口に言っても、中身にはかなりの幅があります。研究で使われているものを整理すると、ビデオ通話で療法士とリアルタイムにやりとりする形、スマートフォンのアプリに送られてくる運動の動画を各自で行う形、ウェブ上のプログラムに沿って進める形、そして最近ではカメラで身体の動きを読み取り、その場で姿勢を指摘してくれる仕組みを組み込んだものまであります1,2

この違いは小さくありません。療法士が同じ時間につながっているか、それとも各自のペースで動画を見るだけかで、続けやすさも、危ないやり方を修正できるかどうかも変わってきます。研究の数値を読むときは、「どういう形の遠隔なのか」を確認することが大切です。なお、脳卒中の領域でも同様の研究が進んでおり、考え方の共通点があります。脳卒中後の遠隔リハビリについて解説した記事もあわせてご覧ください。

前提として一つ確認しておきたいことがあります。3か月以上続く腰痛の多くは、はっきりした原因が特定できないタイプです。一方で、じっとしていても強い痛みが続く、足のしびれや力の入りにくさがある、発熱や体重減少を伴うといった場合は、別の病気が背景にある可能性があります。こうしたときは、遠隔かどうか以前に、まず医療機関の受診が必要です。足のしびれについては脊柱管狭窄症について解説した記事でも触れています。

SECTION 02
研究で分かっていること
遠隔と対面を比べたネットワークメタアナリシス(2026年)
慢性の非特異的腰痛を対象に、AI支援の遠隔リハビリ、通常の遠隔リハビリ、対面リハビリ、通常のケアの4つを比べた分析です。20件の無作為化比較試験・1,854人が含まれ、介入期間は4〜12週間、頻度は週1〜5回、1回30〜60分という範囲でした。痛みの指標では、12週時点で遠隔リハビリの順位が最も高く(SUCRA 87.2%)、通常のケアとの標準化平均差は1.23(95%信用区間0.89〜1.55、中等度の確実性)、対面は1.09(0.58〜1.61、中等度の確実性)でした。生活のしづらさの指標(ODI)では時期によって順位が入れ替わり、4週では対面が最上位(SUCRA 98.2%、通常のケアとの平均差9.69、低い確実性)、8週では遠隔が最上位(SUCRA 90.4%、平均差4.14、高い確実性)、12週では再び対面が最上位でした。運動への恐怖心の指標では対面が最上位(SUCRA 99%)です。身体面の生活の質では遠隔で差が示され(平均差6.05、中等度の確実性)、精神面では明らかな差はありませんでした。著者らは、遠隔と対面は競い合うものではなく補い合うものだと述べています1
AIによる姿勢認識を加えた試験(2025年)
3か月以上続く非特異的腰痛があり、痛みの点数が平均3以上、18〜75歳の方38人を割り付け、34人を分析した試験です。両群とも、体幹深部の筋、柔軟性、マッケンジー体操、呼吸の運動を1回30〜45分、週3回、4週間行いました。違いは、一方の群だけがAIによる身体の要点認識を用いて、その場で姿勢の情報が返ってくる点です。4週後、最も強かった痛みの点数はAI群で3.00、動画のみの群で1.50下がり、群間の調整平均差は−1.08(95%信頼区間−1.68〜−0.49、p<0.001)でした。生活のしづらさの指標(RMDQ)でも差がみられ(調整差−0.91、p=0.002)、8週時点でも痛みの差が保たれています。脱落はAI群1名、動画のみの群3名でした2
実際の診療に近い形で比べた試験(2026年)
慢性腰痛のある成人50人を、遠隔リハビリと通常の外来での対面リハビリに割り付けた実践的な試験です。遠隔群には個別の運動、教育、自己管理の支援が遠隔で提供されました。結果として、両群とも各指標で同程度の変化を示し、群間に意味のある差はありませんでした。ただし、あらかじめ決めておいた基準に照らすと、痛みの強さについては「対面に劣らない」とまでは示せませんでした。一方、生活のしづらさの指標(ODI)では対面に劣らないと示されています(調整平均差−0.82点、95%信頼区間−5.13〜3.49)。著者らは、生活動作のしやすさを主な目的とする場合には遠隔も選択肢になりうるが、痛みを和らげることが主な目的の場合は対象者の選び方に注意が必要だと結論づけています3。この文献は公開されている要旨に基づいて紹介しており、ここでは補助的な情報として扱っています。
慢性腰痛の方の立ち上がり動作を対面で確認する場面
対面では、画面越しには分かりにくい動きや環境をその場で確認できます。
SECTION 03
エビデンスの質と限界・まだ分かっていないこと
エビデンスの質と限界
まとめた分析の著者らは、いくつもの限界を挙げています。まず、介入の中身がばらばらであることです。期間は4〜12週間、頻度も使う技術も研究ごとに異なり、これらをひとまとめに比べる前提が崩れている可能性があると述べられています。次に盲検化です。遠隔・対面・通常のケアは見た目からして違うため、参加者と実施者を盲検化することは実質的に不可能で、この点は全研究で高リスクと評価されています。順位づけの指標(SUCRA)についても、相対的な傾向を示すもので確定的な優劣ではなく、根拠が弱い場合は誤解を招きうると注意されています。加えて、個々の参加者のデータが得られないため、年齢や痛みの期間ごとの分析はできていません。エビデンスの確実性は「非常に低い」から「高い」まで幅があり、特にAI支援の遠隔については低い〜非常に低い確実性にとどまります1。AIを用いた試験も34人と小規模で、痛みが軽〜中等度の中年・若年層が中心だったため、痛みが強い方や高齢の方に当てはまるかは不明だと著者らが述べています2
まだ分かっていないこと
長期的にどうなるかは十分に分かっていません。多くの研究の追跡は4〜12週間程度で、AIを用いた試験も4週の介入と8週までの確認にとどまります1,2。どの形の遠隔が最も適しているのかも定まっていません。リアルタイムのやりとりがある形と、動画を各自で行う形を直接比べた質の高い研究は限られます。誰に向いているのかも未確立です。痛みが強い方、高齢の方、機器の操作に不慣れな方については、研究の対象に十分含まれていません2。費用の面も未検証で、ほとんどの研究が費用のデータを報告していないため経済的な評価ができないと指摘されています1。そして、痛みの点数が下がることと、仕事や家事が実際にしやすくなることが一致するとは限りません。研究全体としては一定の傾向がありますが、対象者の条件や介入内容が研究ごとに異なるため、すべての方に同じ結果が当てはまるわけではありません。
SECTION 04
何が期待でき、何ははっきりしないか

整理します。期待できることとして、通常のケアと比べれば、遠隔でも対面でも痛みや生活のしづらさの指標に良い方向の差が示されています1。つまり、通うのが難しいから何もしないという状態より、遠隔であっても運動を続けるほうが研究の示す方向には沿っています。また、身体面の生活の質では遠隔で差が示されました1。移動の負担がなく、生活の中に組み込みやすいという実務的な利点もあります。

一方ではっきりしないこともあります。遠隔と対面のどちらが優れているかは、指標と時期で入れ替わります1。特に、動くことへの恐怖心が強い場合には対面のほうが上位という結果が出ており1、痛みを和らげることを主目的にする場合は対象者の選び方に注意が必要だと指摘されています3。「安いから」「楽だから」という理由だけで遠隔を選ぶのではなく、何を目的にするかで考えるのが現実的です。

SECTION 05
どんな人に向いているか

研究の対象を踏まえると、相性がよさそうなのは次のような方です。3か月以上続く腰痛があり、原因となる別の病気が医師の診察で否定されている方。通院の時間や移動が負担になっている方。生活動作のしやすさを主な目的にしている方3。そして、機器の操作にある程度慣れている方です。

逆に、慎重に考えたほうがよい場合もあります。痛みが強く、動くことへの恐怖心が大きい場合は、対面のほうが上位という結果が出ています1。じっとしていても痛む、足のしびれや力の入りにくさがある、発熱や体重減少があるといった場合は、運動の前に受診が必要です。また、骨に問題がある可能性が指摘されている場合も、自己判断で運動を始めるのは避けてください。圧迫骨折の後の運動については腰椎圧迫骨折後のストレッチについて解説した記事で扱っています。

⚠ ただし、忘れてはいけない大切なこと
遠隔での指導には、その場で身体に触れて確認できないという限界があります。画面越しでは、痛みの出方や、動作のわずかな崩れを捉えきれないことがあります。運動中に痛みが強くなった場合は、その場で中止してください。しびれが広がる、力が入らない、排尿の異常があるといった症状は、すぐに医療機関を受診すべきものです。また、ここで紹介した研究の運動内容は、療法士が個別に設定したものであり、動画を見て同じ動作をすれば同じ結果になるという意味ではありません。ここで紹介した研究結果は、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。
SECTION 06
頻度・期間の目安

研究で用いられた設定を紹介します。まとめた分析に含まれた研究では、1回30〜60分、週1〜5回、4〜12週間という範囲でした1。AIを用いた試験では、1回30〜45分、週3回を4週間で、内容は体幹深部の筋、柔軟性、マッケンジー体操、呼吸の運動という組み合わせです2。おおむね「週2〜3回を1〜3か月」というあたりが、多くの研究に共通する幅だと言えます。

実際に始めるときは、量よりも続く形を優先するのが現実的です。1回の時間を短くしてでも、生活の決まった場面に結びつけたほうが習慣になりやすい傾向があります。朝の歯磨きの後、入浴前など、すでにある習慣の直後に置くのが一つの工夫です。ただしこれは研究で定められた手順ではなく、あくまで考え方の目安としてお読みください。運動の内容や強さは、腰の状態によって向き・不向きが異なりますので、開始前に専門職と確認することをおすすめします。

慢性腰痛の方が専門職と日常生活動作を練習する場面
運動を続けるには、実際の生活動作へ無理なく結びつける工夫も大切です。
SECTION 07
Journey Rehabでお手伝いできること

Journey Rehabは訪問を基本としており、ご自宅の環境や、実際に痛みが出る動作をその場で確認できることを大切にしています。腰の状態や生活の中でつらい場面を伺いながら、どのような運動をどのくらいの量で行うかを一緒に整理していきます。ご希望や状況に応じて、ご自宅で続けやすい形をご提案します。

Journey Rehabの訪問自費リハビリについて知りたい方へ
腰の状態や生活動作について、今の身体の状態を一緒に確認しながら考えます。
免責事項
この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。診断、治療、医療行為の推奨を目的とするものではありません。ここで紹介した研究は、原因となる別の病気が否定された慢性の腰痛を対象としています。ご自身の腰痛がどのタイプかは、医師の診察が必要です。運動の内容や量は、痛みの程度、骨や神経の状態、併存する病気によって向き・不向きが異なります。実施を検討する際は、まず主治医・リハビリ専門職に相談してください。運動中に痛みが強くなった場合は中止してください。研究知見は執筆時点の情報であり、今後変わる可能性があります。
田中 光 作業療法士 Journey Rehab代表
執筆者:株式会社Journey Rehab 代表取締役|田中 光
保有資格
修士(作業療法学)/作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍

経歴
2016年:初台リハビリテーション病院に入職。脳卒中後遺症の回復期リハに従事
2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立
2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中

研究活動
第57回日本作業療法学会(2023)ポスター発表/第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表

論文執筆
田中 光, 石橋 裕, 佐々木 智也, 坂本 泰平. (2025). 本邦における介護予防・日常生活支援総合事業におけるスコーピングレビュー. 日本老年療法学会誌, 4(1).
FAQ
よくある質問
遠隔と対面、どちらを選べばよいですか?
研究では、指標と時期によって順位が入れ替わっており、どちらか一方が明確に優れているとは示されていません1。通院の負担、動くことへの不安の強さ、何を目的にするかで考えるのが現実的です。迷う場合は担当の専門職に相談してください。
動画を見て自分でやるだけでもよいですか?
研究で用いられた遠隔プログラムは、個別に内容が設定され、教育や自己管理の支援が組み合わされていました3。動画を見るだけの形と同じとは限りません。少なくとも最初は、内容が自分の状態に合っているか専門職に確認することをおすすめします。
どのくらいで変化が出ますか?
研究では4週の時点から指標の差が報告されています2。ただし個人差が大きく、期間中ずっと同じペースで変わるわけでもありません。数字が動かない時期があっても、取り組みが足りないという意味ではありません。
痛みが強い日は休んだほうがよいですか?
運動中に痛みが強くなる場合は中止してください。休むかどうか、量をどう調整するかは状態によって異なりますので、あらかじめ専門職と目安を決めておくと迷いにくくなります。
AIを使うものは特別に優れているのですか?
34人の試験では、姿勢の情報が返ってくる仕組みを加えた群で差が報告されました2。ただしまとめた分析では、AI支援の遠隔についてのエビデンスの確実性は低い〜非常に低いとされています1。現時点では、期待しすぎないほうがよい段階です。
高齢でも同じように考えてよいですか?
AIを用いた試験の参加者は中年・若年層が中心で、高齢の方に当てはまるかは分からないと著者らが述べています2。機器の操作の負担も含めて、個別に検討したほうがよい部分です。
受診したほうがよいのはどんなときですか?
じっとしていても強い痛みが続く、足のしびれや力の入りにくさが出てきた、発熱や体重減少を伴う、排尿の異常があるといった場合です。これらは運動の前に医療機関で確認が必要なサインとされています。
REFERENCES
参考文献
1. Gu P, Yan Y, Tang H, Jia Y, Wen Y, et al. Comparative Effectiveness of AI-Assisted Telerehabilitation, Telerehabilitation, In-Person Care, and Usual Care for Chronic Nonspecific Low Back Pain: Bayesian Network Meta-Analysis. Journal of Medical Internet Research. 2026;28:e85410. DOI:10.2196/85410. PMID:42398934. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42398934/
2. Xiao C, Zhao Y, Li G, Zhang Z, Liu S, et al. Clinical Efficacy of Multimodal Exercise Telerehabilitation Based on AI for Chronic Nonspecific Low Back Pain: Randomized Controlled Trial. JMIR mHealth and uHealth. 2025;13:e56176. DOI:10.2196/56176. PMID:40402551. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40402551/
3. Alahmri F, Alkhawajah HA, Nuhmani S, Muaidi Q. Effectiveness of telerehabilitation in managing chronic low back pain: a pragmatic randomized controlled non-inferiority trial. International Journal of Medical Informatics. 2026;208:106540. DOI:10.1016/j.ijmedinf.2026.106540. PMID:42284831. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42284831/