
東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍
初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立
変形性膝関節症と減量・体重管理|膝の痛みと運動療法の研究、どこまで分かっているか正直に解説
「体重を落とすと膝がラクになりますよ」と言われたことのある方は多いと思います。一方で、「何キロ減らせばいいのか」「食事だけでいいのか、運動も必要なのか」「そもそも本当に変わるのか」といった具体的なところは、あまり説明されないまま終わってしまいがちです。
結論から正直にお伝えします。太り気味・肥満のある変形性膝関節症では、減量と運動を組み合わせた取り組みが、膝の痛みや動きに関する研究で一定の裏づけを持っています。ただし、変化の大きさは「劇的」とは言えず、食事だけで運動を伴わない場合は痛みが変わりにくい、という報告もあります。この記事では、大規模なランダム化比較試験(IDEA試験・WE-CAN試験)とシステマティックレビューをもとに、分かっていることと限界を整理します。
体重と膝の関係
変形性膝関節症は、膝の軟骨がすり減り、関節に痛みや動かしにくさが出る状態です。体重が増えると、歩行時に膝へかかる力(関節圧縮力)が大きくなります。さらに、脂肪組織から出る物質が関節内の炎症に関わることも指摘されており、体重には「力学的な負担」と「炎症」の両面から膝への影響があると考えられています1。
実際、太り気味・肥満のある高齢者を対象にした研究では、減量によって歩行時の膝関節への負担が減ることが報告されています7。ただし、これは「体重を減らせば必ず痛みが減る」という話とは別で、痛みや生活の変化はもう少し複雑です。

どんな方法が研究されてきたか
1日の摂取エネルギーを抑える、置き換え食(ミールリプレイス)を使うなど。研究では「体重の10%以上を減らす」ことを目標にしたものが多く見られます1。
ウォーキングなどの有酸素運動と、太ももを中心とした筋力トレーニングを組み合わせるものが中心です。研究では週3回程度のプログラムがよく使われています1。
上の2つを同時に行うもの。後述のとおり、痛みへの結果はこの組み合わせが比較的良い傾向にあります。
行動を続けるための面談や目標設定などを組み合わせるプログラムも研究されています5。
運動の種目そのものについては、変形性膝関節症全体を対象にした2024年のコクランレビューで「運動の種類による差ははっきりしなかった」とされています4。床の条件を変えた筋力運動の話は変形性膝関節症と不安定な床面での筋力トレーニングについて解説した記事で扱っています。
研究でわかっていること
太り気味・肥満(BMI 27〜41)で膝の痛みとレントゲン所見のある55歳以上の方を、「食事+運動」「食事のみ」「運動のみ」の3グループに分けた試験です。18か月後の体重減少は、食事+運動が10.6kg(11.4%)、食事のみが8.9kg(9.5%)、運動のみが1.8kg(2.0%)でした。歩行時の膝関節への負担と血液中の炎症の指標(IL-6)は、食事を含むグループのほうが運動のみより小さくなりました。痛み(WOMAC、0〜20点)は食事+運動が3.6点で、食事のみ(4.8点)・運動のみ(4.7点)より軽く、身体機能・6分間歩行・身体面の生活の質でも食事+運動が良い結果でした1。
IDEA試験のプログラムを、研究施設ではなく地域(米ノースカロライナ州の都市部・農村部)で実施できる形に変え、「食事+運動」と「注意対照(情報提供のみ)」を比べた試験です。18か月後、膝の痛み(WOMAC、0〜20点)は食事+運動が5.0点、対照が5.5点で、その差は−0.6点(95%信頼区間 −1.0〜−0.1、p=0.02)でした。統計的な差はありましたが、臨床的に意味のある差の目安(1.6点)には届かず、著者らは「差は小さく、臨床的な意味ははっきりしない」とまとめています。体重は食事+運動で−7.7kg(8%)、対照で−1.7kg(2%)でした2。
食事のみと、食事+運動を分けて解析した研究です。食事のみでは痛みは有意に減りませんでした(標準化平均差 −0.13、95%信頼区間 −0.37〜0.10)。一方、食事+運動では中程度の痛みの軽減が見られました(−0.37、−0.69〜−0.04)。身体機能は、食事のみ(−0.30)でも食事+運動(−0.32)でも中程度に良くなりました。炎症の指標については結果が一貫しませんでした3。
変形性膝関節症に対する陸上での運動をまとめたものです。運動は短期的に痛み・身体機能・生活の質を良くする可能性がありますが、確実性は低〜中程度で、変化の大きさは「臨床的に意味があるとは言い切れない」水準でした。減量プログラムなどに運動を足した場合も、足さない場合より痛みや機能が良くなる傾向が示されています4。
これらをまとめると、「食事による減量に運動を組み合わせると、痛みと機能に中程度の良い変化が期待されるが、その大きさは控えめ」というのが現時点での姿です。食事だけ・運動だけよりも、両方を組み合わせるほうが痛みには結びつきやすいという点は、複数の研究で共通しています。なお、あるプログラムの二次解析では、体重の減少そのものに加えて、運動への自信(自己効力感)や「動くことへの怖さ」がやわらぐことも、痛みや機能の変化に部分的に関わっていたと報告されています6。ダイエット中に筋肉を落としすぎない工夫については高齢者のサルコペニアと運動・たんぱく質について解説した記事も参考になります。
どのくらい減らすと変化が期待されるか
減量の方法を横並びで比べた解析です。痛み(0〜20点)で対照を上回ったのは「食事+運動」だけ(−2.2、95%信頼区間 −4.1〜−0.21)でした。そのうえで、方法によらず「体重の7%以上を減らせたとき」に痛みの軽減が見込まれる、という関係が示されています5。
IDEA試験でも、グループにかかわらず「体重の10%以上減った人」で膝への負担・炎症・痛み・機能がより良くなっていました1。おおまかな目安として、研究では「体重の少なくとも7〜10%」がひとつの基準として使われています。ただし、これは平均的な傾向であり、同じだけ減らしても変化の出方には個人差があります。
急な食事制限は、脂肪だけでなく筋肉や骨も減らしてしまうことがあります。高齢の方では、たんぱく質をしっかりとりながら、筋力運動を並行して行うことが大切です。糖尿病や腎臓の病気などで食事管理を受けている方は、必ず主治医・管理栄養士に相談してから始めてください。

エビデンスの質と限界・まだ分かっていないこと
つまり、「◯kg減らせば痛みが△点減る」と個人に当てはめて言える段階ではありません。研究で示されている方向性(食事と運動を組み合わせ、体重の7〜10%を目安に、無理なく続ける)を踏まえつつ、痛みや生活の変化を見ながら調整していく進め方が現実的です。手術という選択肢の位置づけは人工膝関節全置換術(TKA)後のリハビリについて解説した記事でも触れています。
生活のなかでの進め方
体重、痛みが強い動作(階段・立ち上がり・長く歩いたとき)、歩ける距離を記録します。変化を判断する基準になります。
研究では、食事だけより食事と運動を組み合わせたほうが痛みに結びつきやすいという結果です3。どちらか一方に偏らない形が現実的です。
数か月〜1年かけて体重の7〜10%を目安に、というのが研究での基準です1,5。1か月に体重の1〜2%程度のゆるやかなペースが、筋肉を保ちやすく続けやすい範囲です。
減らすのは脂肪、残したいのは筋肉です。毎食のたんぱく質(肉・魚・卵・大豆・乳製品)と、太もも・おしりの筋力運動を組み合わせます。膝が痛い時期は、椅子からの立ち座りや、痛みの出にくい範囲での運動から始めます。
ウォーキング、自転車(エルゴメーター)、水中歩行など。歩くと痛い時期は、自転車や水中運動で運動量を確保する方法があります。
数日でわかるものではありません。体重・痛み・歩ける距離を記録しながら、数週間ごとに内容を見直します。自己流の強い食事制限や、痛みを我慢しての運動は避け、専門職と確認しながら進めてください。
膝が急に腫れて熱を持つ、水がたまったように重い、じっとしていても強く痛む、膝がガクッと崩れる・引っかかって伸びない、発熱を伴う。これらは運動より先に整形外科の受診が必要です。

個別支援で確認する視点
実際の支援では、体重の推移、痛みが出る動作、1日の活動量と食事の傾向を一緒に確認します。減量のペースは持病や服薬(血糖・血圧の薬など)を踏まえて設定し、必要に応じて主治医・管理栄養士と連携します。運動は膝の状態に合わせて種目と量を選び、痛みの残り方や腫れを見ながら調整します。数か月で変化が乏しい場合や痛みが進む場合は、運動を続けることより整形外科への再相談を優先します。
本記事は一般的な医療情報の提供を目的としたもので、個別の診断や治療、栄養指導を代替するものではありません。膝の痛みは変形性膝関節症以外の原因でも起こります。減量や運動の内容は、体格・痛みの程度・持病によって大きく変わるため、開始前に主治医・リハビリ専門職・管理栄養士へご相談ください。掲載した研究データは執筆時点のもので、今後の研究によって解釈が変わる可能性があります。
作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836(日本作業療法士協会)
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍
・2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立
・2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中
・第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表
よくある質問
参考文献
2. Messier SP, et al. Effect of Diet and Exercise on Knee Pain in Patients With Osteoarthritis and Overweight or Obesity: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2022. PMID: 36511925. PMCID: PMC9856237.
3. Hall M, et al. Diet-induced weight loss alone or combined with exercise in overweight or obese people with knee osteoarthritis: A systematic review and meta-analysis. Semin Arthritis Rheum. 2019. PMID: 30072112.
4. Lawford BJ, et al. Exercise for osteoarthritis of the knee. Cochrane Database Syst Rev. 2024. PMID: 39625083. PMCID: PMC11613324.
5. Shahid A, et al. Comparison of weight loss interventions in overweight and obese adults with knee osteoarthritis: A systematic review and network meta-analysis of randomized trials. Osteoarthritis Cartilage. 2025. PMID: 39233046.
6. Lawford BJ, et al. How Does Exercise, With and Without Diet, Improve Pain and Function in Knee Osteoarthritis? A Secondary Analysis of a Randomized Controlled Trial Exploring Potential Mediators of Effects. Arthritis Care Res (Hoboken). 2023. PMID: 37128836. PMCID: PMC10952828.
7. Messier SP, et al. Weight loss reduces knee-joint loads in overweight and obese older adults with knee osteoarthritis. Arthritis Rheum. 2005. PMID: 15986358.
