Journey Rehab東京・千葉の訪問自費リハビリ 無料体験・ご相談
メニュー

変形性膝関節症の高出力レーザー療法(HILT)とは?研究と注意点

整形疾患情報 読了目安 約15分 文・田中 光(作業療法士)
田中 光 作業療法士 Journey Rehab代表

田中 光(作業療法士)|株式会社Journey Rehab 代表
認定作業療法士/修士(作業療法学)
東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍
初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立

変形性膝関節症の高出力レーザー療法(HILT)とは?研究と注意点
原稿作成:2026年9月16日

膝の変形性関節症(膝OA)で整形外科やクリニックに通っていると、「高出力レーザー療法(HILT)」という物理療法を勧められることがあります。結論から先にお伝えすると、複数のランダム化比較試験やメタアナリシスで、高出力レーザーと運動療法の併用群で、超音波療法と運動療法の併用群より痛みや機能の指標が改善した試験があります1,2。ただし、これと矛盾するように「運動療法に上乗せしても差がなかった」という質の高いランダム化比較試験も複数あります4,5,8。この記事では、研究で分かっていることと、まだはっきりしないことを、できるだけ正直に整理します。

SECTION 01
HILTとは何か・なぜ膝OAで研究されているのか

高出力レーザー療法(High-Intensity Laser Therapy、HILT)は、Nd:YAGレーザーなどを使い、低出力レーザー(LLLT)よりも高いエネルギーを短時間で組織に当てる物理療法です。皮膚表面での吸収・散乱を抑えながら、より深部まで届かせることを目的に開発されました1,6。臨床では「鎮痛モード」で数分間照射したあと、「生体刺激モード」でさらに数分間照射する、といった2段階の手順がよく使われます1

膝OAは軟骨のすり減りや滑膜の炎症、周囲筋力の低下などが絡み合って痛みや動きにくさを引き起こす病気です。運動療法が治療の土台になるという考え方は広く共有されており、痛みが強く運動に取り組みにくい時期の補助として、レーザーや超音波、電気刺激といった物理療法が組み合わされることがあります。HILTはそうした補助療法の一つとして、この10年ほど多くのランダム化比較試験で検証されてきました1,2,3。運動療法そのものの負荷量については、変形性膝関節症の筋トレの強さ・量について解説した記事でも整理しています。

高出力レーザー療法について医療者に相談する高齢者

SECTION 02
研究では痛みや機能が改善するとされているのか

HILTの研究は「プラセボレーザーとの比較」「他の物理療法との比較」「運動療法への上乗せ効果」など切り口がさまざまで、結果も一様ではありません。ここでは代表的な研究を紹介します。

タイの単施設ランダム化比較試験(2026年・66人・評価者盲検)

Kellgren-Lawrence分類グレードII〜III、平均64〜65歳の66人を、週2回・6週間のHILT併用運動群と超音波療法併用運動群に1対1で割り付けました。事前にサンプルサイズを算出したうえで実施され、主要評価項目である12週後のWOMAC総スコア(痛み・こわばり・身体機能を数値化した指標)の変化量は、HILT群が平均40.0点の改善、超音波群が平均8.2点の改善で、調整後の群間差は27.7点(95%信頼区間16.5〜39.0点、p<0.001)とHILT群が大きく上回りました。視覚アナログスケール(VAS)による痛みの評価や、Oxford Knee Score、膝OA専用の質問票(KOOS)でも、12週後まで一貫してHILT群の改善が大きいという結果でした1

12介入を比較したネットワークメタアナリシス(2025年・139のランダム化比較試験・9,644人)

膝ブレース、水中運動、運動療法、HILT、体外衝撃波療法(ESWT)、低出力レーザー、電気刺激、超音波など12種類の治療法を、痛み・機能・こわばりの指標ごとに順位づけした解析です。WOMAC総スコアでは膝ブレース・水中運動・運動療法に次いでHILTが4番目、痛みの評価(VAS安静時)では水中運動に次いで2番目に良好な順位となりました。一方で、超音波療法は多くの指標で最も順位が低いグループに入っています。著者は「膝ブレースが最も推奨され、次いで水中運動と運動療法」と結論づけており、HILTは有力な選択肢の一つという位置づけです2

システマティックレビュー・メタアナリシス(2020年・6件のランダム化比較試験)

HILTと対照(プラセボや他の介入)を比べた6件の試験を統合した解析では、痛み(VAS)の平均差は−1.18点(95%信頼区間−1.68〜−0.69)、WOMACのこわばりは標準化平均差−1.00、機能は−5.36と、いずれもHILT群で良好な結果でした。ただし著者自身が「対象となった研究数が限られており、大規模で質の高い追加試験が必要」と述べています3

一方で「上乗せ効果はなかった」とする質の高い試験も複数あります

トルコの二重盲検プラセボ対照試験(43膝、TENS・ホットパック・運動にHILTまたは偽照射を追加)では、両群とも12週後まで痛み・機能が改善しましたが、群間の差は認められませんでした4。同様に、電気刺激・ホットパック・運動にHILTを追加した別のランダム化比較試験(60人)でも、3か月後まで群間差はなく、著者は「専門職の指導下で行う運動療法プログラムそのものが、すべての指標の改善に有効だった」と結論づけています5。タイの軽度〜中等度膝OA患者40人を対象にした試験(週2回・6セッション)でも、HILT群と偽照射群のあいだに有意差は見られませんでした8

まとめると、「HILT+運動」を「超音波+運動」や「無治療」と比べた試験では良好な結果が多く報告されている一方、「運動療法にHILTを上乗せする効果」を厳密に検証した試験では差が出ないことも珍しくありません1,2,4,5,8。どの介入と比較したかによって結論が変わりやすいテーマだといえます。

SECTION 03
エビデンスの質と限界・まだ分かっていないこと

HILTの研究には、いくつかの共通した限界があります。多くの試験でレーザーを当てる治療者側の盲検化が難しく、期待による効果(プラセボ効果)を完全には排除できません1。対象者の性別に偏りがある試験(女性が9割以上)もあり、男性への一般化や性差の検討が難しいという指摘もあります1。ネットワークメタアナリシスでも、研究間で治療期間・セッション数がばらついていることや、多くの試験が小規模であることが限界として挙げられています2

まだ分かっていないこと

1. 運動療法だけで十分な方と、HILTの上乗せが意味を持つ方の見分け方。同じような研究デザインでも、結果が割れています1,4,5,8
2. 長期的な効果の持続。多くの試験は12週前後までの評価にとどまり、半年〜数年単位の追跡は限られています1,3
3. 出力・照射時間・回数の最適な組み合わせ。研究ごとにプロトコルが異なり、標準化された設定はまだありません2,3
4. 軟骨や関節構造そのものへの影響。一部の試験で軟骨厚の増加が報告されていますが、対照群と有意差がなかった試験もあり、一貫していません5,6
5. 重症度(グレード)別の効果の違い。軽度〜中等度を対象にした試験では上乗せ効果がはっきりしないという報告もあります8

研究の数値は、参加した集団の平均的な変化を示すものです。年齢・重症度・併存疾患・生活習慣は人によって大きく異なるため、ある研究で報告された改善が、そのままご自身に当てはまるとは限りません。

SECTION 04
何が変わりやすく、何は変わりにくいか
研究で前向きな変化が報告されているもの
・超音波療法や偽照射と比べたときの痛み・WOMACスコア1,3
・ネットワークメタアナリシスでの相対的な順位(12介入中では上位グループ)2
・一部の試験での関節可動域(膝の曲げ伸ばし)6,7
変わりにくい・はっきりしないもの
・すでに運動療法を行っている方への上乗せ効果(複数の質の高い試験で差がない)4,5,8
・軟骨の厚さなど構造面の変化(研究間で一貫しない)5,6
・長期(半年以上)の効果の持続1,3
・膝ブレースや水中運動と比べたときの優位性(ネットワークメタアナリシスではこれらの方が上位)2

全体としてHILTは「運動療法を置き換えるもの」ではなく、「運動療法と組み合わせて使われる補助療法の一つ」という位置づけで研究されています。膝OAでは減量が痛み・機能に関わることも報告されており、変形性膝関節症と減量・運動療法について解説した記事も参考になります。

自宅で膝の運動を行う高齢者

SECTION 05
どんな人に向いていて、どんな人は注意が必要か

研究の対象は主にKellgren-Lawrence分類グレードII〜III(中等度)の膝OA患者で、40〜70歳代が中心です1,3,4,5。痛みが強く運動療法に取り組みにくい時期の補助として使われることが多く、いずれの試験でも運動療法との併用が前提になっています。人工膝関節全置換術(TKA)の適応を検討している段階の方にとっての位置づけについては、人工膝関節全置換術(TKA)後のリハビリについて解説した記事もあわせてご覧ください。

⚠ 次のような場合は、自己判断で受けず、主治医・リハビリ専門職に相談してください

・悪性腫瘍の既往、妊娠中、ペースメーカーなど植込み型医療機器がある
・照射部位に皮膚疾患、感染、開放創がある
・光線過敏症や、光を用いた治療で過去に異常な反応があった
・強い炎症・急な腫れ・発熱を伴う膝の痛みがある(感染性関節炎など他の病気の可能性を先に確認する必要があります)
・出血しやすい体質、抗凝固薬を服用している

紹介した試験では重い有害事象の報告はほとんどありませんが1,4,5、レーザー機器の使用には施設・機器ごとの安全基準があります。受ける場合は、医療機関や国家資格を持つ専門職の管理のもとで受けることが前提になります。

SECTION 06
回数・頻度・期間の目安

下記は研究でよく使われた条件であり、「これが唯一の正解」という意味ではありません。実際の設定は、機器の種類や医療機関の方針によって異なります。

・頻度:週2〜5回程度1,5,6,7,8
・期間:2〜6週間(合計6〜15セッション程度)1,3,5,6
・併用:ホームエクササイズや専門職指導下の運動療法との組み合わせが前提1,4,5
・評価の目安:痛み(VAS)とWOMACスコアなどで、数週間単位の変化を確認しながら継続を判断1,2

研究全体を見渡すと、「HILTを受けるかどうか」よりも「運動療法を継続できているか」のほうが、膝OAの経過には大きく関わっていると考えられます2,4,5。膝の筋力トレーニングの強度や量については、変形性膝関節症の筋トレはどれくらいの強さ・量がよいかを解説した記事で詳しく整理しています。

膝の運動計画を相談する様子
SECTION 07
訪問リハビリの現場で大切にしていること
実践時に確認したい点

膝の痛みがある場合は、痛みの程度と日常動作への影響を確認し、運動を続けられる量を医師やリハビリ専門職と相談します。レーザー療法を検討する場合も、筋力や歩行などの評価と運動療法を並行して考えることが大切です。

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断・治療を推奨するものではありません。物理療法の可否や内容は、病状や体力によって異なります。新しい治療を検討するときは、担当の医師・リハビリ専門職にご相談ください。研究データは執筆時点のもので、今後の研究で評価が変わる可能性があります。
Journey Rehabの訪問自費リハビリについて知りたい方へ
膝の痛みと運動療法の続け方について、今の状態を一緒に確認しながら相談できます。
執筆・確認と運営上の立場

本記事は、株式会社Journey Rehabの医療情報記事として作成し、文献内容を2026年9月16日に確認しました。当社の訪問自費リハビリの案内を含みますが、特定のレーザー機器メーカー・医療機器販売業者から本記事作成に関する資金提供は受けていません。外部の医師による個別監修は受けていないため、診断や治療方針は主治医へご相談ください。

田中 光 作業療法士 Journey Rehab代表

執筆者:株式会社Journey Rehab 代表取締役|田中 光
保有資格
修士(作業療法学)
作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836(日本作業療法士協会)
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍
経歴
・2016年:初台リハビリテーション病院に入職。脳卒中後遺症の回復期リハに従事
・2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立
・2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中
研究活動
・第57回日本作業療法学会(2023)ポスター発表
・第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表
論文執筆
・田中 光, 石橋 裕, 佐々木 智也, 坂本 泰平. (2025). 本邦における介護予防・日常生活支援総合事業におけるスコーピングレビュー. 日本老年療法学会誌, 4(1). 日本老年療法学会.

FAQ
よくある質問
Q. HILTを受ければ膝の痛みはなくなりますか?
A. 「痛みがなくなる」という結果ではなく、「一部の研究で、痛みや機能の指標がより大きく改善した」という内容です1,2,3。一方で運動療法への上乗せ効果がなかったとする試験もあり4,5,8、効果には個人差があります。
Q. 運動療法をせずHILTだけ受けても意味がありますか?
A. 研究のほとんどは、運動療法(ホームエクササイズや専門職指導下の運動)と組み合わせて行われています1,3,4,5。HILT単独の効果を検証した質の高い研究は限られています。
Q. 超音波療法とどちらがよいですか?
A. 2026年のランダム化比較試験では、超音波療法よりHILTのほうが12週後のWOMACスコアの改善が大きいと報告されています1。ネットワークメタアナリシスでも、超音波療法は12介入の中で下位に位置づけられています2。ただし個々の医療機関の機器・プロトコルによって条件は異なります。
Q. どのくらいの頻度・期間で受けるものですか?
A. 研究では週2〜5回、2〜6週間(合計6〜15セッション程度)で行われることが多いです1,3,4,5。実際の設定は医療機関の方針によって異なります。
Q. 軟骨がすり減っていても効果はありますか?
A. 紹介した研究の多くはKellgren-Lawrence分類グレードII〜IIIの中等度が中心です1。軟骨の厚さそのものへの影響については、増加を報告した試験と有意差がなかった試験があり、研究間で結果が一貫していません5,6。重症度が進んでいる場合は、手術を含めた選択肢について主治医と相談することが大切です。
Q. 痛み以外に何か変わりますか?
A. 研究では、痛みだけでなく関節可動域や生活の質に関する指標(KOOS、Oxford Knee Scoreなど)の改善も報告されています1。ただしすべての指標で一貫して差が出ているわけではありません。
Q. 訪問リハビリでHILTを受けられますか?
A. HILTはレーザー機器を用いた物理療法のため、機器を設置している医療機関やクリニックで受けるものです。訪問リハビリでは、運動療法や日常生活動作の練習を中心に、医療機関での治療と組み合わせた進め方をご相談いただけます。
REFERENCES
参考文献
1. Ninlerd C, Benjakulsap N, Amornsupak C, Phuangphay G, Narkbunnam R, Khomawut N. Efficacy of high-intensity laser therapy versus ultrasound therapy in patients with knee osteoarthritis: a randomized controlled trial. Lasers in Medical Science (Lasers Med Sci). 2026. doi:10.1007/s10103-026-05019-8. PMID: 42709245. PMCID: PMC13553597. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42709245/

2. Chen X, Fan Y, Tu H, Luo Y. Clinical efficacy of different therapeutic options for knee osteoarthritis: A network meta-analysis based on randomized clinical trials. PLoS One. 2025. doi:10.1371/journal.pone.0324864. PMID: 40531843. PMCID: PMC12176148. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40531843/

3. Song HJ, Seo HJ, Kim D. Effectiveness of high-intensity laser therapy in the management of patients with knee osteoarthritis: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Journal of Back and Musculoskeletal Rehabilitation (J Back Musculoskelet Rehabil). 2020. doi:10.3233/BMR-191738. PMID: 32831189. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32831189/

4. Özgözen S, Özgözen AL, Doruk Analan P, İncekaş C. Additional effect of high-intensity laser therapy with conventional physiotherapy related to pain and function in patients with knee osteoarthritis: a randomized, double-blind, placebo-controlled, 12-week follow-up study. Lasers in Medical Science (Lasers Med Sci). 2025. doi:10.1007/s10103-025-04516-6. PMID: 40481859. PMCID: PMC12145289. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40481859/

5. Ekici B, Ordahan B. Evaluation of the effect of high-intensity laser therapy (HILT) on function, muscle strength, range of motion, pain level, and femoral cartilage thickness in knee osteoarthritis: randomized controlled study. Lasers in Medical Science (Lasers Med Sci). 2023. doi:10.1007/s10103-023-03887-y. PMID: 37743421. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37743421/

6. Akaltun MS, Altindag O, Turan N, Gursoy S, Gur A. Efficacy of high intensity laser therapy in knee osteoarthritis: a double-blind controlled randomized study. Clinical Rheumatology (Clin Rheumatol). 2021. doi:10.1007/s10067-020-05469-7. PMID: 33074393. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33074393/

7. Şen SB, Koçyiğit BF, Ortaç EA, Kösehasanoğulları M, Bilecik NA. Comparison of the effects of high-intensity laser therapy and low-level laser therapy in knee osteoarthritis. Clinical Rheumatology (Clin Rheumatol). 2025. doi:10.1007/s10067-025-07657-9. PMID: 41042410. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41042410/

8. Laotammateep C, Champaiboon J, Surarangsit T, Likhitphithak W, Boonhong J. Efficacy of high intensity laser therapy versus sham laser in symptomatic knee osteoarthritis: a double-blind randomized controlled trial. Lasers in Medical Science (Lasers Med Sci). 2025. doi:10.1007/s10103-025-04352-8. PMID: 39945920. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39945920/

電話LINEで相談無料体験