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慢性の首の痛みに視覚・前庭覚エクササイズは役立つ?研究と注意点

整形疾患情報 読了目安 約8分 文・田中 光(作業療法士)
田中 光 作業療法士 Journey Rehab代表
田中 光(作業療法士)|株式会社Journey Rehab 代表
認定作業療法士/修士(作業療法学)
東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍
初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立

慢性の首の痛みに視覚・前庭覚エクササイズは役立つ?研究と注意点

記事作成・文献確認日:2026年9月13日

首の痛みが長く続くとき、視線や頭の位置、バランスを使った練習が話題になることがあります。こうした練習を通常のリハビリに追加する研究はありますが、すべての首の痛みに必要な標準メニューとまでは言えません。めまいがある場合も、首が原因と決めつけず、先に原因を確認することが大切です。

どのような練習なのか

「視覚」は目からの情報、「前庭覚」は内耳で感じる頭の動きや傾きの情報です。首の筋肉や関節から得る位置の情報も姿勢や動きに関わります。視線を保つ、頭の位置を確認する、バランスを調整するなど、狙う機能によって練習は異なります。

首の位置や動きの正確さを練習する「頸部の感覚運動訓練」と、内耳の問題などに対する「前庭リハビリ」は重なる要素があっても同一ではありません。末梢性めまいの前庭リハビリについて解説した記事とは、対象や評価の目的を分けて考えてください。

首の痛みと生活で困っている場面を相談する場面
首の痛みと生活で困っている場面を相談する場面(場面イメージ)
関連する訓練の研究で分かったこと

2025年のレビューは、慢性頸部痛に対する頸部感覚運動訓練の7件のランダム化比較試験、409人を検討しました。何もしない場合との比較では短期の痛みや頭の位置・動きの感覚で利点が示されましたが、確実性は低い評価でした。他の治療と比べて、痛みや機能で一貫して優れる結果ではありません。1

このレビューで証明できないこと

このレビューは前庭リハビリや他の介入との併用プログラムを除外しています。そのため、視覚・前庭覚エクササイズを通常のリハビリに追加した効果を、この結果から直接証明することはできません。研究対象の違いを分けて読む必要があります。1

首の深い筋肉を使う訓練のレビューでも、筋肉を協調して使う働きと、高い負荷に耐える筋力・持久力では結果が異なりました。一つの練習で首に関わるすべての機能が変わるとは限りません。これは深頸屈筋訓練の研究であり、視覚・前庭覚訓練そのものの効果ではありません。2

追加する研究はどこまで進んでいるか

2026年には慢性頸部痛の成人58人を対象に、通常の徒手療法・運動療法に視覚・前庭覚エクササイズを加える試験が報告されました。6週間の介入後、開始から12週間までの痛み・バランスなどで追加群に有利な結果が報告されています。ただし、この新しい一報だけで日常の標準プログラムを決めることはできません。3

別の152人の試験では、首への治療、位置覚・眼球運動の練習、バランス練習の組み合わせを比較し、評価する姿勢や指標によって有利な組み合わせが異なる結果が報告されています。今の段階では、追加する内容を個別評価で選ぶための研究動向として受け止めるのが適切です。4

通常のリハビリについては、慢性頸部痛への徒手療法について解説した記事も参照できます。ここで紹介した練習へ自己判断で置き換えることは勧められません。

安定した座位で視線と目標を確認する場面。自主練習の手順ではありません
安定した座位で視線と目標を確認する場面。自主練習の手順ではありません(場面イメージ)
エビデンスの質と限界
小規模研究と比較条件の影響

感覚運動訓練のレビューでは、研究数の少なさ、推定幅の広さ、対象や介入の違いが確実性を下げています。参加者・施術者の盲検化も難しく、何もしない場合への優位性が、他の運動への優位性を意味するわけではありません。1

まだ分かっていないこと

視覚・前庭覚の練習を誰に追加すべきか、最適な量・順序、長期の生活上の利益は確立していません。めまいの有無、痛みの原因、年齢が異なる人に同じ結果を期待できるとは限りません。研究で有害事象が目立たないことだけから、安全性が確立したとも言えません。

受診を優先する症状と中止の目安
突然の強い症状は119番など緊急対応を

突然の激しい頭痛、顔のゆがみ、片側の手足の脱力、ろれつが回らない、急に見えなくなる、立てないほど急なふらつきがある場合は、練習をせず救急対応を優先してください。5

新しいしびれや力の入りにくさ、外傷後の首の痛み、聞こえ方の変化を伴うめまい、繰り返す強いめまいは医師へ相談してください。めまいの原因は首以外にもあり、記事だけで判断できません。

練習中に痛み・めまい・吐き気・見えづらさが増す場合は中断し、担当者へ相談します。閉眼で立つ、不安定な台に乗る、首を強く反らす・ひねるなどを一人で試さないでください。適した練習と強さは、評価後に決めます。

仕事中の姿勢や休憩の取り方を相談する場面
仕事中の姿勢や休憩の取り方を相談する場面(場面イメージ)
練習量より先に相談したいこと

追加介入の試験で用いられた12回・6週間などの設定は、専門職の監督を含む研究条件です。家庭で再現する回数や期間の処方ではありません。目標、症状が出る動作、仕事や家事の姿勢、休憩の取り方を整理して相談してください。34

相談時に伝えるメモ

① 痛みやめまいが始まった時期。
② 症状が起きる動きと続く時間。
③ 頭痛、耳の症状、しびれの有無。
④ 既に行っている運動と、その後の体調。
⑤ 仕事・家事・外出で困っていること。

まとめ

視覚・前庭覚エクササイズの追加には研究上の可能性がありますが、適応や効果はまだ確定していません。首の痛みやめまいの原因を確認し、必要な機能を評価してから、負担の少ない方法を相談する段階です。

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免責事項

この記事は一般的な情報提供であり、個別の診断・治療・運動処方の代わりにはなりません。実施前は主治医・リハビリ専門職に相談してください。研究知見は文献確認日時点の情報で、今後変わる可能性があります。

運営・情報提供:株式会社Journey Rehab。訪問自費リハビリを提供する事業者の立場で一般情報を発信しています。この記事の研究結果は、当社サービスの成果を保証するものではありません。

田中 光 作業療法士 Journey Rehab代表
執筆者:株式会社Journey Rehab 代表取締役|田中 光
保有資格
修士(作業療法学)
作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836(日本作業療法士協会)
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍
経歴
・2016年:初台リハビリテーション病院に入職。脳卒中後遺症の回復期リハに従事
・2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立
・2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中
研究活動
・第57回日本作業療法学会(2023)ポスター発表
・第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表
論文執筆
・田中 光, 石橋 裕, 佐々木 智也, 坂本 泰平. (2025). 本邦における介護予防・日常生活支援総合事業におけるスコーピングレビュー. 日本老年療法学会誌, 4(1). 日本老年療法学会.
よくある質問
Q. 首の痛みがあれば全員に必要ですか?

いいえ。視線、頭の位置、バランスなどを評価して必要性を考えます。

Q. めまいは首が原因でしょうか?

記事だけでは判断できません。内耳、神経、血圧など別の原因も考慮し、医師へ相談します。

Q. 視覚・前庭覚の練習だけに切り替えてよいですか?

置き換えの効果が確立したわけではありません。現在のリハビリ担当者へ相談してください。

Q. 自宅で動画を見て始めてもよいですか?

特にめまい・ふらつきがある場合は、評価と安全な方法の指導を先に受けてください。

Q. 6週間で必ず変化しますか?

研究期間であり、個人の変化を保証するものではありません。生活と症状の両方で見直します。

Q. 副作用の心配はありませんか?

安全性が確立したとは言えません。めまい、吐き気、痛み、視覚症状が増したときは中止して相談します。

参考文献

1. Luznik I, Pajek M, Sember V, Majcen Rosker Z. The Effectiveness of Cervical Sensorimotor Control Training for the Management of Chronic Neck Pain Disorders: A Systematic Review and Meta-Analysis. Montenegrin Journal of Sports Science and Medicine. 2025. DOI: 10.26773/mjssm.250302. 文献情報本文

2. Johannes Blomgren; Erika Strandell; Gwendolen Jull; Irene Vikman; Ulrik Röijezon. Effects of deep cervical flexor training on impaired physiological functions associated with chronic neck pain: a systematic review.. BMC musculoskeletal disorders. 2018. PMID: 30486819. DOI: 10.1186/s12891-018-2324-z. 文献情報本文

3. Faruk Tanik; Elif Umay Altas; Derya Ozer Kaya. The effect of combining visuo-vestibular exercises with manual therapy and exercise on sensorimotor function in chronic neck pain: A randomized controlled trial.. Gait Posture. 2026. PMID: 42541826. DOI: 10.1016/j.gaitpost.2026.110604. 文献情報

4. Munlika Sremakaew; Gwendolen Jull; Julia Treleaven; Sureeporn Uthaikhup. Effectiveness of adding rehabilitation of cervical related sensorimotor control to manual therapy and exercise for neck pain: A randomized controlled trial.. Musculoskelet Sci Pract. 2023. PMID: 36414518. DOI: 10.1016/j.msksp.2022.102690. 文献情報

5. 総務省消防庁. 救急車利用ガイド. . 参照日 2026-09-13. 文献情報本文

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