
この記事の結論
「足首をひねったけれど、腫れが引いたので放っておいた」「何度も同じ足首をねんざしてしまう」。足首のねんざはとても身近なけがですが、くり返しやすく、その後も不安定さが残ることがあると指摘されています3。
この記事では、足首のねんざ(足関節捻挫)のリハビリについて、ランダム化比較試験(RCT)や、複数の研究をまとめたレビュー、専門団体の指針をもとに、分かっていることと分かっていないことを分けて整理します。
目次
足首のねんざ(足関節捻挫)とは?
足首のねんざ(足関節捻挫:Ankle sprain)とは、足首を内側や外側にひねったことで、足首の骨と骨をつなぐ靱帯(じんたい)が伸びたり切れたりするけがです3。多くは足首を内側にひねり、外くるぶしの周りの靱帯を傷めるタイプです1,3。
初めてのねんざのあと、再びねんざをくり返したり、痛みや不安定さが長く続いたり(慢性足関節不安定症)、運動量が減ったりすることがあると報告されています3。そのため、腫れや痛みが引いたあとのリハビリが大切だと考えられています。
一方で、強い痛みで体重をかけられない、くるぶしの骨を押すと強く痛むなどの場合は、骨折が隠れていることがあります。専門団体の指針でも、レントゲン検査が必要かを判断する基準(オタワ足関節ルール)の活用が勧められています3。まず医療機関で骨折の有無を確認することが前提です。

研究では何が分かっている?
結論から言うと、ねんざのあとにバランス練習を中心とした運動を行うことで、再ねんざが減ったという研究があり、専門団体の指針でもバランス練習が強く勧められています。ただし、どのような内容・量が最適かはまだ分かっていません。
オランダで行われた研究では、2か月以内に足首の外側をねんざした12〜70歳のスポーツ愛好者522人を、通常のケアに「自宅でのバランス練習(8週間)」を加える群と、通常のケアのみの群に分け、1年間追跡しました1。
バランス練習は、バランスボードと説明書・映像を使い、週3回・1回30分以内で、8週間かけて少しずつ難しくしていく内容でした。1年間の再ねんざは、練習の群で22%、通常のケアのみの群で33%でした(再ねんざのリスクは約35%低い)。この研究条件では約9人に介入すると、1年間に1人の再ねんざを防ぐ計算でした1。
ただし、医療機関で治療を受けた方の部分集団では、自己申告の再ねんざの差ははっきりしませんでした(費用が生じる再ねんざでは差がありました)1。
足首のねんざの治療に関する24件のシステマティックレビューをまとめたレビューでは、長く固定するより、装具などで保護しながら適切に動かす機能的治療のほうが良いとする結果が多くみられました。重い損傷では短期間の固定が必要な場合もあり、固定の要否は医師が判断します2。
また、運動療法がねんざの再発を減らすことや、関節を動かす手技(徒手療法)と運動で足首の曲げやすさが戻ることを支持する結果が報告されています。一方で、専門職が見守る運動を追加することについては、強い根拠はないとするレビューもありました2。
米国アスレティックトレーナー協会の指針では、バランス練習を「リハビリとその後の経過を通して行い、再ねんざを減らすべき」として、最も強い根拠の段階(A)で勧めています3。
あわせて、関節の動く範囲・柔軟性・足首の周りの筋力のトレーニングを含めること(B)も勧められています3。
足首の周りの痛みが続く場合には、ねんざ以外の原因もあります。アキレス腱の痛みについてはアキレス腱の痛みと運動療法について解説した記事で紹介しています。
強い腫れや痛み、体重をかけられない状態では、骨折や重い損傷を調べるため速やかに受診してください。受傷後のしびれ・感覚低下、明らかな変形、足の色の異常や冷たさがある場合は、通常の予約を待たず救急受診が必要です。自己判断で運動を始めないでください。4
エビデンスの質と限界・まだ分かっていないこと
再ねんざが減ったという522人のRCTは、スポーツを行う方が対象で、再ねんざは本人の申告にもとづいています1。著者らも、けがの分類を誤る可能性を限界として挙げています。追跡脱落は14%で、全プログラムを実施したとの申告は介入群の23%でした。割付は無作為でしたが、参加者は自分の介入を知っており、自己申告の結果への影響は否定できません1。
レビューは2020年9月までの検索に基づき、成人の急性捻挫を対象として、小児や慢性足関節不安定症を扱う研究を除外しています。足首のねんざの研究は多いものの、結果が一致しなかったり比べにくかったりするとされています2。研究全体では一定の傾向がありますが、すべての方に同じ結果が当てはまるわけではありません。
何が変わりやすく、何は変わりにくい?
研究からは、バランス練習を中心とした運動で「再ねんざの起こりやすさ」に良い結果が報告され、早めに動かす治療で回復が早い傾向がみられています。一方で、運動の追加による差がはっきりしない比較もあります。
どんな人に向いていて、どんな人は注意が必要?
研究の対象は、足首の外側をねんざし、通常のケアのあとでスポーツに戻る段階の方でした1。
・痛みや腫れが落ち着き、体重をかけて歩ける方
・ねんざをくり返している、足首に不安定さを感じる方
・ふらつきや転倒の心配がある方(専門職の評価を受け、安全な支えと必要な介助を確保する)
・受傷後にしびれや足の感覚低下が出た方(救急受診)4
高齢の方では、ねんざだけでなく転倒の予防も大切です。靴選びや足のケアの考え方は高齢者の足のケアと靴について解説した記事で紹介しています。
どのくらいの頻度で行う?
研究では「週3回・1回30分以内・8週間」の自宅でのバランス練習が用いられ、少しずつ難しくしていく方法がとられていました1。
これらは研究で用いられた量の目安で、すべての方に最適な量ではありません。痛みや腫れが強くなる場合は中止し、医療機関に相談してください。バランス運動の種類の違いについては高齢者のバランス運動の種類について解説した記事も参考になります。

作業療法士の視点
足首のねんざは「腫れが引けば終わり」と思われがちですが、研究では、その後のバランス練習で再ねんざが減ったという結果が報告されています1。特別な器具がなくても、自宅で少しずつ取り組めることが多いのも特徴です。
一方で、どの練習をどのくらい行うのが最適かはまだ分かっていません2。痛みや不安定さの程度は人によって異なるため、無理のない範囲で、専門職と一緒に内容を調整しながら進めることをおすすめします。

まとめ
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、医療行為・診断・治療を推奨するものではありません。運動や練習を始める前、また内容を変える前には、担当の医師・リハビリ専門職にご相談ください。紹介した研究データは執筆時点のもので、今後の研究により変わる可能性があります。
よくある質問
Q. 足首をねんざしたら、病院に行かなくても大丈夫ですか?
A. 強い痛みや腫れがある、体重をかけられない、骨を押すと痛む場合は、骨折が隠れていることがあるため受診してください3。受傷後のしびれや感覚低下、変形、足の色の異常や冷たさは救急受診の目安です。4軽く見えても、症状が続く場合は整形外科で確認してください。
Q. ねんざのあと、いつからリハビリを始めればよいですか?
A. 骨折などがないことを確認したうえで、痛みや腫れが落ち着き、体重をかけて歩けるようになってから少しずつ始めるのが一般的です。研究でも、長く固定するより早めに動かす治療が良いとする結果が多くみられます2。
Q. バランス練習で本当に再ねんざは減りますか?
A. 522人の研究では、自宅でのバランス練習を加えた群で、1年以内の再ねんざが22%と、通常のケアのみの群(33%)より少ない結果でした1。ただし、すべての方で再ねんざを防げるわけではありません。
Q. どのくらいの期間、練習を続ければよいですか?
A. 研究では、週3回・1回30分以内の練習を8週間続ける方法が用いられていました1。最適な期間は分かっていないため、足首の安定感を確かめながら専門職と相談して決めてください。
Q. サポーターやテーピングは使ったほうがよいですか?
A. サポーターやテーピングを使うかどうかは、ねんざの程度や活動の内容によって異なるため、整形外科や専門職に相談してください。バランス練習などの運動と組み合わせて考えることが大切です3。
Q. 高齢でもバランス練習をしてよいですか?
A. 高齢の方でも検討できますが、壁が近いだけで転倒を防げるわけではありません。まず専門職が立位の安全性を評価し、安定した支えと必要な介助を確保して内容を選びます。研究の対象はスポーツをする方が中心だったため、無理のない内容を専門職と一緒に選ぶことが大切です1。
参考文献
4. NHS. Sprains and strains. 2026年10月22日確認。 公式資料