
この記事の結論
「コロナにかかってから何か月もたつのに、疲れやすさや息切れが続いている」「体力を戻したいけれど、動くと翌日に寝込んでしまう」。新型コロナウイルス感染症のあと、こうした症状が長く続く状態は「コロナ後遺症(long COVID)」と呼ばれています。
この記事では、コロナ後遺症に対する運動を中心としたリハビリについて、ランダム化比較試験(RCT)や、複数の研究をまとめたシステマティックレビューをもとに、分かっていることと、注意が必要な点を分けて整理します。
目次
コロナ後遺症とはどんな状態?
コロナ後遺症(long COVID、新型コロナ感染後の症状:Post-COVID-19 Condition)とは、新型コロナウイルス感染症のあと、だるさ(倦怠感)、息切れ、集中しにくさ、痛み、気分の落ち込みなどの症状が長く続く状態です1,2。
症状の一部として、体や頭を使ったあとに、数時間〜数日遅れて強いだるさなどが悪化する「労作後の症状悪化(労作後倦怠感:Post-Exertional Malaise、PEM)」が起こる方がいます。地域で生活する後遺症のある方を対象にした研究をまとめた分析では、約25%(95%信頼区間17〜36%、10研究・4,076人)の方にみられたと報告されていますが、確実性は低い評価です4。
このため、コロナ後遺症の運動リハビリは「とにかく体力をつける」のではなく、労作後の悪化がある場合は休息と活動のペース配分を優先し、運動を増やすことを前提にしない対応が必要です5。労作後の悪化がない方も、心肺の状態と症状に応じた判断が必要だと考えられています3,4。

研究では何が分かっている?
結論から言うと、専門職が見守る運動と心理的支援を組み合わせたプログラムや、呼吸・運動のリハビリで、生活の質や運動能力に良い結果が報告されています。ただし対象者の条件が限られ、確実性は「中程度」の評価にとどまります。
英国で行われた研究では、新型コロナで入院し、退院から3か月以上たっても症状が続く成人585人(平均56歳)を、オンラインのプログラムと、1回だけの助言を受ける通常のケアに分けました。プログラムは8週間で、週1回のライブ配信による自宅でのグループ運動(専門職が見守る)と、6回のグループでの心理的支援(ペース配分、不安への対処、睡眠と疲労など)で構成されていました1。
3か月後、プログラムの群では生活の質の点数が通常のケアより高く、特に気分の落ち込み、だるさ、痛みによる生活への支障で良い結果でした。生活の質は12か月後にも差がありましたが、6か月時点では有意差がありませんでした。3か月の群間差は0.03点で、患者さんにとって十分な変化かという臨床的意義には不確かさがあります。21件の重い有害事象のうち、プログラムとの関連が疑われたのは1件でした。膝痛や不安など関連がある、または疑われる非重篤な有害事象もあり、すべての方への安全性を保証する結果ではありません1。
コロナ後遺症の治療を調べた24件のRCT(3,695人)を整理したレビューでは、上記のような運動と心理面を組み合わせたリハビリについて、1件の試験にもとづき「全体的な健康が改善・回復する人が1,000人あたり161人多い」(95%信頼区間61〜292人)と推定され、確実性は中程度とされました2。
また、別の1件の試験では、週3〜5回・4〜6週間の間欠的な有酸素運動(休みを挟みながら行う運動)は、休まず続ける運動より身体機能の点数が良い可能性があるとされています2。
呼吸トレーニングや運動を中心としたリハビリの14件のRCT(1,244人)をまとめた分析では、このうち運動能力を評価した7件・389人では、6分間で歩ける距離が、通常のケアより良い結果でした(標準化平均差−0.56、確実性は中程度)3。
一方で、運動によって症状が悪化するなどの有害事象については、データが不十分で不確かさが大きいとされ、著者らは実施中の慎重な観察を勧めています3。
動いた後に数時間〜数日遅れて強いだるさが出る(労作後の症状悪化)がある方では、自己判断で運動量を増やすと症状が悪化するおそれがあります。かかりつけ医や後遺症外来で症状を確認し、休息と日常の活動のペース配分を優先してください。WHOは労作後の悪化がある場合にエネルギーを節約する方法を勧めており、運動は悪化がないことや心肺の状態を確認して個別に判断します5。
エビデンスの質と限界・まだ分かっていないこと
最も大きなREGAIN研究の対象は「入院した方」で、入院しなかった軽症の方が多い実際の後遺症の方全体に、そのまま当てはまるとは限りません1。また参加者や指導者はどちらの群かを知っていたため、期待の影響が入る可能性があります1。
労作後の症状悪化についての研究は、偏りのリスクが高いものが多く、悪化の測り方もそろっていません4。研究全体では一定の傾向がありますが、すべての方に同じ結果が当てはまるわけではありません。
何が変わりやすく、何は変わりにくい?
研究からは、運動と心理面を組み合わせたプログラムで「生活の質」「気分」「だるさ」に、運動中心のリハビリで「運動能力」に良い結果が報告されています。一方で、症状が強く出る方への当てはまりは分かっていません。
どんな人に向いていて、どんな人は注意が必要?
REGAIN研究の対象は、入院後3か月以上たっても症状が続き、運動に医学的な制限のない成人でした1。
・体力の低下や気分の落ち込み、だるさが続いている方
・労作後の症状悪化がなく、専門職が運動の適否を確認した方
・立ち上がったときの動悸やめまいが強い方
・胸の痛み、強い息切れ、失神などがある方(運動を中止し受診)。突然続く胸痛や、言葉を出せないほどの呼吸困難は後遺症と決めつけず、救急要請を含む緊急の対応が必要です6,7
疲れやすさへの対処としての「ペース配分(活動量の調整)」は、ほかの病気のリハビリでも大切にされています。考え方は疲労と活動ペースの調整について解説した記事や、疲労とエネルギー管理について解説した記事でも紹介しています。
どのくらいの頻度で行う?
研究では「週1回の見守り付きグループ運動を8週間」や「週3〜5回の間欠的な有酸素運動を4〜6週間」が用いられていましたが、量は症状に合わせて個別に調整されていました1,2。
これらは研究で用いられた方法の例で、すべての方に最適な量ではありません。体の状態に合わせて専門職と調整してください。息切れが中心の場合の呼吸リハビリの考え方は呼吸リハビリテーションについて解説した記事も参考になります。

作業療法士の視点
コロナ後遺症の研究では、運動だけでなく、ペース配分や不安への対処、睡眠と疲労への対応を組み合わせたプログラムで良い結果が報告されています1。体力を戻すことと、症状を悪化させないことのバランスを一緒に探ることが大切だと考えます。
一方で、動いた後の症状悪化が強い方にとって、運動の量を増やすことがかえって負担になる場合もあります4。「頑張って動けば良くなる」と考えず、体調の記録をもとに少しずつ調整していくことをおすすめします。

まとめ
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、医療行為・診断・治療を推奨するものではありません。運動や練習を始める前、また内容を変える前には、担当の医師・リハビリ専門職にご相談ください。紹介した研究データは執筆時点のもので、今後の研究により変わる可能性があります。
よくある質問
Q. コロナ後遺症のだるさは運動で治りますか?
A. 運動でコロナ後遺症が治ることを示した研究はなく、運動はあくまで生活の質や体力を支える取り組みのひとつです。入院した方の研究では、運動と心理的支援を組み合わせたプログラムで、だるさの点数が良い結果でした1。
Q. 動いた翌日に寝込んでしまうのですが、運動してもよいですか?
A. 動いた後に遅れて強い症状が出る場合は、労作後の症状悪化の可能性があるため、自己判断で運動を増やさないでください。まず医師に相談し、体調を記録しながら休息と活動のペース配分を専門職と見直すことが大切です。運動を増やすことを目標にするとは限りません5,4。
Q. どんな運動から始めればよいですか?
A. 一律の開始メニューはありません。労作後の悪化がある場合は休息と活動調整を優先し、悪化がない場合も心肺の状態を確認して専門職と決めます5。研究では、休みを挟みながら行う運動が、続けて行う運動より良い可能性が示されています2。
Q. 運動はどのくらいの頻度で行えばよいですか?
A. 研究では、週1回の見守り付きグループ運動を8週間行う方法や、週3〜5回の間欠的な運動を4〜6週間行う方法が用いられていました1,2。これらは研究条件で、最適な量は分かっていません。労作後の悪化がある方への運動量の目安には使わないでください5。
Q. 入院しなかった軽症の場合も、同じ研究結果が当てはまりますか?
A. 最も大きな研究の対象は入院した方だったため、入院しなかった方にそのまま当てはまるかは分かっていません1。症状の出方は人によって大きく異なるため、個別に相談しながら進めることが大切です。
Q. どこに相談すればよいですか?
A. まずはかかりつけ医や、地域の後遺症外来など、コロナ後遺症の診療を行っている医療機関に相談してください。運動を始める際は、医師の確認を受けたうえで、リハビリ専門職に量や方法を相談すると安心です。
参考文献
5. WHO. Post COVID-19 conditions: rehabilitation recommendations. 2026年10月22日確認。 公式資料
6. NHS. Chest pain. 2026年10月22日確認。 公式資料
7. NHS. Shortness of breath. 2026年10月22日確認。 公式資料