脊椎圧迫骨折後のリハビリ|運動・コルセットと安全な動作

· 整形疾患情報
田中 光 作業療法士 Journey Rehab代表
田中 光(作業療法士)|株式会社Journey Rehab 代表
認定作業療法士/修士(作業療法学)
東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍
初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立

背骨の圧迫骨折のあとのリハビリ|運動・コルセットについて研究と限界を正直に解説

尻もちをついた、重い物を持ち上げた、あるいは思い当たることが何もないのに背中や腰が急に痛くなった。検査を受けたら背骨が潰れていた。骨粗しょう症のある方に起こる脊椎圧迫骨折(椎体骨折)は、決してめずらしいものではありません。

「動いていいのか、安静にすべきなのか」「コルセットはいつまで着けるのか」「もう一度折れないか心配」。ご本人とご家族から必ず出てくる質問です。この記事では、コクランレビューを含む複数のシステマティックレビューと、615人が参加した大規模な比較試験をもとに、現時点で言えることと、まだ言えないことを分けてお伝えします。結論から言えば、運動の効き目は期待されているほど大きく示されておらず、しかし安全性については比較的良い材料があります。

SECTION 01

脊椎圧迫骨折で起こること

背骨は椎体という積み木のような骨が重なってできています。骨粗しょう症で骨がもろくなると、この椎体が押しつぶされるように変形します。これが脊椎圧迫骨折です。

痛みの出かた
寝返りや起き上がりの瞬間に強く痛む、体を起こすときがつらい、立ってしばらくすると背中が重くなる。逆に、横になっているときは楽になることが多いのが特徴です。
気づかれないこともある
はっきりしたきっかけがなく起こることもあり、健診や別の検査で偶然見つかることもあります。身長が縮んだ、背中が丸くなってきたという変化が手がかりになる場合があります。
その後の生活への影響
背中が丸くなることで、前を向きにくい、食事の飲み込みがしにくい、息苦しさを感じるといった影響が出ることがあります。動くのが怖くなって活動量が減り、筋力や体力が落ちていく流れも起こりやすくなります。
脊椎圧迫骨折後の高齢者が専門職とログロールによる起き上がりを確認する様子
横向きになってから腕で支え、体を強くひねらずに起き上がる方法を確認します。
すぐに医療機関へ相談していただきたい症状:
足のしびれや力が入りにくい感じが出てきた、尿が出にくい・もれる、おしりまわりの感覚が鈍い、痛みが日ごとに強くなる、発熱を伴う、体重が急に減っている。骨折した椎体が神経を圧迫している可能性や、別の原因が隠れている可能性があります。運動を始める前に必ず受診してください。
SECTION 02

骨折後に行われること

1. 痛みへの対応と骨折部の保護
鎮痛薬、コルセットなどの装具、動き方の工夫。急性期は痛みの強い動作を避けることが中心になります。
2. 骨粗しょう症そのものへの治療
骨密度の検査と薬物治療、カルシウム・ビタミンDなど栄養面の確認。骨折した時点で、次の骨折のリスクが高い状態と考えられます。高齢者の骨粗しょう症と運動療法について解説した記事もあわせてご覧ください。
3. 動作の練習と生活の組み立て
寝返り、起き上がり、立ち座り、床のものを拾う動作など、背骨に負担のかかりにくいやり方を身につけていきます。
4. 運動療法
背中を支える筋肉の運動、バランス練習、歩行など。研究では6週から12か月まで幅のあるプログラムが検討されています。
5. 手術(椎体形成術など)
痛みが強く保存的な方法で対応しきれない場合に検討されます。医師の判断によります。
SECTION 03

研究でわかっていること

2019年のコクランレビュー(9試験・749人)

骨粗しょう症性の椎体骨折がある方への運動をまとめたレビューです。立ち上がって歩いて戻る動作の時間(Timed Up and Go)では、運動を行った群で1.09秒短いという結果でした(95%信頼区間 −1.78〜−0.40、中等度の確実性)。ただし著者らは、この差が生活のうえで意味のある大きさとは言えないとしています。生活の質の指標では小さな差が示されたものの、確実性は非常に低いと評価されました。新たな骨折(相対リスク 0.54、0.17〜1.71)や転倒(1.06、0.53〜2.10)については、運動の影響を判断できるだけの材料がないというのが著者らの結論です1

2022年のシステマティックレビュー・メタアナリシス(20試験・2,083人、平均72.8歳・女性89.9%)

運動、装具、電気療法、テーピングなど手術以外・薬以外の方法を幅広くまとめたものです。運動を行わない場合と比べ、痛みの指標にわずかな差が示されました(平均差 1.01、95%信頼区間 0.08〜1.93)が、確実性は低いと評価されています。生活の質(標準化平均差 0.26、−0.11〜0.63)と活動性(0.11、−0.36〜0.58)では、はっきりした差は示されませんでした。研究間のばらつきが非常に大きい(I²が90%に達する)点が指摘されています2

2019年の大規模ランダム化比較試験(PROVE試験・615人)

症状のある椎体骨折のある方を、7回の運動療法、7回の徒手療法、1時間の助言セッション1回のみ、の3群に分けて比べた試験です(平均72.1歳、女性86.6%)。12か月後、生活の質の指標(QUALEFFO-41)では、運動群と1回のみの群との差は −0.23点(−3.20〜1.59、p=1.000)で、はっきりした差は示されませんでした。徒手療法群でも同様です。著者らは「1年の時点で、どちらの治療も1時間の助言セッション1回以上の利益をもたらさなかった」と結論しています。ただし4か月時点では、70歳未満の方で一部の指標に良い変化が示唆されており、治療の強度と期間が今後の課題だとされています。治療に関連した重篤な有害事象はありませんでした3

正直に言えば、「リハビリをすればしっかり良くなる」と言い切れる結果は出ていません。これは臨床にいる立場からすると、受け止めるのに時間がかかる結果です。ただし裏を返せば、丁寧な説明と生活の組み立て自体に意味があるということでもあります。PROVE試験で比較対象になった「1時間の助言セッション」は、何もしない群ではなく、専門職が時間をかけて説明する内容だったという点は押さえておく必要があります。

脊椎圧迫骨折後の高齢者が専門職の見守りで椅子から立ち上がる様子
痛みと安全性を確認しながら、立ち座りや短い歩行など日常動作を保ちます。
SECTION 04

コルセットについて

2022年のレビューでは、硬いタイプの装具を使った場合と使わない場合を比べ、痛みの指標に差が示されました(平均差 2.61、95%信頼区間 0.95〜4.27)。ただし確実性は低いと評価されています。生活の質や活動性では、はっきりした差は示されませんでした。硬いタイプと柔らかいタイプの比較では、痛み・生活の質・活動性のいずれにも明らかな差はみられていません2

つまり、「必ず硬いコルセットでなければいけない」という強い根拠はありません。実際には、痛みの程度、骨折の場所と形、着けたときの動きやすさ、ご本人が自分で着脱できるかどうかで選ばれます。長期間つけ続けると体幹の筋肉が使われにくくなる懸念もあるため、いつまで、どの場面で使うかは主治医の指示を確認してください。

SECTION 05

エビデンスの質と限界・まだ分かっていないこと

エビデンスの質と限界
コクランレビューでは、9試験のうち5試験でバイアスのリスクが高いか不明と判断されました。運動では参加者にも治療者にも治療内容が分かるため、痛みのような主観的な評価が影響を受けやすいことも指摘されています1。20試験をまとめたレビューでも、研究間のばらつきが非常に大きく、介入直後の結果しか得られていないものが多いという限界があります2。また、これらの研究の参加者は約9割が女性であり、男性のデータは非常に限られています1,2
まだ分かっていないこと
運動が新たな骨折や転倒を減らすかどうかは、判断できるだけの材料がありません1。どの時期に、どの強さで、どのくらいの期間行うのが最も良いのかも確立していません。PROVE試験の著者らは、介入の強度と期間を変えればより持続的な結果が示される可能性があるとして、今後の検討課題としています3。骨折の場所や数、変形の程度、年齢による違いも十分には検証されていません。
⚠ 安全性について報告されていること:
コクランレビューでは、報告された有害事象は4件で、そのうち2件は肋軟骨と肋骨の骨折であり、うつ伏せでの運動や、仰向けからうつ伏せへ寝返る動作に関連したものでした1。ただし著者らは、有害事象が組織的に記録されていた形跡がないとも述べています。骨がもろい状態では、姿勢や動きの選び方そのものが安全に関わります。うつ伏せの運動、体を強くひねる動き、勢いよく前屈する動きは、自己判断で行わないでください。
SECTION 06

生活のなかでの進め方

1. 起き上がり方を変える
仰向けから上体を起こす動きは背骨に負担がかかります。横向きになってから、腕で体を押し上げ、足を下ろす動きと合わせて起きる方法(ログロール)に切り替えます。一番痛い場面が変わるだけで、一日の負担が変わります。
2. 前かがみとひねりを分けて考える
床の物を拾うときは、腰を丸めるのではなく、膝と股関節を曲げて体ごと近づきます。掃除機、布団の上げ下ろし、洗濯物を持ち上げる動作は、ひねりが加わりやすいので特に注意します。
3. 動かない時間を長くしすぎない
痛みの強い時期の安静は必要ですが、長引くほど筋力・体力が落ち、次の転倒につながります。痛みの範囲内で、座る・立つ・短く歩く時間を確保していきます。
4. 背中を支える筋肉の運動は指導のもとで
研究で用いられた内容には、うつ伏せでの運動が含まれるものもありますが、それが有害事象と関連した報告もあります1。安全な姿勢と負荷は個別に異なるため、必ず専門職に確認しながら進めてください。
5. 転倒しにくい環境を整える
段差、コード類、滑りやすい床、夜間の照明。次の骨折を避けるうえで、環境の見直しは運動と同じくらい大切です。転倒後の経過については大腿骨近位部骨折後のリハビリについて解説した記事でも扱っています。
6. 骨粗しょう症の治療と栄養を並行して進める
運動だけで骨の状態が変わるわけではありません。薬物治療の継続、たんぱく質やカルシウム、ビタミンDの摂取状況を主治医と確認してください。栄養と運動の関係はサルコペニアと運動・栄養について解説した記事で整理しています。
脊椎圧迫骨折後の高齢者が専門職とコルセットの使い方を相談する様子
装具を使う期間や場面は、骨折の状態と生活動作に合わせて主治医・専門職と確認します。
SECTION 07

個別支援で確認する視点

個別支援で確認する視点

支援では、骨折からの時期と主治医の指示を前提に、寝返り・起き上がり・立ち座り・家事のどこで痛みや恐怖が強いかを確認します。動作を変えて負担が下がるか、安静が長引いて体力が落ちていないか、装具を自分で着脱できるかも見ます。新しい強い背部痛、身長低下、しびれ・脱力、排尿排便の変化がある場合は、新規骨折や神経症状を否定できないため受診を優先します。

免責事項
本記事は一般的な医療情報の提供を目的としたもので、個別の診断や治療を代替するものではありません。脊椎圧迫骨折の状態は骨折の場所・数・時期によって大きく異なり、行ってよい運動も一人ひとり違います。自己判断で運動を始めたり装具の使用を変更したりせず、主治医・リハビリ専門職へご相談ください。掲載した研究データは執筆時点のもので、今後の研究によって解釈が変わる可能性があります。
Journey Rehabの訪問自費リハビリについて知りたい方へ
起き上がりや家事動作の負担のかかり方を、ご自宅の環境で一緒に確認します。
田中 光 作業療法士 Journey Rehab代表
執筆者:株式会社Journey Rehab 代表取締役|田中 光
保有資格
修士(作業療法学)
作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836(日本作業療法士協会)
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍
経歴
・2016年:初台リハビリテーション病院に入職。脳卒中後遺症の回復期リハに従事
・2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立
・2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中
研究活動
・第57回日本作業療法学会(2023)ポスター発表
・第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表
論文執筆
・田中 光, 石橋 裕, 佐々木 智也, 坂本 泰平. (2025). 本邦における介護予防・日常生活支援総合事業におけるスコーピングレビュー. 日本老年療法学会誌, 4(1). 日本老年療法学会.
FAQ

よくある質問

Q. 圧迫骨折のあと、どのくらい安静にしていればいいですか?
骨折の場所や形、痛みの程度によって大きく異なるため、一律の目安はありません。主治医の指示が最優先です。ただし、必要以上に動かない期間が長引くと筋力や体力が落ちるため、痛みの範囲内でできる動きを主治医・専門職と確認してください。
Q. リハビリをすれば潰れた背骨は元に戻りますか?
変形した椎体の形が運動で元に戻ることはありません。リハビリの目的は、痛みの出にくい動き方を身につけること、活動量を保つこと、次の転倒や骨折のリスクに備えることです。
Q. コルセットはいつまで着けるのですか?
期間は骨折の状態によって医師が判断します。硬いタイプと柔らかいタイプを比べた研究では、痛みや生活の質にはっきりした差はみられていません2。長期間つけ続けることの影響も考慮されるため、自己判断で延長・中止せず、必ず主治医に確認してください。
Q. 運動をすれば次の骨折を避けられますか?
現時点の研究では、運動が新たな骨折や転倒に与える影響を判断できるだけの材料がありません1。骨そのものへの対応は骨粗しょう症の治療が中心になります。運動は、動きやすさや活動量を保つ目的として位置づけるのが現実的です。
Q. 腹筋運動や背筋運動をしてもいいですか?
勢いよく上体を起こす腹筋運動や、うつ伏せで反らせる運動は、骨がもろい状態では負担が大きい場合があります。研究でも、うつ伏せの運動や寝返り動作に関連した肋骨・肋軟骨の骨折が報告されています1。自己判断では行わず、専門職と一緒に内容を決めてください。
Q. 痛みがなくなれば普通に動いていいですか?
痛みが軽くなっても、骨がもろい状態そのものが変わったわけではありません。物の持ち上げ方やひねる動作など、負担のかかりやすい場面の工夫は続けたほうが安心です。
Q. 家族はどう手伝えばいいですか?
起き上がりや立ち上がりで無理に引き上げると、かえって背中に負担がかかることがあります。どの場面でどう支えるかは動作ごとに異なるため、専門職と一緒に一度確認しておくと安心です。
Q. 訪問リハビリでも対応できますか?
実際のベッドやトイレ、台所で動作を確認できる点は訪問の利点です。ご自宅の環境に合わせた起き上がり方や家事の進め方について、ご家族も一緒に相談いただけます。
REFERENCES

参考文献

1. Gibbs JC, et al. Exercise for improving outcomes after osteoporotic vertebral fracture. Cochrane Database Syst Rev. 2019. PMID: 31273764. PMCID: PMC6609547.

2. Bolton K, et al. Benefits and harms of non-surgical and non-pharmacological management of osteoporotic vertebral fractures: A systematic review and meta-analysis. Braz J Phys Ther. 2022. PMID: 35063701. PMCID: PMC8784306.

3. Barker KL, et al. Exercise or manual physiotherapy compared with a single session of physiotherapy for osteoporotic vertebral fracture: three-arm PROVE RCT. Health Technol Assess. 2019. PMID: 31456562. PMCID: PMC6732718.

4. Peckett KH, et al. Bracing and taping interventions for individuals with vertebral fragility fractures: a systematic review of randomized controlled trials with GRADE assessment. Arch Osteoporos. 2023. PMID: 36840787.
公開日:2026年8月29日/最終更新:2026年8月29日