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脳卒中後の眠り・便秘・疲れ・気分の悩みはどのくらい起こる?279件の研究で分かった「見えにくい症状」の頻度と経過

自費リハビリ情報 読了目安 約10分 文・
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記事のテーマを表した生成イメージです。実在の利用者様や施術実績、個別の練習手順を示すものではありません。

この記事の結論

279件の研究(約11万7千人)をまとめた分析では、脳卒中後に睡眠の悩みがある方は約60%、便秘は約58%、疲れやすさは約45%と、手足の麻痺以外の症状も多くみられました1。多くの症状は、時間がたっても減る傾向がはっきりしませんでした1。ただし研究ごとに評価方法が大きく異なり、割合には幅があります1,2。

「手足は動くようになってきたのに、夜眠れない」「便秘が続いてつらい」「なんとなく疲れやすく、不安な気持ちが続く」。脳卒中のあと、こうした周りからは見えにくい悩みを抱えている方は少なくありません。

この記事では、治療法の紹介ではなく、「手足の麻痺以外の症状が、どのくらいの人に起こり、時間とともにどう変わるのか」に焦点を当て、2本の大規模なメタ分析をもとに分かっていることと限界を整理します。

目次

脳卒中後の「見えにくい症状」とは?

脳卒中後の見えにくい症状とは、手足の麻痺や歩きにくさといった運動の症状以外に起こる、睡眠・排せつ・疲れ・気分・痛みなどの困りごとのことです1。研究では「非運動症状(nonmotor outcomes)」と呼ばれています1。

脳卒中の経過は、主に「修正ランキンスケール(modified Rankin Scale:mRS)」という、介助の必要度や歩く力を中心にした指標で評価されることが多く、こうした症状は見過ごされやすいと指摘されています1。

今回紹介する研究では、本人が質問票に答える形(患者報告型の尺度)で、不安・気分の落ち込み・疲れやすさ・睡眠の悩み・社会参加の減少・痛み・排尿の悩み・便秘・便失禁・性機能の悩みの10の領域を調べています1。

自宅で日々の体調をノートに書く高齢女性のイメージ
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どのくらいの人に起こる?

結論から言うと、10の領域のうち6つの領域で、脳卒中後の方の約45〜60%に何らかの悩みがみられました1。

システマティックレビュー・メタ分析 2025年(279件の観察研究・11万7,440人)

1999年〜2023年に発表された、脳梗塞または脳出血の方を対象にした観察研究279件をまとめた分析です1。参加者の年齢の中央値は65歳で、症状を評価した時期は発症後30日〜10年でした。症状ごとに対象となった研究は異なり、睡眠は50件、便秘は8件、疲労は48件などで、全員に10領域すべてを測ったわけではありません1。

割合が高かった順に、睡眠の悩み59.9%、性機能の悩み59.8%、便秘58.2%、社会参加の減少56.5%、排尿の悩み45.9%、疲れやすさ45.2%でした1。比較的低かったのは、痛み28.6%、不安26.9%、気分の落ち込み25.8%、便失禁7.0%でした1。

出典:Ozkan H, et al. JAMA Netw Open. 2025
約2人に1人以上でみられた悩み
・睡眠の悩み(59.9%)
・性機能の悩み(59.8%)
・便秘(58.2%)
・社会参加の減少(56.5%)1
約2人に1人弱でみられた悩み
・排尿の悩み(45.9%)
・疲れやすさ(45.2%)1
約4人に1人前後でみられた悩み
・痛み(28.6%)
・不安(26.9%)
・気分の落ち込み(25.8%)1
比較的少なかった悩み
・便失禁(7.0%)1

疲れやすさへの向き合い方は、脳卒中後の疲労と活動調整について解説した記事で、便秘については脳卒中後の便秘・排便障害について解説した記事で詳しく紹介しています。

不安はいつ頃に多い?

紹介する2018年のレビューでは、発症後1年以内のさまざまな時期に不安が報告されています。ただし、時期別の集団は異なり、個人の不安がいつ減るかを示す結果ではありません2。

システマティックレビュー・メタ分析 2018年(37件の研究・1万3,756人)

発症から1年以内に、評価尺度を使って不安を調べた37件の研究をまとめたレビューです。一過性脳虚血発作(TIA)を含む研究も対象で、HADS-Aという不安尺度に絞ったメタ分析は31研究でした2。研究の多くは急性期病院で行われていました2。

発症から1年以内に何らかの不安症状がみられた方は29.3%でした。これは各研究で評価した時点の割合をまとめた値で、1年間に新しく不安になる確率ではありません2。HADS-Aを用いた研究の時期別解析では、2週間〜3か月で24.1%、3〜12か月で23.8%でした。発症直後の割合は論文内で記載が一致せず、急性期と2週間〜3か月の差も統計学的には明確ではなかったため、「発症直後が必ず最も多い」とは言い切れません2。

出典:Rafsten L, et al. J Rehabil Med. 2018

著者らは、不安は生活の質に影響し、その後の気分の落ち込みを予測する要因にもなりうるため、定期的に確かめることを検討する価値があると述べています2。不安への運動やリハビリの研究は、脳卒中後の不安について解説した記事でまとめています。

時間がたつと減っていく?

279件の研究の分析では、10の領域のうち8つで、評価時期が異なる研究を比べても、割合がはっきり減る傾向はみられませんでした1。

時間とともに減る傾向がみられたもの
・痛み
・性機能の悩み1
はっきり減る傾向がみられなかったもの
・睡眠の悩み、便秘、社会参加の減少、疲れやすさなど、残りの8つの領域1

ただし、この結果は「必ず続く」という意味ではありません。研究のほとんどは1回だけ評価したもので、同じ人を2回以上の時点で追った研究は279件中7件(2.5%)に限られていました1。そのため、一人ひとりの症状がどう変わるかまでは分かっていません1。

どんな人に起こりやすい?

分析では、女性、年齢が高いこと、病院を基盤にした研究であること、脳梗塞と脳出血の両方を含む研究であることが、複数の症状の多さと関係していました1。

複数の症状と関係がみられた特徴
・女性
・年齢が高い
・病院を基盤にした研究
・脳梗塞と脳出血の両方を含む研究(不安・疲れやすさ・社会参加の減少・便秘などで割合が高い傾向)1
注意したい点
これらは研究単位で調べた傾向で、一人ひとりの起こりやすさを予測するものではありません1。脳出血だけを対象にした研究は6件と少なく、脳出血の方での詳しいことは分かっていません1。

エビデンスの質と限界・まだ分かっていないことは?

エビデンスの質と限界

279件の研究の分析では、10の領域を測るのに合計96種類もの質問票が使われていて、研究間のばらつき(I²)は52〜98%と大きい結果でした1。どの質問票を使ったかによって割合が変わることも示されています1。一方で、研究の約7割(70.6%)は偏り(バイアス)のリスクが低いと評価されていました1。

不安を調べた37件の研究の分析でも、ばらつきは非常に大きく(I²=97%)、50人未満の小規模研究を含み、多くの研究の質が中程度と評価されたことが限界です2。また、失語症(17件)や認知機能の低下(15件)がある方を除いた研究が多く、こうした方の状態は十分に反映されていない可能性があります2。

まだ分かっていないこと
・ 同じ方を長い期間追ったときに、それぞれの症状がどう変わっていくか(複数回評価した研究が少ない)1
・ 脳出血の方での見えにくい症状の頻度(研究が6件と少ない)1
・ 不安が脳卒中によって新しく起こったものか、以前からあったものか(以前の不安を確かめた研究は3件のみ)2
・ どの質問票を使えば、見えにくい症状を最も適切にとらえられるか1

家族や本人は、どんなことに気をつける?

研究からは、見えにくい症状は手足の麻痺とは別に、発症から時間がたった集団でも多く報告されています1。だからこそ、自分から言い出しにくい悩みも含めて、定期的に確かめる機会をつくることが大切です1,2。

日々の生活で確認しておきたいこと
1. 眠りにつきにくい、夜中に目が覚める、日中に強い眠気がないか1
2. 便秘や排尿の困りごと(回数・もれ・残っている感じ)がないか1
3. 疲れやすさや、外出・人との交流が以前より減っていないか1
4. 不安や気分の落ち込みが続いていないか(特に発症して間もない時期)2
5. 気になることがあれば、話しやすい医療者を選び、メモなど伝えやすい方法で相談する1,2
生活の困りごとを専門職に相談する高齢男性と家族のイメージ
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作業療法士の視点

研究のまとめからは、脳卒中後の見えにくい症状は珍しいものではなく、睡眠・便秘・疲れやすさなどは半数前後の方にみられることが分かっています1。一方で、評価方法の違いが大きく、すべての方に同じ割合や経過が当てはまるわけではありません1,2。

大切なのは、手足の動きだけでなく、眠り・排せつ・気分・疲れといった生活全体の様子にも目を向け、困りごとを一人で抱え込まずに相談できる関係をつくっておくことだと考えています。

自宅のソファで互いの話に耳を傾ける高齢の男女のイメージ
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まとめ

・ 279件の研究のまとめでは、脳卒中後に睡眠の悩み約60%、便秘約58%、疲れやすさ約45%と、麻痺以外の症状が多くみられました1
・ 不安は発症後1年以内の各評価時点をまとめると約29%でみられましたが、時期ごとの割合を個人の経過に当てはめることはできません2
・ 10の領域のうち8つでは、評価時期が異なる研究を比べても、割合がはっきり減る傾向はみられませんでした1
・ 女性、年齢が高いことなどが、複数の症状の多さと関係していました1
・ 使われた質問票が96種類と多く、研究間のばらつきが大きいため、割合には幅があります1,2
免責事項

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、医療行為・診断・治療を推奨するものではありません。眠れない状態や気分の落ち込み、便秘・排尿の困りごとが続く場合は、主治医にご相談ください。治療や運動の内容を始める・変える前には、担当の医師・リハビリ専門職にご相談ください。紹介した研究データは執筆時点(2026年10月)のもので、今後の研究により変わる可能性があります。

よくある質問

Q. 脳卒中のあと、麻痺以外にどんな症状が多いですか?

A. 研究のまとめでは、睡眠の悩み、便秘、性機能の悩み、社会参加の減少が、それぞれ約56〜60%と多くみられました1。疲れやすさや排尿の悩みも約45%でみられています。

Q. 脳卒中後に眠れなくなるのはよくあることですか?

A. 279件の研究のまとめでは、脳卒中後の方の約60%に何らかの睡眠の悩みがみられ、10の領域の中で最も高い推定値でした。ただし、ここでいう睡眠の悩みには不眠だけでなく、睡眠時無呼吸や睡眠中の呼吸の問題も含まれます1。続く場合は主治医に相談し、原因を一緒に確かめることが大切です。

Q. 脳卒中後の不安は、いつ頃に多いですか?

A. 37件の研究のレビューでは、不安は発症後1年以内のさまざまな時期にみられました2。HADS-Aを使った研究では3〜12か月で約24%でしたが、評価時期ごとに集団が異なるため、個人の経過を予測する数字ではありません。

Q. 見えにくい症状は、時間がたてば自然に減りますか?

A. 研究のまとめでは、痛みと性機能の悩みは時間とともに減る傾向がありましたが、ほかの8つの領域でははっきり減る傾向はみられませんでした1。ただし同じ人を長く追った研究は少なく、個人差は分かっていません。

Q. どんな人に見えにくい症状が多いですか?

A. 研究のまとめでは、女性や年齢が高い方で、睡眠や疲れやすさなど複数の症状が多い傾向がみられました1。ただしこれは研究単位で調べた傾向で、一人ひとりに当てはまるかどうかを予測するものではありません。

Q. 家族はどんなことに気をつければよいですか?

A. 眠り・便秘や排尿・疲れやすさ・外出の減り方・気分の変化などを、ときどき本人と一緒に確かめることが大切です1,2。気になる変化があれば、主治医やリハビリ専門職に伝えて相談しましょう。

参考文献

1. Hatice Ozkan, Gareth Ambler, Taniya Esmail, Gargi Banerjeeほか. Prevalence, Trajectory, and Factors Associated With Patient-Reported Nonmotor Outcomes After Stroke: A Systematic Review and Meta-Analysis. JAMA network open. 2025. PubMed DOI 公開本文
2. Lena Rafsten, Anna Danielsson, Katharina S Sunnerhagen. Anxiety after stroke: A systematic review and meta-analysis. Journal of rehabilitation medicine. 2018. PubMed DOI
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