
先に結論
2022年の米国リウマチ学会のガイドラインでは、運動を継続的に行うことが「強く推奨」されています(中程度の確実性)1。一方で、運動の種類ごとの研究の確実性は低く、痛みそのものへの影響ははっきりしない研究も多いのが現状です1。
「関節が痛むのに、運動をしても大丈夫なのだろうか」「動かすと関節が壊れてしまうのでは」――関節リウマチのある方やご家族に向けて整理します。関節リウマチは関節に炎症が起こる病気で、治療の中心は薬物療法ですが、運動やリハビリも治療の一部として位置づけられています1。この記事では、関節リウマチと運動について、研究で分かっていることと、まだ分かっていないことを作業療法士の立場から整理します。結論から言うと、2022年の米国リウマチ学会のガイドラインでは、運動を継続的に行うことが「強く推奨」されています(中程度の確実性)1。一方で、運動の種類ごとの研究の確実性は低く、痛みそのものへの影響ははっきりしない研究も多いのが現状です1。
この記事でわかること
関節リウマチと運動療法の基本
関節リウマチは、手や手首の関節に症状が出やすい病気です2。関節の痛みや腫れ、こわばりによって体を動かす機会が減ると、筋力や体力が落ち、さらに動きにくくなるという悪循環が起こりやすくなります。
米国リウマチ学会のガイドラインで取り上げられている運動には、主に次のような種類があります1。
同じガイドラインでは、作業療法や理学療法を受けること、関節に負担をかけにくい動作の工夫(関節保護)、手や手首の装具(スプリント)の使用も「条件付きで推奨」とされています1。水に入ることで関節への負担を減らしながら運動する方法については、変形性膝関節症・股関節症の水中運動について解説した記事でも紹介しています。

研究では何が分かっているか
先にまとめると、運動は「運動をしない場合」と比べて体の動かしやすさ(身体機能)や体力に良い結果が多く報告され、病気の勢い(疾患活動性)や痛みを悪化させないことも示されてきています。一方、痛みそのものへの影響ははっきりせず、運動の種類ごとの研究の確実性は低いと評価されています。
運動・リハビリ・食事などについてまとめたガイドラインです1。「運動をしないこと」と比べて「運動を継続的に行うこと」が強く推奨され、その根拠は身体機能と痛みに良い結果を示す中程度の確実性のエビデンスとされています1。ただし種類別にみると、有酸素運動・水中運動・ヨガや太極拳などは、身体機能に良い結果がみられる一方で痛みには差がないとされ、いずれも確実性は非常に低い〜低いと評価されています1。筋力トレーニングについては、けがを防ぐため、理学療法士など専門職が内容を決めて見守ることの大切さが強調されています1。
関節リウマチの手の運動について、7件の研究(841名)をまとめた報告です2。通常のケアと比べて、手の運動を行った群では、3〜11か月の時点で手の機能が100点満点中およそ4〜5点よくなる結果でした(中程度の質のエビデンス)2。ただし、この差は「わずかな臨床的な利益」にとどまるとされています2。一方、同じ時期の痛みや握力には、ほとんど差がない結果でした2。有害事象を調べた1件の研究では、運動による有害事象はみられませんでした2。
リウマチ・膠原病の方の「疲れやすさ(疲労)」に対する、薬以外の方法を調べた82件のランダム化比較試験をまとめた報告です3。関節リウマチの方では、運動や身体活動で、通常のケアと比べて疲労が軽くなる結果でした(標準化平均差−0.23)3。ただし、その差は小さいものでした3。
病気の勢いが落ち着いている20〜60歳の関節リウマチの方87名を対象にした研究です4。一方の群は、理学療法士の見守りのもと、自転車こぎによる高強度インターバル運動と筋力トレーニングを週2回・12週間行い、もう一方の群は、中くらいの強さの運動を週150分以上行うよう助言を受けました4。結果は、運動した群で全身持久力(最大酸素摂取量)、椅子からの立ち上がり回数、握力、全体的な健康状態の評価が良い結果でした4。痛みと病気の勢い(DAS28)は、2群の間で差がなく、悪化はみられませんでした4。
⚠ ただし、忘れてはいけない大切なこと:
関節が赤く腫れて熱をもっている、痛みが急に強くなったなど、炎症が強いときは、運動の内容を大きく調整する必要があります。首の痛みや手足のしびれがある場合、関節の変形が進んでいる場合、人工関節の手術を受けた場合も、運動を始める前に主治医に相談してください。運動は薬物療法の代わりになるものではありません。
エビデンスの質と限界・まだ分かっていないこと
関節リウマチと運動の研究には、次のような限界があります。
どの種類の運動が、どのような方に最も合うのか、最適な回数や強さはどのくらいかは、まだ分かっていません1。手の運動を長く続けた場合の関節の変形への影響も、十分に調べられていません2。病気の勢いが強い時期や、高齢の方での高強度の運動の安全性も、さらに研究が必要です4。
ガイドラインでは、運動の確実性が低い部分があることを踏まえ、運動の種類や量は一人ひとりの状態、好み、続けやすさに合わせて決めるべきとされています1。研究全体では一定の傾向がありますが、対象者や運動の内容が研究ごとに異なるため、すべての方に同じ結果が当てはまるわけではありません。
何が変わりやすく、何は変わりにくいか
体の動かしやすさ(身体機能)は、運動を継続することで良い結果が報告されています1。手の運動では手の機能がわずかによくなる結果2、高強度の運動では全身持久力や立ち上がりの力が良い結果4、疲れやすさは小さく軽くなる結果3が報告されています。
痛みは、有酸素運動・水中運動・ヨガなどで差がないとされています1。手の運動を続けても、数か月後の痛みや握力にはほとんど差がありませんでした2。病気の勢い(疾患活動性)は、運動で悪化しなかった一方で、運動によって弱まったわけでもありません4。
つまり、運動は「関節の炎症そのものを抑える方法」ではなく、「薬物療法で病気を落ち着かせながら、体力や手の使いやすさを保つための方法」と考えるのが、研究の内容に近いと思います。ヨガや太極拳のような運動の進め方については、高齢者の太極拳について解説した記事も参考になります。
どんな人に検討され、どんな人は注意が必要か
薬物療法で病気の勢いがある程度落ち着いてきたものの、「体力が落ちた」「疲れやすい」「手を使う家事や仕事がしにくい」といった方では、運動やリハビリを取り入れる意味があります13。運動を始めることに不安がある方こそ、専門職と一緒に内容を確認しながら始めると安心です。
関節に強い炎症がある時期、首の痛みや手足のしびれがある方、関節の変形が進んでいる方、人工関節の手術を受けた方、骨粗鬆症がある方は、運動の内容に注意が必要です。手首から指にかけてのしびれがある場合は、別の病気が隠れていることもあるため、手根管症候群の装具・運動について解説した記事も参考にしながら、主治医に相談してください。運動のあと、関節の痛みや腫れが翌日以降も続く場合は、量を見直しましょう。

回数・頻度・期間の目安
関節リウマチの運動の最適な回数や強さは、ガイドラインでも具体的には定められておらず、一人ひとりの状態に合わせて決めることが勧められています1。研究では、自宅で行う手の運動のプログラム2や、見守りのもとで週2回・12週間行う高強度の運動4など、さまざまな方法が使われています。
実際には、炎症が落ち着いている時期に、痛みが強くならない範囲の軽い運動から始め、体調を見ながら少しずつ回数や強さを増やしていく形が現実的です。筋力トレーニングは、専門職が内容を決めて見守ることが大切とされています1。病気の勢いには波があるため、調子の悪い時期の運動の減らし方も、あらかじめ相談しておくと続けやすくなります。
作業療法士の視点
関節リウマチがあると、「痛いから動かさないほうがいいのでは」と考えてしまう方も少なくありません。研究からは、運動を続けることで体の動かしやすさや体力に良い結果が報告され、病気の勢いを悪化させないことも示されてきています。一方で、痛みそのものへの影響ははっきりせず、最適な運動の種類や量もまだ分かっていません。主治医の治療方針を確認しながら、その方が続けやすい形を一緒に探していくことが大切だと考えています。
