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脳卒中後の疲れやすさ(脳卒中後疲労)に薬は役立つ?10件の研究で分かったことと限界を正直に解説

自費リハビリ情報 読了目安 約10分 文・
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記事のテーマを表した生成イメージです。実在の利用者様や施術実績、個別の練習手順を示すものではありません。

この記事の結論

脳卒中後疲労に対する薬を偽薬と比べた10件・600人の研究をまとめた2023年のメタ分析では、治療終了時には疲労の点数が低い結果でしたが、その後の追跡時点でははっきりした差がありませんでした1。研究はいずれも小規模で偏りのリスクがあり、著者らは特定の薬を勧めるには根拠が不十分と結論づけています1。

「脳卒中のあと、少し動いただけでぐったりする」「休んでも疲れが抜けない」。このような強い疲れやすさは「脳卒中後疲労」と呼ばれ、ご本人の生活やリハビリの続けやすさに大きく影響します。

「疲れを取る薬はないの?」と気になる方もいるでしょう。この記事では、脳卒中後疲労に対する薬の研究をまとめた2023年のメタ分析と、薬の一つを調べた二重盲検試験をもとに、分かっていることと限界を整理します。

目次

脳卒中後疲労とは?薬はどう研究されている?

脳卒中後疲労(Post-stroke Fatigue:PSF)とは、脳卒中のあとに現れる、休んでも回復しにくい強い疲れやだるさのことです1。脳卒中を経験した方の約半数にみられるとまとめられていますが、研究ごとの推計には大きな幅があります。何年も続くことがあると報告されています1。

薬の研究では、「疲労重症度尺度(Fatigue Severity Scale:FSS)」などの質問票で疲れの程度を測り、薬を飲んだグループと偽薬(有効成分を含まない薬)を飲んだグループを比べています1。

モダフィニル
眠気を抑え、目を覚ましておく働きのある薬です2。脳卒中後疲労の研究では、1日200mgを6週間飲む方法が調べられていますが、これは研究条件で、自己判断で服用する量を示すものではありません2。
フルオキセチン
抗うつ薬の一つ(SSRI)です。2023年のレビューに含まれた脳卒中後疲労の研究は1件でした1。
中国の生薬製剤など
中国で行われた複数の研究で調べられていますが、研究ごとに薬の組み合わせが異なります1。
そのほかの薬
(−)-OSU6162などの薬も研究されています1。

脳卒中後疲労の全体像や、休み方・活動量の整え方については、脳卒中後の疲労と活動調整について解説した記事で紹介しています。

疲れや体調について医師と相談する女性のイメージ
記事のテーマを表した生成イメージです。実在の利用者様や施術実績、個別の練習手順を示すものではありません。

研究では何が分かっている?

結論から言うと、薬を飲んだグループでは、治療終了時に疲れの点数が偽薬より低い結果でしたが、その後まで続くかははっきりしませんでした1。

システマティックレビュー・メタ分析 2023年(偽薬と比べた10件・600人)

脳卒中後疲労がある成人を対象に、薬と偽薬を比べたランダム化比較試験を、英語・中国語の文献を含めて探してまとめた研究です1。10件の研究(616人が参加し、600人を解析)が分析に含まれ、治療期間は28日〜3か月でした。クロスオーバー試験3件は最初の期間の結果だけを使っています1。

治療終了時の疲れの程度は、薬のグループで低い結果でした(標準化平均差−0.80、95%信頼区間−1.29〜−0.31)1。しかし、その後の追跡時点の4件(265人、治療終了直後とは異なる研究の組み合わせ)では、はっきりした差はありませんでした(標準化平均差−0.14、95%信頼区間−0.38〜0.10)1。研究間のばらつきを示すI²は86%と大きい値でした1。

出典:Chu SH, et al. Int J Stroke. 2023
二重盲検クロスオーバー試験 2017年(モダフィニル・36人)

オーストラリアの1施設で、発症から3か月以上たち、強い疲れが続いている方36人を対象に、モダフィニル1日200mgと偽薬を6週間ずつ、1週間の休薬期間をはさんで入れ替えて比べた研究です2。

モダフィニルを飲んだ期間では、疲れの点数(多面的疲労尺度、20〜100点)が偽薬と比べて7.38点低く、生活の質の点数も良い結果でした2。一方、認知機能(MoCA)や、気分・不安・ストレスの点数には、はっきりした差はありませんでした2。

出典:Bivard A, et al. Stroke. 2017

薬の種類によって、何が違う?

薬の種類別の分析では、モダフィニルと中国の生薬製剤などのグループで疲れの点数が低い結果でしたが、どちらも根拠は十分ではありません1。

モダフィニル
2件の研究で疲れの点数が低い結果でした(標準化平均差−0.82)が、2件とも小規模な研究です1。
中国の生薬製剤など
疲れの点数が低い結果でした(標準化平均差−1.30)が、研究間のばらつきが非常に大きく(I²=91%)、薬の組み合わせもさまざまでした1。
フルオキセチン
1件の研究で、疲れの点数にはっきりした差はありませんでした1。
(−)-OSU6162
疲れの点数にはっきりした差はありませんでした1。

エビデンスの質と限界・まだ分かっていないことは?

エビデンスの質と限界

10件の研究は、それぞれの人数が6〜111人と小規模で、疲労の診断の基準、薬の種類、疲れの測り方が研究ごとに大きく異なっていました1。10件すべてに報告の偏りについての懸念があり、全体として偏りのリスクが低いと判断された研究はありませんでした1。

モダフィニルの試験は1施設・36人の小規模な研究です。うつ病・認知症の既往や一部の服薬などは除外条件で、すべての方に当てはめることはできません。また、睡眠時無呼吸の方を十分に除外できていない可能性や、薬をきちんと飲んでいたかを完全には確かめられないことが限界とされています2。

まだ分かっていないこと
・ 薬をやめたあとも疲れにくい状態が続くかどうか1
・ 気分・生活の質・仕事への復帰など、疲れ以外への影響(データが不足)1
・ 副作用の詳しい実態(副作用を報告した研究は10件中6件のみで、記録の方法もそろっていない)1
・ より大規模で信頼できる研究での結果(2023年のレビューでは、300人規模のモダフィニル試験などの計画が紹介されていました)1

どんな人に向いていて、どんな人は注意が必要?

研究の対象は、脳卒中後疲労があると判断された成人の方で、モダフィニルの試験では発症から3か月以上たっても強い疲れが続いている方が対象でした1,2。薬の使用は、医師の判断のもとで行われるものです。

主治医への相談を検討しやすい方
・発症から時間がたっても、休んでも抜けない強い疲れが続いている方2
・疲れのために、日中の活動やリハビリを続けることが難しくなっている方
先に確認が必要なこと
・いびきや日中の強い眠気など、睡眠時無呼吸が疑われる場合(疲れの原因になることがあります)2
・気分の落ち込み、痛み、眠りの悩みなど、疲れと重なる症状がないか
・ほかに飲んでいる薬との飲み合わせ
⚠ ただし、忘れてはいけない大切なこと

2023年のレビューでは、特定の薬を勧めるための根拠は不十分と結論づけられています1。疲れが強いときは、自己判断で薬やサプリメントを始めたり、今飲んでいる薬をやめたりせず、まずは主治医にご相談ください。

睡眠中の呼吸の止まりと日中の疲れ・眠気の関係については、脳卒中後の睡眠時無呼吸について解説した記事で紹介しています。

研究では、どのくらいの量・期間で使われていた?

研究での治療期間は28日〜3か月で、モダフィニルの試験では1日200mgを6週間飲む方法が使われていました。これは研究条件の説明であり、服薬量の推奨ではありません1,2。

研究で用いられていた方法と副作用の例
1. 治療期間:28日〜3か月(10件の研究の範囲)1
2. モダフィニル:1日200mg×6週間。著者らは、高齢の方が多いことも考えて、この量を選んだと説明しています2
3. 副作用(メタ分析):報告した6件の研究では、薬・偽薬の両方のグループで軽い副作用がみられ、重い有害事象は報告されませんでした。小規模・短期間の結果であり、重い有害事象が起きない保証ではありません1
4. 副作用(モダフィニルの試験):13週間で12件(モダフィニル5件・偽薬7件)。頭痛・吐き気・不安・落ち着かなさ・めまいで、重い有害事象は報告されませんでした。小規模・短期間の結果であり、重い有害事象が起きない保証ではありません2
明るい室内で椅子に座って休憩する男性のイメージ
記事のテーマを表した生成イメージです。実在の利用者様や施術実績、個別の練習手順を示すものではありません。

作業療法士の視点

10件の研究のまとめからは、薬で治療終了時の疲れの点数が下がる可能性が示された一方、その後まで続くかは分からず、研究の規模や質も十分ではありませんでした1。2023年のレビューの著者らも、特定の薬を勧める根拠は不十分としています1。

脳卒中後の疲れには、睡眠や気分、活動の偏りなど、さまざまな要因が重なります。薬について知りたいときも、主治医と相談しながら、一日の過ごし方を整えることとあわせて考えていくことが大切だと考えています。

自宅で活動と休憩の予定を一緒に確認する男女のイメージ
記事のテーマを表した生成イメージです。実在の利用者様や施術実績、個別の練習手順を示すものではありません。
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まとめ

・ 脳卒中後疲労は脳卒中を経験した方の約半数にみられ、何年も続くことがあります1
・ 偽薬と比べた10件・600人のメタ分析では、治療終了時の疲れの点数は薬のグループで低い結果でしたが、追跡時点でははっきりした差がありませんでした1
・ モダフィニル1日200mg・6週間の試験(36人)では疲れの点数が7.38点低い結果でしたが、1施設の小規模な研究です2
・ 研究はいずれも小規模で偏りのリスクがあり、特定の薬を勧めるには根拠が不十分とされています1
・ 有害事象の報告は限られており、より大規模で信頼できる検証が必要です1
免責事項

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、医療行為・診断・治療を推奨するものではありません。疲れが急に強くなった場合や、いびき・日中の強い眠気がある場合は、主治医にご相談ください。薬の開始・変更・中止は、必ず担当の医師にご相談ください。紹介した研究データは執筆時点(2026年10月)のもので、今後の研究により変わる可能性があります。

よくある質問

Q. 脳卒中後の疲れやすさに効く薬はありますか?

A. 2023年のレビューでは、脳卒中後の疲れやすさに特定の薬を勧めるための根拠は不十分とされています1。10件の研究のまとめでは、治療終了時に疲れの点数が低い結果でしたが、研究はいずれも小規模で、その後まで続くかははっきりしていません。

Q. モダフィニルは脳卒中後疲労に役立ちますか?

A. 36人の試験では、モダフィニルを6週間飲んだ期間で疲れの点数が偽薬より低い結果でした2。ただし1施設の小規模な研究で、この結果だけで有効性や安全性が確立したとはいえません1。

Q. 抗うつ薬で疲れは軽くなりますか?

A. 2023年のレビューに含まれたフルオキセチンの研究は1件のみで、疲れの点数にはっきりした差はありませんでした1。気分の落ち込みがある場合の治療は、主治医にご相談ください。

Q. 薬に副作用はありますか?

A. 研究では、薬・偽薬の両方で軽い副作用がみられ、重い副作用は報告されていませんでした1,2。ただし副作用を報告した研究は限られており、詳しいことはまだ分かっていません。

Q. 脳卒中後疲労はどのくらいの人にみられますか?

A. 脳卒中を経験した方の約半数にみられると報告されており、何年も続くことがあります1。休んでも抜けない疲れが続く場合は、主治医やリハビリ専門職に伝えることが大切です。

Q. 疲れているときは、リハビリを休んだほうがよいですか?

A. 疲れの程度や原因は人によって異なるため、休むか続けるかは一人ひとりの状態に合わせて決めることが大切です。活動と休憩の配分について、主治医やリハビリ専門職にご相談ください。

参考文献

1. Shuk Han Chu, Xu Zhao, Ahmad Komber, Joshua Cheyneほか. Systematic review: Pharmacological interventions for the treatment of post-stroke fatigue. International journal of stroke : official journal of the International Stroke Society. 2023. PubMed DOI 公開本文
2. Andrew Bivard, Thomas Lillicrap, Venkatesh Krishnamurthy, Elizabeth Hollidayほか. MIDAS (Modafinil in Debilitating Fatigue After Stroke): A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled, Cross-Over Trial. Stroke. 2017. PubMed DOI 公開本文
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