脳卒中後のリハビリ、どれが本当に効く?少し手が動く方向けに効果的な上肢訓練ベスト3を紹介【千葉対応】

背景:どのリハビリが一番効果的なのか?

2023年、ドイツの研究チーム(Tenbergら)は、これまでに行われた上肢リハビリに関する大規模研究(RCT)119本、延べ5,553名を対象に、41種類の訓練方法を比較した包括的な研究を発表しました。

本記事では、その内容を分かりやすく解説し、どのリハビリが効果的と報告されたのか、どんな人が対象だったのかを整理します。

この論文のポイント:何をどう比較したのか?

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本研究では、上肢運動機能の改善に対して、

  • 各訓練法がどれくらい効果的だったのか(効果量:SMD)
  • 「標準的なリハビリ(多面的訓練)」との比較
  • 直接比較がない組み合わせは、ネットワーク解析によって間接比較

という形で、より現実的かつ網羅的に治療効果を分析しています。

ランキング上位3位:効果が高いと報告された訓練法

🥇1位:課題指向型訓練+電気刺激(SMD=1.03)

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  • 実生活に近い動作(例:ものをつかむ、手を伸ばす)を繰り返し練習し、
  • 同時に電気刺激で麻痺側の筋肉を動かす
  • 患者自身が「使っている」と感じられる点が重要

課題指向型訓練電気刺激の詳細はこちらの記事をご覧ください

🥈2位:高頻度 制約誘導運動療法(High-volume CIMT)(SMD=0.86)

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  • 健側の腕を制限し、麻痺側の腕だけを使うようにする訓練法
  • 毎日数時間の集中訓練が必要

CI療法の詳細はこちらの記事をご覧ください

🥉3位:筋力トレーニング(Strength Training)(SMD=0.65)

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  • 麻痺側の筋肉に対して、適切な負荷を加えるトレーニング
  • 筋萎縮の防止と神経系の再活性化が狙い

全41種類の訓練内容一覧と分類

この研究で比較された41種類の介入は、以下のように分類されます(一部抜粋):

◉ 単独の訓練法

  • Task-oriented training(課題指向型)
  • CIMT(制約誘導療法)
  • Mirror therapy(ミラーセラピー)
  • Action observation(観察学習)
  • Strength training(筋トレ)
  • Vibration training(バイブレーション)

◉ 組み合わせ型

  • Task-oriented + ES(電気刺激併用)
  • Bilateral + Mirror therapy
  • CIMT + Action observation

◉ テクノロジー介入

  • Robot-assisted training(ロボット支援)
  • Virtual Reality(VR訓練)
  • Computer-based training

◉ 比較対象とされた一般的訓練

  • Nonspecific/multimodal active upper limb therapy(通常の多面的訓練)

対象となったのはどんな人?

本研究の対象は、

  • 脳卒中発症から6か月以内
  • 年齢平均:62歳前後
  • 多くはFugl-Meyer Assessment(FMA)で軽度〜中等度の麻痺
  • 完全弛緩麻痺よりも「少しでも動かせる」方向け

まとめ:科学的根拠をもとに、適切なリハビリを選ぶために

この研究は、従来の経験則に基づく治療選びから、比較的信頼性の高いエビデンスに基づく介入選択が可能になってきたことを示しています。

特に、

  • 課題指向型訓練+電気刺激(自宅でも一部応用可能)
  • 高頻度CIMT(集中的な訪問または通所が必要)
  • 筋力トレーニング(段階的な指導と負荷管理が必要)

は、研究上の有効性が報告されており、実践可能性も高い方法です。

Journey Rehabでは、こうしたエビデンスに基づいた訓練内容についてもご相談いただけます。

一人ひとりの目標や身体の状態に応じたリハビリの選択肢を提案し、納得して取り組んでいただけることを大切にしています。お気軽にご相談ください。

※本記事は研究論文の結果に基づいた情報提供を目的としており、すべての方に効果を保証するものではありません。

引用文献

Tenberg, S., Mueller, S., Vogt, L., Roth, C., Happ, K., Scherer, M., Behringer, M., & Niederer, D. (2023).Comparative Effectiveness of Upper Limb Exercise Interventions in Individuals With Stroke: A Network Meta-Analysis.Stroke, 54(7), 1839–1853. https://doi.org/10.1161/STROKEAHA.123.043110

▪️執筆者情報

**株式会社Journey Rehab 代表|田中 光**

作業療法士(国家資格)/認定作業療法士(日本作業療法士協会)

東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士前期課程 在籍

▪️経歴

・2016年:初台リハビリテーション病院に入職。脳卒中後遺症の回復期リハに従事

・2021年:自費訪問リハビリ分野に活動を広げ、2024年にフリーランスとして独立

・2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県を中心に訪問型の自費リハビリを提供中

▪️ 研究活動

・第57回日本作業療法学会(2023)ポスター発表

・第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表