脳卒中後の体外衝撃波治療(ESWT)とは?痙縮・つっぱりへの研究と限界を正直に解説

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田中 光 作業療法士 Journey Rehab代表
田中 光(作業療法士)|株式会社Journey Rehab 代表
認定作業療法士/修士(作業療法学)
東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍
初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立
脳卒中後の体外衝撃波治療(ESWT)とは?痙縮・つっぱりへの研究と限界を正直に解説

「手足のつっぱり(痙縮)に、体の外から当てる衝撃波の治療は役立つの?」——これは、麻痺した手足のこわばりに悩む方から聞かれることが増えてきた質問です。体外衝撃波治療(ESWT:体の外から筋肉に音の衝撃波を当てる方法)は、もともと結石やスポーツ障害の治療で使われてきましたが、近年は脳卒中後の痙縮(筋肉のつっぱり・こわばり)に対しても研究されています。この記事では、脳卒中後のESWTについて、研究で分かってきたことと、まだはっきりしないことを、患者さんとご家族に向けて正直に整理します。結論から言うと、痙縮の指標に良い変化を示した研究がまとまってきていますが、研究の質にはばらつきが大きく、通常のリハビリに組み合わせる補助的な選択肢として考えるのが現実的です。

医療機関で体外衝撃波治療の説明を受ける脳卒中後の方
ESWTは医療機関で、適応や注意点の説明を受けて検討する治療です。
この記事の要点
・体外衝撃波治療(ESWT)とは、体の外から筋肉に音の衝撃波を当てる方法で、脳卒中後は主に手足の痙縮(つっぱり・こわばり)に対して研究されています1
・13件の研究(533人)をまとめた分析では、痙縮の指標(筋肉のかたさを表すMAS)が、治療から1か月未満で平均0.85点、1か月以降でも平均0.84点、当てない群より下がりました2
・17件のレビューをまとめた包括的な分析(アンブレラレビュー)でも、痙縮の指標が下がり、手足の運動機能や関節の動き、痛みの指標でも良い方向の結果が報告されました1
・当てる回数(刺激量)が多いほど、痙縮の指標がより下がる傾向も示されています2
・一方で、研究の質にばらつきが大きく、多くが中国からの報告で、効果が時間とともに弱まる可能性も指摘されています。ESWTは医療機関で行う医療行為であり、まず主治医・リハビリ専門職に相談することが大切です1,2
SECTION 01
体外衝撃波治療(ESWT)とは

体外衝撃波治療(ESWT)は、体の外から筋肉や腱に「衝撃波」と呼ばれる音のエネルギーを当てる方法です1。手術をせずに体の外から刺激を届けられるのが特徴で、大きく分けて、広い範囲に浅く伝わる「拡散型(ラジアル型)」と、深い場所に集中して届く「集束型(フォーカス型)」があります1。ふくらはぎのような深い筋肉には集束型、広い筋肉には拡散型が向くとされています1

脳卒中の後は、手足の筋肉が自分の意思とは関係なくつっぱる「痙縮」が起こることがあります。痙縮が強いと、手が握ったまま開きにくい、足首がかたくて歩きにくい、といった困りごとにつながります。ESWTは、この痙縮に対して、筋肉のかたさをやわらげることをねらいに研究されています1。ただし、なぜ効くのかという仕組みはまだ十分に解明されていません1。痙縮に対しては、ストレッチや装具、ボツリヌス療法、電気刺激など複数のアプローチがあり、ESWTはその選択肢の一つです。自宅でできる痙縮への向き合い方については脳卒中後の痙縮(つっぱり)への自宅リハビリについて解説した記事もあわせてご覧ください。

SECTION 02
研究で分かっていること

結論から正直にお伝えすると、「ESWTで痙縮の指標に良い変化を示した研究がまとまってきている」一方で、「研究の質にばらつきが大きく、証拠はまだ確実とはいえない」というのが現状です。代表的な研究をみていきます。

痙縮の指標についての分析
脳卒中後の痙縮に対するESWTについて、13件の研究・533人をまとめた系統的レビュー・メタアナリシス(2025年)があります。この分析では、筋肉のかたさを表す指標(MAS:修正アシュワーススケール)が、治療から1か月未満で平均0.85点(当てない・見せかけの群との差)、1か月以降でも平均0.84点、それぞれ下がりました2。上肢では下肢よりやや大きめの変化がみられています2。さらに、当てる衝撃波の回数(刺激量)が多いほど、痙縮の指標がより下がる傾向(用量反応関係)も示されました2
複数のレビューをまとめた分析
これまでに出た17件のレビューをさらにまとめた包括的な分析(アンブレラレビュー、2026年)では、ESWTがおよそ12週以内に痙縮の指標を下げること、手足の運動機能(Fugl-Meyerという指標、とくに下肢)や関節の動きやすさ、痛みの指標でも良い方向の結果が報告されました1。効果の続き方については、4週間以上あけて評価した長めの変化(平均1.15点)が、短い期間での変化(平均0.75点)を上回ったという報告もあります1。手足の機能そのものへの影響を調べたレビューでも、痙縮以外の動きの指標で良い方向の結果が報告されています5。過去のメタアナリシスでも、痙縮の指標が下がることが繰り返し示されてきました3,4,6
医療機関で下腿の筋に体外衝撃波治療を行う場面
施術部位や強さ、回数は医師などの評価に基づいて個別に調整されます。
SECTION 03
エビデンスの質と限界・まだ分かっていないこと
エビデンスの質と限界
良い結果が報告されている一方で、これらの研究には共通した限界があります。包括的な分析では、まとめられたレビューの多くが方法の質としては高くなく、データの多くが中国からの報告に偏っていること、痙縮の評価が主にスケール(点数)という主観的な指標であることが指摘されています1。研究間の結果のばらつき(異質性)も大きく、痙縮の分析では非常に大きなばらつきがみられました2。効果量が時間とともに小さくなっていく可能性も報告されています1。著者らは「ESWTは痙縮の症状を和らげうるが、含まれたレビューの質が総じて低いため、現時点の証拠は限られ、決定的とはいえない」と慎重にまとめています1。良い結果を示した研究があっても、すべての方に同じ変化が当てはまるわけではありません。
まだ分かっていないこと
現在の研究では、ESWTについて、どの当て方(拡散型か集束型か、当てる回数や強さ、間隔)が最も役立つのかは、十分に定まっていません1,2。研究によって刺激量が大きく異なり(たとえば1回あたり1,500回程度から、上肢では2万回を超えるものまで)、比較が難しいのが実情です2。また、効果がどのくらい続くのか、痙縮の指標が下がったことが実際の手足の使いやすさや歩きやすさ、生活のしやすさにどこまでつながるのかも、まだはっきりしていません1,2。とくに上肢は下肢に比べて研究が少なく、今後の課題です1
SECTION 04
何が期待でき、何ははっきりしないか

研究をふまえると、ESWTは「通常のリハビリに組み合わせる補助的な選択肢として、手足の痙縮の指標に良い変化を示しうる方法」と考えるのが現実的です1,2。注射のように体の中に薬を入れる必要がなく、痛みが比較的少ないとされる点は利点です1。痙縮がやわらぐことで、ストレッチや装具、動きの練習に取り組みやすくなる可能性も考えられます。つっぱりへの対処法全体については脳卒中後のストレッチと関節可動域について解説した記事もご覧ください。

一方で、「ESWTだけで麻痺そのものが軽くなる」「一度当てれば痙縮が元に戻らない」ことは、現時点の研究でははっきり示されていません1,2。効果には個人差があり、時間とともに弱まる可能性も指摘されています1。ESWTは単独の決め手ではなく、ストレッチや装具、運動療法、必要に応じたボツリヌス療法などと組み合わせる「一部」として位置づけるのが現実的です。電気を使う方法との比較も研究されており、電気刺激については脳卒中後のTENS(経皮的電気神経刺激)について解説した記事で紹介しています。

SECTION 05
どんな人に向いているか

研究の対象を見ると、脳卒中後に手や足の痙縮(つっぱり・こわばり)があり、通常のリハビリに何か加えたい方が想定されています1,2。とくに下肢(ふくらはぎや足首)の痙縮では、比較的まとまった結果が報告されています1,4。ESWTは医療機器を使って医療機関で行うもので、誰でも自宅で行える方法ではありません。適応や当てる場所は、痙縮の程度や皮膚・体の状態によって異なります。

⚠ ただし、忘れてはいけない大切なこと
ESWTは体の外から強いエネルギーを当てる医療行為であり、注意点があります。研究のなかでも、皮膚の点状の内出血(点状出血)、水ぶくれ、当てている間の軽い痛み、一時的な筋肉のだるさなどが報告されています。多くは数日で自然におさまるとされますが、皮膚が弱い方や感覚が鈍い方では注意が必要です1。また、血をサラサラにする薬を使っている方、皮膚に傷や感染がある部位、腫瘍やペースメーカーの近くなど、避けるべき場合もあります。ESWTを検討するときは、必ず主治医・リハビリ専門職に、自分の痙縮の状態や持病、飲んでいる薬を伝えて相談してください。ここで紹介した内容は一般的な情報であり、成果をすべての方に保証するものではありません。
SECTION 06
回数・頻度の目安

研究で用いられた方法には大きな幅がありますが、比較的質の高いレビューをふまえた目安として、1回あたり1,500回ほどの衝撃波を、4〜5Hzの間隔、弱めから中くらいの強さ(エネルギー密度0.03〜0.34mJ/mm²程度)で当てる方法などが報告されています1。当てる部位は、痙縮の強い筋肉(ふくらはぎや前腕の筋肉など)です1。週に1回程度、数回にわたって行う形が多く用いられています。刺激量が多いほど痙縮の指標がより下がる傾向も報告されていますが、強くすればよいというものではなく、安全とのバランスが大切です2

これはあくまで研究の目安であり、実際の当て方や回数は一人ひとりの状態に合わせて医療機関で調整します。大切なのは、ESWTを単独で行うのではなく、ストレッチや装具、動きの練習と組み合わせることです1。施術後に強い痛みや皮膚の異常が続くときは、当てた医療機関に相談してください。

脳卒中後の上肢のつっぱりに配慮した機能練習
治療を検討する場合も、生活動作につなげる練習を組み合わせることが大切です。
SECTION 07
Journey Rehabでの現場経験
当施設でのリアルな経験
訪問リハビリでご一緒するなかで、「手足のつっぱりに衝撃波の治療は受けたほうがいいですか」というご質問をいただくことがあります。ESWTは医療機関で行う治療のため、私たちの訪問リハビリの現場でその機器を使うことはありませんが、痙縮への向き合い方をご相談いただくことは少なくありません。私たちがまず大切にしているのは、痙縮を一つの方法だけで何とかしようとしないことです。日々のストレッチやポジショニング(良い姿勢の保ち方)、装具の使い方、動きの練習を土台にしたうえで、医療機関でのボツリヌス療法やESWTなどを検討する場合は、主治医と連携しながら進めます。実際に、ESWTを受けられた方のなかには、一時的につっぱりがやわらいで動かしやすいと話される方もいれば、あまり変化を感じなかった方もいらっしゃいました。ESWTは万能ではなく、痙縮とうまく付き合いながら生活動作を保っていくための一つの選択肢として、ていねいに情報をお伝えすることを心がけています。
Journey Rehabの訪問自費リハビリについて知りたい方へ
手足のつっぱりや動かしにくさの状態を一緒に確認しながら、生活に合ったリハビリの進め方を考えます。
免責事項
この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。診断、治療、医療行為の推奨を目的とするものではありません。ESWTは医療機関で行う医療行為であり、適応や当て方、避けるべき条件は、痙縮の状態や持病、飲んでいる薬によって異なります。実施を検討する際は、まず主治医・リハビリ専門職に相談してください。施術後に強い痛みや皮膚の異常が続く場合は、当てた医療機関に相談してください。研究知見は執筆時点の情報であり、今後変わる可能性があります。
田中 光 作業療法士 Journey Rehab代表
執筆者:株式会社Journey Rehab 代表取締役|田中 光
保有資格
修士(作業療法学)/作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍

経歴
2016年:初台リハビリテーション病院に入職。脳卒中後遺症の回復期リハに従事
2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立
2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中

研究活動
第57回日本作業療法学会(2023)ポスター発表/第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表

論文執筆
田中 光, 石橋 裕, 佐々木 智也, 坂本 泰平. (2025). 本邦における介護予防・日常生活支援総合事業におけるスコーピングレビュー. 日本老年療法学会誌, 4(1).
FAQ
よくある質問
ESWTは脳卒中の痙縮に使えますか?
手足の痙縮(つっぱり)に対して研究されており、痙縮の指標に良い変化を示した研究がまとまってきています。ただし研究の質にはばらつきがあり、通常のリハビリに組み合わせる補助的な選択肢と考えるのが現実的です。医療機関で行うものなので、まず主治医に相談してください。
痛みはありますか?副作用は?
当てている間に軽い痛みを感じることがあり、点状の内出血や水ぶくれ、一時的なだるさが報告されています。多くは数日でおさまるとされますが、皮膚が弱い方や血をサラサラにする薬を使っている方は注意が必要です。心配なことは事前に医師に伝えてください。
効果はどのくらい続きますか?
1か月以降でも痙縮の指標が下がっていたという報告がある一方、時間とともに効果が弱まる可能性も指摘されています。続き方には個人差があり、まだはっきりしていません。ストレッチや装具などと組み合わせて続けることが大切です。
ESWTだけで手足の麻痺は軽くなりますか?
ESWTで麻痺そのものが変わることは、現時点の研究でははっきり示されていません。あくまで痙縮を和らげる目的の一つと考え、ストレッチや運動療法、必要に応じたボツリヌス療法などと組み合わせるのが現実的です。
ボツリヌス療法とどちらがよいですか?
痙縮にはESWTのほかボツリヌス療法や装具、ストレッチなど複数の選択肢があり、どれが合うかは状態によって異なります。両方を組み合わせる研究もあります。優劣を単純に決めるのは難しいため、医師や専門職と一緒に考えるのがよいでしょう。
どこで受けられますか?
ESWTは専用の医療機器を使って医療機関で行うもので、自宅ではできません。取り扱いのある施設は限られます。関心がある場合は、まず主治医やリハビリ専門職に相談し、対応している医療機関を確認するとよいでしょう。
REFERENCES
参考文献
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4. Cabanas-Valdés R, Calvo-Sanz J, Urrùtia G, Serra-Llobet P, Pérez-Bellmunt A, Germán-Romero A. The effectiveness of extracorporeal shock wave therapy to reduce lower limb spasticity in stroke patients: a systematic review and meta-analysis. Topics in Stroke Rehabilitation. 2020. DOI:10.1080/10749357.2019.1654242. PMID:31710277. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31710277/
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