東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍
初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立
介護者向けの支援は何をもたらすのか、研究と限界を正直に解説
「本人の症状のことばかり気にしていて、自分のことは後回しにしていた」「いつまでこの生活が続くのか、正直しんどいと感じることがある」——パーキンソン病のご本人を支えるご家族から、こうした声をうかがうことがあります。パーキンソン病は進行性の病気で、運動症状だけでなく、気分の落ち込みや認知機能の変化が出ることもあり、介護をする側の負担が長期にわたって積み重なりやすい病気です。
この記事では、パーキンソン病の介護者(ご家族)向けの支援について、研究で何が分かっていて、何がまだ分かっていないのかを正直に整理します。結論を先に言うと、患者さん本人の生活の質(QOL)や将来の医療選択の話し合いには良い変化を示した研究がある一方、介護者ご自身の「負担感」そのものを確実に軽くする方法は、まだ確立していません。
最終更新日:2026年8月20日
最新レビュー日:2026年8月20日
介護のつらさを一人で抱え込む必要はありません。強い気分の落ち込みが続く、眠れない日が続く、自分自身の体調を崩している、といった状態があるときは、我慢せずにケアマネジャー・かかりつけ医・地域包括支援センターへご相談ください。介護者ご自身の心身の健康も、支援の対象です。
パーキンソン病は、運動症状(動きの遅さ・ふるえ・すくみ足など)が注目されがちですが、実際には気分の落ち込み、意欲の低下、睡眠の問題、進行すると認知機能の変化が出ることもある病気です1。研究では、パーキンソン病の介護者は軽度から中等度の負担感を抱えていることが多く、罹病期間が長い、症状が重い、本人に陰性の感情や認知機能の低下がみられるほど、介護者の負担感は高くなる傾向が示されています2。
2. 本人の陰性感情(不安・抑うつなど)や認知機能の低下
3. 介護者自身の陰性感情
4. 介護に費やす時間の長さ2
こうした負担は、本人の気分の変化とも密接に関わっています。パーキンソン病のうつと運動療法についての研究は、パーキンソン病のうつと運動療法について解説した記事で扱っていますが、本人の気分の落ち込みは介護者の負担感にも影響することが分かっています2。介護は「本人のケア」と「介護者自身のケア」を切り離して考えられないテーマだと言えます。
2つの研究を並べると、「専門的な支援は、本人のQOLや将来の医療選択には良い影響を与えうるが、介護者本人の『しんどさ』そのものを確実に軽くする方法は、まだ十分に確立していない」という、正直だが重要な構図が見えてきます。認知症のご家族を介護されている方向けの支援プログラムについても、認知症の介護をされているご家族向けの記事で同じような結果を紹介しています。
現在の研究でも、どのような介護者に、どのような形の支援が最も合うのかは十分に分かっていません。研究で扱われた緩和ケア教育やテレヘルス支援、認知行動療法は、介護者の負担感という一つの指標には大きな変化を示せませんでしたが、これは「支援そのものが無意味」という意味ではなく、「負担感という指標だけでは支援の効果を捉えきれていない可能性がある」ことも考えられます12。今後は、対象者ごとの違いや、より生活に即した支援の形について、さらに検討が必要です。
1の研究は実際の診療に近い形で行われた大規模な試験ですが、研究期間の後半に新型コロナウイルス感染症の流行が始まり、参加者の負担が増した可能性があります。また、農村部や少数派の参加者が少なく、より条件を統制した先行研究と比べて効果が小さく出た可能性も、著者ら自身が指摘しています1。2の研究は多くの研究をまとめていますが、対象となる介護者の状況や支援内容は一様ではなく、認知行動療法や緩和ケアの結果をすべての介護者に同じように当てはめることはできません2。
研究全体では一定の傾向がありますが、対象者の状況、介護している期間、家族構成、利用できる支援資源が一人ひとり異なるため、すべての方に同じ結果が当てはまるわけではありません。
・将来の医療について話し合う「事前指示書」の作成1
・脳深部刺激療法などの手術後に介護者負担が変わるか(改善しなかったと報告されています)2
研究で確立した「これをすれば負担が減る」という方法はまだありませんが、現場でよく話題になる工夫はあります。一人で抱え込まず、早い段階から医療・介護の専門職とつながっておくことが、負担が大きくなりすぎる前の備えになります。
・自分自身の体調不良や気分の落ち込みを我慢しない
・利用できる介護サービス、ショートステイなどの情報を集めておく
・「事前指示書」など、将来の医療・生活の希望を本人と話し合っておく1
・自分自身の持病が悪化している
・「誰にも頼れない」と感じている
これらにあてはまるときは、我慢せず、かかりつけ医や地域包括支援センター、精神科・心療内科への相談を検討してください。
Journey Rehabでは、ご本人のリハビリだけでなく、訪問の中でご家族の様子にも目を向けることを大切にしています。介護をされているご家族の負担を「なかったこと」にせず、必要に応じて他の専門職やサービスへの橋渡しも含めて考えていきます。
パーキンソン病の介護者向けの支援について、緩和ケア教育とテレヘルス支援を組み合わせた大規模な試験では、患者さん本人の生活の質や将来の医療選択の話し合いには良い変化がみられましたが、介護者自身の負担感には統計的に有意な差が確認されませんでした。49件の研究をまとめたレビューでも、認知行動療法や緩和ケアが介護者負担を有意に減らすという結果は得られていません。介護者ご自身の「しんどさ」を確実に軽くする方法は、まだ研究段階にあるというのが正直なところです。だからこそ、一人で抱え込まず、早めに専門職とつながっておくことが大切です。
この記事は一般的な情報提供を目的としており、診断・治療・医療行為を推奨するものではありません。介護者ご自身の心身の不調がある場合は、我慢せず医療機関・地域包括支援センターにご相談ください。研究知見は執筆時点の情報であり、今後変わる可能性があります。
作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836(日本作業療法士協会)
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍
・2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立
・2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中
・第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表
2. Zhao Y, Wu W, Wu J, Shen B, Cao Y, Xu Y. Risk factors and intervention of caregiver burden in Parkinson's disease: a systematic review and meta-analysis. Qual Life Res. 2024;33(7):1753-1766. DOI:10.1007/s11136-024-03616-0. PMID:38573387.
