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パーキンソン病の不安で外出を避けるとき|認知行動療法と生活の整え方

パーキンソン病関連情報 読了目安 約12分 文・田中 光(作業療法士)
自宅のテーブルで外出への心配を専門職に相談する高齢女性
田中 光 作業療法士 Journey Rehab代表

田中 光|株式会社Journey Rehab代表
認定作業療法士/修士〈作業療法学〉
東京都立大学大学院博士後期課程在籍
代表・会社情報

結論:パーキンソン病の不安で外出や交流を避けるときは、身体症状と安全性を確認したうえで、認知行動療法などの専門的な支援を検討できます。研究には不安や回避行動の改善を示す結果がありますが、効果は一律ではありません。本人に大切な活動を確かめ、医療者への相談と生活の調整を組み合わせることが出発点です。

出かける予定を何度も取り消す、友人の誘いを断る、診察で不安をうまく伝えられない。こうした困りごとは、動きにくさだけでは説明できないことがあります。この記事では、パーキンソン病の不安に対する認知行動療法の根拠と限界を確認し、暮らしの中で何を相談し、どう支援を整えるかを解説します。

この記事で分かること

認知行動療法の研究で分かること・分からないこと/不安と身体症状を相談するための記録/外出や交流を支える生活の工夫/作業療法士と心理療法の役割/中止・受診の目安

不安で生活が狭くなるとき、まず何を確かめるか

「外で動けなくなったら困る」「震えを見られるのが気になる」と、外出前から緊張することがあります。不安は本人の気持ちの弱さだけで説明できるものではなく、パーキンソン病でみられる非運動症状の一つです。診断名が付くほどかどうかにかかわらず、受診や食事、人との交流が難しくなっているなら相談する理由になります。4,5

一方、実際に転倒しやすい場所や、立ちくらみが起きる状況への心配には、身体面と環境面の対策が必要です。「心配しすぎ」と決めつけて外出を勧めると、必要な安全対策を見落とします。動悸や息苦しさ、ふらつきも、不安だけでなく別の身体の問題で起こるため、症状が新しいときは医療者へ伝えてください。4–6

不安が薬の効きにくい時間帯に強くなることはありますが、すべてがOFF症状とは限りません。時刻、服薬、動きやすさとの関係を確認する方法は、ON/OFF変動と生活動作の記事も参考になります。不安、抑うつ、疲労は重なって現れることがあり、自己判断で一つの原因に絞らないことが大切です。

認知行動療法(CBT)は、どのような支援か

認知行動療法は、困る場面で生じる考え、体の反応、行動のつながりを専門家と整理し、対処の選択肢を増やす心理療法です。「前向きに考えれば治る」という励ましではありません。たとえば人に会う前の予測と、実際に必要な準備を分け、本人の目標に合わせて無理のない対応を検討します。1,4

パーキンソン病の不安を対象にした試験では、心理教育、不安の振り返り、リラクセーション、考え方の検討、問題解決、避けている場面への段階的な取り組みなどを組み合わせています。訓練を受けた心理職が、症状や本人の理解に合わせて実施しました。この記事を読むことや、家族が外出を促すことが、研究と同じ治療になるわけではありません。1

段階的な取り組みは、危険な場所で我慢する練習ではありません。現実の転倒リスクや体調を先に確認し、実施する内容と中止の目安を専門家と共有します。認知行動療法を希望する場合は、主治医に、パーキンソン病の症状を踏まえて相談できる精神科・心療内科や心理職への紹介を相談してください。

研究結果:改善した点と、明確ではなかった点

48人の比較試験では、評価する尺度で結果が異なった

Moonenらの2021年のランダム化比較試験は、不安のある48人を、個別の認知行動療法を受ける24人と、経過観察を受ける24人に割り付けました。認知行動療法は週1回、計10回を基本とし、その後に補足の面談を行いました。対照群にも情報提供と連絡があり、両群とも通常の医療を継続しました。1

主な評価として事前に定めた一般的な不安尺度HARSでは、点数の低下が認知行動療法群6.7点、対照群3.9点で、群間差は統計学的に明確ではありませんでした(p=0.15)。一方、副次評価のパーキンソン病に合わせた不安尺度PASは、9.9点と5.2点の低下で、認知行動療法群が良好でした。特に発作的な不安や回避行動で違いがみられました。1

この試験は「すべての不安に効いた」とは言えません。主要評価の群間差は明確でなく、副次評価では改善を示した、という両方の結果を読む必要があります。生活の質にも明確な改善はありませんでした。3か月後までは対照群と比較していますが、6か月後は認知行動療法群だけの追跡で、長期の優越性は判断できません。1

複数の試験をまとめると、改善の可能性はある

2025年のシステマティックレビュー・メタ解析は、認知行動療法に関する16試験・計682人を含み、そのうち13試験で不安を評価しました。統合結果は不安の改善を示しましたが、対象者や治療内容、評価尺度による結果のばらつきが大きい研究でした。生活の質の統合結果は、改善が統計学的に明確ではありませんでした。2

このレビューには、不安の治療を主目的としない試験も含まれます。全体の平均を、目の前の一人の改善率に置き換えることはできません。ドイツ神経学会のガイドラインをまとめた論文は不安に対して認知行動療法を勧めていますが、勧告は全員への効果を保証するものではありません。2,4

窓辺のテーブルで開いたノートを前に生活の困りごとを振り返る高齢女性

オンラインでの支援は「専門家の関与」がある研究

2020年の77人を対象にした試験では、専門家が支える10週間の個別化したインターネット認知行動療法を調べました。主要評価である生活・社会活動の支障は、待機しながら通常ケアを受ける群より改善しました。ただし、不安の評価では介入群内の改善が明確でなく、対照群の悪化が群間差に影響した可能性があります。3

この試験は、不安の診断がある人だけを集めた研究ではありません。また、市販アプリを一人で使う方法を試したものでもありません。通院が難しい場合には遠隔で相談できるかを尋ねる選択肢がありますが、提供者の専門性、通信の使いやすさ、緊急時の連絡方法を確認する必要があります。

研究だけでは分からないこと

研究から、認知行動療法でパーキンソン病が治る、薬を減らせる、転倒を防げる、病気の進行が遅くなるとは結論づけられません。不安の点数と、歩行の安全性や生活の質は別々に確かめる必要があります。1–4

48人の試験は比較的小規模で、主に軽度から中等度の患者が対象でした。重い認知機能の問題や大うつ病などを伴う人は対象から除かれており、進行期や複雑な精神症状がある人へ、そのまま当てはめることはできません。参加者は治療を受けたかどうかを知っており、面談の時間や注目を受けることの影響も完全には分けられません。1

また、心理療法はいくつもの要素の組み合わせです。ノートを書くことだけ、呼吸を整えることだけが有効だったとは言えません。レビューには同じ試験も含まれるため、試験とレビューの人数を足して根拠が増えたと扱わないことも必要です。日本の生活環境で、どの頻度・方法が最も続けやすいかは、個別に検討する余地があります。

診察で伝えるために、困る場面を短く記録する

記録は自分で診断するためではなく、相談の焦点をそろえるために使います。毎日細かく採点する必要はありません。書くことで不安が強くなるなら中断し、口頭や家族の補助を使って構いません。記録方法自体に治療効果を約束するものではありません。

場面・体調・生活への影響を一緒に残す

「いつ、どこで」「何が心配だったか」「体に何が起きたか」「どう行動したか」を一言ずつ残します。服薬時刻や動きにくさ、立ちくらみがあれば併記します。たとえば「午後の買い物前/レジで動けなくなるのが心配/動悸/予定を中止」と整理すると、不安の内容と身体の変化を医療者が一緒に確認しやすくなります。これは説明のための例で、実在の症例ではありません。

できなかったことだけでなく、どの条件ならできたかも残します。「混雑を避けた時間なら店に入れた」「友人との電話は負担が少なかった」などです。本人にとって必要な活動と、実際に困る条件を分ける材料になります。悪い日があったことを失敗と採点せず、次の支援を考える情報として扱います。

生活の具体例:大切な活動を続ける準備

外出は距離だけでなく、目的と安全条件を整える

「もっと外に出る」ではなく、「近所の店で必要な物を一つ買いたい」「友人と話したい」など、本人が大切にしたい活動を確認します。外出を検討するなら、休憩場所、移動方法、付き添いの必要性、混雑、トイレ、帰る手段を整理します。服薬の時間を自己調整して外出に合わせるのではなく、処方を守れる予定を医療者と相談します。

移動に現実の危険がある場合は、歩行や立ち上がりの評価と環境調整を先に行います。怖さに慣れる目的で一人歩きを増やしたり、混雑した場所へ無理に出たりすることは勧めません。段階的に取り組む心理療法を行う場合も、安全性の評価と心理療法の計画を連携させます。

段差や障害物のない玄関で椅子に座り外出準備を専門職と相談する高齢女性

交流の方法を、体調と本人の希望に合わせる

外出が難しい時期でも、電話、短時間の来訪、座って話せる場所など、交流の方法を選べます。「出かけられないから何もできない」と選択肢をなくさず、本人が望むつながりを確かめます。一方で、本人が望まない交流を予定で埋める必要はありません。休息と活動のバランスは、その日の体調も踏まえて決めます。

作業療法士は、行動を実行する条件を一緒に確認する

作業療法士は、玄関での準備、着替え、持ち物の整理、移動後の疲れ、注意や段取りなどを生活場面で見ます。不安の背景に、動作の難しさや環境の負担があれば、それを減らす方法を検討します。支援後も「不安の点数」だけでなく、本人が大切な活動を行えたか、安全に休めたかを確かめます。

ただし、一般的な作業療法や訪問支援が、研究で用いられた認知行動療法と同じ効果を持つとは言えません。生活動作への支援と専門的な心理療法は役割を区別し、必要に応じて主治医や心理職と連携します。作業療法の範囲は、パーキンソン病の作業療法の記事でも紹介しています。4

家族の関わり:急かさず、困りごとを共有する

「大丈夫だから行ってみよう」と説得する前に、何が心配なのかを聞きます。転倒、声の出しにくさ、急なOFF、人の視線などでは、必要な支援が異なります。本人が困っていることを認めたうえで、手伝ってほしい部分と、自分で決めたい部分を確認してください。

支援の目標は、不安を口にしなくなることではありません。本人が相談しやすく、大切な生活を選べることです。付き添いの負担が大きい場合は家族だけで抱えず、医療者や支援者に共有します。心理療法に家族が関わる場合も、本人の同意と専門家の方針に沿って協力します。

平らなテラスで安定した椅子に座り友人と会話を楽しむ二人の高齢女性

安全上の注意・練習の中止・受診の目安

生活での取り組みをいったん止めるとき

外出準備や移動中に、強いふらつき、立ちくらみ、転びそうな状態、急な動きにくさ、強い息苦しさが出たら中断し、安全な場所で座るなどして支援を求めます。怖さが急激に強まり続ける、考えがまとまらない場合も、その場で無理に続けません。症状を再現するために息を速くしたり、息を長く止めたりする練習を自己流で行わないでください。

主治医へ早めに相談したい変化

不安で通院、食事、睡眠、服薬が難しくなった、急な恐怖が繰り返す、外出や交流を避ける範囲が広がった場合は相談してください。新しい動悸やふらつき、幻覚、混乱も、不安だけで説明しないことが大切です。薬の開始・変更と症状の関係があれば伝えますが、パーキンソン病の薬や不安の治療薬を自分で減量・中止しないでください。4–6

救急の判断が必要な症状:突然の強い胸痛、重い呼吸困難、意識を失う、急な片側の麻痺や言葉の出にくさは、「いつもの不安」と決めつけず119番などで助けを求めます。初めての強い症状や普段と異なる症状は、心理的な原因と自己判断しないでください。

死にたい気持ちや自分を傷つけたい気持ちがある場合は、一人で抱えず医療機関や身近な信頼できる人へすぐ伝えてください。今すぐ自分の安全を保てない場合は119番など緊急の支援を求めます。電話・SNSなどの相談先は厚生労働省の相談先一覧でも確認できます。7

Journey Rehabに相談できる生活のこと

Journey Rehabでは、自宅での動作、予定の組み立て、環境の調整など、生活で実行しにくいことを作業療法士の視点から整理します。心理療法や薬の調整が必要な不安については、医療機関での評価につなげることが重要です。当社の訪問支援が認知行動療法の提供や不安の治療効果を保証するものではありません。支援の利用を検討する際は、訪問自費リハビリの料金・利用の流れをご確認ください。

まとめ

パーキンソン病の不安に対する認知行動療法には改善を示す研究がありますが、主要評価で差が出なかった試験や、生活の質への効果が明確でない結果もあります。まず身体症状と安全性を確認し、専門的な相談と生活の調整を組み合わせます。不安を我慢させるのではなく、本人に大切な活動と必要な支援を具体的に考えましょう。

田中 光 作業療法士 Journey Rehab代表

田中 光|株式会社Journey Rehab代表
認定作業療法士/修士〈作業療法学〉
東京都立大学大学院博士後期課程在籍
代表・会社情報

本記事は一般的な情報提供を目的とし、診断や個別の治療指示を行うものではありません。当社サービスの案内を含みます。対象日は2026年10月2日、資料確認・制作日は2026年10月3日です。画像は説明用に生成したもので、実在の利用者、治療場面、支援実績を示す写真ではありません。

よくある質問

Q. 不安は、気持ちの持ちようで起きるのでしょうか?

A. パーキンソン病の非運動症状として現れることがあり、身体症状や生活の困難も関係します。本人の弱さと決めつけず、生活への影響を主治医へ伝えてください。

Q. 認知行動療法を受ければ、外出できるようになりますか?

A. 不安や回避行動に改善を示す研究はありますが、全員の外出や安全を保証しません。歩行、体調、環境を含めて評価し、本人の目標に合わせて検討します。

Q. オンラインのアプリだけでも同じ効果がありますか?

A. 紹介した試験は専門家の支援を伴います。市販アプリや一人で行う方法に、同じ効果があるとは言えません。医療者へ相談先を確認してください。

Q. 不安になっても外出を続けた方がよいですか?

A. 体調や安全性を確認せず我慢して続けることは勧めません。強い身体症状や転倒の危険がある場合は中断し、心理療法の取り組み方は専門家と相談します。

Q. 作業療法士には何を相談できますか?

A. 外出準備や移動、環境、予定の組み立てなど、生活で負担となる条件を相談できます。専門的な心理療法や薬の治療とは役割が異なり、必要に応じて連携します。

参考文献

  1. Moonen AJH, et al. Cognitive Behavioral Therapy for Anxiety in Parkinson’s Disease: A Randomized Controlled Trial. Mov Disord. 2021;36:2539–2548. PMID: 33617699. DOI: 10.1002/mds.28533. 原文・書誌情報
  2. Yu X, et al. Cognitive behavioral therapy for anxiety and depression symptoms in people of Parkinson’s disease: a systematic review and meta-analysis. Front Aging Neurosci. 2025;17:1440850. PMID: 40979152. DOI: 10.3389/fnagi.2025.1440850. 原文・書誌情報
  3. Kraepelien M, et al. Individually Tailored Internet-Based Cognitive-Behavioral Therapy for Daily Functioning in Patients with Parkinson’s Disease: A Randomized Controlled Trial. J Parkinsons Dis. 2020. PMID: 32176657. DOI: 10.3233/JPD-191894. 原文・書誌情報
  4. Kalbe E, et al. German Society of Neurology guidelines for the diagnosis and treatment of cognitive impairment and affective disorders in people with Parkinson’s disease: new spotlights on diagnostic procedures and non-pharmacological interventions. J Neurol. 2024. PMID: 39120709. DOI: 10.1007/s00415-024-12503-0. 原文・書誌情報
  5. Parkinson’s UK. Anxiety.(患者・家族向け専門団体資料) 原文・書誌情報
  6. NHS. Panic disorder.(パニック症状と他の身体疾患との区別、受診の必要性) 原文・書誌情報
  7. 厚生労働省.相談先一覧. 原文・書誌情報
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