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パーキンソン病の寝返り・起き上がりが難しいとき|ベッド上動作と生活での工夫

パーキンソン病関連情報 読了目安 約10分 文・田中 光(作業療法士)
パーキンソン病の高齢者が作業療法士の見守りのもとベッド端で起き上がりを確認する様子
寝返り・起き上がりは、実際の寝室とその日の状態に合わせて考えます。
田中 光 作業療法士 Journey Rehab代表

田中 光(作業療法士)|株式会社Journey Rehab 代表
認定作業療法士/修士(作業療法学)
東京都立大学大学院 博士後期課程在籍
代表・会社情報

結論:寝返り・起き上がりに困るときは、力任せに繰り返す前に、どの動作のどこで止まるか、いつ困るか、ベッド周囲が安全かを確認します。体幹や腕の動きとベッド動作の関連を示す研究はありますが、家庭で特定の練習をすれば改善すると断定できません。立ちくらみや転倒の危険がある場合は、医療者と方法を調整してください。

「夜、寝返りを打てず同じ姿勢になる」「朝、起き上がるまでに時間がかかる」。パーキンソン病では、歩行だけでなくベッドの上の動作が生活の負担になることがあります。介助する家族も、どこを手伝えばよいか迷いがちです。

ベッド動作は、病状だけでなく、寝具、薬の効き方、痛み、眠気、立ちくらみ、寝室の広さなどにも左右されます。この記事では、研究で確認されたことと未解明なことを分け、作業療法士と相談するときの具体的な観察点をまとめます。

この記事で分かること
  • 寝返りと起き上がりを分けて観察する理由
  • 研究が示す関連と、練習効果についての限界
  • 寝室で確認したい手順・環境・安全上の注意
  • 作業療法士や主治医へ伝える情報

どの動作で困っているかを分ける

「ベッドから出られない」という一言の中には、仰向けから横向きになる寝返り、横向きから体を起こす動作、ベッド端で座位を保つこと、立ち上がりが含まれます。困る段階を分けると、必要な支えや相談先が見えやすくなります。左右どちらへ回るかでも難しさが違うため、片側だけを見て判断しません。

家族と共有したい短い観察メモ
  • 寝返り/横向きから座る/座ってから立つ、どこで止まるか
  • 朝・夜、服薬前後、疲労時などで違いがあるか
  • 痛み、めまい、息苦しさ、転びそうな感覚があるか
  • どの手助けが必要で、本人ができる部分はどこか

時間帯によって変わる人は、ON/OFFと生活動作の記録も参考になります。ただし、動きにくさを記録だけで薬の効果切れと判断せず、主治医に相談してください。

ベッド動作に関する研究結果

109人の横断研究:寝返りと起き上がりは別々に評価された

2025年の研究では、パーキンソン病の109人を病院のベッドで日中に評価しました。手すりや人の介助を使わない条件で、寝返りは20人、仰向けから座る動作は22人が自立していませんでした。体幹の症状、腕の固さ、体幹を伸ばす筋力などと、動作の非自立との関連が報告されています。関連があることは、その一つを鍛えれば動作が改善するという意味ではありません。2

48人の運動研究:特定の方法の優越性は確認できない

2014年の小規模研究では、体幹を回すカヤック様運動と一般的な運動を4週間比較しました。両群ともベッド動作のスコアは開始時より改善しましたが、ベッド動作に関する群間差は有意ではありませんでした。したがって「体幹を回す運動が通常の練習より寝返りに効く」とは言えません。論文には割付方法の記述にも食い違いがあり、結果の解釈には注意が必要です。3

生活動作全般の試験:結果は一様ではない

在宅で個別に作業療法を行った191人の試験では、3か月時点の本人評価による生活動作の遂行度が対照群より高くなりました。一方、軽度~中等度の762人を対象に、比較的少ない回数の理学療法と作業療法を提供した試験では、3か月時点の拡大日常生活動作尺度に明確な群間差はありませんでした。対象や介入量、評価尺度が異なり、どちらも寝返りだけの効果を示していません。4,5

ベッド上で膝を曲げて寝返りの準備をする高齢者と見守る作業療法士
どの段階が難しいかを観察し、動きやすい方法を個別に検討します。

研究の限界と、まだ分からないこと

研究から言えること
  • ベッド動作の難しさには、体幹や腕など複数の要素が関連します。2
  • パーキンソン病に特化した作業療法は、日常生活動作に困る人への支援として診療指針に位置付けられています。1
  • 生活動作全般への介入の結果は、研究条件によって異なります。4,5
研究だけでは言えないこと
  • どの寝返り・起き上がり手順が、誰に最も安全で有効か。
  • 自宅で何回、どれくらいの期間練習すればよいか。
  • 夜間、薬が効きにくい時間、認知機能や痛みの問題がある人にも同じ結果が当てはまるか。
  • 特定の寝具や補助具で転倒・介助負担が減るか。

109人の研究は、病院の同じベッド、日中、薬が効いている状態で行われた横断研究です。原因や改善策を調べた試験ではなく、自宅の夜間へそのまま当てはめられません。運動研究は少人数かつ短期間で、監督下の高頻度なプログラムでした。家庭で同じ運動量をまねる根拠にはなりません。2,3

寝返りを考えるときの観察点

パーキンソン病の作業療法ガイドラインには、膝を曲げる、顔と体幹を回る方向へ向ける、肩と骨盤を順に動かすなど、寝返りを一連の小さな動作に分ける方法が示されています。これは試してよい候補を整理する実践資料であり、全員に同じ順番を守らせる指示ではありません。痛みや関節の制限がある場合は、動かし方を担当者と決めます。6

家での具体例:向きを変える前後を見る

たとえば右へ回りたいのに肩だけが動いて骨盤が残る場合、「もっと強く回る」と促す前に、足の位置、掛け布団の重さ、右側の空き、寝返り後に姿勢を保てるかを確認します。膝を曲げる姿勢を取れるかも人によって異なります。本人が楽な方法を一緒に探し、途中で痛みやめまいが出るなら中止します。

夜間に何度も動けず眠れない、起床時だけ著しく動きにくい、睡眠中の行動が気になる場合は、動作の練習だけで解決しようとせず主治医へ伝えます。服薬の変更は自己判断で行いません。

起き上がりから立つ前までの観察点

仰向けから一気に上体を起こそうとすると、腕や体幹に負担がかかる人がいます。実践ガイドラインには、横向きになり、脚をベッド端へ移しながら腕で上体を支えて座る方法が載っています。ただし、肩の痛み、腕の力、ベッドの高さ、マットレスの沈み込みによって適否は変わります。初めて試す場合や転倒歴がある場合は、専門職が安全を確認したうえで練習します。6

ベッド端で確認したい3点
  1. 腰を深く安定して座れるか。足裏が床につくか。
  2. すぐ立たず、めまい・ふらつき・視界が暗くなる感じがないか。
  3. 立つ前に支えの位置と、次の行き先が確保されているか。

パーキンソン病では起立時の血圧低下が問題になることがあります。座れたことと、安全に立って歩けることは別です。立ちくらみがある人は、ベッド端で状態を確認し、症状を主治医へ相談してください。9 関連する説明はパーキンソン病と起立性低血圧の記事にもあります。

ベッド端に安定して座り足を床につけて立つ前に一呼吸置く高齢者
起き上がれた後も、座位の安定と立ちくらみを確認します。

寝室環境と介助を見直す

動作が難しい理由を本人の体だけに求めず、寝室も確認します。マットレスの沈み込み、重い寝具、低すぎる・高すぎるベッド、足元の物、暗い通路などは、動作のしやすさと安全に関わります。Parkinson’s Foundationの生活資料も寝具やベッド移動の工夫を紹介していますが、補助具の使い方は個別の評価が必要です。7

家族の介助は「引き起こす」前に相談する

腕を強く引っ張る介助は、肩を痛めたり本人と介助者のバランスを崩したりするおそれがあります。本人がどこまで動けるか、声かけのタイミング、支える位置を作業療法士・理学療法士と確認してください。介助者一人で支えきれない、夜間に転倒しかける場合は、自己流の介助を続けず早めに相談します。

ベッド柵・補助バーは自己判断で設置しない

成人用ベッド柵には、体がマットレスとの隙間に挟まる、窒息する、柵を越えて転落する危険が報告されています。FDAは、使用者の身体・認知状態、製品とベッドの適合、隙間などの確認を求めています。柵や手すりが必要と感じたら、福祉用具の専門職と担当医療者に相談してください。8

作業療法士と高齢者がベッドの高さや寝室の動線を確認する様子
ベッドの高さ、足元、通路と照明は、実際の生活場面で確認します。

作業療法士の視点・相談先

作業療法士は、筋力だけでなく「夜間にトイレへ行く前」「朝、服薬後に着替える前」など、本人にとって必要な場面で動作を見ます。寝返り・起き上がり・立ち上がりを分け、体の動きと寝具・手すり・家族の介助を合わせて検討します。パーキンソン病の作業療法についても紹介しています。

たとえば「起き上がりが遅い」だけでなく、「左へは寝返れるが右へ回ると布団に引っかかる」「座れるが立つとふらつく」と伝えると、評価する課題が明確になります。NICEは、パーキンソン病で日常生活動作に困る人への疾患に特化した作業療法を推奨しています。ただし、一回の訪問や一つの方法でベッド動作が改善すると保証するものではありません。1

Journey Rehabの訪問自費リハビリでは、生活場面と本人の目標に沿って相談を受けます。利用条件や費用は料金・利用の流れで確認できます。医療上の診断、薬の調整、急性症状への対応は主治医・医療機関の役割です。

中止基準と医療機関へ相談すべき症状

練習をその場で止める目安

転倒しそうになった、姿勢を保てない、強い痛み、めまい、視界が暗くなる感じ、胸痛、息切れ、冷や汗などが出たら、寝返り・起き上がり・立位の練習を中止します。安全な姿勢をとり、症状が続く、強い、繰り返す場合は医療機関へ相談してください。倒れそうな人を無理に歩かせないでください。

急ぎの受診を考える症状

突然の片側の麻痺・しびれ、ろれつが回らない、急な意識の変化、失神、強い胸痛、呼吸困難などは、パーキンソン病の日常的な動きにくさと決めつけず、救急相談・救急受診を考えてください。頭を打った後の新しい症状も速やかに相談します。

転倒や転びそうな回数が増えた、ベッドから出られない日が増えた、立ちくらみが続く、痛みや睡眠の問題が強い場合は、主治医や担当リハビリ専門職へ早めに伝えます。薬の量や服薬時刻を自己判断で変えないでください。

執筆・確認と運営上の立場

本記事は株式会社Journey Rehab代表の作業療法士・田中 光が執筆・確認しました。当社サービスへの案内を含みます。研究の結果は個人の治療効果や安全性を保証しません。診断・薬剤調整は主治医へご相談ください。記事制作日:2026年9月30日、対象掲載日:2026年9月29日。

まとめ

寝返り・起き上がりに困るときは、苦手な動作の段階と時間帯を具体的に見ます。研究は体幹や腕の状態との関連、生活動作への作業療法の可能性を示しますが、家庭での最適な寝返り手順や練習量は確立していません。寝室環境、介助方法、立ちくらみを含めて専門職と相談し、安全を優先してください。

田中 光 作業療法士 Journey Rehab代表

執筆者:田中 光|株式会社Journey Rehab代表
認定作業療法士/修士(作業療法学)
東京都立大学大学院 博士後期課程在籍
代表・会社情報

よくある質問

Q. 寝返りは体幹を鍛えれば必ず改善しますか?

A. 必ずとは言えません。体幹の状態とベッド動作の関連を示す横断研究はありますが、筋力訓練による改善を証明したものではありません。寝具、痛み、時間帯なども含めて評価します。

Q. 毎日どのくらい寝返りを練習すべきですか?

A. 家庭で全員に適用できる回数や期間は確立していません。安全性を確認し、疲労や痛みが出ない範囲と目的を担当者と決めてください。

Q. ベッド柵を付ければ一人で起きられますか?

A. 柵は全員に安全な解決策ではありません。挟み込みや転落の危険があり、製品とベッドの適合、本人の動作を専門職に確認してもらう必要があります。

Q. 朝だけ起き上がれない場合は薬を変えるべきですか?

A. 自己判断で変更しないでください。困る時間、服薬、眠気、立ちくらみなどを記録し、主治医に相談します。

Q. 家族が腕を引いて起こしてもよいですか?

A. 強く引くと肩やバランスを損なうことがあります。本人ができる部分と安全な支え方を作業療法士・理学療法士と確認してください。

参考文献

  1. NICE. Parkinson’s disease in adults: diagnosis and management. NG71. 推奨事項。
  2. Narita M, et al. Factors Associated With the Decline in Daytime Bed Mobility Independence in Patients With Parkinson’s Disease: A Cross-Sectional Study. J Mov Disord. 2025. PMID: 40276908. DOI: 10.14802/jmd.25035. PubMed。
  3. Shujaat F, et al. The effectiveness of Kayaking exercises as compared to general mobility exercises in reducing axial rigidity and improve bed mobility in early to mid stage of Parkinson’s disease. Pak J Med Sci. 2014. PMID: 25225533. DOI: 10.12669/pjms.305.5231. PubMed/全文。
  4. Sturkenboom IHWM, et al. Efficacy of occupational therapy for patients with Parkinson’s disease: a randomised controlled trial. Lancet Neurol. 2014. PMID: 24726066. DOI: 10.1016/S1474-4422(14)70055-9. PubMed。
  5. Clarke CE, et al. Physiotherapy and Occupational Therapy vs No Therapy in Mild to Moderate Parkinson Disease: A Randomized Clinical Trial. JAMA Neurol. 2016. PMID: 26785394. DOI: 10.1001/jamaneurol.2015.4452. PubMed。
  6. ParkinsonNet. Guidelines for Occupational Therapy in Parkinson’s Disease Rehabilitation. 2011. pp. 124–129. PDF。
  7. Parkinson’s Foundation. Activities of Daily Living: Safety in the Bedroom. 資料。
  8. U.S. Food and Drug Administration. Safety Concerns about Adult Portable Bed Rails. 安全情報。
  9. Parkinson’s Foundation. Low Blood Pressure and PD. 資料。
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