
結論:パーキンソン病の活動目標は、本人に意味のある生活動作と安全性から決めます。586人のParkFit試験では主要評価項目に有意差がなく、日誌・活動量計の副次評価では前向きな差がありました。数字だけで効果を判断せず、転倒や疲労を確かめながら調整します。
「運動を勧められたが続けられない」という悩みには、動きにくさや疲労だけでなく、生活の時間割や環境も関わります。行動支援とコーチングがどこまで役立つか、主要結果が有意でなかった試験も含めて正直に整理します。
「運動したほうがよい」と分かっていても続かない理由
パーキンソン病がある人にとって、運動や身体活動を続けることは大切な生活課題です。一方で、動きにくい時間帯、疲労、転倒への不安、予定の立てにくさ、外出先までの移動など、実行を妨げる理由は人によって異なります。「意志が弱い」と考えるのではなく、どの場面で止まるのかを具体的に調べます。
身体活動には、計画的な運動だけでなく、家の中を歩く、買い物に行く、庭や家事を行うことも含まれます。体調に合わない強度を目標にすると続けにくく、安全性も損ないます。この記事では、行動支援やコーチングを加えた研究で何が分かり、何が未確立かを整理します。薬の変更や病気の診断は主治医に相談してください。
身体活動を支える方法とは
支援には、本人に意味のある目標を決める、実行する場所と時間を具体化する、記録を見て負担を調整する、家族や専門職が障害を一緒に解く、といった方法があります。たとえば「毎日もっと歩く」という目標より、「昼食後に体調を確認して、廊下の安全な区間を数分歩く」のように場面を決めたほうが振り返りやすくなります。ただし、研究で扱ったプログラムの内容と効果は一律ではありません。
活動量計やアプリは一部の研究で使われていますが、機器を持つだけで安全な活動が増えるわけではありません。歩数を競うことが転倒につながる人もいます。数字が負担になる場合は「外出できたか」「疲れすぎなかったか」「次の日も生活できたか」といった生活に近い指標を使います。
ParkFit試験で示されたこと
586人を2年間追ったランダム化比較試験
van Nimwegenらは、座りがちな軽度〜中等度のパーキンソン病患者586人を、活動コーチング、目標設定、活動量計からのフィードバックなどを組み合わせたParkFit群と、一般的な理学療法群に割り付けました。主要評価項目の7日間聞き取り式の活動量では、群間差は統計的に有意ではありませんでした(調整後差7%、95%信頼区間−3〜17%、p=0.19)。この結果を隠して「コーチングで活動量が増えた」と断定することはできません。1
一方、副次評価の活動日誌では30%、活動量計では12%の群間差がParkFit群に有利でした。生活の質を測るPDQ-39には有意差がなく、転倒した人の割合も両群で大きく変わりませんでした。測定方法で結果が違うため、日誌や機器の数字だけで生活全体の変化を判断しないことが重要です。1
支援の中身は「励ます」だけではない
ParkFitでは、コーチが本人と活動の障害を整理し、目標を決め、記録を見ながら修正しました。対照群にも一般的な理学療法が提供されています。したがって、何もしない人と比べた効果ではありません。また、多要素のプログラムなので、どの一つの要素が結果を生んだかは分かりません。研究対象は40〜75歳、重症度が比較的軽い人が中心で、重度の転倒リスクがある人へそのまま適用できません。1

2024年レビューと研究の限界
Ahernらの系統的レビューは、行動変容支援を含む11研究、901人を検討しました。そのうちランダム化比較試験は4件で、研究の質は一定ではありません。教育、目標設定、社会的支援、活動記録などを組み合わせた方法が検討されていますが、研究間で内容や評価法が異なり、どの組み合わせが最もよいかは確定していません。著者ら自身も、運動の継続や身体活動への影響には不確実性が残ると述べています。2
運動そのものについては、2024年のCochraneレビューが多くの運動形式で運動症状や生活の質に有益な可能性を示しています。ただし、これは行動支援の上乗せ効果を直接証明する研究ではありません。また、適した運動の種類や量は病状、転倒歴、心肺機能などで変わります。3
まだ分かっていないこと
どの支援要素が、どの重症度の人に、どのくらいの期間有効かは十分に分かっていません。活動量が少し増えても、転倒や入院が減ると証明されたわけではありません。活動量計や日誌の数値は、本人の疲労や生活の質をすべて表すものではありません。日本の住宅環境、交通手段、家族構成に合わせた実装も今後の課題です。
暮らしに合わせた小さな目標の作り方
一日のどこで動けるかを見る
起床後、服薬後、食後、午後などで動きやすさが変わる人は、歩行の時間帯を固定する前に日内変動を確認します。ON/OFF変動と生活記録の記事で整理したように、薬の調整は主治医が行います。活動の目標は、動きやすい日だけの記録から決めず、疲れた日や外出しない日も含めて考えます。
結果より安全と生活の意味を先に置く
たとえば「家の中で洗濯物を取りに行く」「近所の店まで行く」「友人との約束に参加する」など、本人に意味のある活動を出発点にします。歩数は参考情報であり、疲労や転倒の危険が増えてまで達成する目標ではありません。短い活動と休息を組み合わせ、翌日の体調も振り返ります。練習を増やすかどうかは担当者と相談します。
続かなかった日を失敗として扱わない
できなかった理由を、天候、転倒不安、動きにくさ、痛み、睡眠、家事の負担などに分けます。必要なら自宅内の動線を変える、同行者を確保する、活動時間を短くするなど、目標を調整します。継続のための支援は叱咤ではなく、障害を見つけて安全な代案を作る作業です。

作業療法士の視点
作業療法士は、運動の回数だけでなく、動くことで何を続けたいかを聞きます。買い物なら、靴を履く、玄関を出る、道を歩く、店内で方向を変える、帰宅後に休むまでを一つの活動として見ます。パーキンソン病の作業療法の記事では日常生活動作の支援を、バランスと転倒対策の記事では立位・歩行の安全性を扱っています。
訪問時には床の滑りやすさ、靴、椅子、手すり、方向転換の場所などを確認します。屋外歩行が目標でも、急いで外へ出ず、自宅内での準備と休み方を整えることがあります。本人が望む活動を続ける方法を主治医・理学療法士と共有し、必要なら運動負荷を調整します。医療上の運動制限や薬剤の判断は担当医に委ねます。
安全上の注意・中止と受診の目安
歩行中に足がすくむ、ふらつく、転びそうになる、強いめまい、胸痛、息切れ、失神しそうな感じが出たらすぐに中止し、手すりや安定した椅子のある場所で安全を確保してください。予定の歩数や時間を達成するために無理をしないでください。動作が悪い日に屋外へ一人で出ることも避け、見守りの必要性を相談します。
転倒が増えた、急に歩けなくなった、意識が変わった、幻覚や強い眠気、食事や服薬が難しいなどの変化があれば主治医へ早めに相談します。新たな片側の麻痺やろれつの回りにくさ、突然の激しい頭痛、胸痛は救急受診を検討してください。自己判断で薬を変えたり、運動を急に強くしたりしないでください。

Journey Rehabへの相談を考える方へ
当社の訪問自費リハビリでは、生活動作と自宅環境を見ながら本人に意味のある活動目標を整理します。活動日誌や機器の数値は、本人の負担や転倒リスクと合わせて評価します。提供するリハビリ内容と料金・利用の流れを確認できます。研究で得られた群平均の結果が個人の効果を保証するものではありません。
まとめ
パーキンソン病の身体活動を続ける支援では、目標設定、振り返り、障害への対策を本人の生活に合わせます。ParkFit試験では主要評価項目に有意差がなく、副次評価では活動の増加が示唆されました。方法や重症度による違いは未確立です。歩数より、転倒を避けながら本人が望む生活を続けられるかを確かめ、専門職と調整しましょう。
本記事は株式会社Journey Rehab代表の作業療法士・田中 光が執筆・文献確認しました。記事には当社サービスの案内を含みます。研究結果は個人の効果を保証しません。診断・治療方針は主治医にご相談ください。文献確認日:2026年9月27日。
よくある質問
Q. 活動量計を買えば運動が続きますか?
A. 機器だけで継続や安全性が保証されるわけではありません。数字が負担になる人もいます。使うなら、本人に意味のある目標と安全確認に役立つかを相談してください。
Q. ParkFitでは活動量が増えたのですか?
A. 主要評価項目では有意な群間差がありませんでした。日誌や活動量計など副次評価では差があり、測定方法で結果が異なります。
Q. 動きにくい日に練習を休んでもよいですか?
A. 転倒しそうな状態や体調不良なら中止します。日内変動を担当者に伝え、活動の種類、時間帯、見守りを調整してください。
Q. 目標歩数は何歩にすべきですか?
A. この研究から全員に共通の歩数を決めることはできません。転倒歴、歩行能力、持病、生活目標に合わせて設定します。
参考文献
- van Nimwegen M, et al. Promotion of physical activity and fitness in sedentary patients with Parkinson’s disease: randomised controlled trial. BMJ. 2013. PMID: 23457213. DOI: 10.1136/bmj.f576. PubMedまたは公式資料
- Ahern L, Timmons S, Lamb SE, McCullagh R. A systematic review of Behaviour Change Interventions to improve exercise self-efficacy and adherence in people with Parkinson’s disease using the Theoretical Domains Framework. J Frailty Sarcopenia Falls. 2024. PMID: 38444546. DOI: 10.22540/JFSF-09-066. PubMedまたは公式資料
- Ernst M, et al. Physical exercise for people with Parkinson’s disease: a systematic review and network meta-analysis. Cochrane Database Syst Rev. 2024. PMID: 38588457. DOI: 10.1002/14651858.CD013856.pub3. PubMedまたは公式資料