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片頭痛に運動は役立つ?有酸素運動・筋トレの研究と注意点

自費リハビリ情報 読了目安 約10分 文・田中 光(作業療法士)
公園の女性と「片頭痛と運動 無理なく考える」の文字があるサムネイル
記事の内容を表した生成イメージです。実在の利用者様や施術実績の写真ではありません。

先に結論

定期的な運動で片頭痛の日数が少なかった研究はありますが、差の大きさと根拠の確かさには幅があります。発作中や運動で頭痛が出たときは無理をせず、主治医の治療と組み合わせて考える方法です。突然の激しい頭痛は運動を続けず救急対応を優先してください。

こうした疑問をもつ方に向けて整理します。この記事では、片頭痛に対する運動(有酸素運動や筋力トレーニングなど)について、研究で分かっていることと、まだ分かっていないことを作業療法士の立場から正直に整理します。結論から言うと、定期的な運動で片頭痛の日数が少なくなったという研究は増えていますが、その大きさは研究によって幅があり、根拠の確かさはまだ十分とは言えません13。

この記事で分かること

  • 研究の対象・比較条件・結果と、分かっていないこと
  • 検査の評価と、生活場面でできることを分けて考える視点
  • 生活での相談例と、安全上の注意・中止や受診の目安

片頭痛と運動の関係とは

片頭痛は、ズキズキとした頭痛が数時間から数日続き、吐き気や光・音への過敏さを伴うことがある病気です。研究をまとめた報告では、世界で2番目に生活への支障が大きい病気とされ、特に働く世代への影響が大きいと紹介されています1。

片頭痛の治療には、発作が起きたときに使う薬と、発作を起こりにくくするための予防的な治療があります。予防のための薬が体に合わない方や、薬以外の方法を希望される方もいることから、運動が選択肢の一つとして研究されてきました1。

運動が片頭痛に関わる理由としては、運動によって痛みの感じ方を調整する体の仕組みがはたらく可能性が考えられていますが、詳しいことはまだ分かっていません12。

広く平らな公園の道を女性がゆっくり歩いている
記事のテーマを表した生成イメージです。実際の診療や練習手順を示すものではありません。

研究では何が分かっているか

研究をまとめた報告では、運動によって「1か月あたりの片頭痛の日数」が少なくなる傾向が示されています。ただし、その大きさは研究によって異なります。

システマティックレビュー・メタ分析 2019年

有酸素運動を調べた6件の研究(357名、平均38歳、88%が女性)をまとめた研究では、有酸素運動によって1か月あたりの片頭痛の日数が平均0.6日少なくなりました1。頭痛の持続時間は20〜27%、痛みの強さは20〜54%低下した研究がありましたが、測り方がそろっておらず、痛みの強さや持続時間については結論を出せないとされています1。

ネットワークメタ分析 2022年

21件の臨床試験(1,195名)をまとめて運動の種類を比べた研究では、対照と比べた1か月あたりの片頭痛の日数の差は、筋力トレーニングで約3.6日、高強度の有酸素運動で約3.1日、中等度の有酸素運動で約2.2日少ない結果でした2。ITT解析の研究では85%が低リスクと評価された一方、解析方法や比較する運動によって偏りの評価は異なります2。

ネットワークメタ分析 2025年

27件のランダム化比較試験(1,611名)をまとめた研究では、有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせた方法、筋力トレーニング、太極拳、ヨガで良い結果が示されました3。ただし、根拠の確かさは「非常に低い〜低い」と評価されており、結果の解釈には注意が必要とされています3。

一方で、首まわりの筋肉だけを鍛える運動を8週間行ったランダム化比較試験(42名)では、偽超音波(電源を入れない超音波)と自宅ストレッチの指導と比べて、頭痛の頻度や強さに差がみられませんでした4。「首を鍛えれば片頭痛が軽くなる」とは言えないことを示す結果です。首の痛みそのものへの運動については、職場でできる首・肩の短い運動について解説した記事で紹介しています。

⚠ ただし、忘れてはいけない大切なこと:
突然の激しい頭痛、これまでと違うタイプの頭痛、手足のしびれや麻痺・ろれつが回らないといった症状を伴う頭痛、発熱を伴う頭痛は、片頭痛以外の病気が隠れている可能性があります。運動を始める前に、まず医療機関を受診してください。また、運動をきっかけに頭痛が起こる方もいるため、初めて取り組む場合は主治医に相談してから始めることが大切です。

エビデンスの質と限界・まだ分かっていないこと

片頭痛への運動の研究には、次のような限界があります。

1.1つ1つの研究の参加者数が少なく(16〜110名など)、女性が中心であること1
2.運動の種類・強さ・期間や、結果の測り方が研究ごとに異なること13
3.比べる運動の種類によって研究の数に偏りがあり、比較の精度にばらつきがあること2
4.運動の研究では「誰が運動したか」を隠すことが難しく、脱落者が多い研究もあること1
まだ分かっていないこと

どのような方(発作の頻度が多い方、慢性片頭痛の方、前兆のある方など)にどの運動が最も合うのか、最適な強さや期間はまだ十分に分かっていません23。研究の多くは数か月以内の経過をみたもので、長期的に運動を続けた場合の影響についても今後の研究が必要です1。

エビデンスの質と限界

レビューによって、片頭痛の日数の減り方には「平均0.6日」から「約2〜3日」まで幅があります12。含まれた研究や比べ方の違いによるものと考えられ、研究結果をすべての方に同じように当てはめることはできません。運動は薬による治療の代わりではなく、主治医の治療と組み合わせて考えるものです。

何が変わりやすく、何は変わりにくいか

変わりやすいと報告されているもの

1か月あたりの片頭痛の日数(有酸素運動・筋力トレーニングなど)123。

変わりにくい・研究ごとに差があるもの

頭痛の痛みの強さや持続時間(研究ごとに結果が異なる)1、首まわりの筋肉だけを鍛える運動による頭痛の頻度・強さ4、長期的な経過1。

どんな人に検討され、どんな人は注意が必要か

検討する場面があるケース

片頭痛の診断を受けていて、予防のための薬以外の方法も知りたい方、日常的に体を動かす習慣が少ない方などでは、主治医と相談しながら運動を取り入れる場面があります12。

注意が必要なケース

運動をきっかけに頭痛が起こる方、頭痛の原因がまだはっきりしていない方、心臓や血圧の病気がある方は、運動の内容を主治医と相談する必要があります。また、頭痛の頻度が急に増えた方や、頭痛薬を使う日が多くなっている方は、まず受診して治療を見直すことが大切です。

運動の量・頻度・期間の目安

以下は研究で採用された条件や集団向けの目安です。個人への練習処方ではありません。体調、合併症、評価結果に合わせて、始め方・量・中止基準を担当の医療職と決めてください。

研究で行われた有酸素運動には、屋内での自転車こぎ(ウォーミングアップ15分・運動20分・クールダウン5分)を週3回、12週間といった方法や、30〜45分程度の中等度のジョギングなどがありました1。2025年の研究では、中等度の運動なら週70〜135分程度、8〜10週間という目安が示されていますが、根拠の確かさは低いとされています3。

運動を続ける際には、負担を調整できることが大切です。運動で頭痛が生じた場合は無理に継続せず、いったん中止して休み、再開方法を主治医と相談してください。

長時間座りっぱなしの生活を見直すことも、体を動かす第一歩になります。職場の座りすぎ対策について解説した記事もあわせてご覧ください。

女性と専門職が自宅で文字のないカレンダーを見ながら話している
練習や生活について考えるための生成イメージです。実績や個別の練習手順を示すものではありません。

中止・受診・救急の目安

運動で頭痛が出る・強まる、めまい、吐き気、胸痛があるときは中止して休み、再開方法を主治医に相談してください。突然の激しい頭痛、意識の変化、新しい手足の麻痺や言葉の出にくさがあれば救急対応を優先し、日本では119番へ連絡してください。発熱や今までと違う頭痛、頻度の急増も受診の目安です。

作業療法士の視点と生活での工夫

生活の目標から考える

生活の調整では、運動の種類を選ぶ前に、頭痛の日、睡眠、食事や水分、仕事の負担、薬を使った日を無理のない範囲で振り返ります。歩行を取り入れるなら、発作のない時期に休める場所と戻れる経路を用意し、症状が出たら中止する方針を先に相談します。「続けられた時間」だけでなく、翌日の生活への負担も判断材料にします。頭痛の診断や薬の調整は医療機関の役割であり、運動量を増やすことだけを目標にしません。

女性が静かなリビングのソファで座って休んでいる
生活場面を考えるための生成イメージです。個別の練習手順や実績を示すものではありません。

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片頭痛への運動は、薬の代わりになるものではありませんが、主治医の治療と組み合わせて検討できる選択肢の一つです。「頭痛が怖いから動かない」から「体調をみながら少しずつ動く」へと、無理のない範囲で生活を整えていくことが大切だと考えています。

まとめ

・定期的な運動で、1か月あたりの片頭痛の日数が少なくなったという研究があります12
・有酸素運動だけでなく、筋力トレーニングやヨガ・太極拳も研究されています23
・首まわりだけを鍛える運動では、頭痛の頻度に差がみられなかった研究もあります4
・減り方の大きさは研究によって幅があり、根拠の確かさはまだ十分ではありません13
・いつもと違う頭痛があるときは、運動よりも受診を優先することが大切です

免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の医療行為・診断・治療を推奨するものではありません。頭痛の治療や運動の開始・変更については、必ず主治医またはリハビリ専門職にご相談ください。紹介した研究データは執筆時点(2026年10月)のものであり、今後の研究により内容が更新される可能性があります。

よくある質問

Q. 片頭痛があっても運動してよいですか?

研究では、定期的な運動で片頭痛の日数が少なくなったという報告があります。ただし、運動で頭痛が起こる方もいるため、始める前に主治医に相談してください。

Q. どんな運動が片頭痛に向いていますか?

ウォーキングや自転車こぎなどの有酸素運動のほか、筋力トレーニング、ヨガ、太極拳なども研究されています。どれが最も合うかは人によって異なります。

Q. どのくらいの頻度で運動すればよいですか?

研究では、週3回・1回30〜40分程度を8〜12週間続ける方法などが行われていました。最適な量はまだ分かっていないため、無理のない範囲から始めてください。

Q. 頭痛が起きているときも運動したほうがよいですか?

発作中は無理に運動せず、休むことを優先してください。研究で調べられているのは、発作のない時期に定期的に行う運動です。

Q. 首の筋トレで片頭痛は軽くなりますか?

首まわりの筋肉だけを鍛える運動を8週間行った研究では、頭痛の頻度や強さに差はみられませんでした。全身の運動と組み合わせて考えることが大切です。

Q. 運動すれば頭痛薬はやめられますか?

運動は薬の代わりではありません。薬の使い方は自己判断で変えず、主治医と相談してください。

参考文献

1. Joris Lemmens, Joke De Pauw, Timia Van Soom, Sarah Michielsほか. The effect of aerobic exercise on the number of migraine days, duration and pain intensity in migraine: a systematic literature review and meta-analysis. The journal of headache and pain. 2019. PubMed / DOI / 公開本文
2. Yohannes W Woldeamanuel, Arão B D Oliveira. What is the efficacy of aerobic exercise versus strength training in the treatment of migraine? A systematic review and network meta-analysis of clinical trials. The journal of headache and pain. 2022. PubMed / DOI / 公開本文
3. Jingyi Xie, Yupeng Lin, Bin Wang. Efficacy and optimal dosage of various exercises for migraine: a multilevel network and dose-response meta-analysis. PeerJ. 2025. PubMed / DOI / 公開本文
4. Mariana Tedeschi Benatto, Lidiane Lima Florencio, Marcela Mendes Bragatto, Fabíola Dachほか. Neck-specific strengthening exercise compared with placebo sham ultrasound in patients with migraine: a randomized controlled trial. BMC neurology. 2022. PubMed / DOI / 公開本文

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