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書痙(字を書くと手がこわばる)にリハビリは役立つ?運動の再学習・作業療法の研究と限界を正直に解説

自費リハビリ情報 読了目安 約10分 文・
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記事のテーマを表した生成イメージです。実在の利用者様や施術実績、個別の練習手順を示すものではありません。

この記事の結論

書痙の方21人を対象にした研究では、8週間毎日の指の運動の再学習のあと、書字中のジストニアの評価点が始める前より下がりました1。ただし、練習を行わない比較群がない小規模な研究で、リハビリの研究21件を整理したレビューでも「確かな結論は出せない」とされています3。

「字を書こうとすると指に力が入りすぎて、ペンが止まってしまう」「書いているうちに手首が曲がってしまう」——書痙(しょけい)は、主に字を書くときに手や指がこわばる病気です。仕事や手続きで字を書く場面が多い方にとって、大きな悩みになります。

この記事では、書痙に対するリハビリ(運動の再学習や作業療法)について、ランダム化比較試験(RCT)とシステマティックレビューをもとに、分かっていることと、まだ分かっていないことを分けて整理します。

目次

書痙(ライターズクランプ)とは?

書痙(ライターズクランプ:Writer’s cramp)とは、字を書くという特定の動作のときに、手・指・前腕の筋肉が意図せず強く縮み、ペンの持ち方や手の形が崩れてしまう「局所性ジストニア」の一つです1,2。腕の局所性ジストニアの中では最も多いタイプとされています2。

長時間字を書くことがきっかけになると考えられており、遺伝的な要因も関わるとされます。進行すると、書く以外の手の作業にも症状が広がることがあります2。治療としては、こわばる筋肉へのボツリヌス療法(注射)が標準的とされていますが、効果が一時的であることや、手の力が弱くなることが課題とされています1,2。

こうした背景から、手や指の動かし方を練習し直す「運動の再学習(モーター・リトレーニング:motor re-training)」や、作業療法による練習が研究されています1,2。字を書く動作の悩みとしては、本態性振戦の食事・書字の工夫について解説した記事もあわせてご覧ください。

机でペンとノートを使う男性の生成イメージ
記事のテーマを表した生成イメージです。実在の利用者様や施術実績、個別の練習手順を示すものではありません。

研究では何が分かっている?

結論から言うと、書痙に対するリハビリは、一部の研究で書字中のこわばりや手の機能に良い変化が報告されていますが、研究は少なく小規模で、確かなことはまだ言えない段階です。

ランダム化比較試験 2008年(運動の再学習)

ドイツで行われた研究では、書痙の方26人(完了は21人、平均の罹病期間は約11.5年)が、まず4週間、手首と指を装具で固定し、その後8週間、毎日の運動の再学習を行いました1。

参加者は「ペンを付けた指の装具で、線を描く・字を書く練習をする群」と「粘土状の練習用パテで指を動かす群(書く練習はしない)」に分けられました。その結果、2つの練習方法の間に明確な差はなく、まとめると8週間後には書字中のジストニアの評価点(WCRS)と手の機能の評価(ADDS)が始める前より良くなりました1。症状が重い方ほど変化が大きい傾向もみられました1。

一方、固定した直後には症状の変化はなく、固定の長さに耐えられず途中でやめた方が2人、仕事の事情でやめた方が2人、固定後の急性手根管症候群で手術を受けた方が1人いました1。

出典:Zeuner KE, et al. Mov Disord. 2008
ランダム化比較試験 2019年(ボツリヌス療法+作業療法)

アメリカの研究では、書痙の方12人を「ボツリヌス療法のみ」(6人)と「ボツリヌス療法+作業療法」(6人)に分けました。作業療法の群は、ジストニアで動いてしまう方向とは反対方向に指を動かせるよう作った装具を付け、毎日30分、書く練習を行いました2。

主な評価であるご本人が感じるつらさ(20週時点)では、2つの群に差はみられませんでした。一方、書字の様子を評価する指標(WCIS)では、作業療法を加えた群の中で開始前より低下がみられました。ただし副次評価であり、開始時の群間差が大きいため、作業療法を加えたほうが優れると確定できません2。

出典:Park JE, et al. Toxicon. 2019

また、字を書くことなど特定の動作で起こるジストニアのリハビリを調べた21件の研究を整理したレビューでは、多くが小規模な前後比較の研究で、改善する方もいるようだが確かな結論は出せない、とまとめられています3。

⚠ ただし、忘れてはいけない大切なこと

リハビリで書痙が治ると保証できる研究結果はありません。書痙の診断や治療方針(ボツリヌス療法などを含む)は、脳神経内科などの専門医と相談して決めることが前提です。自己流で長時間書く練習を続けると、かえって負担が大きくなる場合もあります。

エビデンスの質と限界・まだ分かっていないこと

エビデンスの質と限界

書痙のリハビリのRCTは、26人登録・21人完了や12人と非常に小規模です1,2。2008年の研究は2種類の練習を比べたもので、「練習をしない群」がないため、時間の経過や期待の影響を区別できません1。2019年の研究では、主な評価で差がなく、2つの群の始める前の重症度にも違いがありました2。

リハビリの研究全体でも、多くは1つの群だけの前後比較で、書痙の種類や評価方法がばらばらです3。研究全体では一定の傾向がありますが、すべての方に同じ結果が当てはまるわけではありません。

まだ分かっていないこと
・ 練習をしない場合や、ほかの方法と比べてどの程度の違いがあるか1,3
・ どの練習方法(書く練習・指の練習・感覚の練習など)が合いやすいか1,3
・ 最適な頻度・期間、装具で固定する期間が必要かどうか1
・ ボツリヌス療法とリハビリを組み合わせたときの、生活の中での書きやすさへの影響2
・ 数年単位の長期的な経過3

何が変わりやすく、何は変わりにくい?

研究からは、専門家が評価する「書字中のこわばり」や「書き方」では良い変化が報告されている一方、ご本人が感じるつらさでは差がはっきりしない、という傾向があります。

良い変化が報告されているもの
書字中のジストニアの評価点(WCRS)、手の機能の評価(ADDS)、筆圧の強さや書く動きのなめらかさ1。書字の様子の評価(WCIS、作業療法を加えた群)2
差がはっきりしないもの
ご本人が感じるつらさ(ボツリヌス療法に作業療法を加えても差なし)2。書く練習と、書かない指の練習の違い1
まだ確かめられていないもの
練習をしない場合との比較、長期的な経過、仕事や生活での書きやすさ1,3

どんな人に向いていて、どんな人は注意が必要?

研究の対象は、専門医に書痙と診断された方でした1,2。2008年の研究では、研究参加の条件としてボツリヌス療法を3か月以上中止していましたが、読者に治療の中止を勧めるものではありません。途中で手根管症候群を発症した方もいました1。

検討する場面があるケース
・専門医に書痙と診断され、薬や注射以外の方法も知りたい方
・ボツリヌス療法を受けていて、書き方の練習も組み合わせたい方2
・ペンの持ち方や筆記具の工夫を相談したい方
注意が必要なケース
・まだ診断を受けていない方(ほかの病気との区別が必要)
・手のしびれや痛みが強い方(手根管症候群など、ほかの原因の確認が必要)1
・長期間の固定など、負担の大きい練習を自己判断で行う場合

手のしびれの原因の一つである手根管症候群については、手根管症候群の保存療法について解説した記事で紹介しています。

どのくらいの頻度で行う?

紹介した研究では毎日の練習を行い、2008年の研究は8週間の再学習後、2019年の研究は20週時点を主な評価時点としましたが、最適な頻度や期間は分かっていません1,2。

研究で用いられた方法の例(自己流での固定・長時間練習は行わないでください)
1. 運動の再学習:4週間手首と指を固定したあと、8週間毎日、指の装具に付けたペンで線や字を書く練習、または練習用パテで指を動かす練習1
2. ボツリヌス療法+作業療法:ジストニアと反対方向に指を動かせる装具を付けて、毎日30分書く練習を行い、日誌で記録する2
3. いずれも専門医・作業療法士の評価と指導のもとで行われていた1,2
4. ご自宅では、太めのペンや書く姿勢の工夫などと組み合わせ、疲れや痛みが強くならない範囲で行う

字が小さくなる・書きにくいといった別の病気による書字の悩みについては、パーキンソン病の小字症と書字の練習について解説した記事も参考になります。

男性が専門職と筆記具の選択を相談する生成イメージ
記事のテーマを表した生成イメージです。実在の利用者様や施術実績、個別の練習手順を示すものではありません。

作業療法士の視点

書痙のリハビリは、運動の再学習や作業療法で書字中のこわばりに良い変化が報告されている一方、研究は小規模で比較群のないものが多く、確かなことはまだ言えません1,3。

書くことは、仕事や生活の中で大切な役割をもつ動作です。専門医の治療と並行して、書き方や道具、生活の中での書く場面の工夫を一緒に考えていくことが大切だと考えています。

自宅の机で筆記の合間に家族と過ごす男性の生成イメージ
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まとめ

・ 書痙とは、主に字を書くときに手や指の筋肉が意図せず強く縮み、ペンの持ち方や手の形が崩れてしまう局所性ジストニアの一つです
・ 21人の研究では、8週間毎日の運動の再学習のあと、書字中のジストニアの評価点と手の機能が始める前より良くなりました1
・ ボツリヌス療法に作業療法を加えた12人の研究では、作業療法を加えた群内で書字の副次評価は良くなった一方、主評価のご本人が感じるつらさには群間差がありませんでした2
・ リハビリの研究21件は小規模な前後比較が中心で、確かな結論はまだ出せないとされています3
・ 診断と治療方針は専門医と相談し、負担の少ない形で練習や道具の工夫を組み合わせることが大切です
免責事項

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、医療行為・診断・治療を推奨するものではありません。運動や練習を始める前、また内容を変える前には、担当の医師・リハビリ専門職にご相談ください。紹介した研究データは執筆時点のもので、今後の研究により変わる可能性があります。

よくある質問

Q. 書痙はリハビリで治りますか?

A. リハビリで書痙が治ると保証できる研究結果はありません。小規模な研究で、運動の再学習により書字中のこわばりの評価が良くなったという報告はありますが、比較群のない研究が中心です1,3。

Q. 書痙と普通の手の疲れはどう違いますか?

A. 書痙は、字を書くという特定の動作のときに筋肉が意図せず強く縮み、手の形が崩れる局所性ジストニアの一つです1,2。気になる場合は、脳神経内科などの専門医に相談してください。

Q. 字を書く練習を増やせばよくなりますか?

A. 研究では、書く練習を行った群と、書かずにパテで指を動かした群で差がありませんでした1。自己流で長時間書き続けるより、専門職の評価のもとで練習内容を決めることが大切です。

Q. ボツリヌス療法と一緒にリハビリを受ける意味はありますか?

A. ボツリヌス療法に作業療法を加えた12人の研究では、作業療法を加えた群内で書字の副次評価は良くなりましたが、開始時の群間差があり、主評価のご本人が感じるつらさには群間差がありませんでした2。組み合わせの意味は、より大きな研究で確かめる必要があります。

Q. どのくらいの期間練習すればよいですか?

A. 研究では8週間の再学習や、毎日の練習を続けて20週時点で評価する方法が使われていますが、最適な期間はまだ分かっていません1,2。体の負担や変化を見ながら、専門職と期間を相談してください。

Q. 書きやすくするために道具の工夫はできますか?

A. 研究で用いられた装具のように、手や指の形を支える工夫が練習に使われています1,2。太めのペンや書く姿勢の調整など、生活の中での工夫も作業療法士と相談できます。

参考文献

1. Kirsten E Zeuner, Martin Peller, Arne Knutzen, Mark Hallettほか. Motor re-training does not need to be task specific to improve writer’s cramp. Movement disorders : official journal of the Movement Disorder Society. 2008. PubMed DOI 公開本文
2. Jung E Park, Ejaz A Shamim, Pattamon Panyakaew, Pawan Mathewほか. Botulinum toxin and occupational therapy for Writer’s cramp. Toxicon : official journal of the International Society on Toxinology. 2019. PubMed DOI 公開本文
3. Arne Hautekiet, Katrien Raes, Sybille Geers, Patrick Santensほか. Evidence of rehabilitation therapy in task-specific focal dystonia: a systematic review. European journal of physical and rehabilitation medicine. 2021 mese. PubMed DOI
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