Journey Rehab東京・千葉の訪問自費リハビリ 無料体験・ご相談
メニュー

脳卒中後の関節モビライゼーション(徒手療法)とは?足首・股関節・腕への研究と限界

脳卒中上肢関連情報 読了目安 約13分 文・
「脳卒中後の 関節の手技 研究と限界」と記したサムネイル
記事のテーマを表した生成イメージです。実在の利用者様や施術実績、個別の練習手順を示すものではありません。

先に結論

通常のリハビリに上乗せした小規模な研究では、股関節への手技でバランスの指標が1、腕の関節への手技で腕の動きの指標が2良い結果を示しました。ただし研究の数は少なく、人数も限られ、効果の大きさや、長く続くかは慎重に考える必要があります。関節が動きやすくなることが、そのまま立つ・歩く・手を使う動作につながるとは限らない点も分かってきています。

「足首が硬くて、かかとが床につきにくい」「肩や腕が固まってきた気がする」――脳卒中のあと、こうした関節の硬さに悩む方は少なくありません。リハビリの現場では、セラピストが関節を手で小さく動かす「関節モビライゼーション」と呼ばれる徒手療法(手技)が使われることがあります。この記事では、脳卒中後の関節モビライゼーションについて、研究で分かっていることと、まだ分かっていないことを作業療法士の立場から整理します。結論から言うと、通常のリハビリに上乗せした小規模な研究では、股関節への手技でバランスの指標が1、腕の関節への手技で腕の動きの指標が2良い結果を示しました。ただし研究の数は少なく、人数も限られ、効果の大きさや、長く続くかは慎重に考える必要があります。関節が動きやすくなることが、そのまま立つ・歩く・手を使う動作につながるとは限らない点も分かってきています。

この記事でわかること

関節モビライゼーションとは

脳卒中のあとは、麻痺や筋肉のつっぱり(痙縮)、動かす機会が減ることなどが重なり、関節の動く範囲(可動域)が狭くなることがあります2。関節モビライゼーションは、関節の骨と骨の間の動き(関節のすべりや転がり)に着目し、手で関節を小さく、ゆっくり動かす手技の総称です。

脳卒中後の研究で使われてきた主な方法には、次のようなものがあります。

1.関節の動きを手で誘導しながら、本人が立つ・体重をかけるなどの動作を行う方法(モビライゼーション・ウィズ・ムーブメント)1
2.セラピストが肩・肘・手首・指などの関節を、一定のリズムで小さく他動的に動かす方法(メイトランド法)2
3.足首の関節に対して、上の方法を組み合わせて行うもの3
4.首・背中・腰など、背骨に対して行うもの4

いずれも「セラピストが手で関節を動かす」点は共通していますが、本人が一緒に動くかどうか、どの関節を対象にするかは方法によって大きく異なります。ご自身やご家族が行うストレッチや関節を動かす練習については、脳卒中後のストレッチと関節可動域訓練について解説した記事で整理しています。

クッションに前腕を置いて専門職と相談する男性
記事のテーマを表した生成イメージです。実在の利用者様や施術実績、個別の練習手順を示すものではありません。

研究では何が分かっているか

先にまとめると、関節モビライゼーションを通常のリハビリに上乗せした研究では、関節の動きやバランス・腕の機能の一部で良い結果が報告されています。一方で、研究は少人数のものが中心で、つっぱり(痙縮)や歩く力など、変化がはっきりしない項目も多いのが現状です。

ランダム化比較試験 2023年(イラン)

発症から時間がたった(慢性期の)脳卒中の方20名(35〜65歳)を2群に分けた研究です1。両群とも30分の通常の理学療法を週3回・4週間受け、一方の群だけ、麻痺側の股関節にモビライゼーション・ウィズ・ムーブメントを30分追加しました1。結果は、手技を追加した群で、バランスの評価(バーグバランススケール)、立ち上がって歩いて戻るまでの時間(TUG)、立っているときの安定性が、通常の理学療法だけの群より良い結果でした1。評価者には、どちらの群かが分からないようにしてありました1。

ランダム化比較試験 2024年(中国)

腕の曲げる筋肉につっぱりがある脳卒中の方71名を対象にした研究です2。両群とも通常のリハビリを8週間受け、一方の群だけ、肩・肘・手首・指の関節へのメイトランド法を1日30分・週5回追加しました2。8週間後、腕の運動機能の評価(フーグル・マイヤー評価の上肢項目)、箱に積み木を移す検査は、手技を追加した群のほうが良い結果でした2。ただし腕の運動機能の点数の差は、66点満点中およそ2点と小さなものでした2。また、肘・手首・指のつっぱりの程度は、2群の間で差がみられませんでした2。

システマティックレビュー・メタアナリシス 2025年(ブラジル)

歩くことができる脳卒中の方を対象に、通常の運動に足首のモビライゼーション・ウィズ・ムーブメントを加えた6件の研究(160名)をまとめた報告です3。足首を反らす角度が平均4度ほど広がり、歩く速さが秒速0.08mほど速くなったとされています3。ただし、研究の質は角度については低い、歩行については中程度と評価されています3。

システマティックレビュー・メタアナリシス 2024年(中国ほか)

背骨へのモビライゼーションを調べた9件の研究(294名)をまとめた報告です4。首へのモビライゼーションで頭が前に出た姿勢が変わる結果がみられた一方、バランス、歩く速さ、体幹の機能、呼吸の機能では、通常のリハビリと比べてはっきりした差はみられなかったとされています4。

また、足首へのモビライゼーションを調べた小規模な研究では、足首の動く範囲は広がったものの、立ち上がるときの左右の体重のかけ方は、動作練習だけを行った群のほうが良い結果だった、という報告もあります5。別の研究では、関節モビライゼーションだけでは歩き方の指標は変わらず、自分で行うストレッチと組み合わせた群で歩き方の指標も変化したと報告されています6。

つまり、「関節が動くようになること」と「動作がよくなること」は別の問題で、手技で広がった動きを、実際の動作練習の中で使っていくことが大切だと考えられます。足首を自分で上げる練習については、脳卒中後の足首を上げるトレーニングについて解説した記事でも紹介しています。

⚠ ただし、忘れてはいけない大切なこと:
関節に直接力を加える手技は、関節や骨の状態によっては負担になることがあります。骨粗鬆症がある方、関節に強い痛みや腫れがある方、人工関節の手術を受けた方、血液をサラサラにする薬を飲んでいてあざができやすい方、肩の亜脱臼や肩の痛みがある方は、必ず主治医やリハビリ専門職に相談してください。また、首を勢いよくひねるような施術は、ここで紹介した研究の手技とは別のものです。脳卒中のあとに首への施術を受ける場合は、事前に主治医に相談しましょう。

エビデンスの質と限界・まだ分かっていないこと

脳卒中後の関節モビライゼーションの研究には、次のような限界があります。

1.1件あたりの参加者が20名程度など、少人数の研究が中心であること13
2.通常のリハビリに手技の時間を上乗せした研究が多く、「手技そのもの」の影響か「リハビリの時間が増えた」影響かを区別しにくいこと1
3.発症から時間がたった慢性期の方が中心で、発症直後や回復期の方に当てはまるかは分かっていないこと1
4.研究期間が4〜8週間程度と短く、長い期間の結果が分かっていないこと12
5.評価の多くが検査者の判定による尺度で、測り方による偏りが入りうること2
6.研究ごとに対象の関節、手技の種類、回数が異なり、まとめて比べにくいこと34
まだ分かっていないこと

どのような方に、どの関節へ、どのくらいの量の手技を行うのがよいかは、まだ分かっていません12。重い麻痺の方や、発症から間もない方での結果も、十分に調べられていません1。手技の結果が数か月〜数年後まで続くのかも分かっていません2。

エビデンスの質と限界

2023年と2024年の研究の著者らも、参加者が少ないこと、時間の差の影響を区別できないこと、研究期間が短いことを限界として挙げています12。研究全体では一定の傾向がありますが、対象者や手技の内容が研究ごとに異なるため、すべての方に同じ結果が当てはまるわけではありません。

何が変わりやすく、何は変わりにくいか

変わりやすいと報告されているもの

足首の動く範囲(可動域)は、手技を加えることで広がる方向の結果が複数報告されています35。股関節への手技でバランスの指標が1、腕の関節への手技で腕の運動機能の指標が2、良い結果を示した研究もあります。

変わりにくい・研究ごとに差があるもの

肘・手首・指のつっぱり(痙縮)の程度は、手技を加えても差がみられませんでした2。背骨への手技では、バランスや歩く速さにはっきりした差はみられていません4。関節の動く範囲が広がっても、体重のかけ方や歩き方が変わらなかった研究もあります56。

つっぱり(痙縮)そのものを和らげたい場合は、手技だけでなく、ストレッチや装具、医師による注射治療なども含めて考える必要があります。筋肉をほぐす手技については、脳卒中後のマッサージと痙縮・痛みについて解説した記事で別に整理しています。

どんな人に検討され、どんな人は注意が必要か

検討する場面があるケース

研究で主に対象になってきたのは、発症から時間がたち、ある程度歩くことができる方や、腕の曲げる筋肉につっぱりがある方です123。「足首や股関節が硬くて、立つ・歩く練習が進みにくい」「肩や手首が硬くて、腕を伸ばす練習がしにくい」といった場合に、動作練習の前の準備として検討されることがあります。

注意が必要なケース

骨粗鬆症がある方、関節リウマチなど関節に炎症がある方、人工関節の手術を受けた方、関節に強い痛みや腫れがある方は、手技の内容に注意が必要です。肩の亜脱臼や肩の痛みがある方は、肩への手技で痛みが強くなることもあるため、まず主治医に相談してください。手技のあとに痛みが長く続く場合は中止して相談しましょう。

椅子に座り足首の状態について専門職と相談する女性
記事のテーマを表した生成イメージです。実在の利用者様や施術実績、個別の練習手順を示すものではありません。

回数・頻度・期間の目安

脳卒中後の関節モビライゼーションの最適な回数や期間は、まだ分かっていません12。研究では、1回30分・週3回・4週間1や、1日30分・週5回・8週間2などの方法が使われていますが、いずれも通常のリハビリに追加する形で行われています。

研究の内容から考えると、手技だけで終わらせず、広がった関節の動きを、すぐに立ち上がり・歩行・物をつかむなどの練習の中で使っていくことが大切です56。どの関節に、どのくらい行うかは、その方の麻痺の程度や関節の状態を評価したうえで、専門職と相談して決めることになります。

作業療法士の視点

関節が硬くなると、「とにかくほぐしてもらえば動けるようになるのでは」と考えたくなるものです。研究からは、関節モビライゼーションで関節の動きやバランス・腕の機能の一部に良い結果が報告される一方で、研究はまだ少なく小規模で、動作につなげる工夫が欠かせないことも分かります。手技はあくまで練習の一部と考え、その方の生活の動作につながる形を一緒に探していくことが大切だと考えています。

軽いカップを持ち日常動作について専門職と話す男性
記事のテーマを表した生成イメージです。実在の利用者様や施術実績、個別の練習手順を示すものではありません。
無料体験・ご相談はこちらホームページを見る

まとめ

・関節モビライゼーションは、セラピストが手で関節を小さく動かす徒手療法(手技)の総称です
・通常のリハビリに上乗せした小規模な研究で、股関節への手技でバランスの指標が、腕の関節への手技で腕の機能の指標が良い結果を示しました12
・足首の動く範囲は広がる方向の結果が報告されていますが、それだけで動作が変わるとは限りません356
・つっぱり(痙縮)の程度や、背骨への手技後のバランス・歩く速さには、はっきりした差がみられていません24
・研究は少人数・短期間のものが中心で、最適な方法や量はまだ分かっていません12

免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の医療行為・診断・治療を推奨するものではありません。リハビリや運動の方法については、必ず主治医またはリハビリ専門職にご相談ください。紹介した研究データは執筆時点(2026年10月)のものであり、今後の研究により内容が更新される可能性があります。

よくある質問

Q. 関節モビライゼーションとマッサージ・ストレッチは何が違いますか?

マッサージは主に筋肉などの柔らかい組織に、ストレッチは筋肉を伸ばすことに着目した方法です。関節モビライゼーションは、関節の骨と骨の間の小さな動きに着目し、セラピストが手で関節を動かす点が異なります。実際には、目的に応じて組み合わせて使われることが多い方法です。

Q. 関節モビライゼーションを受ければ、歩けるようになりますか?

股関節や足首への手技を通常のリハビリに加えた研究では、バランスや歩く速さの指標で良い結果が報告されていますが、研究は少人数で、効果の大きさや、長く続くかは慎重に考える必要があります。関節の動く範囲が広がっても、歩き方が変わらなかった研究もあり、歩く練習と組み合わせることが前提と考えられます。

Q. 手足のつっぱり(痙縮)は弱まりますか?

腕の関節への手技を8週間加えた研究では、肘・手首・指のつっぱりの程度に、通常のリハビリだけの場合との差はみられませんでした。つっぱりが強い場合は、ストレッチや装具、注射治療なども含めて主治医に相談しましょう。

Q. 家族が自宅で関節モビライゼーションをしてもよいですか?

関節に直接力を加える手技は、関節や骨の状態を評価したうえで行う必要があるため、ご家族だけで行うことはおすすめしません。ご家族ができる関節を動かす介助やストレッチの方法を、リハビリ専門職から教わる形が安全です。

Q. 発症から何年もたっていても意味はありますか?

紹介した研究の多くは、発症から時間がたった慢性期の方を対象にしています。ただし研究の人数は少なく、すべての方に当てはまるわけではありません。今の関節の状態と、どの動作で困っているかを確認したうえで検討することになります。

Q. 手技のあとに痛みが出たらどうすればよいですか?

強い痛みや、翌日以降も続く痛みが出た場合は、手技を中止して担当のセラピストや主治医に相談してください。特に肩は、脳卒中のあとに痛みが出やすい関節のため、注意が必要です。

参考文献

1. Soudeh Arabzadeh, Fahimeh Kamali, Soha Bervis, Mohsen Razeghi. The hip joint mobilization with movement technique improves muscle activity, postural stability, functional and dynamic balance in hemiplegia secondary to chronic stroke: a blinded randomized controlled trial. BMC neurology. 2023. PubMed DOI 公開本文
2. Ziqing Liu, Zhangjie Li, Chaoyang Duan. Effects of Maitland mobilization technique on upper extremity function in stroke survivors with spasticity: An experimental study. Medicine. 2024. PubMed DOI 公開本文
3. Lucas R Nascimento, Augusto Boening, Isabella Ribeiro, Maria Eduarda Dos Santosほか. Mobilization with movement is effective for improving ankle range of motion and walking ability in individuals after stroke: A systematic review with meta-analysis. PM & R : the journal of injury, function, and rehabilitation. 2025. PubMed DOI
4. Jie Hao, Yao Yao, Andréas Remis, Dongqi Zhuほか. Effects of spinal mobilization on physical function in patients with stroke: a systematic review and meta-analysis. Neurological sciences : official journal of the Italian Neurological Society and of the Italian Society of Clinical Neurophysiology. 2024. PubMed DOI
5. Patricia M Kluding, Marcio Santos. Effects of ankle joint mobilizations in adults poststroke: a pilot study. Archives of physical medicine and rehabilitation. 2008. PubMed DOI
6. Kyun-Hee Cho, Shin-Jun Park. Effects of joint mobilization and stretching on the range of motion for ankle joint and spatiotemporal gait variables in stroke patients. Journal of stroke and cerebrovascular diseases : the official journal of National Stroke Association. 2020. PubMed DOI
無料体験・ご相談はこちらホームページを見る
電話LINEで相談無料体験