脳卒中の再発が心配な方へ|生活習慣カウンセリングと運動は二次予防に役立つのか?研究と限界を正直に解説

· 脳卒中上肢関連情報,脳卒中下肢関連情報
田中 光 作業療法士 Journey Rehab代表
田中 光(作業療法士)|株式会社Journey Rehab 代表
認定作業療法士/修士(作業療法学)
東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍
初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立
脳卒中の再発が心配な方へ
生活習慣カウンセリングと運動は二次予防に役立つのか?研究と限界を正直に解説

「また脳卒中を起こすのではないかという不安がずっとある」「血圧の薬は飲んでいるが、運動もしたほうがいいのか分からない」「主治医から生活習慣を見直すよう言われたが、具体的に何をすればいいのか分からない」——脳卒中を経験された方やそのご家族から、こうした声を聞くことがあります。

この記事では、脳卒中後の「二次予防」、つまり再発のリスクを下げるための生活習慣カウンセリングや運動について、研究をもとに整理します。結論を先に言えば、生活習慣への働きかけには血圧などへの一定の効果が報告されている一方、効果の大きさは中程度にとどまり、「これをやれば再発を防げる」と保証できるものではないというのが、現時点での正直な実情です。

初回公開日:2026年8月18日
最終更新日:2026年8月18日
最新レビュー日:2026年8月18日
最初に大切なこと

脳卒中の再発予防で最も重要なのは、血圧・血糖・脂質などの管理と、処方された薬をきちんと続けることです。運動や生活習慣の見直しは、これらの医学的な管理に「加える」ものであり、置き換えるものではありません。急な運動中の胸痛、息切れの悪化、新しい麻痺やろれつの回りにくさなどが出た場合は、直ちに医療機関を受診してください。

SECTION 01
脳卒中の「二次予防」とは何か

「二次予防」とは、すでに脳卒中や一過性脳虚血発作(TIA)を経験した方が、再び発症するリスクを下げるための取り組み全般を指します。薬物療法(降圧薬、抗血小板薬、脂質低下薬など)が中心的な役割を担いますが、それに加えて、生活習慣への働きかけも研究の対象になってきました。

研究で扱われている生活習慣への働きかけ
1. 看護師・医師によるカウンセリング(個別・集団)
2. 患者教育(血圧・食事・服薬などの知識提供)
3. 監督下での運動(有酸素運動・筋力運動)
4. コンピュータやアプリを使った教育
5. 動機付け面接など、行動変容の理論を使った関わり

脳卒中を経験した方は心肺機能が低下していることが多く、それがさらに活動量の低下や再発リスクの増加につながるという指摘もあります2。運動が二次予防の一部として位置づけられる背景には、こうした事情があります。

脳卒中後の方と家族が専門職と生活習慣や運動計画を相談する様子
服薬や通院を土台に、血圧・活動量・続けやすさを一緒に確認します
SECTION 02
研究で分かっていること

生活習慣カウンセリングと運動について、それぞれ質の高いレビューが報告されています。

システマティックレビュー・メタアナリシス 2020年

脳卒中・TIA既往者を対象に、生活習慣カウンセリングや教育の効果を調べた29件のRCT(8,254名がランダム化、86.9%が追跡完了)をまとめたレビューです。通常ケアと比較すると、収縮期血圧が平均3.85mmHg下がりました(95%信頼区間 −6.43〜−1.28)。特に、監督下での運動を含む介入では平均9.83mmHg低下(95%信頼区間 −16.56〜−3.09)と、含まない介入(平均2.61mmHg低下)より大きな効果が見られました。拡張期血圧やLDLコレステロールにも有意な改善が見られましたが、体重・BMI・脳卒中の再発率・生活の質には統計的な差が確認されませんでした。

Liljehult J, et al. Acta Neurol Scand. 2020.
国際専門家パネルによる推奨更新 2020年

脳卒中リハビリの国際的な専門家パネルが、有酸素運動に関する推奨を最新のエビデンスに基づいて更新したものです。医学的に安定した時点でスクリーニングを開始し、年齢や発症時の重症度そのものは運動を控える理由にはならないとしています。週3日以上、1回20分以上(ウォームアップ・クールダウンを含む)、最低8週間続けることを目安とし、こうした有酸素運動を「包括的な脳卒中リハビリ・血管リスク低減・二次予防プログラム」に組み込むことを推奨しています。一方で、標準的なリハビリでは心肺機能に十分な負荷がかかっていないこと、臨床家が神経疾患のある方への運動処方に自信を持てていないことも課題として指摘しています。

MacKay-Lyons M, et al. Phys Ther. 2020.
システマティックレビュー・メタアナリシス 2017年(参考情報)

脳卒中・TIA後の運動と心血管危険因子の関係を調べた18件のRCT(930名)のレビューでは、安静時の収縮期血圧や血糖関連指標、HDLコレステロールに変化が報告されています。ただし、危険因子の数値が変化することと、脳卒中の再発が減ることは同じではありません。再発予防は服薬・通院・生活習慣を含む包括的な管理として考える必要があります。

D'Isabella NT, et al. Clin Rehabil. 2017.(システマティックレビュー・メタアナリシス)

3件を並べると見えてくるのは、「生活習慣カウンセリングは血圧などに中程度の効果がある」「運動、特に監督下で行う運動を組み合わせると効果が大きくなりやすい」「専門家パネルは週3日以上・8週間以上という具体的な目安を示している」という構図です。

SECTION 03
まだ分かっていないこと

まず、「脳卒中の再発そのものを減らす」ことがはっきり示されたわけではありません。2020年のレビューでは、血圧などの数値は改善した一方、脳卒中・TIAの再発率には統計的な差が確認されませんでした(相対リスク1.08、95%信頼区間0.78〜1.50)1。血圧が下がることと、実際に再発が減ることは、別に確認する必要がある問題です。

次に、「通常ケア」の中身が研究ごとにばらばらで、何と比較しているのかが分かりにくいという指摘があります1。日本の医療体制における「通常の外来フォロー」と、海外の研究の「通常ケア」が同じ水準とは限りません。

また、長期的に運動習慣を続けられるかどうかも大きな課題です。専門家パネルは、参加者が長期的には減少・中断しやすいこと、行動変容を支える戦略(カウンセリングや社会的支援など)が必要であることを明記しています2

そして、どのくらいの重症度・時期の方に、どの程度の運動が最適かも、個別には十分に確立していません。専門家パネルが示す目安は集団としての推奨であり、麻痺の程度、高次脳機能障害、併存する心疾患などによって、実際に行える内容は一人ひとり異なります2

エビデンスの質と限界

紹介した2件はいずれも系統的レビュー・メタアナリシス、または国際専門家パネルによる推奨であり、研究デザインとしては上位に位置します。2020年のレビューは8,000名を超える規模を統合しており、情報量は豊富です1

一方で弱点も明確です。組み入れられた研究はいずれも参加者の盲検化ができておらず、出版バイアスの可能性(12件が予備報告のまま完全な論文として発表されていない)、研究への組み入れ率が3.8〜69.3%と大きくばらついていること、追跡からの脱落率が49.8〜100%まで幅広いことが指摘されています。全体のエビデンスの質は、多くの項目で「低」と評価されています1

運動と心血管危険因子に関する2017年のレビューでは複数の指標に変化が報告されていますが3、再発そのものを減らす効果とは分けて解釈する必要があります。運動だけで二次予防が完結するわけではありません。

脳卒中後の状態は麻痺の程度、高次脳機能障害、併存疾患によって大きく異なります。この研究結果を、すべての方に同じように当てはめることはできません。

脳卒中後の方が血圧を確認しながら専門職の監督下で有酸素運動を行う様子
運動は体調とリスクを評価し、主治医・リハビリ専門職と相談して安全な強度から始めます
SECTION 04
研究で推奨されている運動の目安

国際専門家パネルの推奨は、あくまで集団としての目安であり、個別の処方ではありません。実施にあたっては、必ず主治医・リハビリ専門職の評価を受けてください。

研究で示されている有酸素運動の目安
1. 頻度:週3日以上
2. 時間:1回20分以上(ウォームアップ・クールダウンを含む)
3. 期間:最低8週間の継続
4. 強度:軽度〜中等度から始め、心拍数などを目安に調整
5. 開始時期:医学的に安定した時点でスクリーニングのうえ開始

専門家パネルは、年齢や発症時の重症度そのものは運動を避ける理由にはならないとしつつ、可能な範囲で運動負荷試験などのスクリーニングを行うことを推奨しています2。自己判断で強度を上げることは推奨されていません。

筋力トレーニングを含めた運動の詳しい内容については脳卒中後の筋力トレーニングについて解説した記事を、日々の自己管理の考え方については脳卒中後のセルフマネジメントについて解説した記事もあわせてご覧ください。

SECTION 05
生活の中で気をつけたいこと

研究からは細かい生活指導の根拠までは得られません。ここでは、上記の研究の範囲を超えない形で、実務上おさえておきたい点を整理します。

1. 薬物療法を運動や生活習慣の見直しで置き換えないこと。二次予防の中心は今も薬物療法です
2. 「運動すれば薬が減らせる」と自己判断しないこと。薬の調整は必ず主治医が行います
3. 血圧手帳などで日々の記録をつけ、主治医・リハビリ専門職と共有すること。研究でも血圧のモニタリングが重視されています2
4. いきなり高強度の運動を始めないこと。研究では軽度〜中等度から段階的に進める形が中心です2
⚠ ただし、忘れてはいけない大切なこと

運動中に胸の痛みや締め付け感、急な息切れの悪化、動悸、めまい、新しい麻痺やろれつの回りにくさが出た場合は、直ちに運動を中止し、医療機関に連絡してください。心疾患や重度の高血圧など、運動の可否について医師の判断が必要な持病がある方は、自己判断で運動量を増やさないでください。

SECTION 06
Journey Rehabの支援方針
二次予防を支えるときの確認ポイント

脳卒中後の運動習慣を支援する場合は、①主治医から示された運動上の注意、②血圧・脈拍・体調の変化、③服薬状況と通院予定、④麻痺・疲労・転倒リスク、⑤本人が生活の中で続けられる時間と方法を確認します。運動を薬物療法の代わりにせず、医療管理に加える形で安全に継続できる計画を作ることを基本方針としています。

Journey Rehabでは、脳卒中後の運動を「機能回復のための訓練」と「二次予防のための習慣づくり」の両方の視点から考えています。訪問時には体調・血圧の確認を行い、主治医の治療方針と矛盾しない範囲で、生活の中で続けられる運動を一緒に組み立てることを大切にしています。

運動の目標は血圧などの数値だけに限定せず、体力、活動範囲、生活上の役割、継続しやすさも含めて設定します。再発への不安が強い場合は、無理に運動量を増やすのではなく、主治医への相談事項を整理し、安全を確認できる小さな行動から始める方針です。

まとめ

脳卒中後の生活習慣カウンセリングや運動は、血圧など一部の数値に中程度の改善をもたらすことが研究で報告されています。特に監督下での運動を組み合わせると、効果が大きくなりやすい傾向があります。ただし、これらの研究は脳卒中の再発そのものを減らすことをはっきり示したわけではなく、エビデンスの質も総じて低〜中程度です。国際専門家パネルは週3日以上・1回20分以上・最低8週間という目安を示していますが、これは集団としての推奨であり、実施にあたっては必ず主治医・リハビリ専門職の評価が必要です。薬物療法に置き換えるものではなく、「加える」ものとして捉えることをおすすめします。

免責事項

この記事は一般的な情報提供を目的としており、診断・治療・医療行為を推奨するものではありません。脳卒中の二次予防は薬物療法が中心であり、生活習慣や運動はそれに加えるものです。運動の開始・強度・薬剤の調整に関する判断は、必ず主治医が行うものです。胸痛、息切れの急な悪化、新しい神経症状が出た場合は、直ちに医療機関を受診してください。研究知見は執筆時点の情報であり、今後変わる可能性があります。

Journey Rehabの訪問自費リハビリについて知りたい方へ
脳卒中後の運動と体調管理の両立について、今の身体の状態を一緒に確認しながらご相談いただけます。
田中 光 作業療法士 Journey Rehab代表
執筆者:株式会社Journey Rehab 代表取締役|田中 光
保有資格
修士(作業療法学)
作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836(日本作業療法士協会)
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍
経歴
・2016年:初台リハビリテーション病院に入職。脳卒中後遺症の回復期リハに従事
・2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立
・2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中
研究活動
・第57回日本作業療法学会(2023)ポスター発表
・第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表
論文執筆
・田中 光, 石橋 裕, 佐々木 智也, 坂本 泰平. (2025). 本邦における介護予防・日常生活支援総合事業におけるスコーピングレビュー. 日本老年療法学会誌, 4(1). 日本老年療法学会.
質問リスト
Q. 運動をすれば脳卒中の再発を防げますか?
運動を含む生活習慣への働きかけは血圧などの数値を改善させると報告されていますが、再発率そのものを減らすことをはっきり示した研究ではありません。「予防できる」と言い切ることはできず、薬物療法に加える形での取り組みとして捉えてください。
Q. どのくらいの運動をすればよいですか?
国際専門家パネルは週3日以上、1回20分以上、最低8週間の継続を目安としています。ただしこれは集団としての推奨で、個別の内容は麻痺の程度や併存疾患によって異なるため、主治医・リハビリ専門職と相談しながら決めてください。
Q. 運動すれば薬を減らせますか?
薬の調整は必ず主治医が行うものです。運動による血圧改善が報告されているからといって、自己判断で服薬を中止・減量しないでください。
Q. 運動を始める前に検査は必要ですか?
研究では、医学的に安定した時点で、可能な範囲での運動負荷試験などのスクリーニングを行うことが推奨されています。持病がある場合は特に、自己判断で開始せず主治医に確認してください。
Q. 年齢が高くても運動して大丈夫ですか?
研究では、年齢や発症時の重症度そのものは運動を避ける理由にはならないとされています。ただし個別の体調・持病によって適切な内容は異なるため、専門職の評価を受けてから始めることをおすすめします。
Q. 運動を続ける自信がありません。どうすればよいですか?
研究でも、長期的な継続の難しさが課題として指摘されており、カウンセリングや社会的な支援が効果を後押しすることが示されています。一人で抱え込まず、リハビリ専門職に相談しながら続けられる形を探すことをおすすめします。
参考文献
1. Liljehult J, Christensen T, Molsted S, Overgaard D, Mesot Liljehult M, Møller T. Effect and efficacy of lifestyle interventions as secondary prevention. Acta Neurol Scand. 2020. PMID: 32620044. PMCID: PMC7540464. DOI: 10.1111/ane.13308
2. MacKay-Lyons M, Billinger SA, Eng JJ, Dromerick A, Giacomantonio N, Hafer-Macko C, Macko R, Nguyen E, Prior P, Suskin N, Tang A, Thornton M, Unsworth K. Aerobic Exercise Recommendations to Optimize Best Practices in Care After Stroke: AEROBICS 2019 Update. Phys Ther. 2020. PMID: 31596465. PMCID: PMC8204880. DOI: 10.1093/ptj/pzz153
3. D'Isabella NT, Shkredova DA, Richardson JA, Tang A. Effects of exercise on cardiovascular risk factors following stroke or transient ischemic attack: a systematic review and meta-analysis. Clin Rehabil. 2017. PMID: 28523989. DOI: 10.1177/0269215517709051