脳卒中後のキネシオテーピング(テーピング療法)とは?肩の痛み・亜脱臼・手の動きへの研究と限界

· 脳卒中上肢関連情報
田中 光 作業療法士 Journey Rehab代表
田中 光(作業療法士)|株式会社Journey Rehab 代表
認定作業療法士/修士(作業療法学)
東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍
初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立
脳卒中後のキネシオテーピング(テーピング療法)とは?肩の痛み・亜脱臼・手の動きへの研究と限界を正直に解説

「肩に貼るあの伸びるテープは、脳卒中のリハビリにも役立つの?」——これは、麻痺した肩の痛みや腕の動きに悩む方から、よく聞かれる質問です。キネシオテーピング(伸縮性のあるテープを皮膚に貼る方法)は、もともとスポーツの現場で使われてきましたが、近年は脳卒中後のリハビリでも研究されています。この記事では、脳卒中後のキネシオテーピングについて、研究で分かってきたことと、まだはっきりしないことを、患者さんとご家族に向けて正直に整理します。結論から言うと、通常のリハビリに「加える」形で、肩の痛みや亜脱臼、腕の動きの指標に良い変化を示した研究はありますが、研究の質にばらつきが大きく、単独で行う方法ではなく補助的な位置づけとして考えるのが現実的です。

脳卒中後の肩の状態を確認しキネシオテープを準備するリハビリ場面
テーピングは肩や皮膚の状態を確認し、通常のリハビリと組み合わせて検討します。
この記事の要点
・キネシオテーピングとは、伸縮性のあるテープを皮膚に貼り、動きや姿勢のサポートに用いる方法で、脳卒中後は主に肩まわりや腕に対して研究されています1
・12件の研究(535人)をまとめた分析では、通常のリハビリにテーピングを加えた群で、腕の運動機能(効果量SMD 0.61)、痛み(SMD −0.79)、肩の亜脱臼(SMD −0.50)の指標に良い変化が示されました1
・肩の痛みに焦点を当てた9件の研究(424人)の分析でも、痛み・腕の運動機能・亜脱臼・日常生活動作の指標で良い方向の結果が報告されています2
・一方で、研究間のばらつきが大きく、質の高い研究が少ないこと、最近の厳密な試験では通常のリハビリを上回る差が示されなかったことから、証拠はまだ限られます1,4
・皮膚のかぶれなどの注意点もあるため、貼り方や適応は、まずリハビリ専門職に相談することをおすすめします。
SECTION 01
キネシオテーピングとは

キネシオテーピング(キネシオロジーテープ)は、伸縮性のある水に強いテープを皮膚に貼る方法です1。もともとスポーツや整形外科の現場で、けがの予防や関節のサポートに使われてきましたが、近年は脳卒中後のリハビリでも取り入れられるようになりました。脳卒中後は、麻痺した側の肩に痛みが出たり、肩の関節が下にずれる「亜脱臼」が起こったりすることがあり、テーピングはこうした肩まわりや腕に対して研究されています1,3

テープを貼ることで、皮膚への感覚の刺激を通じて姿勢や関節の位置を意識しやすくしたり、肩を支える筋肉の働きを補助したりすることがねらいと考えられています1,3。ただし、その仕組みはまだ十分に解明されていません。脳卒中後に肩が痛くなる背景には、亜脱臼や関節・筋肉の問題などさまざまな要因があります。肩の痛みの原因については脳卒中後に肩が痛む原因(亜脱臼・CRPS)について解説した記事で詳しく紹介しています。

SECTION 02
研究で分かっていること

結論から正直にお伝えすると、「通常のリハビリにテーピングを加えると、肩の痛みや亜脱臼、腕の動きの指標に良い変化を示した研究がある」一方で、「研究の質にばらつきがあり、証拠はまだ限られる」というのが現状です。代表的な研究をみていきます。

腕の動き・亜脱臼についての研究
脳卒中後の腕(上肢)の機能に対するキネシオテーピングについて、12件の研究・535人をまとめた系統的レビュー・メタアナリシス(2022年)があります。この分析では、通常のリハビリにテーピングを加えた群が、加えない群と比べて、腕の運動機能(効果量SMD 0.61)、痛み(SMD −0.79)、肩の亜脱臼(SMD −0.50)、肩を前に上げる方向の関節の動きやすさ(SMD 0.63)の指標で、良い方向の結果を示しました。一方で、筋肉のつっぱり(痙縮)や肩を横に開く方向の動きでは、明確な差はみられませんでした1。テーピングはあくまで通常のリハビリに「加える」形で用いられていた点が大切です1
肩の痛みに焦点を当てた研究
麻痺した側の肩の痛み(片麻痺性肩痛)に絞った9件の研究・424人をまとめた分析(2021年)でも、テーピングを用いた群で、痛み(平均差 −1.45cm、痛みを0〜10で表す指標)、腕の運動機能、肩の亜脱臼、日常生活動作の指標で良い方向の結果が報告されました2。肩の痛みや亜脱臼に対しては、装具や電気刺激など複数のアプローチが研究されており、テーピングはその選択肢の一つとして位置づけられます。亜脱臼への時期ごとのリハビリの考え方は脳卒中後の肩亜脱臼のリハビリについて解説した記事で、電気刺激については脳卒中後の手のリハビリと電気刺激(NMES)について解説した記事で紹介しています。片麻痺の肩に対する貼り方の効果を検討した系統的レビューでも、痛みや亜脱臼への一定の可能性が示されています3
脳卒中後の肩にキネシオテープを貼り皮膚と肩の位置を確認する場面
貼り方や張力、皮膚の反応を専門職と確認することが大切です。
SECTION 03
エビデンスの質と限界・まだ分かっていないこと
エビデンスの質と限界
これらの研究には共通した限界があります。腕の機能を調べた分析では、参加者や担当者を伏せていない(盲検化されていない)研究が多く、結果のばらつき(異質性)が大きいこと(痛みの指標でI²=85%)が指摘され、著者らも「現時点の証拠の質には限りがあるため、結果は慎重に受け止める必要がある」とまとめています1。さらに、比較的最近の厳密な二重盲検の試験(2026年)では、テーピングを行った群で痛みなどの指標は改善したものの、通常のリハビリや別の治療(高強度レーザー)と比べて上回る差は示されませんでした4。良い結果を示した研究があっても、すべての方に同じ効果が当てはまるわけではありません。
まだ分かっていないこと
現在の研究では、キネシオテーピングについて、どのような貼り方(テープの向き・張力・貼る部位)が最も役立つのか、どのくらいの期間続けるとよいのかは、十分に定まっていません1,4。研究によってテープの種類や貼り方がばらばらで、貼る人の技術によって結果が変わりやすいことも指摘されています4。また、どの時期(急性期・回復期・生活期)の、どんな重症度の方に最も向いているのか、痛みや亜脱臼の指標が良くなったことが実生活の使いやすさや長期的な状態にどこまでつながるのかも、今後の研究課題です2
SECTION 04
何が期待でき、何ははっきりしないか

研究をふまえると、キネシオテーピングは「通常のリハビリに組み合わせる補助的な方法として、肩の痛みや亜脱臼、腕の動きの指標に良い変化を示しうる選択肢」と考えるのが現実的です1,2。特別な機器が要らず、貼ったまま生活やリハビリを続けられる手軽さは利点です。痛みが和らぐことで、リハビリに取り組みやすくなる可能性も考えられます2

一方で、「テープを貼れば麻痺そのものが良くなる」「テーピングだけで肩の問題が解決する」ことは、現時点の研究でははっきり示されていません1,4。効果には個人差があり、変化が感じられない方もいます。最近の厳密な試験では通常のリハビリを上回る差がなかったことからも、テーピングは単独の決め手ではなく、運動療法や姿勢の管理、必要に応じた装具などと組み合わせる「一部」として位置づけるのが現実的です4

SECTION 05
どんな人に向いているか

研究の対象を見ると、麻痺した側の肩に痛みがある方や、肩の亜脱臼がある方、腕の動きに課題があり通常のリハビリに何か加えたい方が想定されています1,2。テープを貼ったまま日常を過ごせるため、比較的取り入れやすい方法ですが、皮膚の状態によっては向かない場合もあります。

⚠ ただし、忘れてはいけない大切なこと
キネシオテーピングは比較的手軽な方法ですが、注意点があります。皮膚が弱い方や、感覚が鈍くなっている方では、かゆみ・赤み・かぶれなどの皮膚トラブルが起こることがあります。実際に、研究のなかでもテープによるアレルギー反応が報告されています4。皮膚がむけやすい方、テープにかぶれた経験がある方、傷や湿疹がある部位では避けるか、慎重に行う必要があります。また、貼る向きや張力を誤ると効果が期待できないだけでなく、皮膚を傷めることもあります。自己流で貼るより、まずはリハビリ専門職に、自分の肩や腕の状態に合う貼り方や適応を相談することをおすすめします。ここで紹介した内容は一般的な情報であり、効果をすべての方に保証するものではありません。気になる症状があるときは主治医・リハビリ専門職に相談してください。
SECTION 06
貼り方・頻度の目安

研究で用いられた方法には幅がありますが、肩の痛みに対する試験では、2〜3日おきに貼り替えながら、3週間ほど続ける形などが報告されています4。テープは、肩を支える筋肉(三角筋や棘上筋など)に沿って貼る方法や、亜脱臼を意識して肩の位置を支えるように貼る方法などが用いられます1,3。張力(テープの伸ばし具合)は目的によって調整され、皮膚への負担を避けるために弱めにすることもあります4。これはあくまで研究の目安であり、実際の貼り方や頻度は一人ひとりの状態に合わせて調整します。

大切なのは、テーピングを単独で行うのではなく、肩や腕の運動、正しい姿勢の管理、必要に応じた装具などと組み合わせることです1,4。貼ったあとは、かゆみや赤みが出ていないかをこまめに確認し、皮膚に異常があればすぐにはがします。はがすときも、皮膚を傷めないようゆっくり行います。

露出した肩と上腕の皮膚にテーピングを行い生活動作を練習する脳卒中後のリハビリ場面
テープは衣服の上ではなく皮膚に貼り、実際の生活動作や運動練習につなげます。
SECTION 07
Journey Rehabでの現場経験
当施設でのリアルな経験
訪問リハビリでご一緒するなかで、「肩に貼るテープは家でも続けられますか」というご質問はよくいただきます。私たちがテーピングを取り入れるときにまず大切にしているのは、テープを主役にしないことです。肩の痛みや亜脱臼の背景を確認し、肩を支える運動や姿勢の管理を土台にしたうえで、必要に応じて補助的にテーピングを組み合わせます。貼る前には必ず皮膚の状態を確認し、かぶれやすい方には無理に続けない判断も大切にしています。実際に、貼っている間は肩の位置を意識しやすいと話される方もいれば、あまり変化を感じない方や、かゆみが出て中止した方もいらっしゃいました。テーピングは万能ではなく、日常のなかで肩や腕を安全に使っていくための一つの手段として、ていねいに選んでいくことを心がけています。
Journey Rehabの訪問自費リハビリについて知りたい方へ
肩や腕の状態を一緒に確認しながら、生活に合ったリハビリの進め方を考えます。
免責事項
この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。診断、治療、医療行為の推奨を目的とするものではありません。キネシオテーピングの適応や貼り方は、麻痺や皮膚、感覚の状態によって向き・不向きや工夫が異なります。実施を検討する際は、まず主治医・リハビリ専門職に相談してください。皮膚に赤みやかゆみが出た場合は使用を中止してください。研究知見は執筆時点の情報であり、今後変わる可能性があります。
田中 光 作業療法士 Journey Rehab代表
執筆者:株式会社Journey Rehab 代表取締役|田中 光
保有資格
修士(作業療法学)/作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍

経歴
2016年:初台リハビリテーション病院に入職。脳卒中後遺症の回復期リハに従事
2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立
2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中

研究活動
第57回日本作業療法学会(2023)ポスター発表/第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表

論文執筆
田中 光, 石橋 裕, 佐々木 智也, 坂本 泰平. (2025). 本邦における介護予防・日常生活支援総合事業におけるスコーピングレビュー. 日本老年療法学会誌, 4(1).
FAQ
よくある質問
キネシオテーピングは脳卒中のリハビリに使えますか?
はい、主に肩の痛みや亜脱臼、腕の動きに対して研究されています。通常のリハビリに加える形で良い変化を示した研究がありますが、研究の質にはばらつきがあり、単独ではなく補助的な方法として考えるのが現実的です。まずは専門職に相談してください。
自宅でも家族が貼ってよいですか?
貼る向きや張力によって結果が変わり、皮膚を傷めることもあります。まずはリハビリ専門職に貼り方や適応を確認し、皮膚の状態を見ながら行うことをおすすめします。かゆみや赤みが出たらすぐにはがしてください。
どのくらいの期間続ければよいですか?
研究では2〜3日おきに貼り替えながら3週間ほど続けた報告があります。ただしこれは目安で、適切な期間や貼り方は状態によって異なります。無理のない範囲で、専門職と相談しながら進めてください。
テープを貼れば麻痺そのものが良くなりますか?
テーピングで麻痺そのものが変わることは、現時点の研究でははっきり示されていません。あくまで肩の痛みや亜脱臼、腕の使いやすさを補助する目的の一つと考え、運動療法などと組み合わせるのが現実的です。
皮膚が弱くても大丈夫ですか?
皮膚が弱い方や感覚が鈍い方では、かぶれやアレルギーが起こることがあります。研究でもアレルギー反応が報告されています。傷や湿疹のある部位は避け、心配なときは専門職に相談してから行ってください。
電気刺激や装具とどちらがよいですか?
肩の痛みや亜脱臼には、テーピングのほか電気刺激や装具などの選択肢があり、どれが合うかは状態によって異なります。優劣を単純に決めるのは難しいため、専門職が状態を見て、組み合わせも含めて一緒に考えます。
REFERENCES
参考文献
1. Wang Y, Li X, Sun C, Xu R. Effectiveness of kinesiology taping on the functions of upper limbs in patients with stroke: a meta-analysis of randomized trial. Neurological Sciences. 2022. DOI:10.1007/s10072-022-06010-1. PMID:35347525. PMCID:PMC9213317. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35347525/
2. Deng P, Zhao Z, Zhang S, Xiao T, Li Y. Effect of kinesio taping on hemiplegic shoulder pain: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Clinical Rehabilitation. 2021. DOI:10.1177/0269215520964950. PMID:33063559. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33063559/
3. Ravichandran H, Janakiraman B, Sundaram S, et al. Systematic Review on Effectiveness of shoulder taping in Hemiplegia. Journal of Stroke and Cerebrovascular Diseases. 2019. DOI:10.1016/j.jstrokecerebrovasdis.2019.03.021. PMID:30956057. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30956057/
4. Oglakci MF, Altindag O, Akaltun MS, Gur A. Functional and ultrasonographic evaluation of high intensity laser therapy and Kinesio taping in stroke patients with hemiplegic shoulder pain: a randomized controlled trial. Lasers in Medical Science. 2026. DOI:10.1007/s10103-026-04890-9. PMID:42168684. PMCID:PMC13194195. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42168684/