
東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍
初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立
脳卒中のあとに「つま先が引っかかる」「歩くとつまずきやすい」と感じる場合、足首を持ち上げる力が弱くなる下垂足(かすいそく)が関係していることがあります。この記事では、下垂足に対する電気刺激療法(FES)と装具(短下肢装具)について、研究で分かっていることと、生活での考え方を整理します。

・電気刺激療法(FES)は、歩くタイミングに合わせて筋肉に電気刺激を送り、足首の動きを補う方法です。
・研究では、FESも装具も歩く速さを補助する傾向が示されていますが、効果は控えめで、バランスへの効果ははっきりしない部分があります。
・FESと装具のどちらが良いかは一概に言えず、生活や転倒リスクに合わせて選ぶことが大切です。
下垂足は、足首を持ち上げる筋肉の働きが弱くなり、歩くときにつま先が下がって引っかかりやすくなる状態です。つまずきや転倒の原因になりやすく、歩くときに膝を高く上げたり、足を外に回したりといった代わりの動き(代償動作)が出ることもあります。
電気刺激療法(FES:機能的電気刺激)は、歩くタイミングに合わせて、足首を持ち上げる筋肉に弱い電気刺激を送り、つま先が上がるのを補う方法です。よく比較されるのが短下肢装具(AFO)で、こちらは足首を支える装具を使ってつま先の引っかかりを防ぎます。どちらも「足の動きを補う」ことを目的にしている点が共通しています。
結論から言うと、FESも装具も歩く速さを補助する傾向が研究で示されていますが、効果の大きさは控えめで、すべての指標で一致しているわけではありません。「これを使えば必ず速く歩けるようになる」というより、「足の動きを補い、歩きやすさを支える選択肢」と捉えるのが現実的です。

補助しやすいのは、つま先の引っかかりや、歩くときの足の運びです。FESや装具を使っている間は、つまずきにくくなり、歩く速さが少し増えることがあります。一方で、装置を外したときに足の力そのものがどれだけ残るか、バランスがどこまで安定するかは、はっきりしない部分があります。効果の大きさには個人差があり、麻痺の程度、感覚、痛み、足首の関節の硬さによっても変わります。
大切なのは、FESや装具を「歩く力を支える道具」として捉え、転倒を防ぎながら活動量を保つことです。どちらか一方が万能ということはなく、生活場面に合わせて選んでいきます。
「つま先が引っかかってつまずきやすい」「装具が合わず歩きにくい」と感じる方は、FESや装具の選択肢を専門職と確認する価値があります。屋外をある程度歩ける方では、歩きやすさを支える目的で使われることがあります。一方で、皮膚トラブル、感覚が大きく低下している、てんかんの既往、ペースメーカーなどがある場合は、電気刺激の適応に注意が必要です。必ず医師や専門職に相談してください。
研究では、歩行練習に合わせてFESを使う形が多く用いられています。実際には、装着の手間、電極の貼り方、皮膚の状態、装具との使い分けなど、生活に合うかどうかが続けやすさを左右します。FESと装具は「どちらか一方だけ」と決めず、場面によって使い分けることもあります。導入を検討する際は、歩く距離や場所、転倒のリスク、使いやすさを一緒に確認しながら、無理のない形を選ぶことをおすすめします。

修士(作業療法学)/作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍
経歴
2016年:初台リハビリテーション病院に入職。脳卒中後遺症の回復期リハに従事
2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立
2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中
研究活動
第57回日本作業療法学会(2023)ポスター発表/第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表
論文執筆
田中 光, 石橋 裕, 佐々木 智也, 坂本 泰平. (2025). 本邦における介護予防・日常生活支援総合事業におけるスコーピングレビュー. 日本老年療法学会誌, 4(1).
2. Hwang S, Song CS. Rehabilitative effects of electrical stimulation on gait performance in stroke patients: A systematic review with meta-analysis. NeuroRehabilitation. 2024. DOI:10.3233/NRE-230360. PMID:38306066.
3. Stimulation of the withdrawal reflex in gait training after stroke: A systematic review and meta-analysis. Artif Organs. 2025. PMID:39466676. PMCID:PMC12179755.
4. Alashram AR. Functional Electrical Stimulation Cycling for Gait Rehabilitation in Stroke Survivors: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Physiother Res Int. 2026. DOI:10.1002/pri.70188. PMID:41778356.
