
東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍
初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立
「いくつかの運動を順番に回って行うリハビリがあると聞いた」「歩く練習を増やしたいけれど、どんな方法が良いの?」——脳卒中後の歩行やバランスに対して、複数の運動課題を順番に回る「サーキットトレーニング(回路型運動/サーキットクラス)」が研究されています。この記事では、サーキットトレーニングについて、研究で分かっていること、向いている人・注意したい人、回数や期間の目安を、患者さんとご家族に向けて整理します。

・大規模なレビューでは、歩く距離(6分間で歩ける距離)や歩く速さで、良い傾向が中等度の根拠で報告されています1。
・立ち上がりや方向転換の速さ(Timed Up and Go)でも良い傾向が示されています1。
・一方で、ただ時間を増やすだけでは通常のケアと差が出なかった試験もあり、内容と進め方が大切です2。
サーキットトレーニング(回路型運動、サーキットクラス)は、歩行やバランスに関わる複数の運動課題を「ステーション」として用意し、それを順番に回りながら練習する方法です。たとえば、椅子からの立ち座り、障害物をまたぐ、段差を昇り降りする、距離を歩く、的に向かって足を運ぶ、といった課題を、一定時間ずつ繰り返していきます。
もともとは、グループ形式にすることで、スタッフの人数を大きく増やさずに一人ひとりの練習量を確保する狙いで広まりました。生活の中で必要な「立つ・歩く・向きを変える・またぐ」といった課題を、実際の動作に近い形で数多く繰り返せる点が特徴です。多くの研究では、すでにある程度歩ける方(介助なしで10m程度歩ける方)を対象にしています。
結論から正直にお伝えすると、サーキットトレーニングは、すでに歩ける方の「歩く距離」や「歩く速さ」で、比較的しっかりした根拠で良い傾向が報告されている方法です。ただし、これは「課題を絞って、十分な量を、適切に進めた場合」の話で、単に練習時間を増やせば良いというわけではない点には注意が必要です。
ただし、別の試験(CIRCIT、283名)では、サーキット形式で練習時間を大きく増やしても、4週間後の歩行距離は通常のケアと同等でした2。つまり「時間を増やすこと」自体が成果を保証するのではなく、課題の選び方や難易度の進め方が大切だと考えられます。

研究で良い傾向が見えやすいのは、歩く距離・歩く速さ・移動の自立度といった「歩くこと」に関わる部分です1。これは、実際に歩く・立つ・またぐといった課題を数多く繰り返すという方法の性質と合っています。バランスの指標の一部でも良い傾向がみられました1。
一方で、「練習時間を増やすこと」そのものが成果に直結するわけではありません2。同じ時間でも、本人の状態に合った課題を選び、少しずつ難易度を上げていく進め方が大切です。また、対象の多くがすでに歩ける方であり、ほとんど歩けない段階の方にそのまま当てはめられるわけではない点にも注意が必要です。
すでにある程度歩ける方で、歩く距離や速さ、外出のしやすさをのばしたい方には、課題を数多く繰り返せる点で相性が良いことがあります。複数の課題を回るため飽きにくく、生活に近い動作を練習しやすいのも利点です。発症から時間が経っていても良い傾向がみられているため、慢性期の方でも取り組む価値があります1。
研究では設定がさまざまですが、多くは1回およそ60〜90分のセッションを週数回、数週間続ける形です1,2。複数の課題を順番に回ることで、限られた時間でも歩行やバランスに関する練習量を確保しやすくしています。大切なのは「ただ長くやる」ことではなく、課題を本人の状態に合わせて選び、休憩をはさみながら少しずつ負荷を上げていくことです2。
これらはあくまで研究上の目安です。体力、疲れやすさ、転倒リスク、生活リズムによって、無理なく続けられる量は人それぞれ異なります。時間・課題・難易度は、担当の専門職と一緒に調整していくことが大切です。
ただし、全員に同じ内容を行えばよいというものではありません。歩行能力、バランス、体力、転倒リスク、生活上の困りごとを評価したうえで、その人に合った課題を選び、難易度を調整して実施する必要があります。サーキットという形式そのものよりも、「何を目的に、どの課題を、どの難しさで行うか」が大切だと考えています。

修士(作業療法学)/作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍
経歴
2016年:初台リハビリテーション病院に入職。脳卒中後遺症の回復期リハに従事
2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立
2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中
研究活動
第57回日本作業療法学会(2023)ポスター発表/第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表
論文執筆
田中 光, 石橋 裕, 佐々木 智也, 坂本 泰平. (2025). 本邦における介護予防・日常生活支援総合事業におけるスコーピングレビュー. 日本老年療法学会誌, 4(1).
2. English C, Bernhardt J, Crotty M, Esterman A, Segal L, Hillier S. Circuit class therapy or seven-day week therapy for increasing rehabilitation intensity of therapy after stroke (CIRCIT): a randomized controlled trial. Int J Stroke. 2015;10(4):594-602. DOI:10.1111/ijs.12470. PMID:25790018.
