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レビー小体型認知症の運動療法・リハビリ|研究の結果と生活での工夫

神経難病情報 読了目安 約14分 文・
レビー小体型認知症の運動と生活の工夫を説明するタイトル入り画像
記事の説明画像はAI生成イメージであり、実際の利用者・研究参加者の写真ではありません。
田中 光 作業療法士 Journey Rehab代表

田中 光|株式会社Journey Rehab代表
認定作業療法士/修士〈作業療法学〉
東京都立大学大学院博士後期課程在籍
代表・会社情報

結論:レビー小体型認知症(DLB)の運動療法には、筋力や立ち上がりなどの改善を示した小規模研究があります。ただし、DLBだけを対象にした確かな比較研究は少なく、転倒を減らす効果や病気の進行を止める効果は、この根拠からは言えません。体調・注意力の変動と安全性を確認し、ご本人が続けたい生活の動作に合わせて支援を考えます。

歩く速さが変わる、椅子から立つときに時間がかかる、昨日できたことが今日は難しい。DLBのある方と暮らすご家族は、運動を続けるべきか、休むべきか迷うことがあるかもしれません。

DLBには、注意力や覚醒の変動、幻視、動作の遅さやこわばり、睡眠の問題などが関わります。運動を増やすだけで生活の困難を説明できる病気ではありません。医学的な評価、薬の調整、家族への支援とリハビリを組み合わせることが大切です。[1]

この記事では、元の運動療法のテーマに沿って、2016年の運動レビュー、2022年のPRIDE研究、その後のレビューを確認します。研究の数値は効果の保証ではなく、相談時に期待と限界を共有するための情報として紹介します。

この記事で分かること

  • DLBとパーキンソン病認知症が一緒に研究される理由
  • 運動研究で改善が見られた項目と、確認できなかった項目
  • 体調の変動・幻視・立ちくらみを踏まえた生活と相談の工夫

DLBのリハビリは、体の動きと認知の変動を一緒に考える

レビー小体型認知症(DLB)とパーキンソン病認知症(PDD)は、共通する病理や症状を持ち、「レビー小体型認知症群(LBD)」としてまとめて研究されることがあります。しかし同じ診断ではありません。DLBは認知症がパーキンソン症状に先行するか近い時期に現れ、PDDはパーキンソン病の経過の中で認知症が現れるものです。区別には症状の時間的な関係が使われます。[1]

したがって、PDDを多く含む研究の結果を、そのままDLBの全員に当てはめることはできません。診断、認知症の程度、歩行の状態、併存する病気、薬、支援者の有無まで確認する必要があります。

DLBでは、体力が残っていても、注意が続かない、動作の順番が分かりにくい、周囲のものを見誤るなどの理由で生活動作が難しくなることがあります。運動能力の測定だけでなく、実際に行いたい動作を、どの時間帯・環境なら行いやすいかまで見ることがリハビリの出発点です。[1]

2016年の運動レビュー:歩行への可能性と少ないデータ

Inskipらの系統的レビューは、LBDに関連する運動研究を集めました。対象は合計16人で、DLBは2人、PDDは10人、パーキンソン病の軽度認知障害は4人でした。最後の4人は結果を分けられなかったため含まれており、「DLBの16人を調べた研究」ではありません。[2]

歩行速度のデータがあった運動実施者13人では、運動前後の平均変化は毎秒0.18mでした。ただし95%信頼区間は−0.02〜0.38m/秒と幅が広く、改善がない場合も含んでいました。これは主に少人数の前後データをまとめた値で、DLBにおいて運動が対照群より有効だと確定した数値ではありません。[2]

レビューには症例報告や症例系列が多く、実施内容も歩行・バランス・筋力などさまざまでした。別の認知症を含む試験のLBD小集団もあり、誰にどの運動をどれだけ行うとよいかを決める材料には不足があります。研究が少ないことは、運動が無意味だという証明でもありません。

手すりと安定した椅子の近くで専門職が高齢女性の移動を見守るイメージ
移動の支援では、使える手すり、椅子、介助の位置などを実際の環境に合わせて確認します。画像はAI生成イメージです。

PRIDE研究:専門職が見守る8週間の運動で何が変わったか

2022年のPRIDE研究は、LBDのある9人を登録し、最初の8週間は待機、その後の8週間に運動を行う順序で評価しました。登録時の内訳はDLB4人、PDD5人、運動期間を終えて評価されたのはDLB3人とPDD3人の計6人です。無作為に運動群と対照群を分けた試験ではありません。[3]

運動は、医師による適否の確認後、運動の専門職が1対1で見守る施設内プログラムでした。週3回・1回約60分で、バランス、動作練習、段階的な筋力運動を組み合わせています。この量や筋力運動の強さを、家庭でそのまま再現することはできません。[3]

筋力・立ち上がりと症状スコアに改善が見られた

運動後のMDS-UPDRS総得点の変化の中央値は−8点(95%信頼区間−17.5〜−2、6人)でした。これはパーキンソン病に関連する運動・非運動症状、生活上の経験、運動合併症を含む尺度で、点数が低いほど症状が軽いことを示します。歩行や生活の自立だけを測った指標ではありません。[3]

筋力と立ち上がりを測定できた5人では、脚の筋力が向上し、5回の立ち上がりにかかる時間は中央値で3秒短くなりました(95%信頼区間−5〜−1秒)。6人の認知機能の検査では、MMSEの変化の中央値が+4.5点でした。身体機能と認知機能への可能性を示す結果ですが、少人数の同一人物の前後比較です。[3]

歩行・日常生活・長期の効果は確認しきれていない

通常の歩行速度は中央値で毎秒0.15m上がりましたが、統計学的に有意な変化ではありませんでした。日常生活の自立度を評価するFIM、日々の身体活動量、生活の質などにも、有意な改善は確認されませんでした。「筋力が上がったので介助が不要になった」「転倒を減らした」とまでは言えません。[3]

待機中には身体活動などの低下が見られましたが、すべての項目が有意に悪化したわけではありません。運動後と待機中の変化が違っていても、順序が固定されているため、体調の変動や検査への慣れなどを完全には除けません。また終了後の長期追跡がなく、効果の持続や病気の進行への影響は不明です。[3]

小さな研究でも有害事象の確認は欠かせない

運動期間中には、便の詰まりによるせん妄で中止した方がいました。著者は運動とは関連しないと評価しています。一方、鼠径ヘルニアの不快感の一時的な悪化は運動との関連が疑われ、内容を変更して継続されました。「全員に安全で問題が起きなかった」という研究ではありません。[3]

その後のレビューでも、DLBに合う方法の確定には研究が必要

2018年のConnorsらの非薬物介入レビューは、運動だけでなく、生活環境の調整、作業療法、ご家族への支援なども扱いました。21研究・195人のうちDLBは44人で、残りはPDDでした。症例報告などが多く、研究デザインと対象の違いから、特定の介入を広く勧める結論には至っていません。[4]

2023年のGuidiらのレビューでも、LBDに対する非薬物介入23報の中で運動・理学療法は5報でした。改善の報告はありますが、大規模で確かな比較研究が不足しています。このレビューの検索は2022年3月までで、同年8月に公表されたPRIDEは含まれません。「2016年以降、研究が増えていない」と読むことも適切ではありません。[5]

2024年のChartierらのレビューは、身体運動と認知課題を組み合わせる介入を扱いました。検索条件に合うLBDの研究を見いだしておらず、主な結果はパーキンソン病の研究から得られています。これは組合せ介入と比較群などの条件を満たす研究についての話で、DLBのリハビリ研究が一つもないという意味ではありません。[6]

2026年8月公表のKamoらのスコーピングレビューは、2025年5月までの検索でDLBのリハビリ研究6報を整理しました。歩行・バランスや生活動作などへの可能性が示されていますが、症例報告や非無作為化研究が中心です。研究の分布を整理するレビューで、効果の大きさを統合したものではなく、安全性や長期効果の確定には限界があります。[7]

歩きながら計算するなどの「二つのことを同時に行う練習」がDLBにも有効だと、この記事の根拠から断定することはできません。ご本人が動作に集中しにくい場合、家庭で課題を足して難しくすることより、専門職と安全な条件を確かめることを優先します。

研究の結果を暮らしに生かすときの3つの注意点

① 検査の改善と、生活でできることの改善を分ける

筋力や検査得点がよくなっても、服を着る、トイレへ行く、食卓に座るなどの動作が同じ程度によくなるとは限りません。PRIDEではFIMの改善を確認できなかったことも踏まえ、「何を続けたいか」と「必要な見守り・介助がどう変わったか」を別に記録します。[3]

② 少人数・混合対象の結果を一人ひとりの予測にしない

PRIDEの完了者は6人で、DLBとPDDを合わせた結果です。参加者の多くが男性であり、体調上の理由などで全員が完了したわけでもありません。無作為化や評価者の盲検化がなく、多数の検査を行ったため、偶然の変化や偏りの影響もあります。検査の平均的な結果を「あなたも同じだけ改善する」という約束にはできません。[3]

③ 最適な回数や負荷、転倒予防の効果はまだ分からない

この記事で確認した研究からは、DLBの全員に適した運動回数・時間・強さ、転倒や入院を減らす効果を決められません。一般的な認知症やパーキンソン病の運動研究は参考になりますが、DLBの幻視、注意の変動、自律神経の症状を含めて適否を判断します。

体調の変動、幻視、立ちくらみを踏まえた安全の考え方

以下は研究で効果が証明された運動メニューではなく、DLBの症状と生活を踏まえて、医療・リハビリの担当者と相談するための一般的な整理です。国際的な合意文書も、個別評価、ご家族への教育・支援、多職種の協力を重視しています。[1]

いつもと違う体調を、運動不足と決めつけない

覚醒や注意が変わりやすいことはDLBの特徴ですが、急な悪化をすべて「いつもの波」で済ませないことが大切です。発熱、痛み、食事や水分が取れない、便秘の悪化、薬の変更なども一緒に伝えます。急にぼんやりする、反応が鈍い、普段と違う混乱が続くときは練習を中断して医療機関へ相談します。[1, 3]

見え方と注意に合わせ、声かけや環境を整える

幻視に強い不安があるときに、無理に立たせたり歩かせたりしないようにします。明るさ、床の模様、影、通り道の物を確認し、落ち着ける環境で、ご本人が理解できる短い声かけから始めます。一度にいくつも指示するより、「椅子に座る」など一つの動作を示して反応を確かめる方法を担当者と検討します。

立つ・歩く前に、立ちくらみと見守りの条件を確認する

立ったときのふらつき、気が遠くなる感じ、転倒がある場合は、血圧の変化や薬などについて医師に相談します。症状がある最中に歩行や立位の練習を続けません。安定した椅子、手すり、履物、介助者の位置を確認し、片脚立ちや目を閉じたバランス練習などを自己判断で始めることは避けます。

胸痛、強い息苦しさ、意識を失う、突然の片側の脱力や言葉の出にくさなどがあれば、運動を中止し救急要請を含めた対応を優先してください。運動を続けるか迷う症状の基準は、事前に医療機関・担当者と共有しておくと判断しやすくなります。

安定した椅子で休みながら専門職と体調を確認する高齢男性のイメージ
体調が悪いときは、いったん安定した椅子で休み、いつもとの違いを確認します。画像はAI生成イメージです。

作業療法の視点:運動を、ご本人が続けたい生活へつなげる

作業療法では、運動の数値とともに、ご本人にとって意味のある生活動作、道具、環境、ご家族の負担を考えます。以下は特定の利用者の体験談ではなく、相談で整理できる生活上の例です。

食卓まで移動する:歩く距離より、途中の条件を確認

「食卓まで行きたい」という目標なら、椅子から立つ、方向を変える、歩く、再び座るという各動作を分けて確認します。通路が広いか、途中に休める場所があるか、食事の時間帯に眠気や立ちくらみが出ていないかを見ます。必要に応じて、手すりや移動方法、介助の仕方を専門職と検討します。

着替えや整容:体力以外の難しさを減らす

着替えで手が止まる場合、筋力だけではなく、服の向きや手順の分かりにくさも考えます。座れる場所で、一度に出す物を減らす、順番に提示する、待つ時間を確保するなど、何が助けになるかを実際の動作で確かめます。毎回同じようにできない場合は、時間帯と体調も記録します。

家族の見守り:無理なく続けられる方法を共有

ご家族が毎回長い運動を促すことを目標にすると、双方の負担が増える場合があります。安全に行えた動作、疲れが出たタイミング、翌日に負担が残ったかを伝え、量や介助方法を調整します。難しい日を「努力不足」と捉えず、ご本人の希望と休む判断を共有することが大切です。

生活動作や住環境への支援を詳しく知りたい方は、認知症の方への在宅作業療法の記事もご覧ください。認知症全般の根拠には、DLBへの当てはめに限界があることも併せて考えます。

高齢女性と家族が専門職と食卓で生活の目標を相談するイメージ
何を続けたいか、ご家族がどこで困っているかを共有し、生活に合う支援を考えます。画像はAI生成イメージです。

相談前に整理しておくと役立つこと

相談するときは、「もっと運動したい」だけでなく、続けたい具体的な動作を一つ挙げてみてください。診断名、薬の変更、転倒や立ちくらみ、注意・眠気の変動、痛み、睡眠、便通なども伝えられると、練習の適否や方法を検討しやすくなります。

家庭での記録は長い文章でなくても構いません。「朝は食卓まで歩けた」「午後は眠気が強く座って過ごした」「立つとふらついた」など、時間帯と動作、必要だった支援を短く残します。診察やリハビリの場で確認するための記録であり、自分だけで症状の原因を決めるためのものではありません。

転倒への心配がある方は、認知症の転倒予防運動の記事も参考にしてください。一般的な運動効果と、ご本人の環境・症状の確認を合わせて考えることが大切です。

まとめ:研究の可能性を、生活の目標と安全につなげる

DLBの運動・リハビリには、筋力、立ち上がり、歩行などへの可能性を示す研究があります。ただしDLBとPDDが混ざる小規模研究が多く、転倒予防、長期の自立、病気の進行への効果を確定できる根拠は十分ではありません。

研究の回数や負荷をそのまま家庭で再現せず、体調や注意の変動、幻視、立ちくらみを確認して、続けたい生活動作に合わせて相談します。ご本人の希望とご家族の負担を共有し、行うこと・休むこと・医療機関へ相談することの基準を決めるのが出発点です。

田中 光 作業療法士 Journey Rehab代表

田中 光|株式会社Journey Rehab代表
認定作業療法士/修士〈作業療法学〉
東京都立大学大学院博士後期課程在籍
代表・会社情報

よくある質問

Q1. レビー小体型認知症は運動で治りますか?

今回確認した研究から、運動でDLBが治る、進行が止まるとは言えません。筋力や立ち上がりなどへの可能性はありますが、薬物治療や医学的な評価と合わせて、ご本人の生活の目標に適した支援を考えます。

Q2. 週3回・60分の運動を家でも行うべきですか?

PRIDEの量は、医師の適否確認と専門職の1対1の見守りがある条件で行われたものです。家庭の標準メニューではありません。立ちくらみ、認知・注意の状態、体力、病気や痛み、介助者の有無などを確認して、量と方法を個別に相談してください。

Q3. 歩行や認知機能の改善は期待できますか?

小規模研究に改善の報告はありますが、確実な個人の予測はできません。PRIDEでは認知検査などが改善した一方、通常歩行速度やFIMなどは有意な改善を確認できませんでした。検査と暮らしの動作を分けて評価することが大切です。

Q4. 体調がよい日と悪い日があるとき、休んでもよいですか?

体調と注意の状態に合わせて休むことも必要です。担当者と中止・休息の基準を決めましょう。ただし、急な強い眠気や混乱、発熱、いつもと違う反応などは、普段の変動だけと判断せず医療機関へ相談してください。

Q5. パーキンソン病向けの運動をそのまま使えますか?

参考になる場合はありますが、DLBには幻視、注意・覚醒の変動などが関わります。また、PDDを多く含む研究の結果はDLB単独の結果ではありません。ご本人が理解して安全に行える条件に合わせて調整する必要があります。

Q6. 訪問リハビリを相談する際は何を伝えればよいですか?

続けたい生活動作、困っている時間帯、必要な介助、転倒・立ちくらみ、最近の体調や薬の変化を伝えてください。ご本人の希望とご家族の負担も共有すると、運動、動作の工夫、住環境の調整を合わせて相談できます。

参考文献

  1. McKeith IG, et al. Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies: Fourth consensus report of the DLB Consortium. Neurology. 2017;89:88–100. DOI: 10.1212/WNL.0000000000004058. PMID: 28592453.
  2. Inskip M, et al. Exercise for Individuals with Lewy Body Dementia: A Systematic Review. PLoS One. 2016;11:e0156520. DOI: 10.1371/journal.pone.0156520. PMID: 27258533.
  3. Inskip MJ, et al. Promoting independence in Lewy body dementia through exercise: the PRIDE study. BMC Geriatr. 2022;22:650. DOI: 10.1186/s12877-022-03347-2. PMID: 35945508.
  4. Connors MH, et al. Non-pharmacological interventions for Lewy body dementia: a systematic review. Psychol Med. 2018;48:1749–1758. DOI: 10.1017/S0033291717003257. PMID: 29143692.
  5. Guidi L, et al. Non-Pharmacological Treatments in Lewy Body Disease: A Systematic Review. Dement Geriatr Cogn Disord. 2023;52:16–31. DOI: 10.1159/000529256. PMID: 36977397.
  6. Chartier C, et al. Combinations of physical and cognitive training for subcortical neurodegenerative diseases with physical, cognitive and behavioral symptoms: a systematic review. Neurol Sci. 2024;45:5571–5589. DOI: 10.1007/s10072-024-07808-x. PMID: 39424648.
  7. Kamo H, et al. Rehabilitation strategies for atypical parkinsonian syndromes: A scoping review of progressive supranuclear palsy, multiple system atrophy, corticobasal syndrome, and dementia with Lewy bodies. J Parkinsons Dis. OnlineFirst, 19 August 2026. DOI: 10.1177/1877718X261440430. PMID: 42615574.

本文は一般的な情報です。個別の診断・治療・練習の可否は医療機関・担当者と相談してください。本記事には株式会社Journey Rehabのサービス案内を含みます。参考文献の確認日:2026年10月9日。

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