東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍
初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立
研究結果が分かれる理由を正直に解説
「LEDやレーザーの光を当てるだけで腰痛が楽になる機器があると聞いたが、本当に効果があるのか」というご質問をいただくことがあります。LED・低出力レーザーを使った光線療法は、専門的には「フォトバイオモジュレーション(光生物学的調整療法、PBMT)」と呼ばれ、特定の波長の光を組織に当てることで、痛みや炎症に関わる細胞の反応に働きかけると考えられています。
この記事では、慢性腰痛に対するLED・光線療法について、痛みを減らすと報告する研究と、支持しないと結論づけた研究の両方を正直に紹介し、なぜ結果が分かれるのか、どう考えればよいのかを整理します。
最終更新日:2026年8月24日
最新レビュー日:2026年8月24日
腰痛の原因はさまざまで、まれに骨折・感染・悪性腫瘍・神経症状を伴う重篤な病気が隠れていることがあります。強い痛み、しびれ、発熱、原因不明の体重減少などがある場合は、光線療法を試す前に必ず医療機関を受診してください。この記事は一般的な情報提供が目的で、特定の機器の効果を保証するものではありません。
LED光線療法(フォトバイオモジュレーション、PBMT)は、赤色光(波長630nm前後)や近赤外光(波長850nm前後)を皮膚の上から患部に照射する物理療法の一種です。低出力のレーザー(LLLT:Low-Level Laser Therapy)を使うタイプと、LED(発光ダイオード)を使うタイプがあり、いずれも「組織を温める」というより、細胞レベルの反応に働きかけることを目的としています。
機器そのものは非侵襲的(体を傷つけない)で、光を当てるだけのシンプルな使い方をするものが多く、腰痛以外にも肩こりや筋肉痛など、さまざまな筋骨格系の痛みに対して研究が行われています。温熱療法との併用については、当施設のブログでも急性腰痛への温熱療法と運動の併用について解説した記事で取り上げています。
7件のRCT・394名を統合した2015年のメタアナリシスでは、低出力レーザー治療(LLLT)群はプラセボ(偽の照射)群と比べて、VAS疼痛スコアが統計的に意味のある形で改善したと報告されています(加重平均差-13.57、95%信頼区間-17.42〜-9.72)3。7件中6件が方法論の質を評価するPEDroスコア7点以上の高品質な研究でした3。
176名の慢性非特異的腰痛患者を対象にした中国の試験では、LED光線療法(630nm+850nm)とリハビリ運動を組み合わせた群と、シャム機器+リハビリ運動の群を比較しました。28日間の治療後、症状の総合的な改善率は実機器群で80.90%、対照群で27.59%となり、統計的に意味のある差が示されました(p<0.0001)。腰の痛みや動きにくさを評価するJOAスコアも、実機器群で有意に高い結果でした1。
台湾で行われた看護師148名を対象にした二重盲検RCTでも、LED光線療法(630nm+850nm、週3回×2週間・計6回)を受けたグループで、痛み・疲労の軽減や機能面の改善が報告されており、重篤な有害事象は見られませんでした4。この研究では、2週間の治療後だけでなく、6か月後までの経過も追跡されています4。
これらの結果から、「LED・レーザーによる光線療法は、少なくとも痛みの指標については改善に関連する」という報告が複数あることが分かります。
ここまで紹介した研究とは異なる結論を出しているシステマティックレビューもあります。12件のRCT・1046名を統合した2020年のレビューでは、「現時点のエビデンスは、非特異的腰痛に対する光線療法(PBMT)が痛みと機能障害を減らすことを支持しない」と結論づけられています2。シャム(偽)治療と比較した場合、臨床的に重要と言えるほどの効果は見られなかったとされています2。
同じ2015年のメタアナリシスでも、疼痛(VAS)には改善が見られた一方で、「機能障害や可動域についてはプラセボに優越しない」と明記されています3。つまり、痛みの数値は下がっても、実際の生活動作のしやすさまで改善するとは限らない、ということです。
結果が分かれる背景には、(1)研究によって機器の波長・出力・照射時間などのプロトコルが大きく異なること、(2)光線療法単独ではなく運動療法と組み合わせた研究が多く、光線療法そのものの効果を切り分けにくいこと、(3)「痛みの数値」と「機能障害・生活動作」という異なる指標を見ていること、などが関係していると考えられます。腰痛に対するその他のアプローチについては、当施設のブログでも腰痛で仕事を休んでいる方への集学的リハビリについて解説した記事で取り上げています。
同じテーマを扱ったシステマティックレビュー同士でも結論が異なるのは、腰痛研究の中でも特徴的な状況です。2015年のメタアナリシスは疼痛への効果を報告し、2020年のシステマティックレビューは効果を支持しないと結論づけています2,3。これは、対象とした研究の組み入れ基準や、統合した研究の内容が異なることが一因と考えられます。
波長、出力密度、1回あたりの照射時間、総セッション数など、研究によって設定が大きく異なります。どの設定が最も効果的かという「至適用量」は、現時点で統一された結論が出ていません。
2026年に発表された176名のRCTのように、比較的新しく良好な結果を示す研究もありますが、この試験は事後に臨床試験登録がなされている点や、単独施設での実施である点など、解釈には注意が必要です1。光線療法だけでどこまで生活の質や動作能力が改善するのか、運動療法と組み合わせた場合とそうでない場合でどう違うのかは、まだ十分に分かっていません。
光線療法は「痛みを和らげる選択肢の一つ」であり、腰痛の原因そのものを取り除く治療ではありません。運動療法や生活動作の見直しと組み合わせて考えることが大切です。オンラインでの運動指導との組み合わせに関心がある方は、当施設のブログでも慢性腰痛の遠隔リハビリについて解説した記事をご覧ください。
・別のRCTの一例:630nm+850nm、リハビリ運動と併用し28日間継続1
・メタアナリシスに含まれた研究群:多くが数週間の短期集中的な照射プログラム3
「これくらいやれば必ず効く」という統一的な基準は、現時点の研究からは示せません。市販・施設で使われる機器の出力や波長もさまざまで、研究で使われた条件と同じとは限りません。実施を検討する場合は、機器の仕様や照射条件について、提供元・専門職に確認することをおすすめします。
Journey Rehabでは、現時点でLED光線療法機器は導入していませんが、温熱・徒手的なアプローチと運動療法を組み合わせて、慢性腰痛のある方の生活動作の困りごとに向き合っています。痛みの数値だけでなく、「実際に何がしづらくなっているか」を丁寧に確認し、その方に合った現実的な方法を一緒に考えることを大切にしています。
光線療法のような新しい機器は魅力的に見えますが、研究結果そのものが分かれているテーマでもあります。「試してみたい」という気持ちを否定するものではありませんが、過度な期待をせず、運動療法や生活習慣の見直しと合わせて考えることをおすすめします。
LED・レーザーを使った光線療法(フォトバイオモジュレーション)は、慢性腰痛の痛みに対して改善を報告する研究がある一方、痛みと機能障害への効果を支持しないと結論づけたシステマティックレビューもあり、現時点で結果は一致していません。機能障害や生活動作への効果は特にはっきりしておらず、運動療法などと組み合わせて考えることが大切です。
この記事は一般的な情報提供を目的としており、診断・治療・医療行為を推奨するものではありません。腰痛の原因によっては光線療法が適さない場合があります。実施を検討する場合は、必ず主治医・リハビリ専門職へ相談してください。研究データは執筆時点のものであり、今後変わる可能性があります。
作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836(日本作業療法士協会)
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍
・2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立
・2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中
・第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表
