脳卒中後の手のむくみはなぜ起こる?原因・痛み・リハビリ・受診の目安を解説

· 脳卒中上肢関連情報
田中 光 作業療法士 Journey Rehab代表
田中 光(作業療法士)|株式会社Journey Rehab 代表
認定作業療法士/修士(作業療法学)
東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍
初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立
公開日:2026年6月13日|最終更新日:2026年6月13日
脳卒中後の手のむくみと痛みはなぜ起こる?リハビリで見るポイントと注意したいサイン

脳卒中のあと、「麻痺した手がむくむ」「指輪がきつくなった」「手首や指がこわばって痛い」と相談されることがあります。結論から言うと、手のむくみは珍しい訴えではありませんが、単なるむくみだけでなく、肩手症候群や複合性局所疼痛症候群(CRPS)に近い状態が隠れていることもあります。

この記事では、脳卒中後の手のむくみについて、研究で分かっていること、リハビリで確認したいこと、早めに主治医や専門職へ相談したいサインを整理します。

この記事でわかること
1. 脳卒中後に手がむくむ主な背景
2. むくみだけでなく痛み・熱感・色の変化を見る理由
3. 肩手症候群やCRPSと関係する注意サイン
4. リハビリで大切にしたい手の位置、動かし方、相談の目安
脳卒中後の手のむくみについて作業療法士に相談する場面
手のむくみは、見た目だけでなく痛みや動かしにくさも一緒に確認します。
SECTION 01
脳卒中後の手のむくみは、ひとつの原因だけで説明しにくい

脳卒中後の手のむくみは、麻痺側の手を動かす機会が減ること、手が下がった姿勢で過ごす時間が長いこと、筋肉のポンプ作用が働きにくいこと、肩や手首・指への小さな負担など、いくつかの要因が重なって起こると考えられます。

古いシステマティックレビューでは、脳卒中後の手のむくみや肩手症候群について検討されていますが、研究数は限られ、対応方法もばらつきが大きいとされています1。そのため、「この方法をすれば決まってむくみが取れる」と言い切るよりも、痛み・熱感・皮膚の色・関節の動き・日常生活での手の使われ方を合わせて見ることが大切です。

ポイント
むくみは「水分がたまっているか」だけでなく、「痛みを伴う炎症や過敏さがないか」「手を守りすぎて動かせなくなっていないか」まで確認します。
SECTION 02
「むくみ+痛み」があるときは、肩手症候群やCRPSも意識する

手のむくみだけであれば、姿勢や活動量、手の使い方を見直しながら経過を見られることもあります。一方で、強い痛み、触れただけでつらい過敏さ、熱感、皮膚色の変化、汗の変化、関節のこわばりが重なる場合は、肩手症候群やCRPSに近い状態も考えます。

CRPSの診断では、痛みだけでなく、感覚、自律神経、むくみ、運動・皮膚変化など複数の領域を確認するBudapest Criteriaが広く使われています。検証研究では、従来基準より過剰診断を減らしやすいことが報告されています2。また、CRPS診療ガイドラインでは、研究の質や量には限界があることを踏まえつつ、診断だけでなく機能回復、心理面、痛みの管理、段階的な活動再開を組み合わせて考える重要性が示されています3

早めに相談したいサイン
・手が急に腫れてきた
・熱感や赤みが強い
・触れるだけで強く痛い
・指や手首が急に動かしにくい
・肩から手まで痛みが広がる
・発熱、息切れ、強いだるさなど全身症状がある

これらがある場合、自己判断で強く揉む、無理に伸ばす、痛みを我慢して反復することは避け、主治医やリハビリ専門職へ相談してください。CRPSが疑われる場合は、むくみだけを減らそうとするより、痛みや過敏さを確認しながら、触れる・動かす・生活で使う段階を慎重に調整する視点が大切です。

リハビリの前に医科的確認を優先したい状態
・むくみが急に強くなった、左右差が急に大きくなった
・赤み、熱感、強い痛み、発熱がある
・息切れ、胸の痛み、動悸、血の混じる咳がある
・心臓、腎臓、血管の病気を指摘されている
・転倒やぶつけた後から腫れや痛みが強い

むくみは脳卒中後の手の使いにくさと関係することがありますが、血栓、感染、外傷、心臓・腎臓・血管の問題などが背景にある場合もあります。NHSの一般向け医療情報でも、急な強い腫れ、赤みや熱感、息切れや胸痛を伴う腫れは早めの医療相談が必要なサインとして整理されています5,6。リハビリで対応する前に、まず医科的な確認が必要なむくみかどうかを分けて考えます。

脳卒中後の手のむくみに対して手を支えて軽く動かす場面
痛みを強めない範囲で、手の位置と動かし方を調整します。
SECTION 03
リハビリでは「手を上げる」だけでなく、生活の中でどう使われているかを見る

むくみがあると「とにかく手を高く上げればよい」と考えたくなります。たしかに、手を長時間下げたままにしないことは大切です。ただし、それだけでは不十分なことがあります。

リハビリで確認したいこと
・いつから腫れているか、急に悪化していないか
・左右差、手背、指、前腕までの広がりはどうか
・押した跡が残るか、皮膚が張っているか
・熱感、赤み、色の変化、汗の変化があるか
・肩の痛みや亜脱臼が手の使いにくさに影響していないか
・座位、車椅子、寝る姿勢で手が下がり続けていないか
・手首や指が曲がったまま固まりやすくなっていないか
・日常生活で手を支える、添える、軽く使う場面があるか
・痛みを避けるあまり、手に触れられない状態になっていないか

脳卒中後の理学療法・作業療法全体を見たレビューでは、課題に直接関係する練習では機能面の変化が示される一方、手のむくみや肩痛に対する物理療法的な介入では十分な根拠が限られると報告されています4。NICEの脳卒中リハビリガイドラインでも、脳卒中後は筋力、感覚、バランス、痛み、活動、参加、環境因子を含めて包括的に評価し、肩痛では原因を評価したうえで管理方法を決めることが推奨されています7。つまり、むくみだけを単独で追いかけるより、手を安全に生活へ参加させる視点が必要です。

SECTION 04
自宅で意識したいこと:強く揉むより、痛みを増やさない環境づくり

むくみが気になると、強くマッサージしたり、痛い指を無理に伸ばしたくなるかもしれません。しかし、痛みや熱感がある手に強い刺激を入れると、かえって過敏さが増すことがあります。

比較的取り入れやすい工夫
・座るときは、麻痺側の前腕と手をクッションやテーブルで支える
・痛みのない範囲で、指を軽く開く、閉じる、手首を少し動かす
・寝る姿勢や車椅子姿勢で、手が下に落ち続けないようにする
・手の色、熱感、痛み、動かしやすさを毎日軽く確認する
・変化が強いときは、運動量を増やす前に専門職へ相談する

圧迫グローブや装具、電気刺激、温熱・寒冷、薬物療法などが検討されることもありますが、適応は状態によって異なります。とくに痛みや皮膚変化を伴う場合は、主治医やリハビリ専門職と相談しながら進めることが大切です。

SECTION 05
Journey Rehabでの現場経験・正直なまとめ
当施設でのリアルな経験

Journey Rehabでも、脳卒中後の手のむくみはしばしば相談されます。特に発症から6か月以内の時期では、麻痺側の手が動かしにくいこと、感覚障害があること、CRPSに近い痛みや過敏さがあることなど、いくつかの要因が重なっている印象があります。もちろん、心臓や血管、腎臓など循環に関わる病気が背景にある場合もあるため、むくみだけを見て判断しないことが大切です。現場では、テーブルや車椅子のアームレストに手を置くなど日常生活での手の管理、痛みを増やさない範囲でのマッサージやストレッチ、生活の中で麻痺側の手をできるだけ安全に参加させる工夫を一緒に確認します。手を動かせる場面が増えてくると、むくみが軽くなっていく方もいますが、経過には個人差があります。

そのため、むくみへの対応では「手を高くする」「揉む」だけでなく、麻痺側の手がどのくらい生活に参加できているか、痛みや感覚の問題が妨げになっていないかを丁寧に確認します。

脳卒中後の手のむくみや痛みについて家族と専門職が相談する場面
痛みや熱感を伴う場合は、運動を増やす前に相談することが大切です。
まとめ
・脳卒中後の手のむくみは、姿勢、活動量、痛み、手の使われ方が重なって起こることがあります。
・痛み、熱感、皮膚色の変化、触れるだけでつらい過敏さがある場合は注意が必要です。
・研究では、手のむくみ単独に対する決定的な方法はまだ限られています。
・強く揉む、無理に伸ばすより、痛みを増やさない手の位置と生活場面での使い方を確認しましょう。
・変化が強い場合は、主治医やリハビリ専門職へ早めに相談してください。
免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療行為、診断、治療を代替するものではありません。手の腫れ、痛み、熱感、皮膚の変化がある場合は、自己判断で対応せず、主治医またはリハビリ専門職に相談してください。研究情報は執筆時点のもので、今後変わる可能性があります。

手のむくみや痛みについて相談したい方へ

「今の身体に合った運動を知りたい」「生活動作や手の使い方を相談したい」など、身体の状態を一緒に確認しながらリハビリの進め方を考えます。

田中 光 作業療法士 Journey Rehab代表
執筆者:株式会社Journey Rehab 代表取締役|田中 光
保有資格
修士(作業療法学)
作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836(日本作業療法士協会)
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍
経歴
・2016年:初台リハビリテーション病院に入職。脳卒中後遺症の回復期リハに従事
・2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立
・2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中
研究活動
・第57回日本作業療法学会(2023)ポスター発表
・第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表
論文執筆
・田中 光, 石橋 裕, 佐々木 智也, 坂本 泰平. (2025). 本邦における介護予防・日常生活支援総合事業におけるスコーピングレビュー. 日本老年療法学会誌, 4(1). 日本老年療法学会.
質問リスト
Q1. 脳卒中後の手のむくみは自然に引きますか?
軽いむくみは姿勢や活動量の調整で変化することもあります。ただし、痛み、熱感、色の変化がある場合は、早めに主治医や専門職へ相談してください。
Q2. むくんだ手は揉んでもよいですか?
強く揉むと痛みや過敏さが増すことがあります。特に熱感や強い痛みがある場合は、自己判断で刺激を増やさず相談しましょう。
Q3. 手を高くしておけば十分ですか?
手を下げっぱなしにしないことは大切ですが、それだけで十分とは限りません。手首や指のこわばり、痛み、生活での使い方も一緒に見ます。
Q4. 肩の痛みと手のむくみは関係しますか?
関係する場合があります。肩の痛みで手を動かしにくくなると、手が下がりやすくなったり、日常生活で使う機会が減ったりします。
Q5. CRPSかどうかは自分で判断できますか?
自己判断は難しいです。痛み、感覚過敏、むくみ、皮膚色や温度、動かしにくさなど複数の所見を専門的に確認します。
Q6. 自宅でできる運動はありますか?
痛みのない範囲で、指を軽く開閉する、手首を少し動かす、手を支えて休ませるなどが検討されます。状態により異なるため専門職に確認しましょう。
参考文献
1. Geurts AC, Visschers BA, van Limbeek J, Ribbers GM. Systematic review of aetiology and treatment of post-stroke hand oedema and shoulder-hand syndrome. Scand J Rehabil Med. 2000;32(1):4-10. doi:10.1080/003655000750045668. PMID:10782934.
2. Harden NR, et al. Validation of proposed diagnostic criteria (the "Budapest Criteria") for Complex Regional Pain Syndrome. Pain. 2010;150(2):268-274. doi:10.1016/j.pain.2010.04.030. PMID:20493633. PMCID:PMC2914601.
3. Harden RN, McCabe CS, Goebel A, et al. Complex Regional Pain Syndrome: Practical Diagnostic and Treatment Guidelines, 5th Edition. Pain Med. 2022;23(Suppl 1):S1-S53. doi:10.1093/pm/pnac046. PMID:35687369. PMCID:PMC9186375.
4. Van Peppen RP, Kwakkel G, Wood-Dauphinee S, et al. The impact of physical therapy on functional outcomes after stroke: what's the evidence? Clin Rehabil. 2004;18(8):833-862. doi:10.1191/0269215504cr843oa. PMID:15609840.
5. NHS. Swollen ankles, feet and legs (oedema). Last reviewed 26 February 2026. https://www.nhs.uk/conditions/oedema/
6. NHS. DVT (deep vein thrombosis). Last reviewed 30 April 2026. https://www.nhs.uk/conditions/deep-vein-thrombosis-dvt/
7. National Institute for Health and Care Excellence. Stroke rehabilitation in adults. NICE guideline NG236. Published 18 October 2023. https://www.nice.org.uk/guidance/ng236