![]() | 田中 光(作業療法士)|株式会社Journey Rehab 代表 認定作業療法士/修士(作業療法学) 東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍 初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立 |
川平法との違い、向いている人、研究の限界を整理
結論から言うと、促通反復療法は脳卒中後の上肢麻痺に対して、運動機能の変化が報告されているリハビリ方法です。ただし、「誰にでも強く勧められる確立した方法」とまでは言い切れません。研究数は多くなく、手技の難しさ、実施者によるばらつき、重症度ごとの適応の見極めが大切になります。
この記事では、一般に「川平法」として知られる方法を、学術的な名称である促通反復療法として整理し、軽度・中等度・重度のどの方に向いているのかを、研究と臨床経験の両方から解説します。
促通反復療法は、英語ではRepetitive Facilitative Exercise(RFE)と呼ばれます。脳卒中などで動かしにくくなった手足に対して、セラピストが皮膚や筋肉への刺激、伸張反射、軽い抵抗などを使い、本人が動かそうとする意図に合わせて目的の運動を引き出し、それを何度も反復する方法です1。
一般には「川平法」という呼び方で知られることがあります。ただし、学術的・専門的な文章では「促通反復療法」または「Repetitive Facilitative Exercise(RFE)」と表現するのが自然です。記事内では、読者に伝わりやすいように「促通反復療法(川平法)」と整理します。
・正式に説明するなら「促通反復療法」
・英語論文では「Repetitive Facilitative Exercise(RFE)」
・国内での呼称を含めるなら「川平法」
このように整理すると、専門性とわかりやすさの両方を保ちやすくなります。
促通反復療法には、上肢麻痺に対する研究報告があります。初期の研究では、1日500から800回程度の高反復が可能な方法として説明され、上肢や手の運動機能に変化が報告されました1。亜急性期のランダム化比較試験では、通常リハビリよりもFugl-Meyer Assessment(上肢の運動麻痺をみる評価)やAction Research Arm Test(物をつかむ、運ぶなどの上肢機能をみる評価)の変化が大きかったと報告されています2。
一方で、研究数はCI療法や課題指向型訓練、電気刺激、ロボット療法ほど多くありません。2025年のネットワークメタ解析では、促通反復療法とボツリヌス療法の併用が上肢機能の順位で高く示されましたが、著者らは質の高いRCTがさらに必要とも述べています6。つまり、「可能性はあるが、確実性はまだ十分ではない」という受け止め方が現時点では現実的です。
2013年のRCTでは、亜急性期脳卒中の上肢麻痺に対して促通反復療法が通常リハビリよりFMA・ARATで有利だったと報告されています2。ただし、研究数や対象者の条件には限りがあるため、「誰にでも同じように有効」とは言い切れません。
促通反復療法は、重症度だけで単純に向き不向きを決めるより、「目的の運動を引き出せるか」「十分な反復回数を確保できるか」「他の方法と比べて本人の目標に合うか」で考える必要があります。
| 重症度 | 考え方 |
|---|---|
| 軽度 | CI療法、課題指向型訓練、生活動作練習など選択肢が多い段階です。促通反復療法が第一選択とは限らず、日常生活で使う練習との組み合わせが重要です。 |
| 中等度 | 分離運動を引き出したい、反復量を増やしたい場合には合理的な選択肢になり得ます。ただし、目標が実用的な手の使用であれば、課題指向型訓練との併用を考えます。 |
| 重度 | 随意運動が乏しい方では、まず目的の運動を引き出す工夫が必要になるため、促通反復療法を検討する場面があります。単独で十分な変化を期待できるとは限らず、電気刺激や装具、生活動作練習などとの組み合わせを含めて判断します3,4。 |
重要なのは、軽度ほど「動けるからこそ生活でどう使うか」が問題になり、重度ほど「まず目的の運動をどう引き出すか」が問題になりやすい点です。重度の方では促通反復療法を検討する場面がありますが、研究上は電気刺激などとの併用条件で示された結果も多く、単独の方法として過度に期待しすぎないことが大切です。
上肢リハビリには複数の選択肢があります。CI療法は、ある程度の手関節・手指伸展がある方に検討される方法としてガイドラインでも触れられています7。課題指向型訓練は、食事、着替え、家事、趣味動作など、実際の生活課題に近い練習を繰り返す方法です。ロボット療法は反復量やフィードバックを確保しやすい一方、適応や費用、機器へのアクセスが課題になります。
促通反復療法は、「まだ自分では十分に動かせない動きを、セラピストが引き出しながら反復する」点に特徴があります。そのため、手技の質が重要です。実施者によって刺激のタイミング、力加減、反復の作り方が変わると、結果にもばらつきが出る可能性があります。
促通反復療法は名前が有名ですが、現在の主要ガイドラインで中心的に推奨される介入とは言いにくい状況です。研究結果はありますが、エビデンスの確実性、再現性、実施者間のばらつきについては慎重に見る必要があります。
痛みが強い方、肩関節亜脱臼がある方、痙縮(筋肉のこわばり)が強い方、感覚障害が重い方、疲労しやすい方では、無理に反復回数を増やすのではなく、専門職による評価のもとで練習量や方法を調整する必要があります。反復回数を増やすこと自体が目的にならないよう、痛み、疲労、生活での使いやすさを一緒に確認することが大切です。
促通反復療法は、実際の自費リハビリでも希望される方が多い印象があります。特に「川平法を受けてみたい」「手を動かすきっかけを作りたい」と相談されることがあります。
一方で、手技は簡単ではありません。目的の運動を引き出すタイミング、刺激の入れ方、代償運動をどこまで許容するかなど、実施者の熟練度が影響しやすいと感じます。重度の方では、まず目的の運動を引き出す工夫が必要になるため、促通反復療法を検討する場面があります。ただし、単独で十分な変化を期待できるとは限らず、中等度・軽度の方も含めて、ロボット、CI療法、課題指向型訓練、電気刺激、装具、生活動作練習などと比べながら、ご本人の目標や価値観に合わせて選ぶことが大切です。
また、促通反復療法は「とにかく回数を重ねる」ことが重要です。研究でも20分から40分、週5から7回、4週間といった集中的な条件で実施されています3,4。短時間で数回だけ行って大きな変化を期待するより、評価、反復量、生活での使用、他の練習との組み合わせを計画することが現実的です。
・促通反復療法は、本人の動かそうとする意図に合わせて運動を引き出し、高反復する方法です。
・川平法は一般的な呼び方として使われますが、専門的には促通反復療法と表現します。
・軽度では課題指向型訓練やCI療法など、他の選択肢も比較する必要があります。
・中等度では、分離運動の練習や反復量確保の方法として選択肢になり得ます。
・重度では目的の運動を引き出す工夫として検討する場面がありますが、単独で十分な変化を期待できるとは限りません。
・手技の難しさ、実施者間のばらつき、痛みや疲労への配慮は、正直に考えるべき課題です。
本記事は、脳卒中後リハビリに関する一般的な情報提供を目的としています。個別の診断、治療、医療行為の推奨を行うものではありません。促通反復療法や電気刺激、CI療法などを検討する場合は、主治医や担当リハビリ専門職に相談し、身体状況やリスクを確認したうえで進めてください。研究情報は2026年6月4日時点で確認した内容です。
![]() | 執筆者:株式会社Journey Rehab 代表取締役|田中 光 保有資格 修士(作業療法学) 作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836(日本作業療法士協会) 東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍 経歴 ・2016年:初台リハビリテーション病院に入職。脳卒中後遺症の回復期リハに従事 ・2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立 ・2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中 研究活動 ・第57回日本作業療法学会(2023)ポスター発表 ・第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表 論文執筆 ・田中 光, 石橋 裕, 佐々木 智也, 坂本 泰平. (2025). 本邦における介護予防・日常生活支援総合事業におけるスコーピングレビュー. 日本老年療法学会誌, 4(1). 日本老年療法学会. |
一般にはほぼ同じ文脈で使われます。専門的には「促通反復療法」または「Repetitive Facilitative Exercise(RFE)」と表現し、「川平法」は国内で広く知られた呼び方として理解するとよいです。
重度例を対象に、電気刺激と組み合わせた研究があります。ただし、単独で大きな変化を保証するものではないため、身体状況や目標を専門職と確認することが大切です。
軽度ではCI療法や課題指向型訓練など、生活で手を使う練習の選択肢も多くなります。促通反復療法が合うかは、目標や手の使い方によって変わります。
研究では1日20分から40分、週5から7回、4週間など集中的な条件が多く報告されています。実際には疲労や痛み、生活状況に合わせて調整します。
出る可能性があります。促通反復療法は刺激のタイミングや力加減が重要で、実施者の経験が影響しやすい方法です。評価と説明を丁寧に受けることが大切です。
主要ガイドラインで中心的に推奨される介入とは言いにくい状況です。研究報告はありますが、エビデンスの確実性はまだ十分とは言えません。
1. Kawahira K, et al. Effects of intensive repetition of a new facilitation technique on motor functional recovery of the hemiplegic upper limb and hand. J Neuroeng Rehabil. 2010;7:40. DOI: 10.1186/1743-0003-7-40. PMID: 20591162. PMCID: PMC2942772.
2. Shimodozono M, et al. Benefits of repetitive facilitative exercise program for the upper paretic extremity after subacute stroke: a randomized controlled trial. Neurorehabil Neural Repair. 2013;27(4):296-305. DOI: 10.1177/1545968312465896. PMID: 23213077.
3. Shimodozono M, et al. Repetitive facilitative exercise under continuous electrical stimulation for severe arm impairment after sub-acute stroke: a randomized controlled pilot study. Brain Inj. 2014;28(2):203-210. DOI: 10.3109/02699052.2013.860472. PMID: 24304090.
4. Ohnishi H, et al. Effectiveness of Repetitive Facilitative Exercise Combined with Electrical Stimulation Therapy to Improve Very Severe Paretic Upper Limbs in Stroke Patients: A Randomized Controlled Trial. Occup Ther Int. 2022;2022:4847363. DOI: 10.1155/2022/4847363. PMID: 35572164. PMCID: PMC9068343.
5. Hokazono A, et al. Combination therapy with repetitive facilitative exercise program and botulinum toxin type A to improve motor function for the upper-limb spastic paresis in chronic stroke: A randomized controlled trial. J Hand Ther. 2022. DOI: 10.1016/j.jht.2021.01.005. PMID: 33820711.
6. Xu H, et al. Effects of different rehabilitation therapies on upper extremity motor function and activities of daily living in hemiplegic patients with stroke: A network meta-analysis. Medicine. 2025. DOI: 10.1097/MD.0000000000045662. PMID: 41204516. PMCID: PMC12599750.
7. NICE. Stroke rehabilitation in adults: Recommendations. NG236. 2023.
8. Winstein CJ, et al. Guidelines for Adult Stroke Rehabilitation and Recovery. Stroke. 2016;47:e98-e169.

