![]() | 田中 光(作業療法士)|株式会社Journey Rehab 代表 認定作業療法士/修士(作業療法学) 東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍 初台リハビリテーション病院にて脳卒中リハに従事のち独立 |
方法のばらつき、集団・個別、継続率、向いている重症度を整理
結論から言うと、パーキンソン病に対するピラティスは、軽度から中等度の方を中心に、バランス、下肢機能、歩行、筋力などに良い方向の変化を示す研究があります。ただし、「パーキンソン病にはこのピラティス方法が確立している」と言える段階ではありません。
この記事では、パーキンソン病のピラティスについて、研究で分かっていること、まだ分からないこと、臨床でどう取り入れると現実的かを整理します。運動を続けやすくする視点も大切にしながら、患者さん・ご家族にも伝わる形で解説します。
パーキンソン病の運動は、転倒歴、すくみ足、姿勢反射障害、血圧変動、骨粗しょう症、腰痛・膝痛、服薬の効いている時間帯によって安全な内容が変わります。この記事は一般的な情報であり、実施前には主治医やリハビリ専門職に相談してください。
パーキンソン病に対するピラティスは、バランス、下肢機能、歩行、筋力などに良い影響を示した研究があります。2019年のシステマティックレビューでは、ピラティスは軽度から中等度のパーキンソン病の方に安全に処方できる可能性があり、体力、バランス、身体機能に良い影響を示す予備的な証拠があると整理されています1。
一方で、研究数はまだ少なく、対象者数も大きくありません。ピラティスを「標準的なリハビリ方法として確立済み」と考えるより、体幹、姿勢、呼吸、柔軟性、下肢筋力、バランスをまとめて練習しやすい運動選択肢のひとつとして捉える方が現実的です。
・ピラティスは軽度から中等度の方では運動候補になります。
・期待しやすいのは、姿勢、体幹、下肢機能、バランス、歩行に関わる要素です。
・方法は研究ごとにばらつきがあり、最適な流派までは分かっていません。
・継続しやすそうな印象はありますが、ピラティス特有の高い継続率はまだ十分に証明されていません。
24種類の運動を比較した2023年のネットワークメタアナリシスでは、ピラティスは「予測的バランス」、つまり一歩踏み出す前や手を伸ばす前に姿勢を整える力で上位に位置づけられました2。これは、ピラティスが姿勢を整えながらゆっくり動く運動であることと相性がよい結果に見えます。
ただし、この研究でもエビデンスの質は低いとされています。個別研究では、週2回8週間の臨床ピラティスで動的バランスに良い結果が報告されたRCTがありますが3、全文確認ができていない研究は、記事では補助的に扱っています。
2019年レビューでは、RCT 4件、非RCT 4件が含まれ、研究の質は低から中等度と評価されています1。2023年のネットワークメタアナリシスでは、ピラティスは予測的バランスで上位でしたが、信頼性は低いとされています2。
| 項目 | 研究での見え方 | 臨床での捉え方 |
| バランス | 予測的バランスで良い可能性が報告されています2。 | 姿勢調整や重心移動を安全に練習する候補になります。 |
| 下肢機能 | 2019年レビューでは、従来運動より下肢機能で有利な可能性が示されました1。 | 立ち上がり、歩行、方向転換へつなげて考えます。 |
| 歩行 | 歩行速度やTUGで良い変化を示す研究がありますが、研究ごとの違いが大きいです。 | 歩行そのものの練習や有酸素運動と組み合わせる方が現実的です。 |
| 生活の質・継続 | ピラティス単独で高い継続率を示す十分な比較研究は、現状確認できていません。 | 楽しさ、家族参加、予定化などの工夫が重要です。 |
現時点では、パーキンソン病に対するピラティスの方法はかなりばらついています。2025年のレビューでは、古典的ピラティス、ヨガピラティス、Stott、power、reformerなど、方法や用量が多様で、プロトコルの標準化はまだ十分ではないと整理されています5。
そのため、患者さんやご家族に説明するときは、「パーキンソン病専用に確立されたピラティスメニューがある」と言うより、「体幹・姿勢・バランス・下肢筋力を、専門職が安全に調整しながら行う運動として活用できる可能性がある」と説明する方が正確です。
一般向けピラティス教室や動画をそのまま使うと、パーキンソン病の転倒リスク、すくみ足、血圧変動、床からの立ち上がりに合わない場合があります。最初は椅子、壁、手すり、専門職の確認を使う方が安全です。
ピラティスに限定して、集団と個別を直接比較した十分なエビデンスは、現状確認できていません。ここは、記事内で断定しないことが大切です。
ただし、パーキンソン病の運動全般では、集団運動と個別運動を比較した2024年のシステマティックレビュー・メタアナリシスがあります。この研究では、集団運動は個別運動と比べて多くの運動機能・移動能力の指標で明確な差はなく、通常ケアと比べると良い結果が多いと報告されています6。
| 形式 | 利点 | 注意点 |
| 集団 | 楽しい、人と会える、予定化しやすい、家族も参加しやすい。 | 個別の転倒リスクや症状変動に合わせにくい場合があります。 |
| 個別 | すくみ足、姿勢反射障害、腰痛、血圧変動に合わせやすい。 | 継続の仕組みや楽しさを別に作る必要があります。 |
現実的には、最初は個別で安全確認を行い、慣れてきたら集団や家族参加型に広げる流れが取り入れやすいと考えます。
ピラティスが、一般的な運動より明確に継続率が高いと示した研究は、現状確認できていません。ここは、臨床的な印象とエビデンスを分けて考える必要があります。
一方で、パーキンソン病では運動を継続する仕組みが重要です。2024年の在宅有酸素運動プラットフォーム研究では、123名のうち78.9%が、50週間にわたって平均週2〜4回の運動を継続する「アドヒアランスあり」に分類されました7。
・家族も一緒に参加できる形にする。
・週1〜2回の予定化と、短い自宅練習を組み合わせる。
・楽しさだけでなく、疲労、転倒不安、痛みも記録する。
・専門職が強度とフォームを定期的に確認する。
研究対象は、主に軽度から中等度のパーキンソン病の方です。2019年レビューでは軽度から中等度、2025年のRCTではHoehn & Yahr 2〜3が対象でした1,4。一般運動の研究でもHoehn & Yahr 1〜3程度の方が多く含まれています。
| 重症度 | 考え方 |
|---|---|
| 軽度 | 運動の選択肢が多い段階です。ピラティスは姿勢、体幹、柔軟性、バランスを整える候補になりますが、歩行練習や筋力トレーニングとの組み合わせも大切です。 |
| 中等度 | 姿勢の崩れ、方向転換、立ち上がり、歩幅の狭さが課題になりやすい段階です。椅子や壁を使いながら、安全に体幹と下肢を練習する形が現実的です。 |
| 重度 | ピラティス研究の対象としては少なく、自己流や一般教室は慎重に考える必要があります。座位、ベッド上、介助下での呼吸・姿勢練習など、個別調整が必要です。 |
現場感として、パーキンソン病の方には「運動を続ける必要性は分かっているけれど、単調な自主トレは続かない」という声が少なくありません。ピラティスのように、呼吸、姿勢、体幹、下肢筋力、バランスをまとめて練習できる運動は、取り入れやすい印象があります。
また、本人だけでなく、ご家族も一緒に参加しやすい点は大きな利点です。ただし、薬の効き方、疲労、血圧、すくみ足、腰痛によって安全な運動は変わります。楽しさと継続しやすさを大切にしつつ、最初は専門職が姿勢や転倒リスクを確認しながら進めることが望ましいです。
・パーキンソン病に対するピラティスは、軽度から中等度では運動候補になります。
・バランス、下肢機能、歩行、筋力に良い方向の変化を示す研究があります。
・ただし、方法は研究ごとにばらつき、最適な流派や標準プロトコルはまだ明確ではありません。
・集団と個別の優劣は、ピラティス限定では十分に分かっていません。
・ピラティス特有の高い運動継続率はまだ証明されていませんが、家族参加や楽しさを作りやすい可能性があります。
・転倒リスクがある場合は、椅子、壁、手すり、専門職の確認を使い、安全を優先します。
ピラティスは「これだけで十分な方法」ではなく、「本人が続けやすく、姿勢や体幹、バランスに取り組みやすい運動候補」として考えると、臨床でも生活でも使いやすいと思います。
本記事は、パーキンソン病とピラティスに関する一般的な情報提供を目的としています。診断、治療、医療行為の推奨ではありません。運動を始める前には、主治医、理学療法士、作業療法士などの専門職に相談してください。研究結果は執筆時点の情報であり、今後変わる可能性があります。
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執筆者:株式会社Journey Rehab 代表取締役|田中 光
保有資格
修士(作業療法学)
作業療法士(国家資格)/認定作業療法士:登録番号2836(日本作業療法士協会) 東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍 経歴
・2016年:初台リハビリテーション病院に入職。脳卒中後遺症の回復期リハに従事
・2021年:大手自費リハビリ会社に転職後、2024年にフリーランスとして独立 ・2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県/東京都23区を中心に訪問型の自費リハビリを提供中 研究活動
・第57回日本作業療法学会(2023)ポスター発表
・第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表 論文執筆
・田中 光, 石橋 裕, 佐々木 智也, 坂本 泰平. (2025). 本邦における介護予防・日常生活支援総合事業におけるスコーピングレビュー. 日本老年療法学会誌, 4(1). 日本老年療法学会.
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バランスや下肢機能に良い方向の変化を示す研究はあります。ただし研究数はまだ限られており、すべての方に同じ結果が出るとは言えません。
研究では、主に軽度から中等度の方が対象です。転倒が多い方、すくみ足が強い方、血圧変動がある方は専門職と安全確認をしてください。
ピラティス限定で比較した十分な研究はありません。安全確認が必要な方は個別から始め、慣れてきたら集団や家族参加型へ広げる方法が考えられます。
その可能性はありますが、研究で明確に証明されているわけではありません。楽しさ、家族の参加、記録、専門職の見守りなどにも左右されます。
研究では週2回、1回60分、8〜12週間程度が多く見られます。体力や症状に合わせて10〜20分から始める方法もあります。
2. Qian Y, et al. Comparative efficacy of 24 exercise types on postural instability in adults with Parkinson's disease. BMC Geriatr. 2023. DOI: 10.1186/s12877-023-04239-9. PMID: 37641007.
3. Çoban F, et al. Effect of clinical Pilates training on balance and postural control in patients with Parkinson's disease. J Comp Eff Res. 2021. DOI: 10.2217/cer-2021-0091. PMID: 34726472.
4. Coban F, et al. Motor learning-based clinical pilates training for Parkinson's disease rehabilitation. Complement Ther Med. 2025. DOI: 10.1016/j.ctim.2025.103161. PMID: 40074156.
5. The Effects of Pilates in Parkinson's Disease-A Narrative Review. Life. 2025;15(7):1035.
6. Palm D, et al. Effects of Group Exercise on Motor Function and Mobility for Parkinson Disease. Phys Ther. 2024. DOI: 10.1093/ptj/pzae014. PMID: 38335243.
7. Rosenfeldt AB, et al. Use of a Home-Based, Commercial Exercise Platform to Remotely Monitor Aerobic Exercise Adherence and Intensity in People With Parkinson Disease. Phys Ther. 2024. DOI: 10.1093/ptj/pzad174. PMID: 38206881.

