結論から言うと、外骨格系ロボットを使った歩行練習は、通常の理学療法だけの場合と比べて「歩行自立」や一部の歩行指標に良い結果が示されています。ただし、誰にでも大きな変化が出るわけではなく、装着したまま普段歩くだけで効果があるか、どの機器が最もよいか、最適な実施量はまだはっきりしていません。
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田中 光(作業療法士)|株式会社Journey Rehab 代表
認定作業療法士/修士(作業療法学)/東京都立大学大学院 博士後期課程 在籍。初台リハビリテーション病院で脳卒中回復期リハに従事後、自費リハビリ分野へ。
公開日・最終更新日:2026年5月18日
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外骨格系ロボットとは、脚や体幹の外側に装着し、股関節・膝関節・足関節などの動きを機械的に補助する装置です。脳卒中後の歩行練習では、体重を支える装置やトレッドミルと組み合わせるタイプ、床の上を歩くタイプ、片脚だけを補助するタイプなどがあります。
研究では「robot-assisted gait training(ロボット支援歩行練習)」という大きな枠で扱われることが多く、外骨格型だけでなく、足部を機械で動かすエンドエフェクター型も含まれます。そのため、論文を読むときは「どのロボットを使ったのか」を分けて見る必要があります。
最も大きな根拠の一つは、2025年に更新されたCochraneレビューです。101研究、4224名の脳卒中者を対象に、ロボット・電気機械支援歩行練習と通常理学療法・通常ケアを比較しています。その結果、ロボット支援歩行練習を通常理学療法に組み合わせると、歩行自立に到達する可能性が高まると報告されています1。
一方で、歩行速度や歩行耐久性の変化は「小さい」または「研究によってばらつきがある」と考えるのが現実的です。Cochraneレビューでは、介入終了時には歩行速度と6分間歩行距離に統計的な差が示されていますが、追跡時点では差がはっきりしませんでした1。
ロボット支援歩行練習は、通常の歩行練習と比べて「歩行自立」に関して有利な可能性があります。特に、発症後早期で、まだ自立歩行が難しい方では利益が大きい可能性が示されています。ただし、機器の種類・頻度・時間・対象者が研究ごとに異なるため、最適な使い方はまだ確定していません。
2024年の亜急性期脳卒中を対象にしたメタ解析では、通常歩行練習と比べて、下肢運動機能、歩行自立度、バランス、TUG、6分間歩行距離で良い結果が示されました。一方で、10m歩行速度は有意差がありませんでした2。
ウェアラブル外骨格に絞った2023年のシステマティックレビューでは、通常歩行練習と同じ量で比べた場合、介入終了時の歩行速度とバランス、追跡時点の全体的な移動能力や歩行耐久性で有利な結果が示されました。ただし、「外骨格を装着して歩くこと自体」が有益かどうかを調べた研究はなく、この点はまだ不明です5。
| アウトカム | 研究での見え方 | 読み方 |
|---|---|---|
| 歩行自立度(FAC) | 良い傾向 | 介助量を減らす目標では検討価値があります。 |
| 歩行速度 | 小さい・不確実 | 速度だけを目的にすると期待外れになることがあります。 |
| 6分間歩行距離 | 一部で良い結果 | 歩行量を確保できる点が関係している可能性があります。 |
| バランス | 良い傾向 | 立位・重心移動を含む練習設計が重要です。 |
研究全体を見ると、外骨格ロボットは「すでに速く歩ける人」よりも、「歩行量を安全に増やしたい人」「介助が必要で反復練習を増やしたい人」「発症後早期から歩行練習を始めたい人」に向いている可能性があります1。
正直に言うと、「この量が最適」と言い切れる段階ではありません。ガイドラインレビューでも、タイミング、頻度、1回時間、対象者条件について十分な合意はないとされています6。
ただし、RCTでは、週5回、1回30〜60分、2〜8週間程度のプログラムがよく見られます。たとえば、REXを用いた2024年のパイロットRCTでは、1日60分、週5回、4週間実施されています7。日本で開発されたwearable powered robot「curara」を用いた研究では、週5回、1回30±5分、合計10回の歩行練習が行われています4。
大きなレビューでは、介入中の脱落や死亡リスクを増やすとは示されていません1。ただし、これは「誰でも安全に一人で使える」という意味ではありません。実際には、転倒、皮膚への圧迫、疲労、痛み、装着時間、機器の重さ、費用、施設環境などを確認する必要があります。
ウェアラブル外骨格のレビューでも、在宅や地域生活での可能性が述べられる一方、装置が重くかさばること、監視者や歩行補助具が必要になりやすいこと、臨床試験が短期間・少人数であることが課題として挙げられています3。
外骨格ロボットは「歩く力を代わりに作ってくれる機械」ではなく、歩行練習を補助する道具です。自宅や自主トレーニングで使う場合は、主治医・理学療法士・作業療法士に、安全性、転倒リスク、装着方法、練習量を確認してください。
外骨格系ロボットは近年増えており、医療機器だけでなく、登山用や一般利用を想定したスマートな装置も出てきています。歩行量を確保しやすいこと、装着すると一時的に歩行速度が上がること、歩行の左右差に気づきやすいことは利点だと感じます。
一方で、高価で、病院など大きな施設に限られることが多く、装着にも手間がかかります。薄着だと外から見えやすく、見た目の抵抗感がある方もいます。自主トレーニングで使えるなら魅力はありますが、前提は「安全に使えること」です。
訪問リハビリでは、外骨格ロボットの有無だけで判断せず、実際の生活動線を確認します。たとえば、ベッドからトイレまでの距離、浴室や玄関の段差、屋外歩行で使う道路の傾き、買い物や通院で必要な歩行距離、疲労の出方、転倒しやすい場面を見ながら、歩行練習の内容を組み立てます。
もし安全に使用できる外骨格ロボットがある場合は、在宅での屋外歩行練習や、日常生活の中で短時間試してみる選択肢も考えられます。ただし、装着方法、転倒リスク、疲労、皮膚への圧迫、緊急時の対応を確認したうえで、専門職が見守れる範囲から始めることが大切です。外骨格ロボットが使えない環境でも、手すり、杖、装具、歩行距離の調整、休憩場所の設定、段差練習などで歩行量を増やす方法はあります。
本記事では外骨格ロボットを中心に扱っていますが、歩行には筋力、感覚、バランス、認知機能、装具、介助方法、住環境、屋外環境、疲労の管理なども関係します。外骨格ロボットを使えない環境でも、歩行量を増やす方法や、安全に生活動作へつなげる練習はあります。実際には、機器の有無よりも「その人の生活でどこを歩く必要があるか」を確認することが出発点になります。
本記事は、脳卒中後のリハビリに関する一般的な情報提供を目的としています。医療行為、診断、治療の代替ではありません。外骨格ロボットや歩行練習の実施可否は、病状、転倒リスク、合併症、生活環境によって異なります。実施前には主治医・理学療法士・作業療法士などの専門職に相談してください。研究データは2026年5月18日時点で確認した情報に基づきます。
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執筆者:田中 光
株式会社Journey Rehab 代表。作業療法士、認定作業療法士、修士(作業療法学)。東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍。初台リハビリテーション病院で脳卒中回復期リハに従事。
論文:田中 光 他. 日本老年療法学会誌 4(1), 2025.
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