脳卒中後の手の麻痺でこのようなお悩みはありませんか。

「腕は少し動くのに、手がうまく使えない」
「リハビリを続けているけれど、最近あまり変化を感じない」
「もうこれ以上は良くならないのではないか」
このように感じている方は少なくありません。
脳卒中の後は、肩や肘の動きは少し戻っても、手を開く、握る、つまむ、離すといった細かな動きが戻りにくいことがあります。
そのため、日常生活では、
- コップを持つと落としそうになる
- 着替えのときに手がうまく使えない
- テーブルの上の物を支えられない
- 麻痺した手を「添える手」としても使いにくい
といった困りごとが起こりやすいと思います。
そのような方に対して、近年、リハビリの選択肢の一つとして注目されているのが
rTMS(反復経頭蓋磁気刺激)
■最新のガイドラインでも高く推奨されています
rTMSは、頭の外側から専用の機器で磁気を当てて脳の働きを直接サポートし、脳が本来持っている回復力を引き出す治療法です。
日本の最新の『脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕』において、上肢(腕や手)の麻痺に対してrTMSを行うことは「妥当である(推奨度B、エビデンスレベル高)」と、明確に推奨されています。
実は、以前のガイドラインからさらに評価が引き上げられており、多くの研究によって「手の麻痺を改善する確かな科学的根拠(エビデンス)がある」と専門家からも高く評価されている治療法なのです。
rTMS(反復性経頭蓋磁気刺激)とは?

rTMSとは、頭の外から脳に磁気刺激を与えて神経活動を調整する非侵襲的治療法です。
脳の働きを整え、リハビリの効果を高めることを目的としています。
脳卒中後は、脳のバランスが崩れます。
損傷側は働きが弱くなり、非損傷側が過剰に働いて回復を妨げることがあります。
rTMSは、損傷側の働きを高めたり、非損傷側の働きを抑えたりすることで、左右のバランスを整えます。
さらに、脳の回復しやすい状態(神経可塑性)を高めることで、リハビリの効果を引き出しやすくします。
簡単に言うと、
「脳の準備を整えてから練習することで、動きを引き出しやすくする方法」です。
脳卒中後の機能に対しては、
手や腕の動きだけでなく、言語、認知、飲み込み、気分など、複数の機能で改善が報告されています。
rTMSと偽刺激を比較した研究をまとめた報告では、(Lin F,2025)
上肢の運動機能(Fugl-Meyer)が有意に改善しました
特に発症早期の方が効果は得られやすいですが、慢性期においても改善が認められています。
ただし、大切なのは、rTMSは誰にでも同じように合うわけではないということです。
rTMSが合いやすいのは、こんな方です
(Jiao L,2026)の研究から、rTMSはすべての方に同じように効果が出るわけではなく、脳の状態や運動機能の残り方によって効果に違いがあることがわかってきています。
特に、次のような方では効果を発揮しやすい可能性があります。
・手や腕に、わずかでも動きが残っている方
まったく動かない状態に比べて、少しでも自分で動かせる方のほうが、脳の運動に関わるネットワークが保たれていることが多く、rTMSによる働きかけが届きやすいと考えられています。
回復が止まったように感じている方
最初は少しずつ良くなっていたのに、最近はあまり変化がない。
そのような方では、いつものリハビリに加えて別の方法を組み合わせることで、変化が出る可能性があります。
練習にしっかり取り組める方
rTMSは、刺激を受けるだけで終わるものではありません。
その後のリハビリや練習と組み合わせることが大切です。
そのため、「少しでも良くなりたい」「練習も頑張りたい」という気持ちがある方に向いています。
大切なのは、「受けること」より「合うかどうか」です
rTMSという言葉を聞くと、
「新しい治療なら良くなりそう」
と思うかもしれません。
ですが実際には、
- 発症してからどれくらい経っているか
- 麻痺の重さ
- 脳のどこが傷ついたか
- 今どれくらい手が使えるか
によって、合うかどうかは変わります。
つまり大切なのは、rTMSを受けること自体ではなく、自分に合っているかをきちんと見ることです。
まずは評価が大切です

中には、
- 麻痺がかなり重い方
- 手の動きがほとんど出ない方
- 安全面に注意が必要な方
もいます。
そのため、「とにかくrTMSを受ければよい」というわけではありません。
まず必要なのは、今の状態をしっかり見ることです。
- 今、何が一番困っているのか
- どの動きが残っているのか
- どこに改善の可能性があるのか
- rTMSが合いそうか、それとも別の練習が優先か
これらを整理してから進めることが大切です。
安全性について
rTMSは、適切に行えば比較的安全性の高い方法とされています。(Lefaucheur JP,2020)
一方で、頭皮の違和感、頭痛、刺激音の不快感などが生じた報告がありますが、多くは軽く一時的です。
また、極めて稀ではありますが、てんかん発作などの報告もされています。
そのため、既往歴や服薬状況、体調などを確認したうえで、安全に実施できるかを判断する必要があります。
【免責事項】本記事は、脳卒中後の手のリハビリで認定作業療法士の視点から整理しています。
こんな方は、一度ご相談ください

- 手の麻痺が残っていて困っている
- 今のリハビリだけでよいのか迷っている
- rTMSが自分に合うのか知りたい
- まだ良くなる可能性があるなら試したい
- 麻痺した手を、少しでも生活の中で使えるようにしたい
もし当てはまるものがあれば、一度きちんと評価を受けてみる価値があります。
おわりに
脳卒中後の手の麻痺は、一人ひとり状態が違います。だからこそ、今の状態を見たうえで、適切なリハビリ方法を考えることが大切です。
「自分も当てはまるかもしれない」
「今の状態を一度しっかり見てもらいたい」
そう感じた方は、まずは体験リハビリで、今の状態と今後の可能性を確認してみませんか。
千葉で脳卒中後のリハビリにお悩みの方は、自費リハビリサービスの活用も選択肢の一つです。
当事業所では、一人ひとりの状態や生活の困りごとを確認したうえで、科学的根拠を踏まえた個別リハビリをご提案しています。
参考文献
日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会(改訂2025). 『脳卒中治療ガイドライン 2021〔改訂 2025〕』, 日本脳卒中学会, 2025年6月30日. https://www.jsts.gr.jp/img/guideline2021_kaitei2025_kaiteikoumoku.pdf
Lin F, Hamilton RH, Sloane KL.Repetitive Transcranial Magnetic Stimulation for Post-Stroke Rehabilitation: A Systematic Review and Meta-Analysis.medRxiv. 2025; doi:10.64898/2025.12.11.25342117.https://www.medrxiv.org/content/10.64898/2025.12.11.25342117v1.full.pdf
Jiao L, Tao Y, Zhang D, Chen Q, Han L, Tian G, Shan C, Zhu H. Pretreatment spatial signature of contralesional cortical activation predicts therapeutic response to 1 Hz rTMS in post-stroke upper limb motor Recovery: A fNIRS-based biomarker study. Neuroimage Clin. 2026;49:103917. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12753248/
Lefaucheur JP, Aleman A, Baeken C, Benninger DH, Brunelin J, Di Lazzaro V, Filipović SR, Grefkes C, Hasan A, Hummel FC, Jääskeläinen SK, Langguth B, Leocani L, Londero A, Nardone R, Nguyen JP, Nyffeler T, Oliveira-Maia AJ, Oliviero A, Padberg F, Palm U, Paulus W, Poulet E, Quartarone A, Rachid F, Rektorová I, Rossi S, Sahlsten H, Schecklmann M, Szekely D, Ziemann U. Evidence-based guidelines on the therapeutic use of repetitive transcranial magnetic stimulation (rTMS): An update (2014-2018). Clin Neurophysiol. 2020 Feb;131(2):474-528. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1388245719312799?via%3Dihub
執筆者情報

株式会社Journey Rehab 代表|田中 光
修士(作業療法学)/作業療法士(国家資格)/認定作業療法士(日本作業療法士協会)
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士後期課程 在籍
▪️経歴
・2016年:初台リハビリテーション病院に入職。脳卒中後遺症の回復期リハに従事
・2021年:自費訪問リハビリ分野に活動を広げ、2024年にフリーランスとして独立
・2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県を中心に訪問型の自費リハビリを提供中
▪️ 研究活動
・第57回日本作業療法学会(2023)ポスター発表
・第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表
▪️論文執筆
