パーキンソン病の再生医療とリハビリテーションの重要性

パーキンソン病の再生医療は、いよいよ臨床実装の段階に入りつつあります。(住友ファーマ株式会社)
iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞や、海外の幹細胞治療は、「失われたドパミン神経を補う」可能性を示しています。
では――
再生医療があれば、リハビリは不要になるのでしょうか?
結論から言えば、
むしろリハビリの役割はより重要になる可能性が高いと考えています。
その理由を、研究と臨床経験の両面から整理します。
実際の臨床現場では、身体機能が改善しても、
「人混みで歩いているとすくみ足が生じて、固まってしまう」
「狭いところを歩くと動けなくなりそうで怖い」
といった理由から、生活場面では歩行が広がらない方を少なくありません。身体機能の変化を生活機能へとつなげる橋渡しとして、リハビリの役割は大きいと感じています。

再生医療の最新の動向について詳しく知りたい方はこちらの記事をご確認ください。
再生医療があれば、リハビリは不要になる?
実際の臨床現場で、「再生医療をすればパーキンソン病が治るんですか?」という質問を受けることがあります。しかし、神経が一部回復しても、長年の動作パターンや恐怖感は自然には回復しないので、リハビリが重要になってきます。
なぜなら、神経が一部回復しても、
- 歩きやすくなる
- 転びにくくなる
- 外出が増える
とは限らないからです。パーキンソン病では、
- 歩き出しにくい
- すくみ足
- バランス低下
- 二つのことを同時にすると歩きにくい
- 疲れやすい
といった複雑な問題があります。
これらは、動作として再学習する必要があることが多いのです。
再生医療とリハビリの関係
iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞(アムシェプリ)の掲載された論文においても、結論部分で次のような示唆がされていました (Sawamoto N,2025)。
「将来的には、細胞移植(再生医療)と遺伝子治療、薬物療法、リハビリテーションを組み合わせることで、有効性を高める戦略が考えられる。」
つまり、再生医療は、単独で身体機能を改善させるものではなく、リハビリを併用していくことでより効果を高める可能性があるということがわかります。
なぜ相性が良いのか?
- 改善した機能を使える能力に変える必要がある
- 神経は使うことでより働きやすくなる可能性がある
- 症状が改善しても生活が自動的に良くなるわけではない
大切なのは、
- 外出できるようになったか
- 転倒不安が減ったか
- 趣味に戻れたか
といった「生活の変化」です。
ここを支えるのがリハビリテーションの重要な役割です。
パーキンソン病に対する運動療法の効果は、すでに多くの研究で示されています。

リハビリテーションは、薬物療法や手術療法などの治療に加えて行うことで、症状のさらなる改善や生活の質の向上が期待される治療法とされています。(パーキンソン病診療ガイドライン2018)
世界中の研究をまとめた大規模な研究によると(Ernst M,2023)
・パーキンソン病の運動症状(動きの遅さ、筋肉のこわばり、すくみ足)の改善
・歩くスピードや方向転換・立ち上がりのスムーズさの向上
・バランス能力の向上に伴った転倒リスクの軽減
・日常生活動作の向上
・生活の質の向上
このように運動を行うことで、多くの効果が示されています。
一方で、実際には運動療法の効果は、どの運動がどの症状に効果的かは差があります。
◼️パーキンソン病に効果的なリハビリ方法を知りたい方はこちらの記事を確認ください。
今後リハビリはどう変わる?
もし細胞移植が実装されれば、
- 手術前後の評価
- 症状の細かな変化の測定
- 負荷量の段階的調整
- 期待値の調整(過度な期待を避ける)
など、より専門的な関わりが必要になります。
再生医療は、長期的な効果は未だ見られていないこと、現時点で効果を示されている対象者が限定的であること、全ての症状が改善するわけではありません。
しかし、可能性を広げる一歩であることは間違いありません。
最後に
再生医療は、パーキンソン病治療の未来を変える可能性があります。
しかし本当に大切なのは、
「治療があること」ではなく「生活がどう変わるか」
これからの時代は、再生医療があるからリハビリは必要なくなるのではなく、機能回復を最大化するパートナーとして、再生医療とリハビリを両軸で考える時代になるでしょう。
【免責事項】本記事は、再生医療の研究者の立場ではなく、パーキンソン病の生活支援に関わる専門作業療法士の視点から整理しています。
おわりに
パーキンソン病は、長期的に運動を継続することが重要になります。
しかし、「どのような運動をすればいいのか?」「この運動はやってもいいのか」「自分はどこに問題を抱えているのか」など悩まれる方は多く存在します。そのため、専門家を通じて、細かく評価をする必要があります。
千葉でパーキンソン病のリハビリにお悩みの方は、自費リハビリサービスの活用もご検討ください。
当事業所では、一人一人に最適な科学的根拠に基づいた個別リハビリをご提案しています。
参考文献
Sawamoto N, Doi D, Nakanishi E, Sawamura M, Kikuchi T, Yamakado H, Taruno Y, Shima A, Fushimi Y, Okada T, Kikuchi T, Morizane A, Hiramatsu S, Anazawa T, Shindo T, Ueno K, Morita S, Arakawa Y, Nakamoto Y, Miyamoto S, Takahashi R, Takahashi J. Phase I/II trial of iPS-cell-derived dopaminergic cells for Parkinson's disease. Nature. 2025 May;641(8064):971-977. doi: 10.1038/s41586-025-08700-0. Epub 2025 Apr 16. PMID: 40240591. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12095070/
住友ファーマ株式会社.日本における「非自己iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞」(アムシェプリ)の審議予定について.2026年2月13日.https://www.sumitomo-pharma.co.jp/news/20260213.html
日本神経学会(監修),「パーキンソン病診療ガイドライン」作成委員会(編).パーキンソン病診療ガイドライン2018.東京:医学書院;2018.https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_19.pdf
Ernst M, Folkerts AK, Gollan R, Lieker E, Caro-Valenzuela J, Adams A, Cryns N, Monsef I, Dresen A, Roheger M, Eggers C, Skoetz N, Kalbe E. Physical exercise for people with Parkinson's disease: a systematic review and network meta-analysis. Cochrane Database Syst Rev. 2023 Jan 5;1(1):CD013856.https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9815433/
執筆者情報

株式会社Journey Rehab 代表|田中 光
作業療法士(国家資格)/認定作業療法士(日本作業療法士協会)
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士前期課程 在籍
▪️経歴
・2016年:初台リハビリテーション病院に入職。脳卒中後遺症の回復期リハに従事
・2021年:自費訪問リハビリ分野に活動を広げ、2024年にフリーランスとして独立
・2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県を中心に訪問型の自費リハビリを提供中
▪️ 研究活動
・第57回日本作業療法学会(2023)ポスター発表
・第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表
▪️論文執筆
