振動療法とは?
振動療法(Vibration Therapy:VT)は、身体に優しい振動を加えることで、筋肉や神経の働きを活性化し、リハビリの効果を高めることを目指すアプローチです。近年では、脳卒中後に手足が動かしにくくなった方へのリハビリとしても注目されており、特に「手がこわばる」「動かしにくい」といった症状の軽減に役立つ可能性が示されています。
振動療法+通常リハビリ vs 通常リハビリのみ
2024年に発表されたLuらの研究レビューでは、通常のリハビリに加えて振動療法を行ったグループと、通常のリハビリだけを行ったグループの違いを比較しました。対象は、脳卒中後に上肢の麻痺がある方々で、30本の信頼性の高い臨床研究(RCT)が取り上げられています。
振動療法の効果について
① 手の動かしやすさ(Fugl-Meyer Assessment:FMA)
- 効果量:0.62(95%信頼区間:0.24〜1.01)
- 中等度の改善が見られました。
- ※I²=78%とばらつきが大きく、個人差もあることに注意が必要です。
② 日常生活のしやすさ(例:食事や着替え)
- 効果量:0.53(95%信頼区間:0.19〜0.88)
- 軽度〜中等度の改善が確認されました。
- I²=68%とやや高めのばらつきがあります。
③ 手足のこわばり(痙縮、MASで評価)
- 効果量:−0.52(95%信頼区間:−0.83〜−0.21)
- 痙縮の軽減に役立つ可能性があります。
- I²=72%とやや高い異質性があります。
振動療法に関する注意点(研究のばらつき)
この研究では、どの効果においても研究ごとに結果にばらつき(異質性)が見られました。I²という指標でその程度が示されており、数値が高いほど「研究方法や対象者がまちまちであること」を意味します。
つまり、「効果がありそう」という結果が出ていても、それがすべての方に当てはまるとは限らないということです。振動療法はあくまでも選択肢の一つであり、無理なく、その方に合った方法で取り入れることが大切です。
実際の振動療法の方法について
今回取り上げられた30の研究では、振動の方法もさまざまでした:
- 振動の部位:指や腕などの部分的な振動から、全身振動(WBV)まで幅広い
- 周波数:10〜100Hz(多くは30〜50Hz)
- 1回の時間:5〜15分
- 頻度:週3〜5回
- 期間:2〜8週間
また、多くの研究で振動療法だけでなく、作業療法・筋トレ・課題指向訓練などと一緒に行われていました。
まとめ
振動療法は、脳卒中後の「手のこわばり」や「動かしにくさ」といった症状に悩む方にとって、希望の持てる選択肢の一つです。運動機能や日常生活動作の改善、そして痙縮の軽減などに対して、中等度の効果があることが示されています。
ただし、「誰にでも効く」「すぐに良くなる」といったものではありません。振動の強さや頻度、その人の状態に合わせた個別の工夫が必要です。
私たちJourney Rehabでも、ご自宅で安心して受けられる自費訪問リハビリの一環として、振動療法を取り入れることが可能です。もし「手が動かしづらい」「少しでも生活を楽にしたい」と感じていらっしゃる方がいれば、ぜひお気軽にご相談ください。
引用文献
- Lu, Y., et al. (2024). Effects of vibration therapy for post-stroke upper limb spasticity and motor function: A systematic review and meta-analysis. Frontiers in Neurology. https://doi.org/10.3389/fneur.2024.1333215
▪️執筆者情報
株式会社Journey Rehab 代表|田中 光
作業療法士(国家資格)/認定作業療法士(日本作業療法士協会)
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法学域 博士前期課程 在籍
▪️経歴
・2016年:初台リハビリテーション病院に入職。脳卒中後遺症の回復期リハに従事
・2021年:自費訪問リハビリ分野に活動を広げ、2024年にフリーランスとして独立
・2025年:株式会社Journey Rehab設立。千葉県を中心に訪問型の自費リハビリを提供中
▪️ 研究活動
・第57回日本作業療法学会(2023)ポスター発表
・第34回日本保健科学学会(2024)ポスター発表